犬の熱中症の見分け方は?症状や応急処置、熱中症対策を獣医師が解説

佐藤貴紀

獣医師/循環器科担当/認定医

犬の熱中症の見分け方は?症状や応急処置、熱中症対策を獣医師が解説

夏が近づき、気をつけたいのは犬の熱中症。熱中症は外出時になりやすいと思われがちですが、室内や車内でも起こる可能性があります。今回は最悪の場合、死亡したり、後遺症の残ったりする恐れのある犬の熱中症について、症状や応急処置、対策方法などを獣医師の佐藤が解説します。

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この記事のまとめ

  • 犬の熱中症は体温調節が追いつかず命に関わる病気とされる
  • 呼吸の乱れ、よだれ、ふらつき、嘔吐、痙攣、失神などの症状が段階的に現れる
  • 体温40〜43℃は危険な状態で、重度では死亡や後遺症の可能性があるとされる
  • 保険データでは診療件数は6月から激増し、7月がピークとされる
  • 散歩時の時間帯・路面温度、室内の温度・湿度管理が予防の基本となる
  • 意識がない場合は動物病院への連絡と早急な搬送が勧められる

犬の熱中症予防の必要性

暑そうにしている犬

アニコム損害保険の保険金請求データによると、2025年の熱中症による診療件数は犬で1,439件にのぼりました。診療件数は6月から激増し、ピークは7月。梅雨の晴れ間や梅雨明け直後など、体が暑さに慣れていない時期こそ注意が必要です。

アイペット損害保険の2024年調査では、暑い時期に愛犬の体調変化を感じた飼い主さんは53.0%。「熱中症と診断されたことがある」は9.4%、「暑さによる不調と診断された」は16.6%にのぼります。

参照:アイペット損害保険株式会社「<犬編>ペットの暑さ対策に関する調査」 2024年10月10日

英国の約90万頭の犬を対象とした研究では、熱中症と診断された犬の致死率は14.18%。軽度であれば2.21%にとどまりますが、重度まで進行すると56.76%に跳ね上がることが報告されています。早く気づいて早く対処できるかが、命の分かれ目です。

参照:Hall, E.J., Carter, A.J. & O'Neill, D.G.「Incidence and risk factors for heat-related illness (heatstroke) in UK dogs under primary veterinary care in 2016」Scientific Reports, 2020年6月18日/Hall, E.J. et al.「Proposing the VetCompass clinical grading tool for heat-related illness in dogs」Scientific Reports, 2021年3月25日

2025年の夏は、日本の平均気温が統計を開始した1898年以降でもっとも高い記録(基準値比+2.36℃)を更新しました。「うちの子は大丈夫」と思わず、本格的な夏が来る前に予防を始めましょう。

犬の熱中症予防のための基礎知識

人と犬の体感温度の違い

犬の熱中症対策

アスファルトなどの地面に近づくほど温度は高くなるため、犬は私たちが体で感じている温度の5〜17℃も高い温度の中で歩いています。

散歩する際は「陽が出ていない時間帯に散歩をする」「なるべく日陰を歩かせてあげる」「こまめに水分補給をさせる」などといった対策をしましょう。

犬の体温調節方法

犬は暑いとき、舌を出しながら「ハァハァ」とすることがあります。これを「パンティング」と呼びます。

犬は、舌を出して呼吸を浅く速くし、唾液を蒸発させて熱を逃すことで体温を下げているのです。

愛犬がパンティングをしていれば「暑がっている」状態です。唾液を蒸発しすぎると水分が足りなくなるため、同時に水分補給をすることが大切です。

熱中症になりやすい犬

どの犬も熱中症になりますが、英国王立獣医大学(RVC)はとくに次のタイプに注意が必要としています。

パグやフレンチ・ブルドッグなどの短頭種
太り気味の犬
毛量の多い犬
子犬・シニア犬
呼吸器・肺・心臓などに持病のある犬

アニコム損害保険の保険金請求データでも、短頭種に加え、バーニーズ・マウンテン・ドッグやラブラドール・レトリーバーなどの大型犬は熱中症の請求割合が高い犬種にあがっています。

熱中症になりやすい時期は6月〜8月

アニコム損害保険の保険金請求データによると、2025年の熱中症の診療件数は6月から激増し、7月がピークでした。また、初めて犬を迎えた飼い主さんのもとで起こりやすく、前年に熱中症を経験した犬は翌年の再発リスクが高いことも分かっています。

犬・猫の熱中症 月別診療件数(2025年)。6月296件から激増し7月519件がピーク
犬・猫の熱中症 月別診療件数(2025年)。アニコム損害保険のデータをもとに作成

じつは家の中のほうが要注意

アイペット損害保険の調査では、犬の飼い主さんが熱中症を疑った場所として「家の中でお留守番中」がもっとも多い結果でした。環境省も、高温の室内での留守番や冷房のない車内を「わずかな時間でも非常に危険」として注意を呼びかけています。

飼い主さんが自宅にいる場合は愛犬の様子を見ながら室温調整できますが、お留守番をさせる場合は家の中では「クーラーで室温調節をする」「風通しの良い日陰の場所を用意してあげる」など、熱中症対策を心がけましょう。

万が一のことを考え、室温が見れる場所に見守りカメラの設置をしているとなお安心です。

犬の熱中症の症状

犬の熱中症の重症度を示した図

軽度〜中程度の症状

  • 呼吸が荒くなる
  • 流涎(よだれを流す)
  • 立ちすくみ、ボーッとしている
  • ふらつく
  • ぐったりして元気がない

重度の症状

  • 嘔吐
  • 下痢
  • チアノーゼ(歯茎が白くなり、舌や粘膜が青紫になる)
  • 痙攣
  • 失神・昏睡状態

重度の症状を呈すると、死亡に至る可能性があります。体温が40〜43℃になると非常に危険な状態です。

犬が熱中症になった場合の応急処置

あくびする犬

英国王立獣医大学(RVC)は、熱中症の犬への第一応急対応として「まず冷やしてから病院へ(cool first, transport second)」を推奨しています。若く健康な犬であれば冷たい水につける方法(冷水浸漬)が効果的とされ、高齢の犬や持病のある犬には、犬の体温より冷たい水をかけて風を当てる方法(気化冷却)が勧められています。なお、氷水は皮膚の血管が収縮して熱を逃がしにくくなり、震えによってかえって熱が生まれるため、使わないようにしましょう。

参照:The Royal Veterinary College「Heatstroke in dogs and cats(Fact File)」/The Royal Veterinary College「The RVC urges owners of 'hot dogs' to 'cool first, transport second'」 2023年7月20日

意識がある場合

体温が39℃になるまで流水をかけてください。氷水をあげる飼い主の方がいますが、氷水は逆効果になるため、気をつけましょう。

意識がない場合

すぐに動物病院に連れて行きましょう。その際に、可能であれば気道をふさがないように舌は外に出した状態で運んであげてください。

同時に「首」「脇の下」「股」など、太い血管がある部位にタオルなどで包んだ保冷剤をあて、冷やすようにしてください。このとき、体温が38℃以下になるほど冷やすと逆効果になるため、冷やし過ぎないように注意しましょう。

動物病院に連れていく前に、動物病院へ連絡を入れると救命率がさらに上がります。

犬の熱中症予防・対策方法

暑そうにしている犬

日常の熱中症予防・対策

こまめな水分補給、いつでも水が飲めるような環境をつくりましょう。また、体を冷やしたりできる暑さ対策グッズを利用しましょう。

散歩時

まず前提として、陽が出ていない時間帯を選びましょう。もし陽が出ている場合はコンクリートを手で触り、歩ける状態かを確かめましょう。ヤケドをしてしまう危険もあります。そのため、できる限り、日陰を歩かせましょう。

また、車でお出かけ時は、絶対に車で留守番させることは避けましょう。

在宅時

室内の温度は愛犬の呼吸状態が安静を保てる温度(23〜26℃)に保ちましょう。また、湿度は45〜60%を保ちましょう。

エアコンがない場所では風通しの良い日陰の場所をつくり、常に愛犬の様子が伺えるような場所で、留守番時も見守りカメラなどを設置してあげましょう。

犬の熱中症まとめ

海辺に座る人と犬
熱中症は重度になると致死率が大きく上がります。早期発見・早期対処が命を守ります
診療件数は6月から激増し、ピークは7月。暑さに慣れていない初夏こそ要注意
犬の飼い主さんが熱中症を疑った場所は「家の中でお留守番中」が最多。室温23〜26℃・湿度45〜60%を保ちましょう
散歩は陽が出ていない時間帯に。アスファルトは手で触って確かめて

「予防に勝る医療はない」というほど、予防は何よりも大事です。

暑い季節だけが危険だとは限りませんので、きちんと知識を持って犬と楽しい夏を過ごしてください!

参考文献

【動画解説】熱中症の原因・症状・対策・対処法

YouTubeのPETOKOTOチャンネルでは佐藤先生が犬の熱中症について解説した動画を公開しています。あわせてご覧ください。

犬の熱中症にまつわるよくある質問

Q.
犬の熱中症はどのような病気ですか?
A.
体温調節が追いつかず全身に異常が生じる病気とされ、重度では死亡に至る可能性があるとされています。予防が重要と解説されています。
Q.
どのような症状が見られますか?
A.
軽度では呼吸が荒い・よだれ・ふらつき、重度では嘔吐・下痢・チアノーゼ・痙攣・失神などが挙げられています。体温40〜43℃は危険とされています。
Q.
熱中症になりやすい時期や環境はありますか?
A.
保険データでは診療件数は6月から激増し、7月がピークとされています。また、犬の飼い主が熱中症を疑った場所では「家の中でお留守番中」が最多とされ、室内環境にも注意が必要と解説されています。
Q.
応急処置はどうすればよいですか?
A.
できるだけ早く体を冷やすことが最優先とされ、若く健康な犬では冷たい水につける方法も有効とされています。高齢の犬や持病のある犬は体に水をかけて風を当てて冷やします。氷水は血管が収縮して逆効果のため避け、冷やしながら動物病院に連絡することが勧められています。
Q.
予防のポイントは何ですか?
A.
陽が出ていない時間帯の散歩、こまめな水分補給、室温23〜26℃・湿度45〜60%の維持、車内放置の回避が挙げられています。
Q.
熱中症になりやすい犬種はありますか?
A.
パグやフレンチ・ブルドッグなどの短頭種、バーニーズ・マウンテン・ドッグなどの大型犬はリスクが高いとされています。太り気味の犬、毛量の多い犬、子犬・シニア犬、呼吸器や心臓に持病のある犬も注意が必要とされています。