犬が尿漏れ・失禁した場合に考えられる原因や対処法を獣医師が解説

犬が尿漏れ・失禁した場合に考えられる原因や対処法を獣医師が解説

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犬が不本意に漏らしてしまう、いわゆる「尿漏れ」をすることは、正常な状態ではありません。今回は犬が尿漏れする場合に考えられる原因や対処法などについて、目黒アニマルメディカルセンター/MAMeCの顧問獣医師で獣医循環器認定医の佐藤が解説します。

犬の尿漏れの前に排尿の仕組みを解説

犬の横顔

犬は通常、尿をしていない時は、膀胱の出口が「括約筋」という筋肉で閉じられています。

膀胱には神経があり、脳が尿意を感じれば、括約筋が緩み、膀胱の筋肉が縮み排尿します。

このような仕組みを理解すると、尿漏れの原因は神経の病気が関連していることが分かると思います。しかし、原因は神経の病気だけではありません。

犬が尿漏れする場合に考えられる原因

部屋でくつろぐ犬

神経の異常

膀胱を支配している神経の大元は脳にあります。そこから脊椎の中を神経は通り、膀胱の神経につながります。これらのいずれかに問題があると尿漏れが起こるケースがあります。

例えば、椎間板ヘルニアや腫瘍によるもの、高齢犬の場合は椎体の関節炎などが悪化した場合に起こる可能性があります。

これらの病気は通常、他の症状(後肢の麻痺、尾の麻痺、肛門弛緩など)を伴います。椎間板ヘルニアや椎体の骨折、腫瘍が原因している場合には命にも関わる恐れもあります。


ホルモン関連の異常

比較的老齢な避妊手術を受けている女の子の犬で極まれに認められることがあります。

特徴は寝ている時に認められる尿漏れです。エストロゲンという女性ホルモンの低下による尿道の機能不全が原因とされています。内科治療で改善が期待できます。

解剖学的異常

尿路の生まれつきの異常で尿漏れが起こる場合があります。

例えば「異所性尿管(腎臓から尿を膀胱に運ぶ尿管というものが膀胱の正常な位置に繋がっていない病気)」「お母さんのお腹にいる胎児の時に使っていた尿膜管というものが残ったままになっている病気」などの場合、尿漏れが出てくることがあります。

これらの多くは手術が必要になります。また、生まれつきの異常であるため、若齢犬の尿漏れはこれらの可能性が高いです。

興奮

いわゆる「嬉ション」といわれる、興奮時や嬉しいときに尿が出ることです。

嬉ションの場合は病気ではないので、獣医療的には対策は必要ないとしていますが、困る場合はドッグトレーナーに相談してみてもいいかもしれません。

犬の尿漏れの対処法

見上げる犬

ペット用のオムツをする

尿漏れが起きることで皮膚炎などを起こす恐れがあるため、オムツをしてあげましょう。また、尿が付着した場合は、水道水、犬用シャンプーでしっかりと洗い、愛犬の体を清潔に保ちましょう。

排尿か尿漏れかを確認

若い犬(とくに生後6カ月齢までくらい)はよく興奮時に少しだけ排尿をすることがあり、飼い主さんは尿漏れとの区別がつきづらいことがあります。

不安であれば病院に行って、獣医師の診断を仰ぎましょう。病気によるものではない場合、しつけで改善する可能性もあるので、ドッグトレーナーに相談してみましょう。

犬が尿漏れした場合は動物病院に相談!

犬

犬の尿漏れの原因はさまざま考えられます
尿漏れ以外の症状が出ている場合は動物病院へ
異常かどうか判別できない場合も動物病院へ連れて行きましょう
異常でない場合は、ドッグトレーナーに相談してみるのも手です

何事も早期発見・早期治療が愛犬のためになります。小さなことでも「いつもと違う」と思ったら動物病院へ連れて行きましょう。


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