
犬がにんにくを食べてはいけない理由や致死量・中毒症状を栄養管理士が解説【獣医師監修】
にんにくは、私たちの食生活に欠かせない食べ物ですが、犬にとっては中毒症状を引き起こす危険性のある食べ物です。今回は、犬にとってにんにくが危険な理由や、食べてしまった場合の応急処置、致死量などを獣医栄養学専門医のニック獣医師監修のもと、ペット栄養管理士が解説します。
犬がにんにく中毒を起こす理由

にんにくはヒガンバナ科ネギ属の植物で、玉ねぎと同様に犬が食べてはいけない食材です。犬がにんにくを食べると、「有機チオ硫酸化合物(チオスルフィン酸化合物)」という成分によって貧血や溶血を起こします。にんにくは玉ねぎより中毒作用が低いと考えられていますが、犬の個体差もありますので注意が必要です。
韓国・建国大学の報告によると、焼にんにく約60gを誤飲した6歳のシュナウザーは、嘔吐や暗褐色の尿といった症状を示しました(※1)。赤血球の減少や高血圧も認められ、退院まで4日を必要としました。その後も高血圧が継続し、正常値に戻ったのは4カ月後でした。犬の高血圧では、失明や神経障害などのリスクがあります。
※1:『Hypertension after Ingestion of Baked Garlic (Allium sativum) in a Dog』(BK21 Basic & Diagnostic Veterinary Specialist Program for Animal Diseases and Department of Veterinary Internal Medicine, College of Veterinary Medicine, Konkuk University)
犬がにんにくを食べた場合に起こる症状

犬がにんにくを食べると、有機チオ硫酸化合物が粉砕されてチオスルフィン酸アリシンが形成されます。このアリシンが赤血球に傷害を与え(※2)、嘔吐や下痢、元気消失、食欲不振、黄疸、接触性皮膚炎、偽喘息発作を引き起こす可能性があります(※3)。大量に食べた場合、赤血球が破裂して重度な貧血を引き起こし、最悪の場合は死に至ります。
※2:Harvey J, Rackear D. Experimental onion-induced hemolytic anemia in dogs.
Vet Pathol 1985;22:387-392.
※3:Ogawa E, Shinoki T, Akahori F, et al. Effect of Onion Ingestion on Anti-
oxidizing Agents in Dog Erythrocytes. The Japanese Journal of Veterinary Science 1986;48:685-691.
犬がにんにくを食べた場合の致死量
鹿児島大学などの研究チームが行なった実験によると、犬の体重1kgあたり90mgの熟成にんにく抽出液を12週間にわたって経口投与したところ悪影響はなく、むしろ健康に良い結果が得られたことがわかりました(※4)。一方でスロバキアの研究チームは犬の体重1kgあたり15〜30gのにんにくを摂取することで、血液変化がみられると報告しています(※5)。一般的にスーパーマーケットで販売されているにんにくは1個60gほど、1片10gほどです。
大量に摂取しない限りは重症化しないと考えられますが、小型犬が1個丸ごと誤飲してしまったというような場合は要注意です。普段と違う様子が見られる場合は、動物病院へ行くようにしてください。
※参照4:『Safety and efficacy of aged garlic extract in dogs: upregulation of the nuclear factor erythroid 2-related factor 2 (Nrf2) signaling pathway and Nrf2-regulated phase II antioxidant enzymes』(BMC Veterinary Research)、※参照5:『Some food toxic for pets』(Slovak Toxicology Society SETOX & Institute of Experimental Pharmacology and Toxicology, Slovak Academy of Sciences)
にんにくへのリスクは犬種によって異なる
食べる量だけでなく犬種によってもリスクが異なります。同じ犬の中でも柴犬や秋田犬は遺伝的に有機チオ硫酸化合物の影響を受けやすいため、特に注意が必要です(※4)。※4:『Safety and efficacy of aged garlic extract in dogs: upregulation of the nuclear factor erythroid 2-related factor 2 (Nrf2) signaling pathway and Nrf2-regulated phase II antioxidant enzymes』(BMC Veterinary Research)
Dr. Nick's Comment!
過去何年もの間、ペットフード会社は少量のにんにくを香味用途でペットフードの中に入れており、少量である限りは特に何も問題を起こしませんでした。しかし、少量なら問題を起こさないとは言え、このような野菜を犬に与えることは好ましくありません。
興味深いことに、にんにくは人が食べると非常に良い作用があります。アリシンが血圧を下げ、ある種の癌に対して有効であるという報告もあります。ただ、残念なことに人にとって健康でも、必ずしも犬にとっても健康であるとは限らないのです。
興味深いことに、にんにくは人が食べると非常に良い作用があります。アリシンが血圧を下げ、ある種の癌に対して有効であるという報告もあります。ただ、残念なことに人にとって健康でも、必ずしも犬にとっても健康であるとは限らないのです。
にんにくを食べてしまった時の対処法・応急処置

にんにくは犬用サプリメントに含まれることもあり、少量であれば食べても問題はありません。しかし、中毒症状を引き起こす量は犬によって個体差があります。にんにくの誤飲に有効な解毒剤はありませんので、愛犬がにんにくを食べてしまった場合は必ず、いつ、どれくらいの量を食べたかを確認し、かかりつけの動物病院に相談するようにしてください。無理に吐かせることは別の問題を引き起こす可能性がありますので、必ず専門家の指示に従ってください。
まとめ

玉ねぎより中毒作用は低いが、犬ごとに個体差がある
大量摂取しない限りは重症化しないと考えられる
特に柴犬と秋田犬は注意が必要
参考文献
- 『Hypertension after Ingestion of Baked Garlic (Allium sativum) in a Dog』(BK21 Basic & Diagnostic Veterinary Specialist Program for Animal Diseases and Department of Veterinary Internal Medicine, College of Veterinary Medicine, Konkuk University)
- 『Safety and efficacy of aged garlic extract in dogs: upregulation of the nuclear factor erythroid 2-related factor 2 (Nrf2) signaling pathway and Nrf2-regulated phase II antioxidant enzymes』(BMC Veterinary Research)
- 『Some food toxic for pets』(Slovak Toxicology Society SETOX & Institute of Experimental Pharmacology and Toxicology, Slovak Academy of Sciences)
- ロジャー・W.ゲフェラー、ショーン・メッソニア(2005)『犬と猫の中毒ハンドブック』学窓社
- 阿部又信(2008)『小動物栄養学』ファームプレス
- American Kennel Club『Can Dogs Eat Garlic?』
- Merck Veterinary Manual『Nutritional Requirements and Related Diseases of Small Animals』
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