
犬にタマネギをあげてはいけないことは、犬の飼い主さんであれば知っている方も多いかもしれません。しかし、なぜたまねぎを食べさせてはダメなのでしょうか?今回は、玉ねぎが犬にとって危険な理由や、食べてしまった場合の症状、治療法などについて、獣医栄養学専門医のニック獣医師監修のもと解説します。
目次
この記事のまとめ
- 犬に玉ねぎは有機チオ硫酸化合物により赤血球を破壊し貧血や溶血性中毒を引き起こす危険がある
- 生も加熱も皮や葉も犬に与えてはいけない
- 中毒量は体重1kgあたり15〜20g程度で、柴犬や秋田犬は遺伝的により感受性が高い
- 玉ねぎを食べたら早めに動物病院で血液検査を受け、症状に応じて催吐、胃洗浄、輸血などの対処が必要
犬に玉ねぎがダメな理由

玉ねぎはネギ属の植物の一種で、ニンニク、ニラ、ネギなども同じ部類に属します。球根の部分が玉ねぎとして食べられ、ビタミンB6やビタミンCを多く含むため人間にとっては健康的な食べ物ですが、犬にとって有害です。
玉ねぎには硫黄の一種である有機チオ硫酸化合物(チオスルフィン酸化合物)が含まれ、これが粉砕されるとチオスルフィン酸アリシンを形成します。犬は、このアリシンを消化する酵素を持っていないため、食べるとアリシンが赤血球に傷害を与えるのです(※1)。
以前は玉ねぎの油中の活性成分に含まれる「アリプロピルジスフィド(薄い黄色をした液体で、強い臭いを持つ有機硫黄化合物)」が原因だとされてきましたが、現在では有機チオ硫酸化合物が主な中毒物質で、アリプロピルジスフィドが吸収力を高めるため、中毒症状を起こしやすいと言われています。
これらの中毒物質は、全身に酸素を運ぶ役割を持つ赤血球中の「ヘモグロビン」を酸素を運ぶことができない「メトヘモグロビン」へと変化させます。メトヘモグロビンが増加すると、赤血球の内部の膜に集まり、ハインツ小体(中毒や疾病により赤血球中に生じる球状の小体で多くは溶血や血色素尿を伴う)と呼ばれる塊になります。そうすると、赤血球は破壊されて溶血し、ハインツ小体溶血性貧血が引き起こされます。
つまり、犬が玉ねぎを大量に食べた場合、赤血球は破裂して重度な貧血を引き起こし、最悪の場合は死に至るのです(※2)。
※1:Harvey J, Rackear D. Experimental onion-induced hemolytic anemia in dogs. Vet Pathol 1985;22:387-392.
※2:Ogawa E, Shinoki T, Akahori F, et al. Effect of Onion Ingestion on Anti- oxidizing Agents in Dog Erythrocytes. The Japanese Journal of Veterinary Science 1986;48:685-691.
犬に玉ねぎは加熱してもダメ?
生の玉ねぎだけでなく、加熱調理された玉ねぎ、皮や葉も食べることは危険です。犬は玉ねぎの味を好むとされているので、勝手に食べてしまうことのないよう、置く場所には注意しましょう。すき焼きの残り程度の玉ねぎで中毒となり、血尿が見られた事例も報告されています。玉ねぎそのものはもちろん、カレーやスープなど、玉ねぎを使用した料理も与えないようにしましょう。
犬が玉ねぎを食べたときに起こる症状

初期症状としては以下のような症状が見られます。時間が経つにつれて症状が悪化するので、早期発見が大切です。
さらに痙攣、震え、貧血や血尿、血便、吐血などの症状を呈し、死に至ることもあります。
症状は、大きく分けて貧血によるものと血管内溶血によるものの2つがあります。
貧血による症状
二次的なもので、喘息、粘膜蒼白、頻脈、呼吸促迫、衰弱を起こします。血管内溶血による症状
こちらも二次的なもので、嘔吐や下痢、血尿あるいはヘモグロビン尿症がみられます。顕微鏡的にハインツ小体、標的赤血球、変形赤血球が観察されることがあります。犬の玉ねぎの中毒量・致死量

食べても大丈夫だった、死なないというケースももちろんありますが、少量でも子犬(パピー)や小型犬など体が小さいワンちゃん、免疫が弱いワンちゃんには危険ですので、絶対に与えないようにしましょう。
長ネギやニラ、ニンニクにも同類の成分(アリシン)が含まれていますが、ニンニクは接触性皮膚炎や偽喘息発作を引き起こし、玉ねぎの摂取よりは軽度な症状とされています。
柴犬、秋田犬は少量でも要注意
実は玉ねぎ中毒には好発犬種が存在し、柴犬と秋田犬は注意が必要であることがわかっています。これは柴犬と秋田犬が遺伝的に「高カリウム赤血球」を持っており、玉ねぎの溶血物質に対する感受性が高いためと考えられています。
Dr. Nick's Comment!
過去何年もの間、ペットフード会社は少量の玉ねぎを香味用途でペットフードの中に入れており、少量である限りは特に何も問題を起こしませんでした。しかし、少量なら問題を起こさないとは言え、このような野菜を犬に与えることは好ましくありません。
興味深いことに、玉ねぎは人が食べると非常に良い作用があります。アリシンが血圧を下げ、ある種の癌に対して有効であるという報告もあります。ただ、残念なことに人にとって健康でも、必ずしも犬にとっても健康であるとは限らないのです。
興味深いことに、玉ねぎは人が食べると非常に良い作用があります。アリシンが血圧を下げ、ある種の癌に対して有効であるという報告もあります。ただ、残念なことに人にとって健康でも、必ずしも犬にとっても健康であるとは限らないのです。
犬が玉ねぎを食べてしまった場合の対処法
症状は、玉ねぎを食べた量、犬のサイズや時間によって異なります。すぐには症状が出なくても数時間後に出る場合もありますし、急に症状が出る場合もあります。そのため、少しでも食べた場合は念のため動物病院に診てもらいましょう。事前に電話で、いつ、どのくらい、どういう状態の玉ねぎを食べたかを正しく説明するようにしましょう。病院では、血液検査をして数値を確認することが一般的です。予後は、摂取量や食べた犬の状態によっても変わりますが、少量であれば下痢などの症状は時間とともに改善されていきます。
治療法
特異的な解毒剤はありません。治療は、対症療法としてビタミン剤、強心剤、利尿剤などを投与し、催吐(さいと:嘔吐を誘発すること)や胃洗浄などを行います。摂取したのが60分以内で、まだ臨床症状を示していないのであれば催吐し、摂取したのが2〜4時間以内であれば胃洗浄を行ったり、塩類下剤の投与をしたりすることもあります。貧血が起きている場合は輸血をすることもあります。犬と玉ねぎに関するよくある質問
Q.
犬が玉ねぎを食べてしまった時、いつまでに病院に行くべきですか?
A.
玉ねぎを食べてから症状がすぐに出るとは限らず数時間後に出ることもあるので、少しでも食べた場合はできるだけ早く動物病院を受診してください。食べた時間や量を伝えることが大切です。
Q.
加熱した玉ねぎでも犬に与えてはいけませんか?
A.
はい。生の玉ねぎだけでなく、加熱調理された玉ねぎのほか、皮や葉なども含めて犬に与えてはいけません。調理済みの料理に含まれる場合も注意が必要です。
Q.
犬が玉ねぎを食べた時に見られる初期の症状は?
A.
元気がない、下痢、嘔吐、発熱などが初期症状にあたり、その後、痙攣や震え、貧血、血尿といった重篤な症状に進行することがあります。
Q.
玉ねぎ中毒に特異的な解毒剤はありますか?
A.
特異的な解毒剤はありません。治療は対症療法が中心で、催吐や胃洗浄、必要に応じて輸血が行われます。
Q.
玉ねぎの中毒量はどのくらいですか?
A.
体重1kgあたり15~20gが中毒量の目安ですが、個体差や犬種によって感受性が異なります。特に小型犬や柴犬、秋田犬はより少量でも中毒症状を起こす恐れがあります。
さいごに

犬は玉ねぎの味を好むので食べてしまわないよう注意する
年齢や健康状態によって変わるが、中毒量は体重1kg当たり15〜20g
食べてしまったら動物病院へ
柴犬と秋田犬は玉ねぎ中毒の好発犬種
なお、本稿は以下の情報も参照して執筆しています。
- 「Onion」(ASPCA)
- 「Can Dogs Eat Onions?」(American Kennel Club)
- 「Toxicology Brief: Allium species poisoning in dogs and cats」(DVM360)
- 「Some food toxic for pets」(NCBI)
獣医師相談のインスタライブ開催中!

ペトコトフーズのInstagramアカウント(@petokotofoods)では、獣医師やペット栄養管理士が出演する「食のお悩み相談会」を定期開催しています。愛犬のごはんについて気になることがある方は、ぜひご参加ください。
アカウントをフォローする
この記事の監修者
ニック・ケイブ(Nick Cave)獣医師
米国獣医栄養学専門医・PETOKOTO FOODS監修
マッセー大学獣医学部小動物内科にて一般診療に従事した後、2000年に獣医学修士号を取得(研究テーマ:犬と猫の食物アレルギーにおける栄養管理)。
2004年にはカリフォルニア大学デービス校で栄養学と免疫学の博士号を取得し、小動物臨床栄養の研修を修了。同年、米国獣医師栄養学会より米国獣医栄養学専門医に認定。
世界的な犬猫の栄養ガイドラインであるAAFCOを策定する WSAVA の設立メンバーであり、2005年より小動物医学および栄養学の准教授としてマッセー大学に復帰。
家族とともに犬2匹・猫・ヤモリと暮らしながら、犬猫の栄養学の専門家として研究・教育に携わっている。