犬の包皮炎|原因や症状、治し方を獣医師が解説
包皮炎はオス犬の陰茎やそれを包む包皮の内側粘膜が赤く炎症を起こした状態のことで、匂いや膿、血尿といった症状が見られます。原因は細菌感染であることが多く、自然治癒することもありますが陰部を消毒したり被毛をカットしたり、清潔にすることが大切です。包皮炎の治し方や洗浄方法について、獣医師の佐藤が解説します。
犬の包皮炎とは
包皮炎とは、犬の陰茎(ペニス)やそれを包む包皮の内側粘膜が炎症を起こした状態を指します。犬は草むらで遊んだり地面に横たわったり、清潔にしようと自分で舐めたりすることで細菌感染しやすく、包皮炎は珍しいことではありません。成犬でよく見られますが、子犬やシニア犬(老犬)で見られることもあります。
多くは軽症で、飼い主さんが気づかないうちに自然治癒していることも少なくありません。犬が陰茎を舐めること自体は正常な生理的反応ですが、過剰に舐めたり痛がっていたりすると炎症が悪化してしまいます。その際は早めに動物病院で診てもらうようにしてください。
犬の包皮炎の症状
包皮炎の初期では陰部から臭いがしたり、黄色や黄緑色の膿が出るようになったりします。抱っこした時にクリーム状の膿が服に付いたり、座っていた場所に跡が残ったりして飼い主さんが気づくことも多いです。さらに悪化すると血がにじんだり、血尿が見られるようになります。包皮炎では、以下のような症状が見られます。
- 臭い
- 炎症・赤くなる
- 膿が出る
- 血がにじむ・血尿が出る
- 陰部を過剰に舐める
- 排尿トラブル
- 痛み
包皮炎は膀胱炎が原因となって起こる場合もありますが、逆に包皮炎から細菌感染が広がり、膀胱炎が起こる場合もあります。
犬の包皮炎の原因
包皮炎はさまざまな原因によって起こりますが、最も多いのは日和見(ひよりみ)感染です。犬の陰茎は包皮に覆われた「包茎」の状態が正常であるため、汚れが溜まりやすい上に通気性が悪く、細菌が繁殖しやすい環境にあります。
何らかの原因で免疫力が落ちたり衛生状態が悪化すると、細菌やウイルス、真菌(カビ)などが異常に増殖し、炎症を起こすのです。具体的には、以下のような原因で炎症を起こす可能性があります。
- 外傷(事故、打撲、ヘビに噛まれた、蜂に刺された)
- 腫瘍
- 異物
- 尿路感染
- 尿路結石
- 陥頓包茎
- アトピー性皮膚炎
陥頓(かんとん)包茎とは、陰茎が包皮で覆われる状態に戻らなくなった状態のことです。多くは被毛が絡まって起こります。うまく戻せれば問題ありませんが、戻せないまま時間がたってしまうと血行障害が起こって浮腫ができてしまいます。ご自宅での対処が難しい場合は、早めに動物病院で診てもらうようにしてください。
犬の包皮炎の治療法
包皮炎は病気ではなく何か原因があって起きた炎症であるため、治療はその原因ごとに異なります。軽度であれば自然治癒を期待して様子を見る場合もありますが、まずは消毒をして衛生状態を良くすることが大切です。長い被毛が衛生状態を悪化させている場合は陰部の周辺をカットして風通しを良くします。
炎症がひどい場合は抗生剤を使用します。包皮炎が重症化することはまれですが、適切な治療を行わずに膿瘍(のうよう、膿が溜まった状態)ができたり組織が壊死するほど進行したりした場合は緊急性が高く、陰茎の切除手術を行います。
包皮炎の洗浄方法
包皮炎では陰部の衛生状態を良くすることが基本的な治療になります。病院では滅菌した生理食塩水で洗浄しますが、ご家庭では精製水でもかまいません。陰茎と包皮の間にきれいな水を入れて洗うのが理想ですが、飼い主さんが行うのは難しいと思います。無理に行うと事故につながる恐れがありますので、必ず獣医師の指示に従うようにしてください。消毒ということでマキロンやゲンタシンを塗ろうとする飼い主さんもいるかもしれませんが、飼い主さんの判断では行わないようにしてください。