犬の蚊対策とは? フィラリアや予防薬について獣医師が解説

犬の蚊対策とは? フィラリアや予防薬について獣医師が解説

夏は熱中症だけでなく、虫にも注意をしなければなりません。「蚊」「ノミ」「マダニ」が活発化し、感染症を引き起こすことで命の危険にさらされる可能性があるため、犬にとって過酷な時期といえるでしょう。愛犬のためにも適切な対策をして、病気を未然に防ぎましょう。今回は犬の蚊対策について、目黒アニマルメディカルセンター/MAMeCの顧問獣医師の佐藤が解説します。

犬が蚊に刺されたときの症状

本を読む犬

犬も人と同じように蚊に刺されますが、人のように刺された部分が膨らんで痒くなるようなことは一般的ではありません。

もっとも犬の場合、皮膚が毛に覆われているため、膨らみを発見すること自体がまれです。

発症する可能性のある病気

犬糸状虫症(犬フィラリア症)

フィラリア虫体
フィラリア虫体(提供:たかお動物病院

心臓内のフィラリア寄生
心臓内のフィラリア寄生(提供:たかお動物病院

フィラリアとは

フィラリアとは、乳白色、そうめん状の線虫で、成虫になると体長がオスで12〜18cm、メスで25〜30cmになります。

成虫が心臓の肺動脈に寄生し、増殖すると肺動脈の前にある右心室にまで影響を及ぼすことになります。

フィラリア寄生時の症状

フィラリア症の病態は「成虫の寄生数」「感染期間」で症状が異なることがあります。

感染した犬の多くの初期症状は無症状です。

感染期間などの要因が重なることにより、以下のような症状が見られる場合があります。

  • 発咳
  • 呼吸困難
  • 運動不耐性

次に「腹水」「むくみ」などが現れ、その他に「湿疹」「虚脱」などを招き、最悪の場合には、喀血を伴って死亡します。


蚊刺症

蚊に刺されることにより起こるアレルギー性の皮膚炎です。

ニキビのような丘疹(きゅうしん)という赤い膨らみや、発疹ができます。お腹などの毛が少ない部位に見られることが多いです。

愛犬が蚊に刺されないための予防策

窓から外を見る犬

薄手の洋服を着させる

蚊の予防策としては、人と同様に洋服を着せることです。なるべく、手足も隠れるものが理想ですが、夏なので、熱中症に気をつけましょう。

防蚊素材の服がオススメです。

ペット用虫除けスプレーを使用する

アロマやハーブなどを原料にした、ペット用虫除けスプレーを使用することも1つの手です。

アロマやハーブは薬剤ほど蚊が近寄らせない効果が強いとは言えませんが、ペットに使うには安心です。

薬剤はペットには刺激が強すぎて体調が悪くなる可能性があります。植物由来成分の虫除けスプレーを使用するのがいいでしょう。

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室内の蚊を退治する

  • ペット用蚊取り線香を使用する
  • 空気清浄機を使用する

蚊取り線香は、動物用の蚊取り線香を使用し、製品の使用上の注意をよく読んでから使用しましょう。

また、最近では虫取り・蚊取り機能のついた空気清浄機も販売されているため、そういったグッズの購入も検討してみてください。

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フィラリア症の予防方法

海辺で座る人と犬

予防薬とは

フィラリア症にならないためにできることは「毎月1回の投薬」もしくは「年に1回の注射」です。

この予防薬は、蚊に刺されることを予防するのではなく、体に入り込んだフィラリアを駆除するという意味での予防薬です。

投薬の直前までに、体内に入ったフィラリアを駆除します。

「予防薬」と言うだけに、「薬を飲んだ後1カ月は蚊に刺されない」という認識の方がいますが、これは間違いです。

蚊がいなくなったように思えても、前回の投薬後にフィラリアの幼虫が体内に入っていれば、次の年にはフィラリアの虫が成長している可能性もあります。

蚊がいなくなった季節も12月頃までは、投薬を継続するように心がけてください。

投薬の頻度

地域によって推奨される投薬期間は異なりますが、5月〜12月頃まで投薬を継続するようにしましょう。

かかりつけの獣医師と、投薬期間の相談してみてください。

また、蚊に刺される可能性があれば、0歳から投薬をする必要があります。

犬が蚊に刺されたときの対処法

診察を受ける犬

蚊に刺されたことによる痒みなどの症状が部分的であれば、ステロイドの外用薬を塗ることが良いと思います。

しかし症状が全身的や広範囲にわたるのであれば内服薬が必要になります。偶然にも蚊に刺されたところを見ていればどこが刺されたかわかりますが、通常は普通の湿疹との区別がしづらいと思います。

痒がっている部分を掻き壊してしまう場合は、エリザベスカラーをつけて二次的な被害を避けることも必要です。

まとめ

野原で笑顔の犬

犬が蚊に刺されると人間のように赤く膨らむことはまれ
犬が蚊に刺されると、主にフィラリア症や蚊刺症を引き起こす恐れがあります
フィラリア症を予防するためには毎月1回投薬をするだけです
投薬期間は5月〜12月頃です

現在、犬で蚊による問題はアレルギーとフィラリア症です。

人の蚊による媒介感染症を見てみると、世界的に有名なマラリアだけでなく記憶に新しいデング熱やジカ熱などがあります。

犬の場合も、このような未知なる感染症が無いとは言い切れません。蚊に刺されない努力をすることはもちろん、刺された場合の対処を行うことは、とても重要です。


参考文献

  • 津田良夫,蚊の観察と生態調査,北隆館,東京, 2014
  • Fox PR, Sisson D, Moise NS: Textbook of Canine and Feline Cardiology, 2nd ed, 624-640, WB Saunders, Philadelphia (1999)
  • 田中和夫(平嶋義宏,森本 桂監修),カ科,新訂 原色昆虫大図鑑III,北隆館,2008
  • 内田桂吉,蚊はなぜヒトや動物の血を吸うのか,化 学と生物学,36,168 ‐ 172,1998
  • 佐伯英治 , 蚊の生態と衛生害虫としての蚊の存在
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