【獣医師執筆】猫は馬肉を食べても大丈夫!栄養成分や与える際の注意点を解説
猫も馬肉を食べることができます。馬肉はたんぱく質が豊富で低カロリーなことから、美容や健康にも良いとされています。今回は馬肉に含まれている栄養や猫が馬肉を食べる際の注意点、馬刺しなどの生肉を食べる危険性などについて紹介します。
猫は馬肉を食べても大丈夫
猫はアレルギーでない限り馬肉を食べても大丈夫です。馬肉は牛肉や豚肉と比べて、非常に低カロリーでたんぱく質が豊富な食材です。また、グリコーゲン(糖質)が豊富に含まれているため、疲労回復にも効果的です。
猫が食べて大丈夫な馬肉の栄養成分
馬肉(赤身)の成分(100gあたり) | |
---|---|
エネルギー(kcal) | 110 |
たんぱく質(g) | 20.1 |
脂質(g) | 2.5 |
ナトリウム(mg) | 50 |
カリウム(mg) | 320 |
リン(mg) | 170 |
グリコーゲン(mg) | 2290 |
参照:食品成分データベース
たんぱく質(アミノ酸)
たんぱく質は、アミノ酸が鎖状になってできたものです。たんぱく質には動物性と植物性があります。以前は動物性たんぱく質が植物性たんぱく質よりも消化吸収しやすいと考えられていましたが、食品の加工技術により、植物性たんぱく質でも十分に消化吸収が可能になりました。たんぱく質は原材料のまま使用するよりも、加工することで消化性が格段に上がります。例えば、大豆などは良い例です。
たんぱく質は、消化されることで、アミノ酸に分解され、小腸から体内に吸収されます。そのため、肉食動物の猫や、肉食動物に近い雑食性動物の犬にとって、たんぱく質はエネルギー源とされています。
脂質
脂質には体の中でつくることができない必須脂肪酸が含まれており、体の細胞膜やホルモンを作る上では欠かせない栄養分です。ただし、脂質を過度に吸収してしまうと肥満などの原因になってしまいます。ナトリウムとカリウム
ナトリウムとカリウムは相互に作用しながら、細胞を正常に保ったり、血圧を調整したりして恒常性を維持しています。ナトリウムは過剰摂取すると高血圧やガンの可能性が高まります。また、カリウムは過剰摂取してしまうと腎臓の機能に異常を来たす恐れがあります。
リン
リンは歯や骨を丈夫に保ったり、神経や筋肉を正常に保ったりする効果があります。グリコーゲン(糖質)
グリコーゲンは主に動物の肝臓に蓄えられている多糖類のことです。血中の糖分が不足している時など、必要に応じて分解されてブドウ糖に変化します。猫に馬肉を与える際の注意点
栄養満点で猫にも嬉しい成分が多く含まれている馬肉ですが、与え方などを一歩間違えてしまうとデメリットになってしまいます。猫に馬肉をあげる前に、注意点を確認しておきましょう。
与えていい量
馬肉を総合栄養食へのトッピングやおやつとして与える場合、1日の最適カロリー量の10%以内にしてください。馬刺しなどの生肉の危険性
「馬肉は加熱するより生の方がおいしい!」という人が多くいるほど、馬刺しは日本人にとって非常に親しみのある料理の一つです。馬肉に限らず、生肉には酵素が多く含まれているため猫にあげると、毛艶がよくなる効果が期待できます。生肉は嗜好性が高く、餌に対する食付きがよくなることもあります。馬肉は牛肉や豚肉に比べるとO157(腸管出血性大腸菌)やサルモネラ属菌などの大腸菌が検出されにくいという特徴があり、これが他の動物の刺身よりも馬刺しが一般的な理由です。
だからといって、加熱用の馬肉を猫に生であげてもよいということではありません。生肉には、大腸菌による食中毒だけでなく、ザルコシスティス・フェアリーという寄生虫の危険性もあります。
ザルコシスティス・フェアリー
ザルコシスティス・フェアリーとは、主に犬と馬に寄生する寄生虫です。人間に対しては感染はするものの、寄生はしません。猫に対して寄生するかどうかはまだデータがありませんが、国内では馬刺しを食べた人がザルコシスティス・フェアリーに感染し、下痢や嘔吐などの症状を訴えたという事例もあります。この寄生虫は以下のような冷凍処理をすることで死滅することが分かっています。
- −20度(中心温度)で48時間以上
- −30度(中心温度)で36時間以上
- −30度(中心温度)で18時間以上(急速冷凍装置を用いた場合)
- −40度(中心温度)で18時間以上
- 液体窒素に浸して1時間以上
猫に生の馬肉をあげる際は、冷凍処理されている商品を選ぶようにしてください。
馬肉アレルギー
馬肉アレルギーに限った話ではありませんが、生まれつきの体質による先天性のアレルギーと、長い期間同じ食材を食べて発症してしまう後天性のアレルギーがあります。馬肉は牛肉や豚肉に比べると、低アレルゲンの食品といわれていますが、馬肉アレルギーを持っている子もいるので最初は少量を食べさせることからスタートさせてあげましょう。食物アレルギーには、生まれつきの体質による先天性アレルギーと、長い期間同じ食材を食べることで発症する後天性アレルギーがあります。
初めて食べる食材を与える際は少量からスタートさせてあげましょう。アレルギーには以下の症状になる可能性が挙げられます。
- 下痢
- 嘔吐
- 皮膚の痒み
- 元気がない
- 目の充血
上記のような症状があれば、すぐにかかりつけの獣医師に相談しましょう。一方で、アレルギーテストで陽性が出たから食べられないと思う飼い主さんも多いですが、それは間違いです。症状が出ていなければ食べさせても問題ありませんので、特定の食材を食べさせてアレルギー反応が出るか確認してみてください。
腎不全などの腎臓に疾患を持っている場合
馬肉などのたんぱく質が豊富な食材は、猫にとって悪影響になる場合もあります。猫がダイエットをしていたり、皮膚の健康を促したりする場合は、たんぱく質を摂取することは効果的です。しかし、腎不全や慢性腎臓病などの腎臓に疾患を抱えている場合にたんぱく質が豊富な食材を摂取してしまうと、病気の症状が悪化してしまう恐れがあります。
腎臓病に関して詳しくは、以下の記事をご覧ください。
猫は馬肉を食べても大丈夫!
馬肉アレルギーを持っていない限り、猫は馬肉を食べても大丈夫です。肉食動物である猫はタンパク質の必要量が多くなりますが、炭水化物も摂ることで効率的にエネルギーを生み出すことができます。何かだけを食べる偏った食事ではなく、バランスの良い食事を心がけましょう。
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