「ペットに遺贈する」が当たり前になる社会へ アニマル・ドネーション西平代表インタビュー

愛犬・愛猫は自分が看取る――無意識のうちに、それが当たり前だと思ってはいませんか? 犬や猫は人間より寿命が短いとはいえ、飼い主がペットを看取れるとは限りません。もし交通事故に遭ったら? 心臓発作を起こしたら……? 人間がペットより早く亡くなることは、十分に起こり得ることなのです。実際、飼い主が先に亡くなってしまったために保護される犬や猫も多くいます。

公益社団法人「アニマル・ドネーション」は今年8月から、個人から受けた遺贈を動物関連の非営利団体に寄付する取り組みを開始しました。取り組みを始めた背景や、それに込められた思い、これからの展望などを、アニマル・ドネーションの代表を務める西平衣里さんにお聞きしました。(取材:薄井慧)

「遺贈」って、ペットにはできるの?

「遺贈」とは遺言により自分の遺産を誰かに譲ることで、配偶者や子どもなどの家族や親族、慈善団体などへの遺贈が一般的です。ペットを飼っている方は、自分の死後に残されるペットのことを想ってペットを遺贈先にしたいと考えるかもしれません。しかしペットは法律上は「モノ」扱いですので、直接遺贈することはできません。

飼っていたペットのために自分の遺産を使いたい場合は、信頼できる人に遺産を相続し、その人にそのペットの世話を頼むなどの形を取る必要があります。このような仕組みを活用すれば、飼い主本人がペットの面倒を見られなくなった場合もペットが放置されることはありません。

死別に限らず、認知症になったり、入院してしまったり、ペット不可の施設に入るなど、飼い主本人がペットの面倒を見られなくなることは十分に起こり得ます。そのような場合のため、近年ではペットと一緒に暮らせる老人ホームなども登場しています。老後になってペットを自分で世話できなくなったとしても、「愛するペットと一緒に過ごす」という選択肢を選べるようになってきています。

キモチをカタチに。アニマル・ドネーションの取り組み

アニマル・ドネーションは、個人や企業から寄せられた寄付を、動物保護団体「Wonderful Dogs」や「東日本盲導犬協会」などの非営利団体に届ける中間支援組織です。寄付を通した支援の他にも、セミナー事業やリサーチ事業なども行っています。

これまでに2754人の個人と822団体から寄付がされており、寄付総額は8401万2892円(2017年11月6日時点)にのぼります。寄付は、公式ホームページからオンライン上で簡単に行うことができます。

設立当初は個人からの寄付がメインとなることを想定していたものの、現在の寄付は8割が企業からのものとのことです。寄付文化があまり浸透していない日本では、個人が寄付の仕方を知らないだけでなく、企業もまた知らないケースが多いのだといいます。

インタビュー:アニマル・ドネーション代表 西平衣里さん

アニマル・ドネーションが今年8月から開始した動物関連の非営利団体に遺贈を寄付する取り組みについて、アニマル・ドネーションの代表を務める西平さんに伺いました。

アニマル・ドネーション代表 西平衣里さん
アニマル・ドネーション代表 西平衣里さん

遺贈で、自分の遺産をペット支援に

Q. 今年8月から「遺贈」の意味合いで動物関連の非営利団体に寄付する取り組みをスタートしました。どのような仕組みなのでしょうか?

遺贈に関してはまだこれからという部分が大きいので、将来も含めという話でさせていただきますね。

アニマル・ドネーションの遺贈に関する取り組みは2種類あります。どちらも、アニマル・ドネーションがお金を頂き、それを支援団体さまにお届けするといったものです。一つは自分の遺産を動物のために残す遺贈で、もう一つは、自分が誰かから相続した遺産、つまり他の誰かの遺産を動物のために残す遺贈です。

前者では自分が亡くなった時、後者では自分が相続した遺産をアニマル・ドネーションに渡した時に、アニマル・ドネーションの支援団体さまに寄付金が届けられるといった感じですね。現在は、残された愛犬・愛猫など特定の動物への遺贈は取り扱っていません。

アニマル・ドネーションを介して遺贈することの大きなメリットとして、アニマル・ドネーションは公益社団法人なので相続した遺産を寄付した場合、相続税がかからないという点があります。また、遺贈は明日発生するかもしれないし、10年後に発生するかもしれない話です。つまり長く続く組織しかサポートすることができないのです。そういった意味では、アニマル・ドネーションも続いていかなくてはいけません。

アニマル・ドネーション代表 西平衣里さん

イギリスなど遺贈の仕組みがきちんとできている国もありますが、日本はまだまだです。慈善団体などに遺贈する人は数%ですし、「自分の子どもに残したくないからNPOにあげたい」といったネガティブな理由も多いんです。ましてやそれが動物関係になると、本当にまだ更地というか白紙というか。これから、という状態です。

でも海外のNPOの収支を見ていると遺贈の割合が多くて、特にアメリカ、イギリスなどは遺贈の占める割合が大変大きいです。動物と生きた豊かな時間を振り返って、自分の遺産を「残された動物や将来の動物福祉に託したい」という方が多いんです。日本もいずれそうなっていくだろうと思って、この仕組みを作りました。

これからは、「シェルター基金」とか老犬・老猫の「シニアレスキュー基金」とか、遺贈が何に生かされるのかが分かるように基金を作って、「私の遺贈はこの基金にいくら、この基金にいくら」みたいに割り振れるような仕組み作りをしていきたいと考えています。

Q. この取り組みの構想はいつごろからあったのですか?
実はアニマル・ドネーションを立ち上げたころからありました。もともと現在メインの活動になっている寄付事業の延長に、遺贈事業を想定していました。アニマル・ドネーションをNPOではなく一般社団法人としてスタートさせたのも、のちのち遺贈事業に取り組みやすい公益社団法人の法人格を取得するためでした。

遺贈をするには何をすればいい?

アニマル・ドネーション代表 西平衣里さん

Q. 遺贈する場合、何をすればいいのですか?
まずは、公正証書のようなものを書きます。私も見本をいくつか見たことがあるんですが、案外簡単なんですよ。シンプルに、自分の死後について自分の意思を残すんです。アニマル・ドネーションに遺贈する場合は、「自分が死んだ時は、遺産のいくらを公益社団法人アニマル・ドネーションに寄付する」というのをきちんとした証書にしていただきます。その内容は随時変更できるので、そこの手間を惜しまないのであれば、今の時点で考えられることを書いておいて準備しておくというのがいいですね。どんな方でも、明日交通事故に遭って亡くなるかもしれないのです。

Q. それは、個人が書いただけで効力が発生するのですか?
個人が書いたものでも効力は発生しますが、専門の方々の力を借りてきちんとした形式の文章にしておいた方が安心ですね。アニマル・ドネーションでは、動物業界にとても詳しい税理士や弁護士さん、行政書士さんとネットワークを作りました。ですので、「なにをしたらいいのか」のご相談から応じることができます。お声掛けいただければと思います。

Q. 今後、残された愛犬・愛猫のためになるような遺贈は取り扱う予定ですか?
やりたいですね。これから2年以内くらいには始めたいと思っています。それをやるためにいろいろ準備していました。遺贈される方に何かがあったとき、生活の保障や新しい飼い主さん探しをアニマル・ドネーションがサポートしたいと思っています。

ありがとうございました。

関連記事

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

今日のアクセスランキングトップ10

今月のアクセスランキングトップ10