犬の値段はどう決まる?高い・安い理由や犬種別の相場を解説
昨今はコロナの影響でペットを迎える方が増え、犬の価格が高騰傾向にあります。そもそも犬の値段は誰がどのように決めているのでしょうか。今回は、犬の値段の決め方や、ブリーダーが犬を育てる際にかかる費用などを解説します。
犬の値段が決められるまで
子犬がペットショップに来るまで
「保護犬」という言葉が最近では耳にするようになりましたが、日本のペット(犬)の80%ほどはペットショップから迎えられています。ブリーダーから直接譲り受けるケースは、20%以下です。そのため、ペットの価格相場は市場の大多数を占めるペットショップがリードしているのが実状です。
通常のペットショップは自社で繁殖を行わず、ブリーダーが繁殖した子犬を仕入れて店頭で販売しています。犬のオークション(せり市)から仕入れをしているペットショップも多数存在します。
多くのブリーダーは直接的な販路を持っていないため、これらの流通を介して販売することで成り立っています。
子犬の金額設定
犬種や子犬のクオリティーにより異なりますが、ペットショップの仕入れ価格はおおむね5~10万円程度が多く「仕入れ価格」「事業者の独自の基準」「相場観」を目安に、子犬の金額設定をされることが多いでしょう。オークションでの仕入れの場合は、更に仕入れ価格が低価格となり、通常でも5万円前後、出展頭数が多いときは1万円を切ることもあります。
このような低価格での卸売りが、医療費や良質な親犬の確保などのブリーダーの飼育コストを圧迫し、質に問題がある子犬が流通するといった、弊害の温床につながっているともいわれています。
ペットショップとブリーダーの価格の違い
繁殖しているブリーダーから子犬を直接購入すれば、仕入れ販売を行っているペットショップよりも価格が安いと考える方がいるかもしれません。しかし価格の差は「ブリーダー」と「ペットショップ」の違いというより、事業者の販売方針による違いから生まれています。
ペットの生体は、明確な価格基準や定価があるわけではないため、来店する顧客層に合わせた価格帯を考慮して価格を決めているケースがほとんどです。
多数の犬を販売している大手ペットショップの相場観を考慮して、その事業者の独自の基準で販売が成立する価格を設定しているのです。
子犬の価格は、飼育コストなどの原価主義ではなく、売れる価格を考慮した市場主義で決定しているわけです。
ブリーダーが犬を育てる際にかかる費用
一般的にブリーダーが犬を育てる際にかかる費用は大まかに「環境整備・飼育費用」「広告用費用」「血統管理費用」があります。
環境整備・飼育費用
健全な子犬を生み出すためには、望ましい環境を整備する必要があります。それにはある程度のコストをかけることが必要です。一般的な飼育費用として、以下のようなものが挙げられます。
- 感染予防や健康診断、治療に関する医療費
- フードやトイレシートなど、飼育に必要な消耗品
- 血統証明書の登録費用
- 飼育員の人件費
- 水道光熱費
- 飼育施設を整備する費用
広告用費用
子犬を迎える家庭への直販を主としているブリーダーの場合、上記の飼育費用に加えて、子犬を販売するために以下の費用が掛かります。- ホームページの作成や保守の費用
- ウェブ広告費や子犬販売のポータルサイトに支払う費用
- 子犬の撮影費用
血統管理費用
優良なブリーダーは健全で質の高い子犬を出生するため、他のブリーダーから高額で質の良い親犬を迎えることもあります。あるいは、問題のある家系には繁殖を行わず、その血縁も残さないなどの厳格な血統管理を行うためのコストも伴います。
子犬にかける費用はブリーダーの考え方次第
ブリーダーが子犬にかける費用は、それぞれのブリーダーの体制や飼育の考え方によって大きく異なります。
飼育費用が安価の場合
「パピーミル(子犬工場)」と呼ばれる、劣悪な環境で手を掛けずに繁殖を行えば、費用は最小限で済むことになります。医療費も掛けず、掃除もしない。あるいは、子犬を産ませられるだけ産ませるなどの乱繁殖を行うことも、そのブリーダーの考え方によります。
飼育費用が高価の場合
親犬を家庭犬のように手を掛けて大切に扱い、のびのびとした環境を備えているブリーダーもいます。この場合、パピーミルと正反対で、医療費やこまめな掃除のための人件費もかかっています。子犬の飼育に対する考え方により、飼育コストに大幅な違いが生じます。
一概には言えませんが、健康で社会性が身に付いた健全な子犬1匹を生み出すためには、最低でも10~15万円程度の費用がかかるのではないかと考えられます。
犬種別の標準的な価格(相場)
ブリーダーやペットショップの体制や方針、質の査定基準によって大幅に異なりますが、毎年人気犬種にランクインする10犬種の価格を目安として記載します。
- トイプードル/30~50万円(価格差が大きい)
- チワワ/15~25万円
- ミニチュアダックスフンド/20~30万円
- ポメラニアン/20~30万円
- 柴犬/15~40万円(価格差が大きい)
- ヨークシャーテリア/20~35万円
- ミニチュアシュナウザー/12~23万円
- シーズー/10~20万円
- フレンチブルドッグ/30~50万円(価格差が大きい)
- マルチーズ/15~20万円
- 一代雑種(MIX犬)/10~15万円
※上記は、子犬の標準価格目安です。購入場所により付帯費用が異なるため、実際の価格は異なることがあります。
犬種によって値段が違う理由
犬種によって評価基準がある
犬種により質の評価や価値基準が異なりますが、トイプードルの場合、おおむね以下の表のような基準で査定しています。同じ犬種で値段が違う理由
それぞれの犬種によって人気が高い査定のポイントがあり、その基準と照らし合わせて、多くの条件が整うほど高額になります。
従って、子犬選びの際により完璧な個体を求める場合は、相応の予算が必要になります。
主な評価観点
子犬の価格査定は、健康リスクなど生命体としての優位性を評価する観点と、美観を評価する観点から評価されます。ペットを迎える上で、前者はとても重要な要素であり、遺伝的リスクが高い個体は、病気の発症リスクが高まることから、子犬選びの際、最も重要な要素となります。
後者は、人間が犬をペットとして見たときの愛らしさや美しさといった観点であり、生物学的な優劣ではありません。
飼い主の嗜好が集まる、いわゆる人気のタイプであれば需要が高く、高額となります。
低価格には理由がある
ペットショップやブリーダーも収益事業であるため、評価が高い人気タイプを、理由なく低価格で販売することはありません。低価格にする理由があるからこそ低価格となっているわけです。そのため、あまりにも安い価格を表示している場合は、少し注意が必要かもしれません。
犬の値段が変動する条件
同じような子犬であっても、市場環境によって価格が変動することがあります。これには、犬の生体市場の80%を占めるペットショップの査定価格が、各犬種の価格変動に大きな影響を与えています。
人気の犬種で、供給量に比べて需要が大きければ、価格は高騰していきます。反対に供給量がダブついていれば、価格は低下します。
このような需要と供給の状況によって、犬の販売価格は緩やかに変動しています。
まとめ
ブリーダーが健全な子犬を育てるのは、ある程度の費用がかかります
犬種によって、質の評価やその基準が異なるため、値段も変わります
飼育コストをかけていないブリーダーには注意が必要です
犬の価格はそれぞれの事業者の考え方によるところが大きいため、高ければ質が良いということではなく、安いから病気のリスクが高いということでもありません。
ただ、望ましい環境で子犬を生育するためには、相応のコストがかかります。相場を大幅に下回る場合は、その理由をよく確認し、慎重に判断することをお勧めします。