【獣医師執筆】猫は魚を食べても大丈夫?栄養成分や与える時の注意点を解説

【獣医師執筆】猫は魚を食べても大丈夫?栄養成分や与える時の注意点を解説

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猫は魚も食べても大丈夫ですが、「猫は魚が好き」という考え方は、実は島国である日本特有の感覚で、海外では一般的ではないようです。食べる量によっては体に悪影響を及ぼしてしまうことも分かっています。「絶対に与えてはいけない食材ではない」ことと、「与える際にはいくつか注意点がある」ということを踏まえながらこの機会に確認していきましょう。

前提として、猫は総合栄養食のキャットフードを食べていれば、それ以外は与える必要がありません。

「猫は魚が好き」は間違い?

魚をくわえた猫

「猫=魚」というのは日本独自の考え方です。日本は海に囲まれた島国なので、漁で獲れた新鮮な魚を猫におすそ分けする光景は珍しくありません。

しかし猫は基本的に肉食動物なので、昔はネズミなどの小動物を狩って食べることで栄養補給をしていました。港に住み着く猫は常に魚を食べていることも鑑みると、魚は絶対に与えてはいけない食べ物というわけでもありません。しかし量をコントロールしないと悪影響を及ぼす可能性があることを認識しておきましょう。


魚の主な成分

魚

まずは魚の基本的な成分を見ていきます。魚はDHAやEPAなど動脈硬化や脳の働きをサポートする不飽和脂肪酸や、消化しやすいタンパク質などさまざまな栄養素を含有しています。しかし中毒を起こす可能性や寄生虫を保有している可能性も踏まえて与える必要があります。

DHA

オメガ3の不飽和脂肪酸の一つで、皮膚粘膜の健康を保ち脳の働きを活発にしてくれる役割があります。認知症予防にもなるので、積極的に取り入れたい栄養素の一つです。

EPA

魚に多く含まれている不飽和脂肪酸です。EPAが血中に血栓ができるのを防ぐことで、血栓の詰まりが原因となりやすい心筋梗塞や脳梗塞になる確率を下げてくれます。

タンパク質

魚が持つ動物性のタンパク質は肉のタンパク質よりも消化しやすく、アレルギーのある猫にとって重要なタンパク源になります。

カルシウム

しらすやわかさぎなどの小魚にはカルシウムが豊富に含まれています。骨や関節を健康的に保つのには欠かせない栄養素です。

タウリン

タウリンはアミノ酸の一種です。動脈硬化や貧血、視力の低下などを予防する効果が期待されます。またコレステロール値を低下させ肝機能を強化する働きがあります。

赤身魚、白身魚、青魚

魚には赤身魚、白身魚、青魚という種類があります。しかし「どのような分類方法が基準になっているのかよく分からない」という方も多いのではないでしょうか。それぞれ特徴があるので覚えておくと猫にご飯を作る時に役立つかもしれません。

赤身魚

マグロやカツオが有名です。赤身魚は身の筋肉が色素タンパク質によって赤く見えるため赤身魚と呼ばれています。赤身魚は寝ている間も常に泳ぎ続ける魚のため、持久力が必要になってきます。そして泳ぎ続けるためにはヘモグロビン、ミオグロビンという色素タンパク質が必要なのです。


白身魚

鯛やヒラメ、カレイなどが有名です。岩礁などでじっと隠れていることが多い魚なので赤身魚に比べ色素タンパク質の量が少ないです。また高タンパク低脂肪な食材のためダイエットにも適しています。

鮭は赤身魚と思われがちですが、実は白身魚の分類です。鮭の身が赤く見える原因は色素タンパク質ではなくアスタキサンチンという色素が原因で、カロテノイドという抗酸化作用のある色素物質の一種なのです。


青魚

青魚は赤身魚や白身魚とは異なり、背中の青みなど表面的な色が判断基準になっています。そのためマグロなどは赤身魚であると同時に、青魚でもあるということになります。青魚にはその他イワシや鯖、サンマなどが挙げられ、DHAやEPAなどの不飽和脂肪酸、タウリンなどが豊富に含まれています。

不飽和脂肪酸は体内で分解する際にビタミンEをたくさん消費してしまいます。そのため青魚をたくさん与え過ぎてしまうとビタミンEが不足し、筋肉が衰えたり毛並みが悪くなったりしてしまいます。

猫に魚を与える際の注意点

魚をくわえる猫

猫に魚を与えたい場合は注意点をしっかりと確認して準備するようにしましょう。日本には「猫=魚」という認識が広がっているので、手放しで与えていいものではないという認識が必要です。

魚の骨に注意

人間であれば多少の魚の骨は噛み砕いて食べてしまう人もいるかもしれません。しかし猫は「骨があったら大変だからよく噛んで食べよう」と心掛けてはくれません。

魚の骨は小さく、勢いよく食べている時に口や喉を傷つけたり、胃腸に負担をかけてしまったりする恐れがあります。最悪の場合胃腸を傷つけ動物病院で治療が必要になってしまうこともあるので、骨は取り除いてから与えるようにしましょう。

アレルギーに注意

お肉や乳製品と同じように、魚も食物アレルギーを引き起こす可能性があります。

魚入りのフードはタンパク源としてよく売り出されていますが、魚によってはアレルギーを発症させる場合もあるため、初めて与える時は少しの量にして、下痢や嘔吐などの症状がないか注意してあげるとよいでしょう。

黄色脂肪症

黄色脂肪症とは猫の腹部など皮下脂肪が酸化し炎症を起こしてしまう症状を指します。主な原因としては不飽和脂肪酸の過剰摂取といわれています。

魚には多くの不飽和脂肪酸が含まれているので、与えすぎると黄色脂肪症を引き起こしてしまいます。日常の食事に魚を取り入れている際に猫が腹部を触られることを嫌がったり、歩き方がおかしかったりする時は病院に連れて行きましょう。

ヒスタミン食中毒

ヒスタミン食中毒はヒスタミンという物質を含有している魚を摂取することによって発症する中毒です。魚がもともと持っている「ヒスチジン」という物質が、細菌の持つ脱炭酸酵素の働きよって魚肉内で「ヒスタミン」を生成します。

魚を常温で放置することによって細菌が増殖するので、必然的にヒスタミンの生成される量も多くなり中毒を起こす確率が高くなります。

ヒスタミンは熱にとても強いため一度ヒスタミンが生成されてしまうと熱処理によって分解することは困難になります。予防策として新鮮な魚を購入することを心掛け、常温の状態で放置などしないようにしましょう。ヒスタミン食中毒になると摂取後2〜3時間で以下のような症状が出ると言われています。

  • 下痢
  • 嘔吐
  • 舌や顔の腫れ
  • 蕁麻疹
  • めまい

アニサキス寄生虫

アニサキスは寄生虫(線虫)の一種で、サバやイワシ、カツオ、鮭、イカ、サンマ、アジなどの魚介類の内臓に寄生します。鮮度が落ちると内臓から筋肉に移動し、生の状態で食べることで、アニサキス寄生虫が胃壁や腸壁に刺入して食中毒(アニサキス症)を引き起こします。

人間だと嘔吐や激しい痛みを伴い、犬や猫にも同様の症状を起こす可能性があります。アニサキスは熱に弱いので、煮たり焼いたりすればほぼ死滅すると考えて大丈夫です。よく噛むことで生きたアニサキスが体内に入ることを防ぐことができるとも言われますが、猫によく噛ませるのは難しいのでしょう。

与えていい量

魚を総合栄養食へのトッピングやおやつとして与える場合、1日の最適カロリー量の10%以内にしてください。毎日の最適カロリー量はペトコトフーズの「カロリー計算」(無料)で簡単に計算することができます。

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正しい認識で猫に魚をあげよう

魚

日本人が長く思い込んでいた「猫といったら魚」という考え方は悪いわけではありません。しかし黄色脂肪症やアレルギーなどの懸念点があることもしっかりと知った上で、食事に含めることが好ましいでしょう。

なお、本稿は以下の情報を参照して執筆しています。


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