犬が痒がる原因を皮膚科担当獣医が解説 対処法から薬の種類、フードの選び方まで

犬が痒がって起こる皮膚トラブルは少なくありません。その原因は膿皮症やアトピー性皮膚炎、フードアレルギーなどがあり、症状も皮膚が赤くなったり、乾燥したり、脱毛したりさまざまです。今回は、愛犬が痒がる原因・病気や症状ごとの対処法・薬について、「hiff cafe tamagawa」の皮膚科獣医師・久保が解説します。

犬が痒がる場合の症状

伏せる犬

犬が痒みを感じたときに出る行動は、一般的に前足、後ろ足で気になる部位をかいたり、噛んだり、床や壁などにこすりつけたりという行動をします。そういった行動が見られたらどこかが痒いのかもしれません。

皮膚に以下の症状が出ていないかチェックしてみてください。

  • 皮膚が赤い
  • 脱毛
  • 乾燥やフケ、ベタベタしている
  • その他

皮膚が赤い

痒みがある部位では多くの場合、皮膚が赤く炎症を起こしています。痒みにより自らが噛んだり、かいたりすることでさらに傷、炎症を起こし、それがまた痒みを誘発します。

脱毛

皮膚に炎症などの病変が見られないのに痒みが出る場合もあり、犬が噛んだり、かいたりすることで被毛が抜けたり切れたりし、禿げたように見えることもあります。

また、寄生虫の寄生やホルモンの病気では脱毛することがあり、時に痒みをともないます。

乾燥やフケ、ベタベタしている

皮膚病を患っている子は皮膚が乾燥していたり、べたついていたり、フケが多く見られたりします。傷があり出血などをともなう場合はその部位にかさぶたができていることもあります。また

その他

ストレスや欲求不満により、手足の先をひたすら痒いかのように噛み続ける場合があります。

また、痒いところを必死で口で舐めようとすることによって、腸が刺激され、嘔吐してしまう犬もまれにいます。

病気ごとの症状や検査・診断、対処・治療法

犬

犬が痒がっているときに考えられる原因・病気は以下の通りです。

  • 膿皮症
  • マラセチア皮膚炎
  • ノミアレルギー
  • ニキビダニ(毛包虫)症
  • 犬疥癬
  • 犬アトピー性皮膚炎
  • 食物アレルギー
  • 皮膚の腫瘍(皮膚リンパ腫)

膿皮症

皮膚が赤くなっていて痒みがありフケやかさぶたなどが認められる場合は、細菌が増えて炎症を起こしている「膿皮症」が考えられます。

検査・診断

炎症部位の細胞などをスライドガラスやテープで採取し、染色したものを顕微鏡で観察し検査します。そこで炎症細胞、細菌の増殖を確認することで診断します。

対処・治療法

増殖してしまった細菌を除去することで治療します。内服薬として抗菌剤が使われたり、外用薬として抗菌剤、消毒剤、抗菌シャンプーなどが使われます。


マラセチア皮膚炎

皮膚の炎症、痒みに加えて皮膚のベタつきや独特な発酵臭がある場合は、マラセチアというカビの仲間(酵母)が増殖して起こる「マラセチア皮膚炎」が考えられます。

検査・診断

膿皮症の時と同じ様に皮膚炎の部位で細胞などを採取、染色し顕微鏡で検査します。そこでマラセチアの存在を確認することで診断します。

対処・治療法

感染している菌(マラセチア)を除去するために、抗真菌剤の内服薬や外用薬、抗真菌シャンプーなどで治療します。マラセチア皮膚炎が、ある種のアレルギー反応であるとの考えもあり、ステロイド剤が使用されることもあります。

ノミアレルギー

ノミに噛まれることによって起こります。腰のあたり、尻尾の付け根の周辺に炎症と脱毛が見られ、強い痒みが見られる場合はノミの寄生により生じるノミアレルギーが疑われます。ノミアレルギーは、背中の真ん中に症状が出ることが多いです。

検査・診断

特徴的な部位(腰部)に痒みが強い皮膚炎、脱毛、裂毛があり、ノミ取りぐしなどを使用してノミの成虫もしくはノミの糞を確認することで診断します。ノミ予防を正確に行っているかも診断の材料となります。

対処・治療法

ノミの駆虫、寄生予防をすることで治療します。痒みがひどい場合などは、痒み止めなど症状に対する薬を使用します。

ニキビダニ(毛包虫)症

脱毛があり、毛穴に黒っぽい汚れのようなものが詰まっている時はニキビダニ(毛包虫)の寄生により生じる「ニキビダニ症」が疑われます。

検査・診断

毛を抜いたり、皮膚を削り取ったり、時には皮膚のバイオプシー検査(皮膚を一部切り取っての検査)をして、ニキビダニの成虫や卵などを確認する事で診断します。寄生数が少ない時などは検査で確認できないこともあり、治療を行いその反応で診断とすることもあります。

対処・治療法

寄生虫駆除剤(駆虫薬)を使用して治療します。補助療法として薬用シャンプーを合わせて使用することもあります。

犬疥癬(かいせん)

激しい痒みがあり、病変がおなか側や肘、耳の辺縁にある場合、イヌセンコウヒゼンダニの寄生により生じる「犬疥癬(かいせん)」が疑われます。

検査・診断

病変部の皮膚を削り取ったり、病変部位から採取されるフケを集めて顕微鏡で確認し検査を行います。そこにイヌセンコウヒゼンダニの成虫や卵、糞を確認する事で診断します。寄生数が少ない時などは検査で確認できないこともあり、治療を行いその反応で診断とすることもあります。

対処・治療法

寄生虫駆除剤(駆虫薬)を使用して治療します。補助療法として薬用シャンプーを合わせて使用することもあります。


犬アトピー性皮膚炎

年齢が若く(主に6カ月齢〜3歳頃までの発症が多い)、顔や耳、四肢、おなかに痒みが認められ、他の皮膚病が否定される場合は、「犬アトピー性皮膚炎」が疑われます。

ハウスダストや花粉などによって起こり、皮膚に赤みや脱毛などの病変が見られないのに痒みが認められることもあります。特定の時期に症状が悪化する、屋外だと症状が出やすい、家の中だと症状が出やすいなどの規則性があることが多いです。

検査・診断

他の皮膚病がない、もしくは治療されていることを確認しそれでも痒みが残る場合に、血液検査でIgE抗体の上昇を確認することで診断とします。時にIgE抗体の上昇が認められないアトピー様皮膚炎という診断になることもあります。

対処・治療法

基本的に治らない病気なので、痒み症状に対してケアすることで治療します。ステロイド剤や抗ヒスタミン剤、免疫抑制剤などの薬の使用、薬用シャンプー、保湿剤等のスキンケア、食事療法などで痒みをコントロールします。また減感作療法やインターフェロン療法などで治療することもあります。


食物アレルギー

食事やおやつなど口に入れるものに反応して、顔や耳、四肢などに炎症、痒みを認める病変がある場合は「食物アレルギー」が考えられます。

検査・診断

膿皮症やマラセチア皮膚炎、寄生虫の寄生など痒みをともなう皮膚病がないかもしくは治療されていることを確認し、それでも痒みが残っている場合、食事療法(食事制限)をすることで症状の改善が認められたら診断とします。

食事制限は6週間以上、おやつも含めて制限食以外のものは与えずに症状を見る必要があります。血液検査で食物アレルギーの有無を調べることもありますが、必ずしもその検査ですべてが分かるわけではありません。血液検査は、食事を選択するための補助として使われます。

対処・治療法

原因となる食物アレルゲンを除去することで治療します。一般的に療法食(低アレルギーフード)を6週間与え、反応を見ます。その間おやつなど口にするものはすべて制限する必要があります。

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皮膚の腫瘍(皮膚リンパ腫)

ごくまれではありますが、激しい痒みがあり、細菌感染でみられるような病変が認められる場合に「皮膚の腫瘍」が考えられます。

検査・診断

皮膚を一部切り取って病理検査する事で診断されます。年齢や犬種など疑いが強く、他の皮膚病を否定、もしくは治療をしても反応が乏しい場合には、積極的に検査することをおすすめします。

対処・治療法

抗がん剤やステロイド剤、インターフェロン(※)などを使用するが基本的に治療は困難です。

※インターフェロンとは:病原体や腫瘍細胞などの異物の侵入に反応して細胞が分泌するタンパク質のこと

痒み止めの薬

犬

痒み止めとしてよく使われる薬に「ステロイド剤(商品名:プレドニゾロンなど)」があります。痒みを止める効果は良いのですが、副作用が懸念されます。

一般的な副作用としては、「多飲多尿」や「食欲亢進」「体重の増加」特に長期使用などでは「糖尿病」や「肝機能障害」「ホルモン異常」などが認められることがあります。

またアトピーの治療薬として「免疫抑制剤(商品名:アトピカ、主成分:シクロスポリン)」も使用されることがあり、60〜70%のアトピーの犬で痒みを制御する助けになります。

ステロイドよりも効果発現が遅く、有意な治療効果が得られるまで一般的に6週間を必要とします。副作用としては嘔吐、下痢などの消化器症状や、歯肉が腫れてくるような症状(歯肉過形成)、貧血のような症状(骨髄抑制:骨髄の働きを抑制することで血液の産生を抑える)などがあります。

最近痒み止めとして、ステロイド剤よりも副作用が少ないということで「オクラシチニブ(商品名:アポキル)」という薬がよく使われます。

オクラシチニブは犬アトピー性皮膚炎の痒みに対して「経口プレドニゾロン(ステロイド剤)」と同等の即効性があり、同等の高い効果も認められます。

しかし、この薬に関しても副作用がないわけではありません。嘔吐、下痢などの消化器症状や免疫系の抑制による感染症の増悪や腫瘍を悪化させる可能性はあります。

感染症でよく使われる抗菌剤、これも最近では耐性菌の問題があり不必要に使用していると、いずれ抗菌剤が効かない耐性菌が増殖し治療困難になることがあるとされています。

そのため、抗菌剤を使用する前に感受性検査(増殖している菌に対しどの抗菌剤が効き、どの抗菌剤が効かないのかを確認する検査)をしてから薬を選択、使用することが求められています。

どの薬を使用する場合も同様に言えることですが、副作用を示さない薬はないので、基本的に薬を服用する前には副作用のリスクを軽減するために、事前の血液検査などが推奨されます。

また薬の服用に関しては、かかりつけの獣医師の診断、処方を受け、間違っても勝手に服用しないようにしましょう。

各病気に良いフード

おやつの匂いを嗅ぐ犬

食物アレルギーの場合、その子が反応しない適切なご飯を選ばなければ症状は改善しません。逆に適切なご飯の選択ができれば症状の改善、完治が認められます。

基本的に食物アレルギーではない子は、ごはんを変更しなくてはいけないということはありません。ただ皮膚をケアした食事は皮膚、被毛のコンディションを整えるように調整されて作られており、実際ご飯の変更で皮膚病の改善が認められる子もいるので、皮膚にトラブルのある子にはおすすめです。

最近は犬アトピー性皮膚炎の子のためのご飯などもあるので一度獣医師と相談していただくことをおすすめします。


犬が痒がるときの防止策

犬

痒くて掻き続けたり、噛み続けたりすると皮膚がさらに悪化していく可能性があります。そんなとき、物理的な刺激を防ぐため、「エリザベスカラーつける」「洋服を着させる」といったことや、ストレスが原因の可能性が高ければ「抱っこしてあげる」「遊んであげる」ことで気を紛らわせる方法もあります。

上記対策は一時的なものに過ぎず、根本的な解決には獣医師と相談しましょう。

痒みへの予防法

シャンプー中の犬

シャンプー、保湿などの適切なスキンケアをする事で皮膚のコンディションを整えておく事は皮膚病の予防につながります。

しかしシャンプー剤も皮膚のコンディションに応じて適切に使用しないと逆に皮膚を痛めてしまうことがあります。シャンプーのしすぎで皮膚が乾燥したり、シャンプーそのものが合わなくて皮膚炎を起こしたり。どのシャンプー、保湿剤をどのように使用したらいいのか、獣医師の診断のもと適切に処方してもらいましょう。

また、ノミやダニ予防などの適切な寄生虫予防も皮膚病の予防にとってはとても大切なことです。現在は予防薬もスポットタイプの薬や経口薬など多くの種類があります。どの薬が適しているのかも一度獣医師と相談することをお勧めします。

食事管理も大切です。毎日口にするものなので、その子の体に合った、栄養面もしっかりとした食事を選択することは、皮膚病に限らず健康維持に大切になってきます。


引用文献

  • Keith A. Hnilica DVM MS DACVD MBA (著), Adam P. Patterson DVM (著)『SMALL ANIMAL DERMATOLOGY』Saunders,2016/10/3

第3稿:2020年3月4日 公開
第2稿:2017年5月3日 公開
初稿:2016年1月11日 公開
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