
犬が涙を流す原因は?考えられる病気を獣医師が解説
人は悲しいとき、嬉しいときに涙を流すことがありますが、犬は感情で涙を流すことはありません。犬が涙を流していたら、炎症や異物によって目が刺激され、反射性に涙液の分泌が促されていることが考えられます。涙の量は普段通りでも、本来通り過ぎるはずの通路を涙が通過せず多く見えることもあり、涙が増えることで涙やけが引き起こされることがあります。主な症状と原因を目黒アニマルメディカルセンター/MAMeCの顧問獣医師の佐藤が解説します。
犬の涙とは

犬の涙は人と同じく眼球を保護するために分泌されるものです。人は悲しいとき、嬉しいときに涙を流すことがありますが、犬を含む人以外の動物は感情の変化で涙を流すことはありません。まれにあくびで涙が出る犬はいるようです。
涙はほとんどが水分で、無色透明です。犬の場合、下まぶた周辺に涙が付着すると毛の色で茶色に見えることがあります。
犬の涙でチェックすべきポイント

涙は通常、鼻涙管(びるいかん)と呼ばれる細い管を通って鼻の奥に排出されるため、あふれ出ることはありません。
犬が涙を流している場合、目に何かしらの問題が起きている可能性が考えられます。以下に挙げるポイントをもとに、どのような涙かをチェックしてみてください。
赤い涙
赤い涙が流れている場合、血が混じっているか、そもそも涙ではなく血が出ている可能性があります。緊急性が高いと考えられますので、早急に病院に連れて行きましょう。
涙が臭い
犬の涙はほぼ無臭です。「臭い」と感じることがあれば、目の周りの常在菌が影響している可能性が考えられます。常在菌を取り除くことはできませんが、あふれ出た涙をこまめに拭き取ってあげることで繁殖を抑制することができます。両目か片目か
両目から涙が出ている場合は、病気やアレルギーなど体の内側に起きている問題が原因の可能性があります。片目だけ出ている場合は、何かにぶつかったり、ホコリ、虫、ゴミ、シャンプー剤など異物が入って目が傷ついている可能性があります。異物が確認できない場合は、病気の可能性があります。
犬の涙が多いときの原因と考えられる病気

犬の涙が多いときは「産生量の増加」もしくは「通過障害」のどちらかが疑われます。産生量の増加は、炎症や異物によって涙が過剰に作られあふれ出ている状態。通過障害は、涙が鼻へ流れにくくなることであふれ出ている状態です。
炎症による涙の産生量増加
角膜炎や結膜炎だけでなく、ものもらいなどまぶたの炎症により目やまぶたが腫れ、涙が出ることがあります。異物による涙の産生量増加
目にホコリなどの異物が入ることによって、涙があふれます。定期的に異物が付いていないか確認をしてあげてください。濡れたコットンなどで綺麗に拭ってケアしてあげましょう。鼻涙管閉塞
涙を排出するための鼻涙管が閉じていたり、狭くなったりすることで涙があふれます。鼻涙管閉塞は先天性・後天性にわかれます。後天性の場合、結膜炎などの炎症や鼻炎・鼻の腫瘍などが原因になります。
まつ毛の異常
まつ毛の生え方の異常として、以下の3種類があります。- 異所性睫毛(いしょせいしょうもう)
- 睫毛乱生(しょうもうらんせい)
- 睫毛重生(しょうもうじゅうせい)
異所性睫毛は、まぶたの裏側など本来生えない場所に生えている状態。睫毛乱生はまつ毛の生える向きが通常と異なる状態(いわゆる逆さまつ毛)。睫毛重生はまつ毛の内側に重なるように生えている状態です。
これらが角膜を傷つけたり、目を刺激したりすることで涙が出続ける場合があります。
アレルギー
ドッグフードや花粉症、ハウスダストなど何かしらのアレルギーによって涙を流すケースもあります。アレルギー物質が全身性の炎症を引き起こし、目に影響が出ている状態です。犬の涙が多いことで起こる涙やけ

あふれ出る涙が多いと、目頭から鼻にかけての被毛が変色して「涙やけ」という状態になります。涙に含まれる脂質が酸化して起こるもので、涙やけ自体は病気ではなく状態を指すものです。
先ほど紹介した涙が多く出る原因や病気に対処することで、涙やけも改善することができます。目に異常がなく、アレルギーで涙が出ている場合は無添加で新鮮なドッグフードを変えることで涙やけも改善する可能性があります。
犬が涙を流す場合の応急処置
