スペインには犬に「人権」を与える条例がある!? 日本との飼育事情の違いを紹介

スペインには犬に「人権」を与える条例がある!? 日本との飼育事情の違いを紹介

国によって犬の飼い方、接し方、人と犬との関係性などはさまざまです。今回はスペイン在住ライターの関根が、スペインのトリゲロス デル バジェ(Trigueros del Valle)という村で制定された犬や猫、その他の人間と暮らす動物に「人権」を与える条例について、またスペインで犬を飼う方法について紹介します。

犬に「人権」を与える条例とは

スペインの首都マドリードから160kmほど北西に位置するバジャドリ(Valladolid)県に、トリゲロス デル バジェという小さな村があります。ここでは現在、村をあげた動物愛護の取り組みが行われています。

その一つが、2015年7月に可決された “人間と暮らす動物に「人権」を与える条例” です。市長や住民の支援を受け、NGO団体である「ラ アソシアシオン アニマリスタ リベラ(La Asociación Animalista LIBERA!)」と「レスカテ ウノ(Rescate1)」によって公布されたのち、民間団体によって村の議会に移管されたものが承認されました。
この条例の根幹をなすのが「非人間の隣人」宣言です。身近な動物の命を尊重し、人間の責任として彼らの存在を大切にしながら共存すること、この概念を周知させることを目的に宣言されました。

条例の中身は?

具体的には大きく二つあります。
  • 飼い主は犬や猫に適切な人生を与え、必要があれば犬や猫の代理として義務を果たすこと。
  • 獣医師の許可無しに命を奪ったり、人間のエゴによる断尾・断耳などの行為を禁じる。

この二つに共通しているのは、犬や猫を心と意志のある生き物として接するということです。NGO団体 Rescate1の代表ルベン・ペレス(Rubén Pérez)さんは、「この条例が可決されたことは、動物への残虐行為に対する人々の関心がさらに高まっていることを意味している」とコメントしています。

スペインで犬を飼うには

スペイン人も日本人と同じようにさまざまな場所で犬と出会い、迎え入れています。

保護施設から迎える

悲しいことではありますが、スペインでも今なお新しい飼い主を待っている保護犬がたくさんいるのが現状で、毎年約14万匹の動物が放棄・保護されています。しかし年々、伴侶動物(コンパニオンアニマル)の殺処分に対する人々の関心が高まっていることもあり、保護団体が運営するWebサイトや週末などに催されるイベント、保護施設へ直接行って犬を迎え入れる人も増えています。

ペットショップから迎える

スペインでも日本と同様に生体の展示販売をしています。日本よりもはるかに広い土地を擁しているので意外に思われるかもしれませんが、ショーケースのサイズや数などは日本とさほど変わりません。
営業形態も店舗によっては犬に休憩させるための時間を設けているお店もありますが、義務化されているわけではないので一部のお店が自主的に行なっている取り組みであり、それ以外のお店では一日中展示されています。販売されている生体も日本と同様にまだ小さな子犬であることがほとんどです。一定以上に成長した犬を店頭で見かけることは、ごくまれです。


ブリーダーから迎える

スペインの街中では本当にさまざまな種類の犬を見かけます。大陸続きのため、他国原産の犬種が入って来やすいことが理由の一つに挙げられます。繁華街にあるペットショップで売られているフードの種類も豊富で、それだけさまざまな種類の犬がいることを実感することができます。
スペインのペットショップで売られているペットフード

しかし、ペットショップで売られている犬種は世界中で人気のあるメジャーな犬種や飼いやすい小型犬であることが多いため、それ以外の目当ての犬種がある人はブリーダーを訪ねることになります。


スペイン人の犬の飼い方

スペインと日本の飼育の仕方で大きく違うのは、
  • 多くのマンションや賃貸物件がペット飼育可能
  • 飲食店を含むほとんどの商業施設に犬を連れて入ることができる
ということです。こういった点で、犬を飼う人にとってスペインは暮らしやすい環境と言えます。
また、ノーリードで歩く人が多いです。実際にはほとんどの地域でノーリードが禁止されていますが、交通量の多い都心であってもリードを装着せずに散歩、遊ばせてる様子をよく見かけます。安全面で決して良いことではありませんが、それだけしつけの行き届いた犬が多いという意味でもあり、吠え続ける犬もほとんどいません。
街の書店には多くのしつけ・トレーニング本が並んでおり、店舗の大きさにもよりますが大手チェーン書店「カサ デ リブロ(Casa de libro)」には小さい店舗でも7〜10種類のトレーニング本がそろっています。
スペインの本屋で売られているトレーニング本


スペインの動物病院やトリミングサロン

スペインの動物病院は人間の病院より多いのではないかと思うほど、街中でたくさん見かけます。トリミングサロンは病院ほど多くはありませんが「犬の美容院」として看板を出しているお店があります。
スペインの北部と南部では文化が大きく異なるため値段は地域によってもまちまちですが、スペインの物価にしてはトリミングの価格設定は高めです。一般的に北部の人の方が大型犬を好む傾向にあり、犬に対してより敬意を払うと言われています。一方で南部では小型犬から中型犬を好む人が多く、より野性的に飼うことが理想であると言われています。
そもそもスペインにはあまり犬の毛を綺麗にトリミングするという習慣が無く、北部のスペイン人でさえも日本人ほど頻繁にカットやシャンプーのためにお店に行くことはありません。南部で綺麗にカットされた犬を見つけることは難しいです。

日本からスペインに犬を連れて行く

現在スペインへの犬・猫・フェレット等のペット輸入手続きの方法は、EUの統一法令にのっとって行うことになっています。

狂犬病の予防接種

最初の接種より21日が経過していなければなりません。

個体の特定

ISO11784およびISO11785を満たすマイクロチップを装着していること。これを満たさないマイクロチップを装着している場合は、EUへの入国の際に読み取り機を用意しなければなりません。

獣医師による証明書

指定の書式を用いて獣医師、さらに日本の動物検疫所で作成された証明書が必要です。
出国が決まったらできるだけ早く出国予定の空港にある動物検疫所に連絡、手続きをしましょう。

「非人間の隣人」宣言はスペイン全土に広がる?

トリゲロス デル バジェ以外の地域も見れば、スペインはほかのヨーロッパ諸国に比べてペット先進国とは言い難いですが、おおらかな国民性や土地の広さから犬や飼い主が受けるストレスは比較的少ないように感じます。
2015年の「非人間の隣人」宣言はまだ一部の地域で始まったばかりですが、スペインでは国民全体の40%の世帯がペットを飼っているペット大国です。今後この条例のような運動が全国へ広がることが期待されています。
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