猫に漢方は効果ある? メリット・デメリットやどんな病気の治療に有効かを解説

猫に漢方は効果ある? メリット・デメリットやどんな病気の治療に有効かを解説

近年、猫の飼育頭数が犬の飼育頭数を逆転し、猫ブームとも言われています。そんな中、「我が家の愛猫には健康で長生きしてほしい」と飼い主さまなら誰もが願うところだと思います。その一つの方法として、漢方を猫の治療や養生に用いる動物病院が増えてきました。では、犬でも使用される漢方が果たして猫でも有効なのか、さらに猫ならではの特徴や注意点があるのかという点を、ペット中医学アドバイザーでますだ動物クリニック院長の増田が解説します。

猫に漢方は効く?

漢方薬

私たちがよく耳にする漢方という言葉は、そのルーツをたどるとおよそ2000年前の中国医療に基づきます。経験則から得られた膨大なデータをまとめ、「黄帝内経」や「神農本草経」という書物として後世に残しました。また、その後も「傷寒論」や「金匱要略」などという現代漢方の基礎が作られました。

これらはもちろん人間に向けて記されたものでありますが、かつては戦争や農耕の場で動物の存在は大変重要であり、その治療や養生に対し、漢方や鍼灸を施した記録もあります。日本には6世紀ごろ中国大陸からこの医学が伝来しましたが、その間、日本独自の進化発展を遂げたものを「日本漢方」と呼ぶことがあります。また、中国大陸で発展を続けたものを「中医学」というように区別する場合があります。細かい差異はあるものの、いずれもルーツは同じものと言えます。

では、「漢方薬」と「西洋薬」とはどのような違いがあるのでしょうか? どちらも「体の不調を改善に導く」という点において同じです。ただし、そのアプローチの仕方にやや異なる点があります。

西洋薬の多くは、対象となる猫の問題点を診断し、その「疾患」に対して直接治療します。漢方薬の場合、西洋薬と同じような方法で処方される場合もありますが、それぞれの体調や体質を考慮した上で処方を決定します。従って、同じ病気にかかった猫であっても、処方される漢方薬が異なるといったケースがあります。これは猫の体を事細かく見て、触れて、問診していきながら、最終的に「証」といわれる体の状態を見つけ出した上でそれに合わせたベストな漢方薬を選択するためです。病名ではなく対象となる猫ちゃんの体の問題を優先するといったところでしょうか。

猫に漢方を与えるメリット・デメリット

ご飯を食べる猫

猫は、ほぼ肉食といってよい動物です。一方、生薬は多くが植物由来であり、動物由来のものはごく少数派です。必要とする栄養の割合が異なる中、犬や人間と同じような効果が得られるのでしょうか?

結論から言えば、植物由来の「薬としての成分」が作用しているため、ほぼ同様に効果があると考えられています。西洋薬も植物から抽出されたものを商品化しているものが案外多いのですが、猫にもしっかり効果が出ているのと同じ考え方です。

漢方の効果が期待できる場面は、犬の場合と同様、多岐にわたります。とりわけ時間経過が長い、いわゆる慢性疾患で活躍することが多くあります。例えば、なかなか治りにくい下痢症や皮膚のトラブル、案外多いとされる関節のトラブル、さらには排尿に関する問題などに応用することが多いです。「漢方=ゆっくり優しく効く」と言われますが、中には皆さんの漢方に対するイメージとは裏腹に即効性のあるものも少なくありません。

皆さんがお持ちのイメージには、「副作用が少ない」という点もあるかと思います。一般に副作用が少ないとされる漢方ですが、猫特有の問題点に触れておく必要があります。猫では、ユリ科の植物に対して腎臓に与えるダメージが非常に大きくなります。ユリ科由来の生薬が一部存在し、「麦門冬」や「知母」がそれにあたります。具体的にどの程度、猫に影響を及ぼすか不明な点が多いのですが、使用にあたっては漢方に精通した獣医師の判断が必要です。


猫に漢方を与える方法

実際に猫に漢方を使用してみたいと思った際、どこに相談すればよいのでしょうか。すべての動物病院・獣医師が東洋医学や漢方に精通しているということではなく、むしろかなり少数派となります。さらに、学問的にもヒトほどその効果のメカニズムが解明されていない部分があるため、これらに懐疑的な見方をする獣医師もいます。

ご自身で漢方の処方実績のある動物病院を探すか、あるいはかかりつけの先生にご相談するところから始めてみるとよいかもしれません。例えばインターネットで「猫 漢方 動物病院」と検索するのでもいいでしょう。もしくは、日本ペット中医学研究会のホームページでは動物に中医学を採用している動物病院を検索することができます。

漢方の料金

料金は、驚くほど高額であることは少ないと思います。もちろん使用する漢方によって金額がまちまちであること、また獣医療は原則自由診療であるため、同じ漢方であっても動物病院によって差が生じることに注意が必要です。ペット保険が適用となる場合があり、一般に人の医療機関で処方されている漢方薬(例えば、ツムラ、クラシエなど)は、保険会社によって適用となることがあります。保険会社の指針では、動物用医薬品や医薬品以外は保険適用外となり、サプリメントや健康食品と同じ扱いとなるため保険適用とならないことがあります。

もっとも気がかりなことは、せっかく処方された漢方をきちんと飲めるかどうかだと思います。実は、犬よりも猫のほうが飲ませづらいという声をよく耳にします。人では食後や食間など服用するタイミングについて指示がありますが、動物の場合は厳密にそれを順守するのはなかなか大変です。多くの場合、水に溶いたものを注射器やスポイトで飲ませる方法や、投薬補助用のおやつあるいは缶詰などに混ぜる方法などが用いられます。それでもどうしても飲まないということもありますので、その場合は専門医にご相談ください。

猫のどんな病気にどんな漢方が効果的か

寝る子猫

猫の場合は泌尿器、運動器、皮膚科などで漢方がよく用いられますが、一例としていくつかの適応症と漢方の組み合わせを紹介します。ただし個々の猫によって、あるいはその他の基礎疾患などいくつかの要因で必ずしも以下の限りではありませんことをご了承ください。また既存の治療と並行して漢方を使用することもできます。その際は主治医の先生とご相談ください。

  • 慢性腎臓病:六味丸、柴苓湯、イスクラ001源気
  • 膀胱炎、血尿、尿路結石:猪苓湯、五苓散、イスクラ010通淋
  • 糖尿病:白虎加人参湯、小柴胡湯、イスクラ005寧心、イスクラ012滋潤
  • 胃炎、腸炎など:半夏瀉心湯、六君子湯、小建中湯、イスクラ006三仙
  • 猫のカゼ、気管支炎:小青竜湯、麻杏甘石湯、柴朴湯、イスクラ002清肌
  • 関節痛、運動器疾患:疎経活血湯、イスクラ003通楽
  • アレルギー性皮膚炎:消風散、黄連解毒湯、小柴胡湯、イスクラ002清肌
  • 腫瘍・がん:十全大補湯、補中益気湯、八味地黄丸、イスクラ004露華、イスクラ009西伯利亜

注意点はありつつ、漢方が猫の健康の一助に

猫の寿命は近年飛躍的に伸びました。20歳の猫ちゃんも以前に比べると珍しくなくなっています。その長くなった寿命をいかに健康で過ごせるかというところが重要だと考えます。病気やケガが生じた際の治療としてだけでなく病気になる前、いわゆる「未病」といわれる状態から漢方は使用できます。猫の場合は犬と異なる注意点や、飲ませる際に気を付けなければいけない点がありますが、比較的飲ませやすい漢方もあります。愛猫の末永い健康の一助として、漢方はお役立てできるものと確信しております。

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