犬の血液検査結果の見方とは? 検査概要を獣医師が解説

犬の血液検査結果の見方とは? 検査概要を獣医師が解説

動物病院に連れて行ったら獣医師に「血液検査をしましょう」と言われた経験はありませんか? 言葉の話せない犬たちの体を調べるために、動物病院では頻繁に血液検査が行われ、体調不良時以外にも健康状態チェックやアレルギーチェックとしても使われます。検査結果は、ほとんどの病院で丁寧に説明してくれますが、内容を少し理解しておくと安心かもしれません。今回は犬の血液検査について、獣医師の飯塚が解説します。

犬の血液検査でわかること

見上げる犬

血液検査でわかることは主に「異常の原因を調べる」ことと「健康状態の確認」をすることです。その他、アレルギーチェックに利用される飼い主さんもいます。

異常の原因を調べる

例えば「おなかがゆるい」という理由で病院を受診されたとき、血液検査では、炎症がないか・腎臓や肝臓など内臓の機能に異常がないかを血液の数値を見て確認します。

これらに異常がなければ、「おなかが冷えた」「おなかの調子が悪い」などの判断で、次の検査や治療にうつります。

治療に先だって、「必要な薬を使うことができるのか」という判断の指標にも使うことができます。

薬は肝臓や腎臓で代謝・排泄されて体に効果をもたらします。しかし、これらの内臓の機能が衰えていると、正しい効果が出ないため、薬の変更や量の調節が必要になります。

健康状態の確認

血液検査は、内臓の機能に異常があるかどうかはもちろん、異常がないことを調べることにも使われます。

数値に異常がなければ、内蔵は正常に機能していると考えられます。

アレルギーチェック

血液検査でアレルギーチェックを行うことができます。アレルギーの場合は比較的、症状がお腹や脇の皮膚が赤く見られることが多いです。

「ある状況下で皮膚が赤くなる」「ある食べ物を与えたら皮膚が赤くなった」など気になることがあれば、アレルギーを疑い、チェックしてみてもいいでしょう。


犬の血液検査の概要

獣医師と犬

血液検査時間

ほとんどの動物病院では、院内で血液検査を行うことが可能です。おおむね30分程度で結果が出ます。機械が自動で行うので、検査項目が多ければ多いほど時間がかかります。

この他、特殊な項目を検査する場合は、外部の検査機関に委託して検査を行います。結果は項目によって1日~1週間程度時間を要する場合もあります。

血液検査費用

採血料+検査費用がかかる病院が多く、項目の数や内容に応じて値段が変わるため明言はできません。お近くの動物病院にて相談してみましょう。

犬の血液検査の注意事項

仰向けの犬

血液検査のリスクは比較的低いといえるでしょう。血液検査に必要な血の量は、特殊な検査をする場合を除き、1~3ml程度と少量です。

採血のために、短時間押さえつけられる不快さはあるかもしれませんが、愛犬にとっては負担の少ない検査になります。

前日・当日の食事について

体調不良で血液検査を行う場合は、食事の影響を考慮して結果を見るので、食事を抜く必要はありません。ただでさえ調子の悪い愛犬に、無理に食事を抜いたりせず、食欲があるのかどうかチェックして受診してください。

ただし、脂質系の項目や腎臓の機能を調べるための血清尿素窒素(BUN:Blood Urea Nitrogen)、その他一部の項目は、食事の影響を受けやすいです(※)

これらの項目の定期的な血液検査や、健康診断で血液検査をすることが事前に分かっているなら、当日受診前の食事は、抜くのがベストです。前日は、あまり遅くならなければ問題ありません。かかりつけの獣医師からの指示に従ってください。

※参考:小野憲一郎,太田亨二,鈴木直義 編「獣医臨床病理学」近代出版,1998年6月発行

その他の注意事項

採血の際には、どうしても体が動かないように押さえる必要があります。また採血箇所は四肢か、頚部になります。どこも愛犬にとってはあまり触ってほしくない場所で、嫌がって暴れてしまい、検査ができないことがあります。

日ごろから、手足をさわったり、少し抱きしめたりして、体に触ることを慣らすようにしてあげてください。また、犬種や病院によっては、採血箇所の毛刈りを行うこともあります。

犬の血液検査結果の見方・考えられる病気

血液検査は、複数の項目を組み合わせて、総合的に一つの臓器や機能が異常か否かを調べます。特に、体調不良の原因か明確でない場合は、多くの項目を検査する必要があります。

項目 何を指すのか 正常値より高い 正常値より低い 測定の主な目的
WBC 白血球数 細菌などの感染、炎症、腫瘍、中毒 ウイルス感染、骨髄異常、敗血症などの激しい感染 主に炎症の指標
RBC 赤血球数 脱水 貧血、出血、腎臓病など 貧血の指標:この6項目を総合的に考え、貧血の種類や原因を探る
HGB ヘモグロビン:血色素 下痢・嘔吐などによる脱水 腎臓病による貧血や鉄欠乏貧血で顕著に低下
PCV(Htの場合もある) 血球容積:血液中に赤血球の占める割合 脱水 貧血、出血、腎臓病など
MCV 赤血球の大きさ 貧血の評価に関与。この3つの数値の増減パターンにより、貧血の原因と状態を探る。
MCH 赤血球内のヘモグロビン(血色素)量
MCHC 赤血球内のヘモグロビン(血色素)濃度
PLT 血小板数 強い炎症を起こす病気、急な出血、腫瘍など 免疫異常による病気、感染、大量出血、骨髄の病気など 止血機能の指標
TP 血中総蛋白濃度 脱水、炎症、骨髄の腫瘍など 消化不良や栄養不足、肝機能障害など 主にたんぱく質の指標
ALB アルブミン 脱水 栄養不足、肝機能障害、慢性の炎症、発熱など
GOT(AST) 肝酵素 主に肝機能障害、この他筋肉障害、赤血球の障害でも上昇 大きな問題はなし 主に肝臓の指標:多くが、この3項目+αで肝臓の機能を評価する
GPT(ALT) 肝酵素 肝機能障害 大きな問題はなし
ALP アルカリフォスファターゼ 胆管障害、骨の病気、腫瘍。子犬では、骨からの分泌が多いため、数値が高くなる傾向にある 大きな問題はなし
BUN 血中尿素窒素 腎機能障害、高蛋白食 肝機能障害、低蛋白食 主に腎臓の指標
CRE クレアチニン 腎機能障害、激しい運動 筋委縮、多尿
GLU 血糖値 糖尿病、ストレス、興奮、副腎皮質機能亢進症などホルモン性の病気 ホルモン欠乏、肝機能障害、敗血症、激しい運動 主に糖尿病の指標
Na ナトリウム 脱水(下痢・嘔吐・糖尿病・ホルモン性の病気などによる) 腎機能障害、下痢、嘔吐、発熱、ホルモン性の病気 主に体のミネラル分の指標:3項目を合わせて総合的に原因を探る
K カリウム 腎機能障害、体が酸性に傾いた状態時など 腎機能障害、ホルモン性の病気、体がアルカリ性に傾いた状態時など
Cl クロール 脱水、呼吸過多など 嘔吐、ホルモン性の病気、呼吸過多など
CRP C反応性蛋白 急性炎症 問題なし(下限が0mg/dlなため、低値は存在しない) 炎症の指標
※上記表参考:小野憲一郎,太田亨二,鈴木直義 編「獣医臨床病理学」近代出版,1998年6月発行

まとめ

向かい合う犬と人

血液検査は異常の原因や健康状態の確認に利用される
アレルギーチェックをすることも可能
健康診断として定期的な血液検査がオススメ

血液検査は、体の不調の原因を探るとともに、治療を考えたり、治療の効果を確認するためにも使われます。愛犬への負担が少ない検査になりますので、健康診断として、元気なときに受けることもおすすめです。

参考文献

  • 小野憲一郎,太田亨二,鈴木直義 編「獣医臨床病理学」近代出版,1998年6月発行


公開日:2019年7月16日

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