犬の被毛は人と違う?被毛の構造と役割を被毛研究のプロが解説
愛犬のためにご自宅でシャンプーなど被毛ケアをされている方もいらっしゃると思いますが、手探りな部分も多いのではないでしょうか? 今回は、犬の被毛について「どんな構造?」「何からできてるの?」「傷める原因は?」といったよくある疑問にお答えします。
初めまして、人用シャンプーメーカーの中野製薬です。中野製薬はグループ会社のハートランドを通じて犬猫のシャンプー「ゾイック」を販売しており、人用シャンプーの開発を60年、犬猫用シャンプーの開発を30年行ってきました。そこで毛髪や被毛の研究を行なってきた我々の知見が参考になればと、「愛犬の被毛ケア」をテーマに連載させていただくことになりました。正しい知識がみなさんと愛犬の健やかなペットライフにつながれば幸いです。
犬の毛も人の毛も、3層構造になっているのです。これから、一つ一つ特徴を解説していきます。
キューティクルの均一さは毛の艶(つや)や手触りの良し悪しに大きく関わります。薄い構造のため、シャンプー時の摩擦や毛のもつれを取る際、ドライング時の無理なブラッシングで剥がれたり、傷が付いたりします。そうなると内部のコルテックスを守ることができなくなり、枝毛・切れ毛の原因や毛本来の美しさを損なうことになります。
犬の毛は何からできているの?
毛は18種類のアミノ酸から成る「ケラチン」という硬タンパク質からできています。具体的には、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン、ヒスチジン、トリプトファン、シスチン、メチオニンの18種類です。
犬の被毛の構造はどうなっているの?
犬の毛(被毛)と人の毛(毛髪)は、よく似た構造をしています。まず表面を覆っている部分は「キューティクル」(毛表皮)といいます。その内側には「コルテックス」(毛皮質)というものがあり、中心には「メデュラ」(毛髄質)があります。犬の毛も人の毛も、3層構造になっているのです。これから、一つ一つ特徴を解説していきます。
キューティクル(毛表皮)
まずは、毛の外側を覆っている「キューティクル」です。シャンプーのCMなどで聞いたことがある方も多いのではないでしょうか? キューティクルは魚のうろこのように重なり合った構造をしていて、外部刺激に弱いコルテックスを守る役割を持っています。キューティクルの均一さは毛の艶(つや)や手触りの良し悪しに大きく関わります。薄い構造のため、シャンプー時の摩擦や毛のもつれを取る際、ドライング時の無理なブラッシングで剥がれたり、傷が付いたりします。そうなると内部のコルテックスを守ることができなくなり、枝毛・切れ毛の原因や毛本来の美しさを損なうことになります。
コルテックス(毛皮質)
コルテックスは毛質に大きく影響する部分です。繊維状の組織が束になっており、毛の弾力性や柔軟性は主にコルテックスの性質によるものです。そのためコルテックスを覆っているキューティクルが剥がれると、コルテックスの束がほぐれやすくなり、裂毛、断毛、枝毛などのダメージ毛になってしまいます。メデュラ(毛髄質)
毛の中心には「メデュラ」と呼ばれる空胞があり、空気が含まれています。犬の毛は人の毛より空胞が大きいのが特徴です。メデュラは保温の役割や毛の軽さに関係していると考えられていますが、役割や性質については、はっきりしていないのが現状です。犬の毛は何からできているの?
毛は18種類のアミノ酸から成る「ケラチン」という硬タンパク質からできています。具体的には、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン、ヒスチジン、トリプトファン、シスチン、メチオニンの18種類です。
アミノ酸系洗浄成分の配合を謳ったシャンプーが多いのは、毛の主成分がアミノ酸であるためです。毛と同じ成分を使うことでシャンプー時にタンパク質の流失を防ぎ、毛を保護するのです。
犬の毛の特徴
美容に関心の高い飼い主さんであれば毛の構造についてご存じかもしれませんが、犬の毛は人の毛とは違う特徴も持っています。
犬の毛と他の動物の毛の違い
犬の毛は猫やウサギとはどのように違うのでしょうか? 電子顕微鏡写真で見てみると、どの毛も人の毛と同じように表面にキューティクルが存在しているのがわかります。断面を見ると、全般的に動物の毛はメデュラが大きいことがわかります。特にアメリカンショートヘア(猫)やホーランドロップイヤー(ウサギ)はメデュラの割合が大きく、毛で身体の保温や保護を行っていると考えられます。ウサギは断面の形も大きく異なります。
大まかな構造はどれも同じですが、少しずつ異なるポイントがあります。進化の過程で環境へ順応するため、各々の性質を持ったと思われます。
犬の毛と人の毛の強さの違い
世界のビックリ人間を紹介するようなテレビ番組で、人の毛を使って車を引っ張る人を見たことがないでしょうか? 人の毛は引っ張られる力にとても強いため、束ねると車を引っ張ることも不可能ではありません。犬の毛はどうでしょうか。人の毛髪と比較すると犬の毛の直径(太さ)は約1/2で、切れる際の強さは約1/4です。つまり犬の毛は人の毛髪よりも細く、デリケートなのです。
特に犬の毛や人の毛は濡れた状態では強度が低下して傷みやすくなりますので、シャンプー後にきちんと乾かさずに放置したり、半乾きにしたりすると毛を痛める原因となります。シャンプーをしたらできるだけ素早く乾かし、ブラッシングするときは丁寧にしましょう。
ドライヤーの温度にも注意
毛はタンパク質からできているので、ドライヤーの温度に対しても注意が必要です。ご家庭のハンドドライヤーの先端付近の風温は約105℃になり、10cm離れた場所でも95℃と想像以上に高温になっています。早く乾かそうと過度に近づけ過ぎず、温度に注意しながら乾かしましょう。高い温度で乾かすというより、多くの風量で乾かすことを意識してください。毛が絡まないよう十分注意しながらドライングすることが大切です。
犬の毛のサイクル
人の毛に生え変わりのサイクルがあるように、犬の毛にも同様のサイクルがあります。ただ、シングルコートやダブルコートといった主毛と副毛の違いは人にはない特徴です。
シングルコート、ダブルコートのサイクルの違い
犬の毛には、1本の太く長い「主毛」とそれを囲む複数の「副毛」が生えています。主毛のことを、「上毛、ガードヘア、トップコート、一次毛」と呼び、副毛のことを「下毛、ダウンヘア、アンダーコート、二次毛」と呼ぶこともあります。毛の密度は犬種によって多種多様で生え方もいろいろあり、大きく分けると「ダブルコート」と「シングルコート」に分けられます。ダブルコートは柴犬やコーギーのように夏毛・冬毛といった生え変わり(換毛)があり、シングルコートはマルチーズやプードルのように主毛のみが伸びていきます。人はシングルコートと同じ構造です。