猫のツボ押しを中獣医の専門家が解説|腎臓や消化器トラブルなどに効くツボを動画で紹介

東洋医学に興味がない方でも「ツボ」という言葉はどこかで耳にしたことがあると思います。最近は、インターネットなどで犬に鍼やお灸をしているといった情報が目につきようになりました。では、猫ではどうでしょうか? おそらく犬ほど情報が得られないのではないかと思います。犬に効果があるといわれるツボ押し、これは猫でも同じように効果があるのか、あるいは猫だからこそ有効と考えられる点や、逆に注意していくべき点についてますだ動物クリニック院長で東洋医療科担当の増田が解説します。

ツボとは

寝転ぶ猫

まず「ツボ」というものについて簡単にご紹介しましょう。ツボとは、体表面上に存在する、とある場所のことなのです。この場所は、東洋医学(中医学)を語るうえでなくてはならない重要な成分である「気」「血」「津液(水)」というものが体表と行き来できる場所とされています。

なお、このツボを通じて気血津液が通っている道のことを「経絡」と呼びます。経絡の中のこれら重要成分が滞りなく流れている状態を健康であると解釈します。

ところが、人間も動物も生活していると何気ない不調や、不調とまではいかないものの何となく本調子ではないようなコンディションになることが少なからずあるはずです。

このとき「気」「血」「津液」のいずれか、あるいはすべての流れが通常と異なるようになります。このような状態のときに、ツボを通じてマッサージや鍼、お灸などで個々に適した刺激を加えると、元のスムーズな流れを取り戻すことが出来るので、その結果改善につながるのです。

猫のツボ

そもそも、「猫にツボというものが存在するの?」という疑問を持つ方も少なからずいらっしゃると思います。

古来より、人間と同様四足歩行で生活する馬などに鍼灸を用いて治療していた歴史があるため、それを猫に置き換えています。犬のツボの位置とほとんど同じと考えてよいでしょう。

ツボは経絡上に存在しますので、この経絡の位置を知っておくとツボの大体の位置がつかみやすくなります。

犬(猫)のツボの位置
※犬(猫)の経絡(この経絡上にツボが多数存在します)

ツボを押したりマッサージすることで体の不調を改善に導くことが出来ますが、「健康な場合にツボを押すことは意味がないことなのか?」といえば決してそうではありません。

健康なときにこそ、その調子のいい状態を維持することに貢献できます。さらに病気になる手前の「未病」という状態を改善させていくことに大いに役立ちます。

一方でツボを押すことによって、猫にリラックスさせる効果が期待できます。このようなことから、単に猫の身体面のほか精神面の安定を維持します。適度な心地よいツボ押しで飼い主さんと猫とがの絆を一層近づける方法といえるでしょう。

猫特有の注意点

イスに座る猫

猫は犬と同じく四足歩行で共通している部分が多いのですが、「小さな犬」ではありません。猫には猫の注意点が主に2つありますので、そちらについて紹介いたします。

  • 力加減は犬よりもソフトに
  • 猫の表情をよく観察して

猫は犬よりも体の柔軟性に富み、腰痛や関節痛が見かけ上判断できないことが多くあります。また不調を表に出しにくい動物種でもあります。健康と思って、いつも通りにツボ押しやマッサージを行うと、痛みや不快感を示すことがあります。十分に表情や行動の変化をよく観察しておきましょう。

また、猫はツボ押しやマッサージで気持ちよさが一定以上に達すると、逆に警戒してしまうことがあります。場合によっては噛みついてしまうこともあるかもしれません。ちょうどよい加減を維持することが重要です。

猫のツボの押し方

眠い猫

猫のツボ押し(これを押圧(おうあつ)といいます)は、基本的に犬の方法と似ていますが、ツボによって犬と手法が異なる場合があります。犬のツボ押しも併せてご参照ください。

猫の場合は、犬よりもより力の入れ方に「優しさ」が求められます。力の加え具合は強すぎず弱すぎずという点で犬と共通しますが、力を加える時間を多めに取り少しゆとりを持っていただくとよいかもしれません。

目安として、猫の場合ですと250~500gくらいの力を加えていただくとよいでしょう。力加減を知るには、ご家庭にあるキッチンスケールに指を押し当ててみると参考になります。個々によって力加減に好みがありますので、様子を見ながら調整してみましょう。

猫の場合は犬ほど体格差がありませんので、品種や体重によって大きく変化を付ける必要はありません。その代わり、年齢や体力によって力の加減を考慮してください。


ツボ押しの実際(5-5-5秒法)

※5-5-5秒法:覚えやすいように適当に名付けたため正式な名前ではありません。


  1. 指の腹を使って5秒くらいの時間をかけゆっくりと力を加えます
  2. 力が加わった状態で3~5秒ほど保ちます
  3. 5秒ほどの時間をかけて力を徐々に抜いていきます
  4. 猫の様子を見ながら必要に応じて1~3を繰り返します。そのときに猫の表情や体の緊張具合をよく観察し、不快にならないような状態を維持できれば合格です。うっとりしすぎると、逆に不安になり噛みつくことがありますので、ほどほどが重要です。

では、実際に押圧する際の注意事項をご紹介します。

  • ツボ1か所につき5~20回くらいを目安に押圧します。できるだけ毎日行うのが効果的です
  • 猫の押圧するツボを、人間のツボで位置確認してみるとよいかもしれません
  • 猫は気分屋です。気乗りしないときに無理強いするのはNGです
  • 東洋医学の不思議なところですが、ツボ押しする側の不調が猫に伝わってしまうことがあります。人間の体調も整え、健康な「気」で押圧しましょう
  • 指の腹でツボを押さえるのが難しい場合は、綿棒で代用すると便利です

病気に効果のあるツボ

緑目の猫

筆者は、病気をはじめとした不調に対し鍼灸を使って改善に導きます。猫の場合、犬と比べてよく見かける疾患に腎臓病があります。

もともと犬に比べ腎臓の尿を作り出す能力がやや劣る点と、水を飲む量が少ないことから腎臓に負担がかかりがちになります。また、高齢になると排便が困難になり便秘がちになる猫も見かけます。

一方で、一般に猫風邪と呼ばれる呼吸器症状で食欲が低下してしまう例もあります。今回は比較的猫によくみられる不調に対して効果が期待できるツボをご紹介します。



慢性腎臓病に有効なツボ

慢性腎臓病に有効といわれているツボは2つあります。

  • 腎兪(じんゆ)
  • 湧泉(ゆうせん)

腎兪

一番後ろの肋骨をたどり、その中央にある骨のでっぱりから3つ後ろのでっぱりがある骨の左右にくぼんだところが「腎兪」です。

東洋医学の「腎」は泌尿器としての腎臓の機能だけでなく、生命の源となる「精」と密接な関係があり。老化予防としても重要なツボです。5-5-5秒法で押圧しましょう。

親指の腹でゆっくり優しく押圧します。

腎兪1

小柄な猫なら左右からつまむように押圧するのもよいでしょう。

腎兪2

湧泉

後肢の一番大きな肉球の付け根にあります。「気が泉のように湧く」という字の通り、腎経という腎臓に関連する経絡の始点となるツボです。腎臓病だけでなく、後肢の麻痺などにも有効です。

後肢の一番大きな肉球の底部です。

湧泉1

小柄な猫の場合は綿棒で押圧するとよいでしょう。

湧泉2

消化器のトラブルに有効なツボ

消化器のトラブルに有効なツボは主に2つあります。

  • 足三里(あしさんり)
  • 気海(きかい)

足三里

後肢のひざ下外側にある出っ張りから斜め前方にくぼんだ場所にあるツボです。このツボは胃と関連の深い「胃経」という経絡に属するツボです。

5秒程度ゆっくり押圧し、20回ほど繰り返しましょう。このツボは小さい猫だと指圧するのが難しいため、綿棒を使用することをお勧めします。

膝の外側下方にある骨のでっぱりのやや斜め前下方にあります。

足三里1

ここでも綿棒のほうが押圧がやりやすい場合があります。

足三里2

気海

おへそからおよそ1cmほどしっぽ側にあるツボです。おなかが痛いときによく押さえる場所でもあります。ツボを直接押圧するというより、気海を含めたその周辺を手で覆って温めながら軽くさするとよいでしょう。

もともと猫はおなかに強い力が加わることを好まないため、円を描くようにマッサージすることが望ましいです。

まずは猫のおへそを探してみましょう。

気海

猫風邪に有効なツボ

猫風邪に有効なツボは3つあります。

  • 風池(ふうち)
  • 印堂(いんどう)
  • 山根(さんこん)

風池

耳の後方にあるくぼみ(ぼんのくぼ)、肩と合わせて首の筋肉が凝ってしまうことが多いため有効です。左右一対あり、20秒くらいの時間をかけゆっくり押圧します。

風池1

この部分は人間同様猫にもコリが見られることがあります。

風池2

印堂

左右の眉間の中間です。軽く撫でるだけでも効果が得られます。

印堂

山根

鼻の付け根の中央にあたります。印堂から山根にかけて人差し指を使ってなぞっていきます。鼻づまりの解消につながります。

鼻筋をなぞるようなイメージです。

山根



食欲不振のときに有効なツボ

食欲不振のときに有効なツボは2つあります。

  • 足三里
  • 中院(ちゅうかん)

足三里

ツボの位置は上記をご参照ください。足三里は「胃経」という経絡のツボで、消化器の働きを改善させることにも有効です。

中院

みぞおちとおへその中間です。だから中脘と名付けられたというわけではありませんが、そう覚えると忘れませんね。このツボも押圧するのではなく指を軽く当てなでるようにして刺激してあげましょう。

左手の親指がへそ、人差し指でみぞおちを示しています。まさにその中間が「中脘」です。

中院

ツボ押しの勉強の仕方

実は、猫に対してツボを押すことに特化した書籍というのがなかなか存在しません。そのため、マッサージをはじめツボ押し以外の方法も載っている本となりますが参考となる本がありますので紹介します。



ツボ押しは愛猫とのコミュニケーションの1つです

こちらを見る猫

今回は、猫のツボとその押し方や養生の方法について説明してまいりました。犬とは異なり、ちょっとした気づかいやポイントがありますが、決して難しいものではありませんのでぜひご家庭で実践してみてください。

不思議なもので、猫がツボ押しやツボマッサージが気に入ると、飼い主さんに近づく度合いが増えるといわれます。ということは、単に健康増進に役立つだけでなく、猫と人間の心の絆が一層強くなるための方法の1つになっているといっても過言ではありません。

引用文献

  • 石野孝ら『ペットのための鍼灸マッサージマニュアル』医道の日本社
  • シェリル・シュワルツ『犬・猫に効く指圧と漢方薬』世界文化社
  • 楊達、石野孝、陳武『ペット基礎中医学』誠文堂新光社

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