犬のつむじは91%が同じ向き!? 性格や利き足との関係を海外研究から紹介
皆さんは愛犬の「つむじ」に気を留めたことはありますか? 実は犬にも、おしりや胸前などにつむじがあります。つむじの巻の向きで性格が分かるという説もあります。愛犬のつむじがどんな場所にあるか、つむじの数などぜひ確認してみてください。今回は犬のつむじについて、海外の研究結果からご紹介します。
犬にもつむじがあった!
左のAが右巻きで、Bが左巻き
出典:『Hair Whorls in the Dog』
出典:『Hair Whorls in the Dog』
今回は犬のつむじについて、オーストラリア・シドニー大学でおこなわれた調査を紹介しながら解説していきます。つむじを通して、今まで知らなかった愛犬の新しい一面が見えてくるかもしれませんよ。たかがつむじ、されどつむじ!
「つむじ」とは
つむじは、なぜできるのでしょう? つむじにどんな役目があるのかを考えたことがある方は、そう多くないと思います。
つむじは漢字で書くと「旋毛」となり、「せんもう」と読むこともあります。「旋」は「螺旋」(らせん)という漢字もある通り、「まわる」という意味です。つまり「旋毛」は、文字通り「ぐるぐるまわる毛」ということで、渦巻のように毛が生えている箇所のことを指します。
つむじの役割
人の場合、つむじが頭のてっぺん付近にあります。つむじがあることによって毛流が起き、髪の毛が放射線状に頭部を覆うことができます(背中や脇など、毛量が多い方は頭以外にもつむじを見つけられるかもしれません)。ほぼ全身を毛に覆われている犬の場合は、つむじが1つではなく複数存在しています。その複数のつむじによって、犬は全身に毛を分散させることができているのです。
「つむじ」で性格がわかる!?
つむじにまつわる話として、「つむじが2つある人は天才肌」とか「つむじが左巻き(反時計回り)の人は変わってる人」というような話を聞いたことがある方はいらっしゃいませんか? 果たして、つむじと性格には関係性があるのでしょうか?
実は牛や馬にもつむじがあり、個体識別の手がかりとして利用されることがあります。中でも馬は、つむじの具合で性格が分かることもあるようです。つむじの方向によって、方向転換する際に右回りをするか左回りをするかが変わってくるそうです(つむじが右巻きだと方向転換する際に右回りをする)。
人の場合も、つむじの向きと利き手には深い関係性があり、「右利きの人はつむじが右巻き」、「左利きの人はつむじが左巻き」にかなりの確率でなっているそうです。行動に影響を及ぼすとなると、性格に影響を与えていたとしても不思議ではありませんね。
犬の「つむじ」とは
犬のつむじに関しては、今日まで掘り下げた研究がされてきませんでした。そこで、シドニー大学獣医学部のトムキンズ教授およびマックグリービー教授が、犬の種類、性別、環境によってつむじに違いがあるか、特定の場所にあるつむじには決まった方向性があるか、といったつむじの法則性に注目し、犬のつむじが存在する箇所やその方向性を調査しました。犬の場合は「つむじ」がどのような意味を持つのでしょうか? 同調査から、犬のつむじをひも解いてみたいと思います。
ほとんどの犬が左利き!?
右足の付け根部分(写真左)と左足の付け根部分
この調査では、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州のシェルターにいる保護犬と、シドニー大学傘下のユニバーシティ・ベタリナリー・ティーチング病院の犬(保護犬ではない通常の飼い犬)の純血種と雑種のオス・メスがランダムに選ばれました。
皆さんも愛犬のつむじを確認してみてください
犬は全身を毛で覆うため、つむじができやすい場所が複数あります。その数はおよそ11。頭だけでなく首、胸部、脚、肩、肘、しっぽ近くの太もも部分にあり、脚や太もも部分は左右に1箇所ずつ、右巻きと左巻きがあります。同調査によると、つむじが両側にある場合(右足と左足、右坐骨と左坐骨)、それぞれのつむじの方向は反対方向であるということが、どの犬種でも確認されました。筆者の愛犬のつむじを前足前方の付け根部分で見たところ、右足にあるつむじは左巻き、左足にあるのつむじは右巻きになっていました。
一方、胸部の1箇所にあるつむじは人間でいう頭部にあるつむじにあたり、その方向性が利き手と深い関係にあります。つまり、つむじが右巻きだと右利き、左巻きだと左利きということで、犬にも人の利き手(handedness)と同じもの(pawedness)があるわけです。
面白いことに、今回の調査で犬の胸部のつむじは91%の確率で左巻きであることがわかりました。ちなみに筆者の愛犬は左巻きだったので、漏れなく当てはまっています。
筆者の愛犬は時折、左前足だけ上げる仕草をすることがあります。前足を上げる行為はカーミングシグナルといって緊張をほぐすためにすることもありますが、確かに決まって左足だけを上げています。
大半の犬が左利きだったんですね。ぜひ皆さんの愛犬も観察してみてください。
犬のつむじと性格には関係がある!?
シロップの社員犬コルクのつむじの向きは……?
犬のつむじについて、さらに興味深い調査結果がありました。シェルターにいる保護犬と通常の飼い犬で、右足のつむじの方向に違いがあったのです。飼い犬の場合は右足のつむじが左巻きだったのが多かったのに対し、シェルターの保護犬は右巻きが多かったのです。
飼い主の都合でシェルターに飼い犬を預けるしかなくなったケースでは、犬に問題行動が見られることがあります。ただ一口に犬の問題行動といっても、治療を必要とするような問題から、飼い主が勝手に問題だと思っているだけのものまでさまざまです(そして大半は後者の問題です)。よくある「吠え癖」も、番犬としての役割を求める飼い主さんからすれば、問題どころか褒めるべき行動でしょう。
つまり、「犬の問題行動」の主因は飼い主にあるのです。今回の調査から、つむじの方向が、問題行動を起こす可能性があると知る1つの方法になるということが分かりました。しかし当たり前ですが、つむじの方向ですべてが決まるわけではありません。飼い主さんはつむじの方向が教えてくれるサインも参考にしながら、愛犬とうまくコミュニケーションを取っていってみてくださいね。
たかがつむじ、されどつむじ
つむじなんて普段気に留めないで過ごしているものですが、つむじが大切な情報を発信している場合もあるということを考えて、愛犬の健康管理(この場合は心の健康というところでしょうか)に役立つものとも言えるでしょう。
犬たちにも心があり、感情があります。私たち人間と同じく、寂しさ、虚しさ、絶望を感じます。そいうしたストレスがもたらす行動は、言葉を発せない犬たちからの無言のSOSです。つむじからもそうしたサインを捉えることができれば、対処できることも増えるでしょう。やはり、「たかがつむじ、されどつむじ」ということですね。
参考文献