犬のツメダニ症|人間への感染リスク・原因・症状・治療法など獣医師が解説

ツメダニは人獣共通感染症です。ヒトにも感染し、丘疹や水疱、強いかゆみなどを伴う一過性の皮膚症状を引き起こします。犬では、若齢犬でその症状が強く認められ、フケやかゆみ、脱毛などを伴う皮膚炎がみられます。ツメダニは自然下でも生存できるので、犬同士が直接触れ合わなくても、感染してしまうことがあるので注意が必要です。今回は、犬のツメダニ症の症状や治療法、人間を含むその他動物への感染などについて野坂獣医科院長の野坂が解説します。

ツメダニとは

ラブラドールレトリバー

ツメダニは日本を含む世界中に生息しています。主に宿主の体に生息しており、卵から、幼虫、さなぎ、成虫までの生涯を宿主の体で過ごします。卵の大きさは、0.2mm位で、被毛に産みつけられたものを顕微鏡で観察されることが多いです。

成虫の大きさは、0.5mm位です。大量に増えると、皮膚の上を白い小さなフケのようなダニが徘徊している様子を肉眼で観察することができます。この様子は「歩くフケ(walking dandruff)」と呼ばれています。

ダニには大型ダニと小型ダニに区別されますが、ツメダニは小型ダニに分類されます。小型ダニで犬の皮膚病で重要なのは、「ツメダニ」と「ニキビダニ」です。顕微鏡で観察し、巨大な爪があればツメダニ、長い体形であればニキビダニを疑います。

ツメダニは宿主から離れたとしても自然界で数日の間、生存が可能です。そのため、感染動物と直接接触しなくても、間接的に感染することがあります。さらに、卵が産みつけられた被毛も感染源になりますので、コームやブラシ、タオルなどの使いまわしは行わないように注意しましょう。


ツメダニの種類

ツメダニには種類があります。有名なのは、主に犬に寄生する「イヌツメダニ」(C.yasguri)、主に猫に寄生する「ネコツメダニ」(C.blakei)、主にウサギに寄生する「ウサギツメダニ」(C.parasitovorax)の3種です。

これら3種類のツメダニは、宿主を完全に区別しないため、犬、猫とウサギを飼育している場合、すべての動物に感染する可能性があるので注意が必要です。

人へも感染する?

ツメダニは人に感染することは可能です。しかしツメダニは人の皮膚の上では繁殖できません。人に感染した場合、丘疹(きゅうしん:直径1cm以下の皮膚の隆起)や水疱、強いかゆみなどを伴う一過性の皮膚症状を引き起こしますが、繁殖ができないため自然に消滅していきます。

しかし、犬や猫、ウサギの皮膚の上では繁殖し、症状を引き起こしますので、治療が必要となります。

犬のツメダニ症とは

草むらにいる犬

犬のツメダニ症(Cheyletiellosis)は、ダニの一種であるツメダニ(Cheyletiella sp.)が犬に寄生する伝染性の皮膚炎で、ツメダニ皮膚炎(Cheyletiella dermatitis)を引き起こします。

犬のツメダニ症の症状

フケが目立つ程度で、無症状のことが多いですが、以下の症状がみられることもあります。

  • 痒み
  • 被毛の粗剛(※)
  • フケ
  • 脱毛

上記の症状は若齢犬に多くみられます。
※粗鋼(そこう):あらくてかたいこと



犬のツメダニ症の原因・感染経路

ピットブル

成虫は皮膚の上を徘徊していますので、これが直接感染の原因となります。また、宿主から離れ、自然界でも数日間、生存が可能です。そのため、感染動物と直接接触しなくても、間接的に感染することがあります。

さらに、卵の産みつけられた被毛も間接的に感染源になることがありますので、被毛の清掃は感染症にとっても重要なことです。

犬のツメダニ症の治療

見上げる犬

「薬浴」と「外用療法」を併用します。すなわち、シャンプーで薬浴し、スプレー剤や滴下薬で駆虫します。また、皮下注射を行うこともあります。これらの治療法の対症動物や使用方法、副作用などを考慮しながら、皮膚検査を行い、効果をみながら、治療をします。

また、自然下でも生存可能なので、飼育環境は殺虫薬を用いて浄化し、さらに犬小屋、首輪、リード、犬用の服はよく洗濯し、ダニの対策を行います。

犬のツメダニ症の予防

ビーグル

予防薬があるので、予防薬を使用します。予防薬の選択は、獣医師とよく相談しましょう。ドッグランや犬の多く集まる場所に行く場合は、特に予防に努めましょう。


犬のツメダニ症は予防できます

ワイマラナー

ツメダニは人獣共通感染症です。犬、猫、ウサギだけでなく、ヒトにも感染します。ヒトに感染した場合、丘疹や水疱、強いかゆみなどを伴う一過性の皮膚症状を引き起こします。

ヒトでは一過性だからと安心せずに、愛犬、愛猫、愛ウサギのために今回の記事をよく読んで、この病気を理解し、予防していきましょう。

参考文献

  • 長谷川, 獣医臨床皮膚科 10 (3): 107–112, 2004
  • 村井, 犬と猫の治療ガイド2015 私はこうしている,716-717(2015)