犬の元気がない場合に考えられる原因や病気と対策などを獣医師が解説
「食欲がない」「下痢や嘔吐をしている」「寝てばっかりいる」「震えている」など、いつもより愛犬の元気がないことは分かっても、その原因を知ることは困難です。また、犬は狼だった頃の本能の名残で、痛みを我慢することで、外敵から身を守るため「痛みに我慢強い動物」といわれています。そのため、犬に元気がないときは、元気な振る舞いができなくなるほど、体調が悪い恐れがあります。今回は元気がないときの原因、対処法などを獣医師の越後谷が解説します。
犬の元気がない原因
怪我・病気によるもの | 食欲がある | 「外傷」が考えられます。捻挫や骨折、脱臼や靭帯損傷、または他犬との咬傷によるケガなどがあります。 |
---|---|---|
食欲がない | 消化器疾患である「胃腸炎」や「腎不全」「肝不全」「糖尿病」「甲状腺機能低下症」「膀胱炎」「子宮蓄膿症」「肺水腫」「心臓病」などさまざまな病気の可能性が考えられます。 | |
震える | 「中毒」「痛み」「神経疾患」「寒い」のいずれかが考えられます。 | |
下痢や嘔吐を伴う | 「寄生虫」や「ウイルス」「胃腸炎」「膵炎」「腎不全」「腫瘍」などさまざまな原因が考えられます。また誤飲の可能性もあります。 | |
ストレスによるもの | 新しい環境 | 新しい環境に慣れるまでに時間がかかります。また先住犬や猫がいる場合は、相性によってはストレスを感じて元気がなくなることがあります。 |
季節 | 適温以外の高温や低温にストレスを感じて元気がなくなることもあります。 | |
寝不足や疲労 | 長い緊張状態や不快感など、何らかのストレスを感じると、犬はあくびの回数が増えます。 | |
その他 | 飼い主さんとのコミュニケーション不足 | 留守番の多い家では、飼い主とのスキンシップが減るため、犬が情緒不安定になりやすい傾向にあります。 |
老化 | 自然現象のひとつです。高齢になるとともに睡眠の時間も長くなり動きも鈍くなります。 |
犬に元気がない場合の対策
緊急性の高い場合
愛犬が以下のような状態だったら、早急に動物病院へ連れていきましょう。早急に連れて行けない場合は。動物病院に電話して獣医師の指示を仰ぐ必要があります。
- ぐったりしていて、反応が薄い
- 呼吸が荒く、舌が青紫になっている
- けいれんしている状態が続いている
- 嘔吐下痢を繰り返している
- お腹が膨れている
- 排尿・排便姿勢を取っているにも関わらず、できていない
- 女の子の場合、おりものと飲水量が急に増えた
- 誤飲や誤食を確認した
- 身体を触ると唸ったり泣き叫ぶ
緊急性の低い状態
<ストレス>
ストレスが原因で「元気がない」と考えられる場合はストレスの元を取り除くよう心がけましょう。犬は新しい環境に慣れるまでに時間を要する場合があります。
そのため、迎え入れる時はよく犬を観察し、生活していく中で、何にストレスを感じているかを観察しましょう。
先住犬との相性が悪い場合は、お互いがストレスを感じるため、留守番の時には別部屋にするといった対策をとることも有効です。
季節性によって体調を崩す犬では、季節の変わり目に寒暖差がないよう環境を整えるとよいでしょう。
<コミュニケーション不足>
あまり愛犬と遊ぶ時間を取れていない場合は、愛犬と接する時間を増やすよう心がけましょう。犬は基本的に群れで生活する動物のため、なるべくスキンシップやコミュニケーションをとってあげることが大切です。
スキンシップを多くとることで、犬との信頼関係が生まれ、ストレスや問題行動の軽減につながります。
<老化>
老化が原因の場合は自然現象のひとつですが、年齢に合ったごはんや環境を用意してあげましょう。どの犬にも老化現象は訪れます。犬は人の4~6倍の速さで年を取るといわれているため、去年は元気に走り回っていたのに、今年は急に寝る時間が増えたということは珍しくありません。
「消化が良くエネルギーを取りやすいごはんに代える」「疲れない程度の適度な散歩時間」「暑い時間帯の散歩を避ける」「ゆっくり休める環境を用意する」など、犬の年齢と体力に合わせた暮らし方を獣医師に相談してみると良いでしょう。
犬に元気がない場合は原因を考えよう
犬に元気がない原因はさまざま考えられます
明らかにぐったりしていて元気がない場合は早急に動物病院へ
緊急度が低く感じても、高齢犬の場合は要注意です
高齢犬では、食欲の低下などの他の症状があると、単に元気がないという状況から命にかかわる事態に急変する場合があります。
「いつもと様子が違うな」と感じたら積極的に動物病院で診てもらいましょう。
参考文献
- ホームドクターのための初期治療ガイド<犬編> インターズー 2005年
- Clinical Medicine 犬と猫の診断と治療 インターズー 2004年
- What’s up with my DOG? チャートでわかる愛犬の症状と応急処置 インターズー 2010年
Spcial Thanks:獣医師として、女性として、 両立を頑張っているあなたと【女性獣医師ネットワーク】
女性獣医師は、獣医師全体の約半数を占めます。しかし、勤務の過酷さから家庭との両立は難しく、家庭のために臨床から離れた方、逆に仕事のために家庭を持つことをためらう方、さらに、そうした先輩の姿に将来の不安を感じる若い方も少なくありません。そこで、女性獣医師の活躍・活動の場を求め、セミナーや求人の情報などを共有するネットワーク作りを考えています。
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