犬を長生きさせる10の秘訣と寿命を縮めるNG行動を獣医師が解説

犬を長生きさせる10の秘訣と寿命を縮めるNG行動を獣医師が解説

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愛犬に長生きしてほしいと思うのはすべての飼い主さんの願いだと思いますが、実際に長生きするかどうかは、どんな食べ物を食べて、どれくらい散歩をして、スキンシップをして体の変化に気付けるかといった日々の積み重ねで決まります。犬が健康で長生きする可能性を高める秘訣について、獣医師の佐藤が解説します。#犬の食育

犬を長生きさせる10の秘訣



よく「○○をしたから、○○を食べていたから長生きした」という話を聞きますが、残念ながら科学的に証明された「これをすれば犬は長生きする」という絶対的な方法は存在しません。ただ、長生きの「可能性」を高める方法はあります。

愛犬が年を取ってから長生きしてもらいたいと真剣に考え始める飼い主さんは少なくありませんが、健康は積み重ねが大事。一つ確実なのは、若い時から取り組んだほうが長生きの可能性は高まるということです。

では愛犬が長生きする可能性を高めるためにはどんなことをすればいいのか。犬を長生きさせる10個の秘訣について、それぞれ詳しく解説していきます。

  1. 体重管理
  2. 適度な運動
  3. 適切なごはん
  4. 食事量の最適化
  5. 定期的な健康診断
  6. 感染症の予防
  7. 歯のケア
  8. 不妊去勢手術
  9. 中毒物質を避ける
  10. ストレスのない環境

1. 体重管理

数々の調査研究から「肥満の犬ほど寿命が短い」という事実が明らかになっています。ある調査では、犬種に関係なく全ての肥満犬が正常な犬と比べて寿命が短かったそうです。

適正体重を保つためには、「適度な運動」と「適度な食事」が大事です。その指標として「BCS」(ボディコンディションスコア)を参考にしていただき、理想体型である「BCS 3」を維持できるようにしましょう。

ボディコンディションスコア(BCS)

参考︰「Association between life span and body condition in neutered client‐owned dogs」(Journal of Veterinary Internal Medicine)


2. 適度な運動

運動不足が肥満の原因になっている犬も少なくありません。特に注意していただきたいのは、飼い主さんが適切な運動量を確保できていると思い込んでいるケースです。

小型犬なら1日30分、大型犬なら1日1時間は最低でもお散歩するようにしましょう。ダイエットが必要な子はさらに運動量が必要になりますし、犬種によっては小型犬でもたくさんの運動量が必要な場合もあります。




3. 適切なごはん

犬のごはんは基本的に総合栄養食を与えましょう。病気になれば療法食を与える必要がありますが、そうでなければ総合栄養食が基本です。おやつや人間の食べ物では十分な栄養が摂れませんし、手作りごはんは栄養バランスに偏りが出る可能性があります。

総合栄養食は水分量の違いでドライフードとウェットフードに分かれますが、お薦めしたいのはウェットフードフレッシュフードです。ドライフードのほうが保管しやすく与えるのも楽ですが、「長生きの可能性を高める」という点では食事から水分が取れることが重要だと考えます。


水分量の違い

ちなみに「ウェットフードはドライフードに比べて歯石が付きやすい」と言われることがありますが、それを裏付ける科学的なエビデンスはありません。ドライフードを食べていても歯周病になりますので、まずは歯磨きを頑張りましょう。




4. 食事量の最適化

ドッグフードのパッケージに書かれた「体重あたりの食事量」に従ってごはんを与えている飼い主さんも多いと思いますが、それはあくまで「目安」です。運動量や体質など犬ごと異なりますので、体重だけで食事量を決めることはできません

犬ごとの適量は、先ほど紹介した「BCS」(ボディコンディションスコア)の理想体型「BCS 3」が維持できている時に与えている量です。ですから、初めの目安としてパッケージに書かれた「体重あたりの食事量」を与えるのはいいのですが、そこから体型の変化に合わせてごはんの量を増減せていくことが重要です。

最適な食事量を知るためにペトコトフーズの「フード診断(無料)も参考になると思います。こちらも目安ですので、BCSや体重の変化を確認しながら、愛犬にとっての適正量を見つけるようにしてください。




5. 定期的な健康診断

一昔前は「動物病院は病気になったら行くところ」という考えが一般的でしたが、最近は予防医療の重要性が広く理解されるようになりました。何より、飼い主さんがおかしいと思うほど明らかな異変が見られるときは、病気がかなり進行していることが少なくありません

人も犬も、早期発見・早期治療は健康を維持していくために必要不可欠です。健康診断は定期的に行うようにしましょう。普段から愛犬の全身を触り、口や耳の中を見て、どんな行動をしているか観察して、「いつもと違う変化」に気付けるようにすることも大切です。




6. 感染症の予防

狂犬病の予防(狂犬病予防法により、年1回のワクチン接種が義務付けられています)や混合ワクチン接種、フィラリア予防、ノミ・マダニ対策も欠かさないようにしましょう。




7. 歯のケア

意外かもしれませんが、歯のケアは犬の寿命に大きく影響します。犬で注意すべきは虫歯ではなく「歯周病」で、これが原因で歯が抜けたり、顎の骨が折れたりすることがあります。

歯周病菌が血管に入って全身に広がると腎不全や心不全につながる可能性があります。特に、心臓病などの持病を持つシニア犬(老犬)はリスクが高まります。日常の歯磨きと定期的な歯石取りを心がけましょう。



参考:「A review of the frequency and impact of periodontal disease in dogs」(Journal of Small Animal Practice)、「​​Relation between periodontal disease and systemic diseases in dogs」(Research in Veterinary Science)


8. 不妊去勢手術

愛犬の二世を望まない場合は不妊去勢手術をすることが推奨されます。これによりオス犬では「睾丸の腫瘍」「前立腺のトラブル」「会陰ヘルニア」、メス犬では「乳腺腫瘍」「子宮蓄膿症」のリスクが減少します。

ベルギーのジェラルド・リッパー獣医師ら研究チームによる「長生きする犬とそうでない犬の違い」についての調査によると、不妊去勢手術の有無で寿命に2年近く(21カ月)の差が出ることがわかったそうです。

参考︰「Relation between the domestic dogs' well-being and life expectancy statistical essay


9. 中毒物質を避ける



人間が食べても問題ない食べ物でも、犬には有害なものがあります。中毒症状で死に至ることもありますし、体に深刻なダメージを与えてしまうこともあります。長期にわたって摂取することで時間がたってから症状が顕在化する場合もあります。

手作りの食事やおやつを与える際は、犬に適した食材かどうか、与える際の注意点がないかを確認しましょう。


10. ストレスのない環境



人間と同じく、犬もストレスが健康に影響を及ぼします。厚生労働省の定義によればストレスは「外部からの刺激による体の反応」で、ストレスには「良いストレス」と「悪いストレス」があります。

散歩でいろいろな匂いを嗅いだりノーズワークのような遊びで本能を刺激されたりすることは心身の活性化につながります。しかし、騒音や不衛生な環境、分離不安などは悪いストレスとなり、犬に悪影響を及ぼす可能性があります。

日常の観察を通じて犬のストレスサインに気づき、適切に対応することが心身の健康維持に欠かせません。

参考︰「ストレス」(厚生労働省)


寿命を縮める飼い主さんのNG行動

愛犬の寿命を縮めてしまうかもしれない飼い主さんのNG行動を3つ解説します。

1. 食いつきでドッグフードを選ぶ

愛犬のごはん選びで「食いつき」を重要視される飼い主さんは多いと思います。偏食で悩んでいる場合は何も食べないより食べるほうが良いのですが、ドッグフードの基本は「栄養がしっかり取れるごはんかどうか」であることを忘れないようにしてください。

人間でもジャンクフードに中毒性があるように、犬も添加物を多用すれば食いつきを良くすることはできてしまいます。愛犬にとって健康的なごはんなのかどうか、必ず以下の点をチェックするようにしましょう。

  • どんな食材が使われているか
  • どこで調理されているか
  • 余計な添加物が入っていないか
  • 専門家がレシピをつくっているか
  • どんな思想でつくられたものか


2.散歩の時間を十分に取らない



長生きの秘訣でも「適度な運動」として挙げましたが、毎日のお散歩は犬にとって重要な意味を持ちます。超小型犬でも散歩は必要ですし、「週末にまとめて運動させれば大丈夫」ということもありません。

犬の健康維持のためにも、毎日の散歩を欠かさないようにしましょう。


3. 事故のリスクを高める飼い方

事故は直接的に愛犬の寿命を縮めてしまうかもしれません。例えば外飼いは天候の変化や感染症、他の動物とのトラブル、悪意のある人からの危害などのリスクがあります。もちろん家の中でも階段や家具など怪我をしないための注意は必要です。

散歩中は必ずリードをしましょう。最近よく見る伸縮リードは、犬が急に走り出したときに飼い主さんがコントロールしづらく、街中での使用は適していません。

誤飲・誤食のリスクは、飼い主さんが直接与える場合だけでなく、つまみ食いや家族、来客者からこっそりと与えられるケースも考慮に入れるべきです。

まとめ


体に良いごはんを選んであげる
散歩を欠かさず適度に運動する
病気予防で動物病院へ行く
愛犬のことを触って観察する
1980年にわずか2.6歳だった犬の平均寿命は、2022年には14.76歳にまで延びました。20歳を超える犬はまだまだ珍しい存在ですが、少しずつ増えています。ポルトガルのボビくんに至っては、30歳を超えて最高齢のギネス記録を更新したそうです。

たった数十年で平均寿命が驚異的に延びた背景には、「ドッグフードの品質向上」や「室内飼いの増加」「獣医療の発展」「犬が家族の一員として扱われるようになった」といったさまざまな要因が考えられます。

すべて今回解説した秘訣に共通していることです。それらを実践していただき、みなさんの愛犬も元気に過ごして長生きしていただければ幸いです。

※参考︰家庭動物(犬猫)の高齢化対策」(日獣会誌)、「令和4年 全国犬猫飼育実態調査」(ペットフード協会)、「ポルトガルに住む犬「ボビ」が史上最高齢の犬に認定」(Guinness World Records)


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