猫パルボウイルス感染症(猫汎白血球減少症)|検査・治療、予防方法を獣医師が解説

猫パルボウイルス感染症(猫汎白血球減少症)|検査・治療、予防方法を獣医師が解説

猫パルボウイルス感染症、正式名称「猫汎白血球減少症」に子猫がかかると、特効薬がないため、治療が遅れれば、体力が奪われて死亡することがあります。また、この病気の原因のパルボウイルスは、外の環境でも数カ月間、感染する能力を維持できる非常に恐ろしい伝染病ウイルスです。人間や犬など、他の種族に感染することはあるのか、完治するのか、感染経路、検査・診断方法、治療方法まで、猫汎白血球減少症について詳しく野坂獣医科院長の野坂が解説します。

猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症)とは

本を見る猫

猫汎白血球減少症は世界中で発生しており、さらに古い病気で、約100年前から存在が報告されています。そのため、いろいろな名前で呼ばれてきました。臨床症状から、猫ジステンパーや猫パルボ腸炎、猫伝染性腸炎と呼ばれたり、血液検査所見から、猫顆粒球減少症、猫伝染性無白血球症、猫汎白血球減少症と呼ばれたりしてきました。現在は、猫汎白血球減少症と呼ばれています。

主な症状

一番の特徴は、子猫の感受性が強く、さらに死亡率が高いことです。全ての年齢の猫が感染しますが、若齢の猫ほど典型的な症状を示し、死亡率が高いので、若齢期は注意が必要です。感染すると、嘔吐下痢症状が急激にみられます。免疫応答が十分でない場合や、治療をしない場合には、極度の脱水や二次感染による症状の悪化により、死亡することも珍しくありません。その他にも、貧血、リンパ球減少症、好中球減少症、血小板減少症、免疫抑制、運動失調、流産などがみられることもあります。

潜伏期間

潜伏期間は通常4〜6日ですが、早ければ2〜3日で発熱、元気消失、食欲減退などの症状を示します。回復後も数週間にわたって、糞便中や尿中に排泄されることがあります。

ウイルスの特徴

猫汎白血球減少症ウイルスは、非常に抵抗力の強いウイルスで、室温で数カ月も感染力を維持できます。そのため、動物病院やペットショップ、猫カフェなどがウイルスで汚染した場合には、床、壁、トイレやケージなどの念入りな清掃と消毒が必要です。



若齢の猫ほど危険

猫汎白血球減少症ウイルスは、世界中で認められ、日本にも常在しています。イタチ科、アライグマ科、ネコ科動物に感染しますが、ヒトやイヌ科動物には感染しません。特異的な免疫を持っていない猫は、全ての年齢で感染しますが、若齢の猫ほど典型的な症状を示し、死亡率が高くなります。ワクチンを注射したことのなく、抗体を持っていない妊娠猫が感染した場合、死産や流産が見られます。

また、生まれてきても、小脳の形成不全などの原因で運動失調症を呈していることがあります。分娩直後の初乳をあまり飲んでいない子猫が感染した場合は、小脳の形成不全による運動失調や、免疫機能が未発達のまま成長したり、激しい下痢を起こすことがあります。また、初乳を飲んだ場合でも、母親からの抗体が無くなり、さらにワクチン未接種で感染すれば、免疫不全となり、激しい下痢や嘔吐がみられます。山間部や孤島で発生歴の無い地域の猫に、このウイルスが侵入すれば、成猫でも爆発的な発生や流行が起こる危険性があります。

猫汎白血球減少症の感染経路

舐める猫

胎盤感染もありますが、感染経路で最も多いのは、間接的な伝搬で、経口による感染です。自然下での抵抗性が非常に強いウイルスなので、猫の嘔吐物や下痢に直接触らなくても、感染猫のいる場所にある食器、おもちゃや毛布などから間接的に感染します。また、ノミやマダニなどの寄生虫による間接的な感染も可能です。イタチ科、アライグマ科、ネコ科動物に感染しますが、ヒトやイヌ科動物には感染しません。しかし、ヒトや飼い犬がウイルスを運ぶことがあります。

多頭飼いの1匹が感染したら

全年齢の猫に感染するウイルスで、自然下での抵抗性が非常に強く、多頭飼いの場合、ワクチンを接種しないのはリスクがあります。多頭飼育の中の1匹が感染し、治癒した場合でも数週間にわたって、糞便中や尿中に排泄されることがあります。また、このウイルスは非常に抵抗力の強いウイルスで、室温で数カ月も感染力を維持できます。そのため、多頭飼育の中の1匹が感染した場合には感染猫を隔離し、食器、床、壁、トイレやケージなどの念入りな清掃と消毒が必要です。ヒトがウイルスを運ぶことがあるので、マスクや手袋を用いて作業します。消毒には、殺菌力の強い塩素系の消毒液を使用します。オートクレーブ(※)が可能であれば、滅菌することもあります。

※内部を高圧力にすることが可能な耐圧性の装置を用いて行う処理のこと


猫汎白血球減少症の検査・診断方法

動物病院内で診断できる検査キットが、国内で販売されていないため、総合的に判断します。地域の発生状況やワクチンの接種歴や同居猫の状況を理解しながら、臨床症状を調べます。発熱や食欲減退、元気消失、下痢、嘔吐などの有無を確認し、血液検査を行ない、白血球の減少を確認します。また、外注検査でウイルスの抗原や抗体、ウイルスの遺伝子の有無を調べたり、ウイルスの遺伝子を探したりします。

排泄物のとり方

動物病院で検査する際に便などの排泄物を持参したほうが、より正確な診断ができます。排泄物の持参をするか否かはかかりつけの動物病院にて確認することをおすすめします。必要な場合、排泄物をペットシーツで丸ごと包み、ビニール袋に入れて持っていきましょう。多頭飼いの家庭では、嘔吐物や便などの排泄物に他のペットを近付かせないようにしましょう。もしも、感染症であれば、他のペットに二次感染を招く可能性があります。排泄物の採取時はゴム手袋を装着するなどし、排泄物を触った手でいろいろなものを触らないようにしましょう。下痢便の固さや色、新鮮な血液の有無、嘔吐物の色や状態を確認し、排泄物を写真に撮るなどして、動物病院を受診する際に獣医さんに正確に伝えましょう。



猫汎白血球減少症の治療方法

振り返る猫

発症したら、入院し、治療することになります。治療中に、回復できず、死亡することもあります。子猫の場合、死亡率の高い病気です。ウイルスへの特効薬はありません。したがって、下痢、嘔吐、脱水、低血糖などに対する対症療法(輸液療法、制吐薬、栄養剤)になります。また、白血球の減少や貧血があれば、他の猫の血液を輸血することもあります。さらに、インターフェロン、広域に効く抗生物質を投与することもあります。

子猫が嘔吐や下痢をするたびに体温が奪われます。また、吐瀉物や下痢便が身体に付着し濡れればさらに体温は低下します。さらに脱水も重なり、体力を消耗し、死亡することがあるため動物病院での診察が必要になります。なるべく、感染初期に診察してもらいましょう。

猫汎白血球減少症の予後

発症後、血液中に抗体が出現し、さらに抗体が増加すれば回復に向かいます。回復しても、数カ月の間、糞便中や尿中にウイルスを排泄することがあります。回復後、獲得した免疫が無くなるまで時間はかかりますが、再発が全くないというわけではありません。再発しないためには、回復後も引き続き、予防することがオススメです。

また、後遺症がないというわけではありません。胎子や新生子では運動失調症や免疫機能低下が問題になるので、妊娠猫や新生子は注意が必要です。また、胎子の時期に感染すると、生後ウイルスを長期間排泄し続ける「免疫寛容」という状態になることもあります。

猫汎白血球減少症の予防

こちらを見る猫

年1回のワクチンによって予防が可能な病気なので、動物病院で注射して予防しましょう。自然下でも数カ月間生存でき、感染力が強いウイルスなので、病気の猫と直接接触しなくても、靴の裏などについた排泄物中のウイルスが間接的に感染してしまう危険性があります。完全室内飼いの猫であっても、間接的な感染を防ぐため、ワクチンを接種して免疫力を維持しておきましょう。

国内には、不活化ワクチンと生ワクチンが販売されています。猫ヘルペスウイルスと猫カリシウイルスの抗原、パルボウイルスの抗原の入った3種ワクチンや、また、それ以上の抗原が入り、病気を予防するワクチンが販売されています。注射するワクチンの副作用については、動物病院で獣医師によく聞き、副作用がみられたと判断したら、動物病院へ連絡し、獣医師へ連絡しましょう。

ワクチンは、生きたウイルスやウイルスの一部を抗原として猫の体内へ注射することで、そのウイルスに対する抗体を作るものなので、ウイルスの消毒や滅菌を期待できるものではないことを理解しましょう。パルボウイルスの除菌には、清掃や消毒、滅菌をします。新生児や妊娠猫などのワクチンの用法以外の注射方法を行なうことで、罹患する可能性があります。妊娠の可能性がある場合は、動物病院の獣医師と相談しましょう。

ワクチンを用法用量通りに接種していれば、発症する可能性は少ないのですが、まれに、ワクチン接種した猫でもパルボウイルスに感染し、発症することがあります。下痢嘔吐などをしている野良猫やその排泄物には近づかないようにしましょう。



猫汎白血球減少症に良い食事・サプリメント

回復期には高栄養食、消化の良いフードなどで少量の食餌から開始し、徐々に食餌をいつも通りのものに戻していくといいでしょう。

適切なワクチン接種を

猫

猫汎白血球減少症は、特効薬が無く、子猫が発症すれば、死亡率の高い恐ろしい伝染病です。回復しても、ウイルスを排泄していることもあるので、多頭飼いの猫は注意が必要です。また、伝染力が強く、完全室内飼いの猫でも感染する可能性のあるので、1頭飼いでも注意が必要です。この病気だけでなく、他の病気も含めて、病気を理解しておきましょう。また、適切なワクチン接種を毎年行い、愛猫が免疫力を維持できるようにしてあげましょう。

参考文献

  • Lammら, Parvovirus infection in domestic companion animals., Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2008 Jul;38(4):837-50
  • 湯木,犬と猫の治療ガイド2015 私はこうしている,295-297

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