猫コクシジウム症|症状・原因・治療法・人や犬への感染などについて獣医師が解説

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猫コクシジウム症という病気を聞いたことはありますでしょうか。猫がコクシジウムに感染しても、感染猫が健康であれば、無症状のことが多いため、猫の飼い主さんでもあまり耳にしないのかもしれません。しかし、この寄生虫は世界中に、そして国内にも存在しています。子猫が感染すると下痢や血便を引き起こし、重篤化すると死亡することもある恐ろしい病気です。抵抗力の高いコクシジウムですが、コクシジウムの感染力、人や犬にうつるのか、猫コクシジウム症の症状や治療方法、予防法、多頭飼いの場合の注意点などについて、野坂獣医科院長獣医師の野坂昭文が解説します。

猫コクシジウム症の症状

コクシジウムは、寄生虫(原虫)です。猫コクシジウム症は、この寄生虫が猫の小腸に寄生し、増殖することで起こる病気のことです。主な症状としては、小腸に寄生するので、基本的に水様性の下痢などの消化器症状がみられます。コクシジウム以外の二次感染が起きた場合や、感染猫の免疫が低下した場合には、血便、貧血、栄養失調、脱水、削痩(さくそう)などの症状がみられます。

猫コクシジウム症の原因・感染について

遠くから見つめる猫

コクシジウムは、全世界に分布しており、国内にも分布しています。国内の調査では、約10%の猫が感染しているそうです。コクシジウムは、ネコ科動物とげっ歯類に感染します。成猫が感染しても、健康であれば症状を示さないことがほとんどです。幼猫が感染した場合、重篤になるので注意が必要です。げっ歯類が感染した場合、猫が捕食することで感染が成立します。また、多頭飼いの場合、多くの猫が一度に感染するために注意が必要です。

猫コクシジウム症に感染する主な原因

主な原因としては「直接感染」と「間接感染」があります。直接感染では感染猫の糞便中に排出されたオーシスト(※)を経口摂取することで、感染する場合がほとんどです。間接感染の場合はオーシストを食べたげっ歯類などの非固有宿主を捕食しての感染もあります。

※オーシスト:卵のような形態(接合子嚢ともいう)の病原体


人や犬への感染について

猫コクシジウム症は人や犬へ感染することはありません。犬と猫で比較的よくみられるコクシジウムはシストイソスポーラ(Cystoisospora)属原虫で、種特異性があります。犬に感染するのは「犬イソスポーラ(Cystoisospora canis)」「オハイオイソスポーラ(Cystoisospora ohioensis)」で、猫と人には感染しません。猫に感染するのは「猫イソスポーラ(Cystoisospora felis)」「リボルタイソスポーラ(Cystoisospora rivolta)」で、犬と人に感染しません。

多頭飼いの場合

コクシジウムが感染しても、健康であれば多くの場合、症状がみられません。多頭飼いの場合、1匹が感染しても症状がみられなければ、大抵の場合気づきません。また、多くの健康な猫が感染しても気づかないことがほとんどです。

しかし、このような状況では、季節の変わり目やストレスなどで免疫力が低下したときに、多くの猫でコクシジウム症が発症します。さらに、感染猫の糞便中に排出されたオーシストを他の健康猫が経口摂取することで次々と感染が広がります。多頭飼いの飼い主さんは、他の病気も含めて感染症には注意が必要です。

猫コクシジウム症の検査・診断方法

猫の横顔

通常は糞便中にオーシストが排泄されるので、糞便検査を行います。この検査は排泄物を用いて検査するため、猫に与えるストレスや障害が少なくてすみます。しかし、糞便検査は万能の検査ではありません。糞便を直接塗抹し、検査する方法は、短時間で検査ができますが、大量の糞便を検査することが難しく、オーシストを見落とす可能性があります。

その他に糞便中のオーシストを浮遊させる方法がありますが、これはオーシストを見落とす可能性は少なくなりますが、多くの糞便が必要であり、時間がかかります。ときどき、小さなオーシストが混在しているときがあります。その場合、人にも感染するトキソプラズマなど、他の寄生虫の感染の可能性もあるので注意が必要です。

糞便検査のため採便は、新鮮なものが良いので、採便方法や準備物は動物病院の獣医師と相談してみましょう。そして、採便した糞便で検査を行います。検査後、コクシジウムが見つからなくても安心はできません。糞便中にコクシジウムがいない時期があるからです。また、コクシジウムが糞便全体に均等に分布しているわけではないので、見落とすこともあります。そのため、時間を空けて、定期的に検査することで、コクシジウムが見つかることもあります。

猫コクシジウム症の治療方法

横になった猫

従来の治療法では、サルファ剤を1週間程度投与する方法が行われてきました。最近では、トルトラズルという薬が単回投与で幅広い寄生虫の成長段階に効果が認められ、使用されています。しかし、効能外の使用方法であるため、幼猫での使用は特に注意が必要です。

下痢をしていることもあるので、下痢の治療も行いながら、投薬を行います。治療後に糞便検査をし、オーシストが見つからなくても、一定期間経過すると、再度オーシストが見つかることもあります。定期的に糞便検査を行いながら、治療期間を決めていきますので、動物病院の獣医師によく相談しましょう。

猫コクシジウム症の予後

完治したとしても、猫コクシジウム症の再発の可能性はあります。そのため、多頭飼育の場合は、発症猫のオーシスト排泄が終了したことをしっかりと確認してから、元の飼育状態に戻しましょう。子猫に感染し、重篤化した場合、嘔吐や血便、脱水症状などがみられますので、しばらく、後遺症がみられるかもしれません。

猫コクシジウム症の予防

上目遣いの猫

国内にワクチンは販売されていません。猫の糞便検査を行ない、感染の有無を検査します。特に子猫が感染すると重篤になるので、猫を妊娠させるのであれば、生まれてきた子猫に母子感染しないように、事前に糞便検査を行うなどの検査や駆虫を行いましょう。感染猫を増やさないように、糞便の処理を適切に行ないましょう。

感染猫を治療しても、環境中のオーシストを死滅することはできません。また、オーシストの抵抗性は強く、アルコールや消毒剤では駆除できません。そのため、清掃を行いながら、可能ならば焼却や煮沸によって処理します。

猫コクシジウム症に良い食事

下痢をしているのであれば、消化の良いフードなどで少量の食餌から開始し、徐々に食餌をいつも通りのものに戻していくのがよいでしょう。

猫コクシジウム症は予防できます

振り返る猫

猫コクシジウム症は子猫が感染すると下痢を起こし、重篤化すると死亡することもある恐ろしい病気ですが、症状や検査方法、予防法などを理解すれば、発症し、重篤化することを予防することができます。この病気だけでなく、他の病気も含めて、予防できる病気は予防していきましょう。

参考文献

  • Salmanら, Prevalence of Toxoplasma gondii and other intestinal parasites in cats in Tokachi sub-prefecture, Japan., J. Vet. Med. Sci. 80(6): 960–967, 2018
  • Lappin, Update on the diagnosis and management of Isospora spp infections in dogs and cats., Top Companion Anim Med. 2010 Aug;25(3):133-5
  • Yamamotoら, Prevalence of Intestinal Canine and Feline Parasites in Saitama Prefecture, Japan., the journal of the Japanese Association for Infectious Diseases 83(3), 223-228, 2009-05-20