
ドッグフードの選び方|獣医がオススメする本当に良い犬のごはんとは
愛犬のごはん選びは値段や原材料の違いから子犬用やシニア用など年齢別、チワワ用・柴犬用といった犬種別まで、迷ってしまう方が少なくありません。そこで今回は獣医栄養学専門医のニック先生と獣医循環器認定医の佐藤先生監修のもと、ペット栄養管理士がドッグフードの選び方を解説します。#犬の食育
ドッグフード選びの基本

ドッグフードは何を選べばいい?と聞かれれば、「ワンちゃんごとに異なる」というのが答えになってしまうのですが、基本として抑えていただきたいポイントが3つあります。
- 総合栄養食を選ぶ
- 原材料表示を見て選ぶ
- 新鮮なものを選ぶ
1. 総合栄養食を選ぶ

最初にお伝えしたいのは、「総合栄養食を選ぶ」ということ。総合栄養食というのは、一般的にAAFCO(米国飼料検査官協会)が定める犬の栄養基準に沿ったごはんを指します。
毎日いろいろな料理から栄養を摂取する私たちと違って、犬はある程度メニューが決まったごはんを食べています。そのため栄養が偏っていれば、あるビタミンやミネラルが常に足りないといった状態になってしまいます。
そこで、これだけ食べていれば犬に必要な栄養を過不足なく摂ることができるごはんとして生まれたのが、「総合栄養食」です。獣医師から療法食の指示がない限りは、総合栄養食を選ぶようにしてください。
手作りごはんはダメ?

オクラとエビのふんわり天津飯
愛犬のために手作りごはんを食べさせたいと思う飼い主さんもいると思います。私たちと同じように、犬もいろいろな料理から栄養を摂取するのは理想的と言えます。しかし、注意しなければいけないのは、「人は人、犬は犬」ということです。
人と犬の栄養学は異なりますので、犬の栄養学についてしっかり学ばなければ栄養の偏ったごはんを食べさせてしまうかもしれません。実際、京都大学が行った調査で80%以上の手作りレシピに栄養の過不足があったことがわかっています(※)。
体を壊してから原因は手作りごはんだったと気づいては、犬も飼い主さんも不幸です。手作りごはんは理想ではありますが、簡単にはオススメできません。
※参照:「イヌの維持期用手作り食のレシピ調査―手作り食に含まれる栄養素量―」「維持期におけるイヌ用手作り食レシピの栄養素含量調査」(ペット栄養学会誌)
ローフードもダメ?

犬はもともと肉食なので、生肉を食べさせるのがいいという考え方が最近の流行りとしてあります。いわゆる「ローフード」と呼ばれるものですが、これも二つの点からオススメできません。
一つは、感染症の懸念があること。これは犬だけでなく、飼い主さんにも関係します。ある調査では、生肉を使ったフードを食べていた犬のうんちから人に感染する可能性のある細菌が見つかっています。
もう一つは、生肉を与えるメリットが特に無いことです。消化率は生肉のほうがわずかに高いものの、生肉だから栄養がより摂取できるわけではありません。必要なミネラルが摂取できないというデメリットもあります。
メリットよりデメリットのほうが多いというのがローフードの現状です。
※参照:「Are raw pet foods better than canned or kibble foods?」(American College of Veterinary Nutrition)
2. 原材料表示を見て選ぶ

原材料表示はドッグフードを選ぶ際に欠かせない情報ですが、どう見ればいいのかよくわからない方もいると思います。基本となるポイントは3つあります。
- 主原料は何か
- どんな添加物が入っているか
- レシピは信頼できるか
2-1. 主原料は何か
基本的に原材料表示は含まれる量が多い順に記載されています。つまりチキン味であれば最初は「鶏肉」と書かれているはずです。しかし、安いドッグフードでは「穀類」「とうもろこし」「小麦粉」といったかさ増し食材が最初になっている場合もあります。もちろん穀物が栄養として悪いわけではありません。なぜ主原料に穀物を選んでいるのかを考えることで、「安い原料で大量生産したい」のか、「美味しいお肉を食べさせたい」のかドッグフードメーカーの目的を知るヒントになるのです。
肉類が最初に書かれていても、「◯◯ミール」と書かれているものはオススメしません。いろいろな部位の寄せ集めで、家畜の飼料として一般的に使われています。一概に悪いものとは言えませんが、家族の一員である愛犬には質の良いお肉を食べさせたいですよね。
2-2. どんな添加物が入っているか

添加物=悪いものというイメージあるかもしれませんが、それは間違いです。添加物が無ければ食中毒の危険がもっと身近に迫り、食料の長期保存もできずに生活しにくくなってしまうことでしょう。大切なのは、「なぜ使われているのか」を考えることです。
- 犬のため:食材から摂取が難しいビタミンやミネラルを補うことができる
- 飼い主のため:美味しそうに見える、色が綺麗でかわいい、長期保存できる
- 作り手のため:食いつきがよくなる、賞味期限を長くできる
犬のためを考えるのであれば、飼い主さんの購買意欲を高める「着色料」(残念ながら「かわいい形」や「かわいい色」をしているほうが売れるのです)は余計な添加物です。食いつきを良くする「動物性油脂」や「香料」も、ごはんが美味しければ必要ないものです。
それらが入っているから犬の体に悪いとも言えませんが、犬のためにならないものをごはんに入れる作り手が良い作り手と言えるでしょうか? どんな添加物を使っているかが、信頼できるドッグフードメーカーを判断する基準の一つになります。
2-3. レシピは信頼できるか
少し前まで穀物を使わない「グレインフリー」のドッグフードが流行っていました。穀物アレルギーの犬以外には必要無いのですが、「何となく良さそう」と売れるので流行っていました。犬のことよりも売ることを優先するドッグフードメーカーは信用できませんよね。ごはんは愛犬の健康に直結するものですから、何となく良さそうなものより本当に体に良いものを食べさせてあげたいもの。想いだけでなく、正しい知識で作られたレシピかどうかで判断しなければいけません。
その判断の一つに「肩書き」があると思います。きちんと獣医師が監修しているのか。その獣医師は栄養学を専門にしているのか。例えば小動物栄養学博士や獣医栄養学専門医など専門の資格を持っているかで判断するといいでしょう。
3. 新鮮なものを選ぶ

飼い主さんの多くが「犬のごはんはドライフードが基本」というイメージを持っていると思います。確かにドライフードは「買いやすく・保存しやすく・与えやすい」と三拍子そろった飼い主さんの味方です。しかし、それは犬の味方でもあるのでしょうか?
ベルギーでドライフードを食べていた犬と手作りごはんを食べていた犬の寿命を調べた研究があるのですが、その結果は手作りごはんを食べている犬のほうが3年近く長生きしていたというものでした。
研究チームは、手作りのほうが食材が新鮮で栄養の吸収率が高いこと、市販フードは高温加熱や成型の際に栄養が失われる・余計な添加物が入っていることが原因ではないかと考察しています(※)。
しかし、手作りごはんも栄養バランスが偏るリスクがあります。そのため最近は、新鮮な食材を必要最低限の加熱と加工で冷凍したウェットフードの進化系「フレッシュフード」が販売されています。愛犬に長生きしてほしいと思う飼い主さんにオススメです。
年齢ごとに最適なドッグフードの選び方
年齢の違いは大きく「子犬期」「成犬期」「シニア期」の3つにわかれ、それぞれで食べるべきものが変わってきます。子犬期

子犬の時期はサイズによって異なり、小型犬だと9〜12カ月、中・大型犬だと12〜18カ月で成犬になります。子犬期は体をつくるため多くの栄養が必要となり、特にタンパク質やカルシウム、リン、マグネシウムなどが欠かせません。
子犬用、もしくは全犬種・全年齢対応の総合栄養食を選ぶようにしてください。ここで重要なのは「栄養」だけでなく、「摂取カロリー」です。どんなに栄養満点でも、量が足りなければ健康に育つことができません。
PETOKOTO FOODSの「フード診断」(無料)で簡単に1日の最適カロリー量を知ることができます。子犬期はどんどん成長しますので、2週間に1回は体重を量り、最適カロリー量を確認するようにしてください。
成犬期

成犬期になって成長が落ち着くと、必要な栄養やエネルギー量は子犬期よりも少なくなります。食欲は変わらない子から少なくなる子までそれぞれですが、与え過ぎは肥満の原因になりますので適量を与えるようにしましょう。
自我が強くなることで好き嫌いが強くなることもあります。好んで食べるからといって、おやつばかり与えてはいけません。私たちもジャンクフードばかり食べていれば不健康になるのと同じように、食いつきが良いことと健康はイコールではありません。
シニア期

シニア期は小型犬だと6〜7歳、中・大型犬だと5〜7歳くらいから始まりますが、初期は今まで通り元気な子がほとんどでしょう。シニア期の中でも小型犬で11歳くらいから、中・大型犬で8歳くらいからを「老齢期・高齢期・老犬期」と呼ぶこともあります。
シニア期に入ると以前に比べて活動量が減ってきます。食事の量や内容が変わらないまま活動量だけが減ってしまえば肥満につながります。活動量だけでなく食欲も落ちてくると、今度は少ない食事で多くの栄養を摂らなければ痩せ過ぎてしまいます。
シニア期では活動量や食欲の変化に合わせたごはん選びが大切です。また、何かしら病気があってもおかしくない年齢です。その子の体にあった食事を与えることが望ましいと言えるでしょう。
ドッグフード選びでよくある質問

ここまで選び方の基本と年齢別の考え方を説明しましたが、よく頂く質問についても解説します。
Q. 1:ドッグフードを変えるとお腹を壊すのはなぜ?
いろいろなドッグフードを試しているものの、なかなか納得のいくフードに出会えない方に多い質問です。「美味しそうに食べたけど、お腹を壊して合わないのでやめた」という話をよく聞きます。まず、フードを変える際は少しずつ変えることが大切です。私たちは毎日いろいろなごはんを食べるので腸内環境が鍛えられていますが、同じものを食べ続けている犬は違います。新しいごはんにびっくりしてお腹を壊してしまうのです。
急にフードを変えてお腹を壊すのは当たり前で、なるべく壊さないよういつものごはんと少しずつ置き換えながら与えるようにしてください。
Q. 2:涙やけが酷いのはドッグフードのせい?

ドッグフードの変更で涙やけが改善したみるくちゃん
涙やけ(流涙症)の原因はさまざまあり、食事が原因とは限りません。まずは動物病院で診てもらうようにしてください。それでも原因がわからない場合、食事が原因の可能性を考えるのがいいでしょう。
食事で涙やけが起こる原因として、アレルギーや油が考えられます。アレルギーの場合は涙やけに限らず、体の痒みが出ていることが多くあります。油の場合は、酸化した油や質の悪い油によって分泌腺が詰まるせいではないかと考えられています。
ドライフードは食いつきを良くするための動物性油脂が添加され、長期保存によって油が酸化しやすくなっています。ドライフードを与えている場合は、油の少ないフレッシュフードに変えてみると改善するかもしれません。
Q. 3:すぐ食べ飽きするのはどうすればいい?

ハンガーストライキ中のくろまめちゃん
もしかしたら食べない理由は飼い主さんにあるかもしれません。食べないからといってすぐ別のごはんを与えたり、おやつを与えたりしていないでしょうか? 犬は「我慢すれば美味しいごはんがもらえる」と学習しているかもしれません。
食べなかったら片付け、おやつも飼い主さんのタイミングで決めた量しか与えないようにしてください。「これを食べなければ他にごはんはないんだ」とわかれば、出されたごはんを食べるようになります。
犬も美味しいごはんを食べたいと思っていますので、食いつきが良くない場合は焦らず満足するごはんを探すといいでしょう。ただし、急に食べなくなったり、いつまでも食べない場合は病気の可能性もありますので注意してください。
【動画解説】ドッグフードの選び方・切り替え方
YouTubeのPETOKOTOチャンネルでは、獣医師の佐藤先生がドッグフードの選び方やドッグフードの切り替え方について解説した動画を公開しています。あわせてご覧ください。気になることがあれば専門家に聞いてみよう!

InstagramのPETOKOTO FOODSアカウント(@petokotofoods)では、獣医師やペット栄養管理士が出演する「食のお悩み相談会」を定期開催しています。愛犬のごはんについて気になることがある方は、ぜひご参加ください。
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この記事を監修している専門家
ニック・ケイブ(Nick Cave)獣医師
ニュージーランド・マッセー大学獣医学部准教授、米国獣医栄養学専門医
マッセー大学獣医学部小動物内科にて一般診療に従事した後、2000年に獣医学修士を取得(卒業論文は『食物アレルギーの犬と猫の栄養管理』)。2004年よりカリフォルニア大学デービス校で栄養学と免疫学の博士号を取得し、小動物学臨床栄養の研修を修了。同年、米国獣医師栄養学会より米国獣医栄養学専門医に認定。2005年より小動物医学および栄養学の准教授、獣医栄養学の専門医としてマッセー大学に戻る。家族、2匹の犬、猫、そしてヤモリと暮らしている。
佐藤貴紀獣医師
目黒アニマルメディカルセンター/MAMeC院長。獣医循環器学会認定医
麻布大学獣医学部卒業後、2007年dogdays東京ミッドタウンクリニック副院長に就任。2008年FORPETS 代表取締役 兼 白金高輪動物病院院長に就任。2010年獣医循環器学会認定医取得。2011年中央アニマルクリニックを附属病院として設立し、総院長に就任(現在は顧問獣医師)。2017年JVCCに参画し、取締役に就任。子会社JVCC動物病院グループ株式会社代表取締役を兼任。2019年WOLVES Hand 取締役 兼 目黒アニマルメディカルセンター/MAMeC院長。「一生のかかりつけの医師」を推奨するとともに、専門分野治療、予防医療に力をいれている。