【獣医師執筆】犬の内耳炎|原因や症状、検査方法、治療法などについて

【獣医師執筆】犬の内耳炎|原因や症状、検査方法、治療法などについて

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犬の内耳炎は外耳炎が悪化して起こることが多く、平衡感覚に関わる器官でもあるため斜頸や眼振などの神経症状が見られる場合があります。脳に近いことから放置すると脳炎につながり、最悪死に至ることもあります。犬の内耳炎の原因や治療法、予防法ついて、獣医師の佐藤が解説します。

犬の内耳炎とは

犬の耳の構造

犬の内耳炎は、犬の内耳に炎症が起こった状態のことです。内耳炎の多くは細菌感染による外耳炎が悪化して中耳炎、内耳炎と進行することで起こります。

内耳炎の犬は耳を掻いたり、異臭がしたりといった耳の異変が見られ、斜頸や眼振旋回といった「前庭疾患」と呼ばれる神経症状が見られる場合もあります。内耳炎を放置すると聴力を失ったり、脳炎などに進行することで死亡する可能性があるので注意が必要な病気です。


犬の内耳とは

犬の耳は「外耳」「中耳」「内耳」に分けられ、それぞれが異なる機能を持っています。外耳が捉えた音は鼓膜を振動させ、中耳はその振動を増幅して内耳に送り、内耳は振動を神経信号に変換して脳に送ります。

内耳は半規管、前庭、蝸牛(かぎゅう)からなり、聴覚だけでなく平衡感覚にも関わります。そのため、内耳炎が起こると行動や反応に異変が見られるようになるのです。

犬の内耳の構造
内耳

内耳炎になりやすい犬種

内耳炎は年齢や犬種を問わず発症する可能性がある病気です。原因の多くが外耳炎・中耳炎であることから、中耳炎が起こりやすいレトリーバー種やスパニエル種、ダックスフンド、マルチーズ、ミニチュアシュナウザー、キャバリア、ビーグルなど垂れ耳の犬は特に耳のケアを心掛けていただくといいでしょう


犬の内耳炎の症状

レトリーバー

内耳炎になると「痛みによる異変」や「神経症状による異変」前庭疾患が見られるようになります。以下の症状が見られた場合は、早急に獣医に相談することをお勧めします。

痛みによる異変

  • 頭を振る
  • 耳を掻く
  • 耳が臭い
  • 食欲不振
  • 元気がない
  • 嘔吐
  • よだれが出る
  • 耳を触られるのを嫌がる(耳の痛み)

神経症状による異変



犬の内耳炎の原因

ミニチュアシュナウザー

犬の内耳炎の多くは細菌や真菌の感染やによる外耳炎中耳炎に続いて起こります。その他、以下の原因で起こる場合もあります。

  • 鼓膜の破裂
  • 異物混入
  • アレルギー
  • 腫瘍
  • 外傷
  • 不適切な耳掃除
  • 先天的な構造異常

神経症状(前庭疾患)が見られる場合、検査をしても原因がわからない特発性であることが少なくありません。

犬の内耳炎の検査・治療法

治療を受けるハナ

耳の異常が疑われる場合、耳鏡やビデオオトスコープ(VOS)で確認しますが、内耳炎は鼓膜の奥で起こるため目視することができませんX線(レントゲン)などの画像診断が必要となり、神経症状が出ている場合は麻酔を使用したCT、MRI検査を行う場合もあります。

外耳炎や中耳炎が起きている場合はその治療を行います。炎症が起きている原因に応じて抗生物質や抗真菌薬、ステロイド(抗炎症薬)などを使用します。

神経症状が見られる場合、ビデオオトスコープによって検査します。その場合の費用は約10万円程度です。重度の場合は、鼓膜を開けて直に内耳へアプローチする外科手術が必要になります。その手術費用は、約50万円程度です。基本的には、ペット保険の適用となります。

原因がわからない特発性では、経過観察になることもあります。若い年齢であれば精密な検査をしたり、原因がわかれば手術をしたりといった選択肢も多いのですが、高齢になるほど体への負担を天秤にかけて考える必要があります。

対症療法だけで自然と良くなるケースもありますし、日々のサポートでQOL(生活の質)を保つこともできます。しかし、放置したことで完治する期間が遅くなるケースもみられます。どのような治療方針にするかはかかりつけの先生とよく相談して決めるといいでしょう。

犬の内耳炎の予防法・ケア

犬の内耳炎の多くは外耳炎から起こるため、日頃から耳を清潔にしておくことが外耳炎・中耳炎、内耳炎の予防につながります。ただし、不適切な耳掃除が原因で炎症が起こることもありますので、関連記事や以下のペトコトメディアのYoutube動画を参考にしていただくといいでしょう。





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犬の内耳炎は異変に気づいたらすぐに病院へ

垂れ耳の犬
内耳炎の多くは外耳炎が進行して起こる
神経症状が出る場合は特に要注意
日頃の耳掃除が予防につながる
いつもと違う様子があれば病院へ
犬の内耳炎は多くが外耳炎、中耳炎に続いて起こります。内耳は平衡感覚に関わる器官でもあるため、斜頸や眼振、旋回などの異変が見られる場合はすぐに病院へ行くようにしてください。日頃から耳掃除をすることが予防になり、特に垂れ耳のワンちゃんは炎症を起こしやすいため注意が必要です。