犬の脳の病気|症状や原因、対処法を獣医師が解説
犬の脳の病気は「痙攣」や「ふらついて歩けない」「斜頸」「眼振」といった症状が見られ、原因として「水頭症」や「脳炎」「認知症」「腫瘍」「前庭疾患」などが考えられます。脳でよく見られる病気やその対処法について、獣医師の佐藤が解説します。
脳の異変でよく見られる症状と対処法
飼い主さんが愛犬の様子から「何かおかしい」と感じることが多い症状として、以下の5つが挙げられます。
- 痙攣(けいれん)、発作
- ふらつく
- 斜頸、眼振
- ぐるぐる回る、徘徊する
- 瞳の大きさが左右で異なる
1. 痙攣(けいれん)、発作
痙攣とは、犬の意思とは関係なく筋肉が収縮する状態を意味します。脳の病的な問題によって痙攣が起こると、犬は激しく震える、足をバタバタさせる、倒れる、意識を失う、吐く、失禁する、よだれを垂らす、一時的に呼吸が止まるといった症状が見られます。それらは「発作」とも呼ばれます。痙攣の原因は、「てんかん」や「水頭症」「脳炎」「腫瘍」のほか、「腎臓病」や「感染症」「中毒」などが考えられます。
発作の多くは数分で収まりますが、10分以上続いたり、1日に何回も起きたりする場合は緊急性が高い可能性があります。できるだけ早く動物病院で検査を受けてください。その際、発作の様子を動画に撮っておくと診察がスムーズに行なえます。
2. ふらつく
犬が脳の病的な問題によってふらつく場合、原因として「脳卒中」や「水頭症」「脳腫瘍」「脳炎」などがあり、脳以外では以下のような可能性が考えられます。整形外科疾患 | 打撲、捻挫、骨折、股関節脱臼、膝蓋骨脱臼など |
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脊椎・脊髄疾患/神経疾患 | 椎間板ヘルニア、変性性脊髄症、脊髄梗塞、環軸椎亜脱臼、馬尾症候群、ウォーブラー症候群など |
心臓疾患 | 大動脈狭窄症、肺動脈狭窄症、弁膜症、肺高血圧症、肺水腫など |
前庭疾患 | 内耳炎、中耳炎 |
その他の疾患 | 血栓症、低血糖、感染症、貧血など |
長時間ふらついていたり、他にも変わった様子が見られる場合は緊急性が高い可能性があります。病院で診てもらうといいでしょう。
3. 斜頸、眼振
頭が傾いたままになっている状態のことを「斜頸」と呼び、眼球が痙攣したように動く状態のことを「眼振」と呼びます。どちらも犬自身の意思とは関係なく起こり、「前庭疾患」という耳や脳の前庭に起きた問題が疑われます。前庭とは平衡感覚をつかさどる器官のことで、脳の前庭(中枢前庭)が原因で起こる場合、「脳卒中」(脳出血や脳梗塞など)や「水頭症」「脳炎」「脳腫瘍」などが考えられます。いずれも緊急性が高く、早期治療が必要です。
4. ぐるぐる回る、徘徊する
犬は嬉しい時やストレスを感じた時にぐるぐる回ることがありますが、それが病的な場合、「認知症」や「前庭疾患」が疑われます。脳の前庭(中枢前庭)が原因で起こる場合は「斜頸」や「眼振」と同様です。耳の前庭(末梢前庭)が原因で起こる場合は、「内耳炎」や「中耳炎」が疑われます。他にも「甲状腺機能低下症」や「感染症(犬ジステンパーなど)」の可能性があり、原因不明の場合は「特発性前庭障害」となります。
5. 瞳の大きさが左右で異なる
脳の問題によって瞳の大きさが違う場合は「ホルネル症候群」が疑われます。原因として「腫瘍」や「中耳炎」などが考えられます。多くは自然治癒しますが、中には命に関わる病気が原因になっている可能性もあります。放置せず動物病院で検査するようにしてください。まとめ
脳の病気では行動に異変が現れる
異変を動画で撮って病院へ
早期発見・早期治療が大切