【獣医師執筆】犬に穀物が体に悪い説は間違い!グレインフリーの間違いやメリット・デメリットを解説

佐藤貴紀

獣医師/循環器科担当/認定医

【獣医師執筆】犬に穀物が体に悪い説は間違い!グレインフリーの間違いやメリット・デメリットを解説

最近は穀物を含まないグレインフリーが良いとされることが多いですが、犬が穀物を食べてはいけないという主張に科学的な根拠はありません。本日は、「グレインフリー神話」が生まれた理由や犬が穀物を食べることのメリット・デメリットについて解説します。

なお今回の内容は、ニュージーランド・マッセー大学のニック獣医師の知見をもとに解説していきます。ニック先生は小動物の栄養学博士であると同時に、専門医として臨床現場にも立つ獣医栄養学のスペシャリストです。

犬が穀物(グレインフリー)を食べてはいけない説は間違い

麦畑
穀物の定義はさまざまありますが、イネ科植物に属する稲、小麦、トウモロコシや、雑穀と呼ばれるヒエ、アワ、キビを指すことが一般的です。広義ではソバやマメ科植物を含むこともあります。

穀物は「タンパク質」「脂質」とともに三大栄養素の一つ「炭水化物」を多く含みます。英語で穀物はグレイン(grain)と呼び、穀物が含まれないドッグフードはグレインフリードッグフードと呼ばれています。

このグレインフリードッグフードが良いとメーカーも謳っている場合が多いですが、明確なエビデンス(証拠)はありません。具体的に説明します。

犬に穀物不使用(グレインフリー)が流行っている理由

ドライフード
最近よく聞く「穀物不使用・グレインフリードッグフード」ですが、いつ頃から流行り始めたのでしょうか? Google検索のトレンドを調べてみると、全世界で「grainfree」の検索が伸び始めたのは2012〜2013年頃というのがわかります。日本では少し遅れて2014年頃から「グレインフリー」が検索されるようになりました。

「grainfree」の検索トレンド(全世界)
「grainfree」の検索トレンド(全世界)

「グレインフリー」の検索トレンド(日本)
「グレインフリー」の検索トレンド(日本)
なぜこの時期に流行り始めたのか定かではありませんが、ニック先生はグレインフリーが使われるようになった理由の一つとして、2011年に話題になった「汚染された中国米」を挙げています。実際、アメリカでは2007年頃から中国産ペットフードを食べた犬や猫の死亡が相次いでおり、「中国産の穀物を使ったペットフードへの不安感」が「新しいペットフードへの関心」につながったのでしょう。

確かなのは、流行った理由に「グレインフリーが良い」という発見があったわけでも、裏付ける論文が出たわけでもないということです。ペットフードメーカーは飼い主さんたちの不安感をうまく捉えて新たな市場を創り出したわけですから、マーケティング戦略の成功事例と言えるでしょう。

犬に穀物不使用が良いとされる根拠

芝生を走る犬
「犬に穀物は必要ない」とされる根拠として、しばしば以下の主張が挙げられます。

  1. 犬はもともと肉食だから穀物はいらない
  2. 穀物はアレルギーの原因になりやすい
  3. 唾液に分解酵素が無いので消化できない

これらは本当に犬に穀物が必要ない根拠になるのでしょうか?それぞれ検証してみましょう。

01:犬はもともと肉食だから穀物はいらない?

オオカミの親子
この主張は「オオカミ論」とも呼ばれます。犬の祖先はオオカミで、オオカミは肉食だから犬も肉食であるべきだというものです。しかし、犬がオオカミから分化したのは1万5000年以上前とされ、人との暮らしの中で雑食へと変化していきました。

犬の雑食化は科学的にも証明されています。2013年に学術雑誌「ネイチャー」に掲載された論文では、オオカミと犬の遺伝子を比較したところ、犬にはデンプンの消化に適応する遺伝子変化が見られたことが報告されています(※)

犬はオオカミではありません。長い年月をかけて肉食から雑食へと適応し、犬として進化してきたわけです。なぜそれを太古の食性へと戻す必要があるのでしょうか?

ニック獣医師の研究によると、犬はコンパニオンアニマルとして人間と暮らすことで食性も変化し、たんぱく質、脂質、炭水化物、ミネラル、ビタミンとバランス良く食事をすることが大切です。そのため、肉だけではなく、総合栄養食基準を満たしたごはんを与えましょう。

※オオカミも肉だけを食べているわけではなく、プラムやスイカなど果物を食べていることが確認されています。『Food Habits of Feral Carnivores: A Review of Stomach Content Analysis』(Journal of the American Animal Hospital Association)

02:穀物はアレルギーの原因になりやすい?

麦
この主張がどこから生まれたのか不明ですが、こちらも科学的とは言えません。ドイツ・ミュンヘン大学のミュラー教授ら研究チームによると、犬のアレルゲン食品として最も報告が多いのは牛肉で、乳製品、鶏肉と続きました(※)

犬のアレルゲン食品
穀類は4番目の小麦、7番目のトウモロコシ、11番目の米が報告されていますので、穀類が特別アレルギーの原因になりやすい食材とは言えないでしょう。米にいたってはアレルギーが出にくい食材とすら言えそうです。

03:唾液に分解酵素が無いので消化できない?

犬
私たちの唾液にはアミラーゼという消化酵素が含まれ、口の中で食物のデンプンをブドウ糖に変化させます。犬の唾液にはアミラーゼが含まれないため、犬はデンプンを多く含む穀類を消化できないと言われることがあります。

しかし、アミラーゼは口の中だけでなく膵臓でも分泌され、腸で消化が行われます。人に比べれば消化は得意ではありませんが、犬が穀類を消化できないというのは間違いです。

また、グレインフリーのドッグフードは穀類が含まれないというだけで、ほとんどが炭水化物(デンプン)を摂取するため豆類やイモ類などの食材を配合しています。唾液にアミラーゼが含まれないから消化できないのであれば、それらも消化できないことになってしまいます。「犬は穀類を消化できないからグレインフリーのドッグフードが良い」という主張は、矛盾しているわけです。

04:穀物が入ったドッグフードはかさまし?

ドッグフードに穀物が入っている場合は、かさましだと言われることがあります。もちろん、タンパク質の分量が少なく、炭水化物の分量が多ければかさましと言われても仕方ありません。

しかし、私たちが販売するペトコトフーズは、原材料の使用割合をすべて開示しており、50%は肉などのタンパク質源で、炭水化物源としてかぼちゃや消化に良いようにスチームした白米を使用しています。きちんと成分表や栄養の知識を持ってごはんを選ぶようにしましょう。

犬に穀物を与えるメリット・デメリット

麦畑の犬
デンプンを多く含む穀物は炭水化物源になるだけでなく、タンパク質や脂質、ミネラル、ビタミンなどをバランス良く摂る栄養源にもなります。それぞれ特徴がありますので、代表的な穀物であるトウモロコシ、コーンスターチ、小麦粉、米についてメリット・デメリットを紹介します。

トウモロコシ

トウモロコシ
トウモロコシには炭水化物だけでなく、皮膚の健康を保つリノール酸(オメガ6系脂肪酸)が多く含まれています。アレルギーの原因になりやすいと思われがちですが、実際は牛肉や鶏肉、大豆に比べてリスクが低い食材です。

トウモロコシはデンプンを多く含むため、ドライフードの形を保つ目的で配合されることもあります。安価なためかさ増し目的で使われることも多く、それらは犬の健康に関係ない人の都合で配合されています。原材料の欄で肉類より先にトウモロコシが記載されているフードはおすすめしません。

コーンスターチ

コーンスターチ
その名の通りトウモロコシを原料として、デンプンだけを取り出したものがコーンスターチです。熱を加えることで消化効率の良いエネルギー源になるとともに、ウェットフードのとろみ付けとして使われることも多い食材です。

小麦粉

小麦粉
小麦粉はデンプンとタンパク質を含んだ食材です。こねると粘りが出るのはグルテンと呼ばれるタンパク質によるもので、人の場合、消化が苦手なグルテン不耐症や消化器症状を引き起こすセリアック病の場合があります。

犬も鶏肉に次いでアレルギー報告が多く、アイリッシュセッターはまれにセリアック病と似たグルテン過敏症を起こす場合があります。事前にわかっている場合はグルテンフリーのドッグフードを選ぶ必要があります。

ご飯
米は炊いた状態であれば犬も消化することができ、デンプンを多く含むためエネルギー源となります。タンパク質やカルシウム、ビタミンなども含むバランスの良い食材です。

犬に穀物不使用のドッグフードは心臓病のリスクも

ゴールデンレトリバー
2019年、アメリカの食品医薬品局(FDA)が、グレインフリーのドッグフードを食べている犬は心臓病の一種である拡張型心筋になりやすい可能性があると発表して話題になりました。グレインフリーと心臓病にどれだけの関係があるか明確にはされませんでしたが、実際の商品名を列挙した発表に疑いの強さが表れていると言えるでしょう。

冒頭で紹介した通り、グレインフリードッグフードはここ数年の流行りです。科学的な根拠に基づいたものではなく、「思想」から生まれた新しい食事スタイルです。それがどんな結果を引き起こすことになるのか。わかるのはこれからです。

アメリカの科学ニュースサイト「RealClearScience」は、2019年最大のジャンクサイエンス(エセ科学)としてグレインフリードッグフードを挙げました。「グレインフリードッグフードは犬を殺すかもしれない」と紹介しています(※)。また、タンパク質中心の食生活だと、腎臓に負担がかかるため、腎臓病のワンちゃんはさらに注意が必要です。

※参照:「The Biggest Junk Science of 2019」(RealClearScience)

まとめ

PETOKOTO FOODSの匂いを嗅ぐ2匹の犬
犬に穀物はダメという思想は最近の「流行り」
良いとされる科学的な根拠は無い
アメリカでは心臓病との関連性が指摘されている
犬の家族化によって、「愛犬にも良いものを食べさせてあげたい」と思う飼い主さんが非常に多くなってきました。しかし人と犬が摂るべき栄養は異なりますので、犬のごはんについては犬の栄養の専門家に聞くのが一番です。

「犬に穀物を食べさせてはいけない」という話に限らず、「犬は◯◯を食べてはいけない」「犬は◯◯を食べるべき」といった話はこれからもたくさん出てくるでしょう。それらが本当に正しいのか、愛犬にはどんなドッグフードが適しているのか。飼い主さんが確かな情報をもとに判断してもらえればと思います。

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1. 新鮮な国産食材をメインに使用

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人間が食べるものと同じヒューマングレードの食材のみを使用し、国内の食品工場で製造しています。4Dミートや人工添加物は一切不使用。食材の配合割合や主な産地も公開し、安心できるごはんをお届けします。

2. 手作りのように抜群の食いつきのおいしさ

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従来の高温加工を施したドライフードや、レトルト処理されたウェットフードではありません。新鮮な肉や野菜を低温スチーム調理することで、食材本来の香りや旨味、栄養をしっかりキープ。そのため、手作りのような抜群の食いつきを実現しています。

3. 全犬種・全年齢に対応した総合栄養食

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社内の獣医師と栄養士が共同開発したレシピで、AAFCO基準を満たした総合栄養食です。サプリメントを除き保存料などは無添加。子犬からシニア犬まで、1日に必要な栄養をバランス良く補うことができます。

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この記事の監修者

ニック・ケイブ獣医師

ニック・ケイブ(Nick Cave)獣医師

米国獣医栄養学専門医・PETOKOTO FOODS監修

マッセー大学獣医学部小動物内科にて一般診療に従事した後、2000年に獣医学修士号を取得(研究テーマ:犬と猫の食物アレルギーにおける栄養管理)。
2004年にはカリフォルニア大学デービス校で栄養学と免疫学の博士号を取得し、小動物臨床栄養の研修を修了。同年、米国獣医師栄養学会より米国獣医栄養学専門医に認定。
世界的な犬猫の栄養ガイドラインであるAAFCOを策定する WSAVA の設立メンバーであり、2005年より小動物医学および栄養学の准教授としてマッセー大学に復帰。
家族とともに犬2匹・猫・ヤモリと暮らしながら、犬猫の栄養学の専門家として研究・教育に携わっている。