犬にグレインフリーは意味がない?心臓病のリスクなどデメリットを解説【犬の食育 Vol.4】

犬にグレインフリーは意味がない?心臓病のリスクなどデメリットを解説【犬の食育 Vol.4】

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こんにちは、コルクのバディの大久保です。皆さんは「ドッグフードはグレインフリーのほうが良い」という話は聞いたことがありますか?実際、グレインフリーは意味がないどころか、心臓病のリスクなどデメリットの報告まであります。飼い主のみなさんに正しい情報をお届けするため、獣医栄養学専門医のニック先生の知見をふまえてグレインフリーについて解説します。

ニック先生と犬
マッセー大学のニック獣医師

ドッグフード・キャットフードの中には「グレインフリー」をうたったものが少なくありません。急に増えてきましたが本当に良いフードなのかわからず、「グレインフリーって何?」と思っていました。

ではPETOKOTOオリジナルのドッグフード「PETOKOTO FOODS」はどうかというと、「ビーフ」と「ポーク」はお米を含むためグレインフリーではありません(「チキン」と「フィッシュ」は穀物を含まないためグレインフリーです)。

PETOKOTO FOODSがグレインフリーでないのは、レシピを監修していただいている小動物栄養学博士で獣医栄養学専門医のニック先生が「グレインフリーにしなければいけない理由はない」と判断しているからです。

ただ、みなさんの愛犬・愛猫に自信を持って「体に良い食事」を提供するためには、私自身も正しい理解をしなければいけません。そこで今回(2019年9月)、ニック先生がいるニュージーランドに飛び、実際に会ってグレインフリーに対する考え方を伺ってきました。

犬猫の栄養学はまだまだ発展途上で分かっていないこともたくさんあります。今後も新たな発見があるかもしれませんが、現時点で分かっている最新情報として「グレインフリーとは何か」をお伝えできればと思います。


グレインって何?

稲

グレインとは穀類のことを指します。穀類は、主にイネ科に属する多種類の植物が形成するデンプン質の種子の穂に由来します。具体的には、以下のような植物が穀類として挙げられます。

  • 大麦
  • 小麦
  • ライ麦
  • トウモロコシ
  • キノア
  • 蕎麦

稲も穀類ですので、「PETOKOTO FOODS」に使用している米、米麹もグレインです。そのため「グレインだから避けたい」といった声も頂きました。グレインは本当に犬や猫が避けるべきものなのでしょうか?


なぜグレインフリーが話題なの?

とうもろこし

ニック先生によると、「グレインフリー」が使われるようになった理由は主に3つあると言います。

1. 人の病気に関係がある(ごくまれに)

ほとんどの人はグレインを摂取しても問題ありません。しかし、例えばクローン病や潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患を持つ人にとっては食物繊維が悪影響となるように、グレイン摂取を避けたほうがいい人もいます。そういった一部の話が「グレインフリーは体に良い」となって広まり、商品価値を上げるマーケティング手法として使われるようになりました。

そして、人がそうなのだから犬や猫も同じだろうとグレインフリーのフードが作られるようになったのです。しかし、ニック先生は今までの研究や論文においても健康な人や犬猫がグレインを摂取することで健康を害することはほぼ無いと言います。「グレインが体に悪い」という話は明確なエビデンスに基づいていないことを、まずお伝えできればと思います。

2. 健康志向の増加

食品が世界中に溢れモノで満たされるようになると、私たちはより健康なものを求めるようになりました。「オーガニック」「グルテンフリー」「ローカーボ(低炭水化物食)」「ヴィーガン」「ケトジェニック」などなど。さまざまなナチュラル志向の食事が広まりました。

なぜか人で流行ったことは犬猫にも転用されるようです。「犬猫にとってのナチュラルフードと言えば肉だろう」と考える人が増えたことで、今までフードに入っていたグレインは不必要だと考えられるようになりました。

3. 汚染された中国米

2011年、中国の米の約10%が重金属のカドミウムに汚染されているというレポートが発表されました。汚染米を食べていた地域の人たちがカドミウム中毒と見られる症状を発症しているという報告もあり、「中国の米が体に悪い」という話が巡り巡って「グレインフリーは体に良い」へと変わっていったようです。

犬や猫に炭水化物は必要なの?

ニック先生の講義の様子

歴史をたどれば、野生だった頃の犬は肉を主食としていました。しかし、人間と共に暮らす中で次第に雑食へと変化していったと考えられています。実際に獣医療や獣医栄養学が研究されるにつれ、犬はタンパク質以外にも脂質や炭水化物、ミネラル、ビタミンなど、私たちと同じく栄養素が必要であり、貴重なエネルギー源になっていることが分かってきました。肉だけでバランス良く栄養を摂ることは難しいのです。

グレインフリーのドッグフード

グレインフリーのドッグフードはたくさんありますが、グレインフリーだから健康に良いというわけではありません。炭水化物は大切な栄養素ですから、それを穀類以外の豆類や芋類に頼って摂取しているということです。

グレインフリーのキャットフード

ドッグフードと同じくキャットフードも、グレインフリーがたくさんあります。やはりグレインフリーだから健康に良いというわけではありません。猫は犬に比べて人間との暮らしが長くないことから肉食を保っていますが、炭水化物を全く必要としないわけではありません。

犬や猫にとって穀物は消化に悪いのでは?

佐野先生とニック先生

人間は唾液に含まれる酵素「アミラーゼ」によって炭水化物を消化し始めますが、犬猫は唾液にアミラーゼを含まず、腸から消化を行います。そのため人間に比べれば消化は得意ではないものの、消化に悪いということはありません。大きい状態で与えると胃の中で消化し切れずに形を保ってうんちとして出てくることがありますので、細かくして与えていただくと消化が良くなります。

グレインフリーではないPETOKOTO FOODS

犬の寿命は近年目覚ましく伸びました。獣医療の貢献も大きいのですが、ニック先生は何より健康を司るのは食事が大きな役割を果たしていると信じています。

そんなニック先生にレシピをつくっていただいた私たちの「PETOKOTO FOODS」には、炭水化物として米とさつまいもが使われています。日本が誇る食文化を海外にも届けることができればと、私たちは日本人の主食であるお米を使用することにしました。


グレインフリーが心臓病を起こす原因にも?

最近まで穀物不使用の「グレインフリーフード」が人気でしたね。健康志向の方は、つい極端に「何かを変える」「何かしか食べない」「何かを一切食べない」となることもあるのですが、何事もバランスが大事です。今まで穀物を食べないことが健康にどのような影響をもたらすかという正確な科学的知見は得られていませんでした。

そこでUC Davisの研究結果を見てみましょう。研究チームは数ある犬種の中でもタウリン欠乏に陥りやすい犬種であるゴールデンレトリーバーを対象に、血中タウリン濃度が低く、拡張型心筋症と診断された犬のフードを調べました。するとそのほとんどのドッグフードがグレインフリーだったのです。

研究の詳細は以下の関連記事で紹介していますので、気になる方はぜひご覧ください。


正しい情報で、愛犬・愛猫のための選択を

以上がグレインフリーの歴史です。私もニック先生に話を聞くまでは何となく「穀物は体に悪いんだな」「米も本当は大丈夫なのかな?」と感じていましたが、レクチャーいただき理解することで、みなさんに良いこと・悪いことをお伝えすることができます。

もちろん、これから新たな発見があるかもしれません。私たちはできる限り、新鮮な情報をお届けしてまいりますが、最後に選択するのは飼い主であるみなさんです。「なぜ良いのか」「なぜ悪いのか」を理解して、自分の愛犬や愛猫が一番幸せになる選択をしていただくことが大切だと思います。

もっと知りたいことやニック先生に聞いてみたいことなどありましたら、ぜひご連絡ください。PETOKOTO FOODSのInstagramでも質問お待ちしております。

【動画解説】ドッグフードの選び方

YouTubeのPETOKOTOチャンネルでは、獣医師の佐藤先生がドッグフードの選び方について解説した動画を公開しています。あわせてご覧ください。