【獣医師執筆】犬はポカリを飲んでも大丈夫?与える際の注意点を解説
暖かくなってくると心配なのが熱中症です。愛犬の熱中症を予防するためには、自宅にいる間もエアコンなどで室内温度を調整したり、朝晩など暑さが和らいでいる時間に散歩に行ったりとさまざまな対策が必要です。そして水分補給も大切な予防の一つ。人間の熱中症予防にいいとされているポカリスエットなどのスポーツドリンクは犬に飲ませても大丈夫ですが、日常で与える必要はありません。犬用のポカリも販売されていますので、そちらを利用することをオススメします。今回はポカリ(スポーツドリンク)を犬に飲ませるときの注意点を紹介します。
犬にポカリを飲ませるメリット
熱中症予防
犬が熱中症で汗や嘔吐などの症状があった場合は、水以外にも失われた電解質を補給する必要があります。そのため一部の症状では、ポカリに含まれる成分は犬の熱中症予防にも有効な場合があるといえます。しかし熱中症は死に至ることもあるため、獣医師による診察が必要です。熱中症の症状が見られた場合は、ポカリなどによる水分補給はあくまでも応急処置として考えてください。原因がわからない場合は水のみにし、ポカリをあげることは避けましょう。
YouTubeのPETOKOTOチャンネルでは獣医師の佐藤先生が犬の熱中症について解説した動画を公開しています。あわせてご覧ください。
低血糖症の応急処置
犬が低血糖症になったときに砂糖水を飲ませる方法がありますが、この砂糖水をポカリなどのスポーツドリンクで代用させることもあります。ただし、低血糖症は特に子犬の場合、命を落としかねない危険な症状です。応急処置としてポカリを与えた後は、すぐに獣医師に診てもらうようにしてください。犬にポカリを与える際の注意点
ポカリスエットは大塚製薬が販売しているスポーツドリンクの一つで、体内にすばやく吸収されるように、人の体液に近い成分を含んだ電解質(イオン)溶液で作られています。そんなポカリを犬に与えるときに注意すべき点は下記の3つです。
1.糖分の摂り過ぎ
ポカリをはじめとしたスポーツドリンクには、飲みやすいように砂糖が入っていることが多いです。少々糖分を摂り過ぎたからといって、すぐに犬の体に何らかの症状が起こることはほぼありません。しかし、長期的に考えると肥満や糖尿病などのリスクにつながるので注意しましょう。1日の最適カロリー量の10%以内にしてください。毎日の最適カロリー量はペトコトフーズの「カロリー計算」(無料)で簡単に計算することができます。
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2.塩分の摂り過ぎ
人の体液に近い成分が含まれるポカリには、糖分だけでなく、食塩が含まれています。人の場合ですと塩分過多は高血圧の原因になりますので、なるべく塩分を摂りすぎないように気を付けている方も多いと思います。同じように犬も塩分に気を付けたほうがいいと思う方も少なくないのですが、人と犬では体の作りが違います。
例えば、「正常犬において食塩摂取量を10倍以上変化させても血圧は変動せず、食塩感受性は認められなかった」(※1)や「犬猫の腎臓病に伴う高血圧症ではナトリウム制限の有効性は明確に示されていない」(※2)という報告もあります。
しかし、だからといって人が食べるものを犬に食べさせれば塩分過多になってしまいます。塩中毒の危険性がありますし、過剰摂取による血漿(けっしょう)高カリウム濃度が続くと犬の場合は心疾患、心不全につながる恐れがあります。
逆に、塩分を制限し過ぎると塩分不足の悪影響が出てしまう場合もあります。犬の栄養要求量の基準とされる全米研究評議会(NRC:National Research Council)は、10〜20kgの犬の場合、1日に2.42〜4.84gの塩分摂取を推奨しています。ペットボトルのポカリの場合、100mlあたりの食塩相当量は0.12gなので、この基準を満たすためにはかなりの量を飲む必要がありますが、念のため注意しておきましょう。
3.腎不全の犬の場合
脱水症状を引き起こす病気は、熱中症だけとは限りません。急性腎不全や腎不全も、脱水症状を引き起こす病気になります。しかし腎不全のときに糖分や塩分が含まれたポカリを犬に与えることは、さらなる症状の悪化にもつながりかねないので、注意が必要です。自己判断はせずに、獣医師の相談を仰いでから与えるようにしてください。犬用ポカリが手軽でおすすめ
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ポカリは犬に与えても大丈夫とはいうものの、人間用は犬にとって濃度が高めです。犬用のポカリが販売されていますので、そちらを利用するようにしましょう。「ペットスエット」はポカリスエットを製造する大塚グループの製品で、薄めることなく犬にそのまま飲ませることができます。ドリンクタイプのほか、ゼリータイプもあり、愛犬用の防災グッズの一つとして購入・保存している人もいます。
ポカリは犬の熱中症対策に有効なことも
ポカリは犬の熱中症予防にも有効な場合がある
低血糖症になったとき砂糖水の代わりに飲ませるのもOK
腎不全の犬に飲ませるのはNG
ペット用のポカリがおすすめ
参考文献
- ※1:三品美夏、渡辺俊文『正常犬・猫の高ナトリウム摂取における血圧および飲水量の変動』(日本小動物獣医学会誌)
- ※2:小山秀一『犬および猫における水およびナトリウムの調節機構』(動物臨床医学)
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