猫のおしっこがキラキラしている場合の原因や病気、治療法などを獣医師が解説
猫ちゃんのおしっこがキラキラ光っているように見えたことはありますか? 普段、猫砂などをトイレに使っている方には気づきにくいかもしれません。ペットシートにしたおしっこの跡や、粗相などおしっこを失敗してしまったときなどに意図せず発見することが多いと思います。猫ちゃんのおしっこがキラキラ光って見えるのには理由があります。場合によっては生死に関わる状況になってしまうこともあるので愛猫のおしっこがキラキラ光って見えた場合は早急に動物病院に連れて行ってあげてください。今回は猫のおしっこがキラキラしている場合に考えられる原因や病気、治療法などを獣医師の福地がご紹介します。
猫のおしっこがキラキラ光っている場合に考えられる病気
猫ちゃんのおしっこがキラキラ光っている場合に考えられる病気は「尿石症」の可能性が高いです。尿石症とは簡単にいうと「おしっこの中のミネラルが結晶化してしまう病気」です。結晶化したミネラルがおしっこと一緒に排出されることによってキラキラ光って見える、ということなのです。
さて、まず猫ちゃんの祖先は今からおよそ1万年前にエジプトなどの近東付近のリビアヤマネコが家畜化されたのが始まりとされています。この地域は乾燥していて高温の地帯です。猫ちゃんの祖先は少ない飲み水でも生きていけるように自分の体内で水を節約する働きを得ました。この水の節約をする臓器が腎臓です。腎臓では水の再吸収の他に有害物質を尿として排泄する機能もあります。
水を再吸収しやすいように発達した一方、そのぶん尿中に排泄されるはずの有害物質が濃縮したものに曝される期間も長くなり、腎臓が傷んでしまうことも多いのです。水が少ない環境で生きれる工夫が長寿が可能になった今では病気の原因になってしまうというのも、生き物の不思議さのひとつですね。
この「水をあまり飲まなくていい体=濃いおしっこを出す体質」が、尿石症の成り立ちにも深く関わっているのです。
猫の尿石症の原因
尿石症の原因には下記のようなものがあります。
- 飲水不足や脱水による濃縮尿
- フードのミネラルバランスの悪さ
- 尿石の核になる物質の存在
- 細菌感染
飲水不足や脱水による濃縮尿
濃いおしっこが長い間体にとどまることで、尿中のミネラルが結晶化してしまいます。フードのミネラルバランスの悪さ
フードに含まれるミネラルのバランスや量がおしっこに排泄されるミネラルの濃度に影響を与えます。尿石の核になる物質の存在
腎臓やおしっこを貯める膀胱を内張する粘膜が古くなったり炎症で剥がれたものが尿石のもととなることがあります。細菌感染
膀胱に細菌が感染すると、おしっこはアルカリ性になります。このアルカリ性の条件ではストルバイトというタイプの結晶が結晶化しやすくなります。尿石といってもさまざまな成分があり、猫で多いのはストルバイト(アルカリ側に尿が傾いた時にできやすい)とシュウ酸カルシウム結晶(酸性側に尿が傾いたときにできやすい可能性)です。まれなものとしては尿酸塩尿石、シスチン尿石があります。
尿石症の症状
尿石症は尿石(結石)の存在する場所によって「腎結石」「尿管結石」「膀胱結石」「尿道結石」の4種に分けられます。ここでは症状が発見しやすい「膀胱結石」「尿道結石」の症状について解説します。
膀胱結石(尿石症)の症状
皆さんは膀胱炎になったことがありますか? 私はあります。おしっこの時に痛くて辛いやつで、猫ちゃんでも同じ症状です。膀胱に結石があると物理的に粘膜が傷ついて炎症を起こして膀胱炎の症状を出します。なので下記の症状は全て「痛み」と「不快感」によるものだと思っていただければわかりやすいかもしれません。- トイレに行く回数が増える(炎症の刺激でおしっこが溜まっている感じがするが実際にはたまっていない)
- 何回も排尿姿勢をとるのにおしっこが少ししか出ない(上と同じ)
- 血尿や茶色の尿をする(粘膜が傷ついている)
- 粗相をする(いつもと違う場所でおしっこすれば痛くないかも……と猫なりに考えての行動です)
- 排尿姿勢をとる時に「ギャッ」と叫んだりする(排尿する時痛いんです、とても!)
尿道結石(尿石症)の症状
尿道結石がある時は深刻です。尿道に結石が詰まると「尿閉」という状態になります。おしっこには体に有害な物質を排出する役割もあるため、おしっこが出ない状態が長く続くと「尿毒症」を発症し、命に関わることもあります。- おしっこの姿勢をとっているのに全くおしっこが出ない(膀胱炎の時は少量のおしっこが何箇所もあることが多いです)
- おしっこの痕跡が24時間近くみられない
上記の場合は様子を見ずにすぐ受診してください。
猫のおしっこがキラキラ光っている場合に飼い主さんにできること
個人的には尿閉に繋がる可能性もありますし、膀胱炎になる可能性もあるので症状が出ていなくてもキラキラ光っているなと気づいたらその時点で受診することをおすすめします。尿石のタイプによっても尿石溶解フードの種類も変わってくるので、自己判断で溶解フードを選ぶのもあまりおすすめしません。
動物病院で診てもらう前にできること
難しいかもしれませんが、可能であれば尿を採取しておくといいでしょう。病院で採尿することが多いですが、膀胱炎のときは何回もおしっこをするので病院に来た時は「膀胱が空っぽで取れない……」ということもあります。その際におしっこを持って来てもらうと検査が行え、結石の種類を明らかにすることができます。トイレにペットシーツを裏返して貼り、尿を吸収しない砂、あるいは砂をひかずにおくと猫ちゃんがトイレでおしっこした時に尿を回収できます。
また、採取した尿は1時間以内に動物病院へ持っていきましょう。尿は時間がたつと細菌が増え、また尿中の結晶が析出しやすくなってしまうので正確な判断ができないことがあります。おしっこが取れたらできるだけ早く病院へお越しください。
尿の採取が難しい場合は無理をしないことも重要です。病院でも採尿は併せて行うことが多いので、なかなかおしっこしない場合は早く治療をさせてあげたほうがいいので受診しましょう。
病院で採尿するときは少量でも採取できることのほうが多いです(本当に全く空の時は尿が作られるまで待機することもあるかもしれません)。
尿路結石症(尿石症)だった場合の治療
尿閉があるかどうかで治療の手順は変わってきます。
尿閉のない尿路結石症の場合の治療法
尿閉のない尿路結石症の場合は以下のような治療方法になります。尿石の溶解
尿路結石溶解用フードを用いて溶かします。尿石の種類や溶け具合によってフードの種類と使う期間が変わってくるので、ここは獣医師の判断を必ず仰ぎましょう。中にはずっと使うには塩分が多すぎる種類のものもあるため、自己判断でネットで買い続けるなどの行為は逆に猫ちゃんを危険にさらす可能性もあります。感染症の治療
細菌感染が疑われる場合は抗菌薬を使って細菌をやっつける治療も行います。水をたくさん飲んでもらうようにする
これはおうちで出来る治療です。水飲み場を増やしたり(お風呂場の桶に水をはって猫ちゃんが出入りできるようにするのもおすすめです)、噴水のように水が循環するお皿など猫ちゃんが水をたくさん飲める環境作りをするとおしっこの量が増えて結晶も流れでやすくなります。歯石がつきやすくなりますが、ちゅーるなどのウェットフードやドライフードをふやかすのも水分摂取量を増やすために有用です。
手術
内科療法で結石が溶けない時は外科手術で取り出します。尿閉のある尿路結石症の場合の治療法
尿閉がある時は、まず何よりもおしっこが通るようにするための処置を先に行います。鎮静剤などを使ってしっかり押し戻します。自然治癒するかについては、もともとの体質にフードなどの生活環境が背景になることも多いので、難しいのではないかと個人的には考えます。尿閉などのリスクを考えると様子をみずに治療してあげることをおすすめします。
「変だな」と感じたら早めに動物病院へ
猫ちゃんは腎臓やおしっこのトラブルが多い動物です。今回は猫に多いトラブルのひとつであり、膀胱炎だけでなくおしっこが出なくなる尿閉にも繋がる重要な病気である尿石症についてメインに解説しました。他にも猫ちゃんの泌尿器に起きるトラブルたくさんあるので、「なんか変だな?」と思ったら元気そうでも早めにかかりつけの先生に相談するのがもっとも安心かと思います。
今では多くの猫ちゃんが困っている泌尿器系の病気ですが、猫ちゃんの先祖が過酷な環境の中でも生きれるように進化して来た名残が残っているんだと考えると、その体質も含めてさらに猫ちゃんが好きになるかもしれません。
参考文献
- 猫の家畜化
- 獣医内科学小動物編 岩崎利郎,辻本元,長谷川篤彦 監修
第3稿:2019年8月23日 公開
第2稿:2018年2月2日 公開
初稿:2016年7月14日 公開
第2稿:2018年2月2日 公開
初稿:2016年7月14日 公開