犬の下痢の原因は? 薬や病院に連れて行くべきかなど獣医が解説

犬の下痢は飼い主さんが気付きやすい症状の一つであることから、病院に連れて行くべきか悩む方が少なくありません。犬が下痢をした時には、様子を見ながら適切な判断と対処をする必要があります。今回は、下痢の原因や対処法、下痢に効く食べ物、病院に連れて行くべきかなどについて、ジェナー動物クリニック副院長の船田が解説します。

犬の下痢とは

下痢は体調の変化のサインとして、普段気付きやすい症状の一つです。下痢の原因は多岐にわたり、胃や腸などの消化器疾患に起因するものから、そうでないものもあります。また出血(血便)を伴う場合もあります。一般的に出血を伴う場合の方が、症状がひどいというイメージがあるかも知れませんが、そうではありません。血便がなければ問題ないと安易に判断せず、重篤な疾患が隠れている場合がありますので注意が必要です。

好発年齢・好発犬種

シェパード

年齢

  • 若齢:寄生虫、食事性、誤食(消化が悪いものや薬など)、感染症など
  • 若齢〜中年齢:副腎皮質機能低下症(アジソン病)、膵臓の異常など
  • 中〜老齢:腫瘍、炎症性腸疾患、膵臓の異常など

好発犬種

症状

排便の様子や糞便の性状などから、下痢が小腸性か、大腸性かをおおよそ判別する事が可能です。大腸は主に水分を吸収する働きをするため、大腸に異常がある場合は、体重の変化はほとんど見られません。通常より頻繁な排便(通常の3倍以上)、ときとして過剰な粘液(ゼリー状)や鮮血を含む少量の便の排泄、しぶり(うんちを出そうとするが出ない)などを特徴とします。

また、嘔吐も大腸炎のワンちゃんの30%で見られます。小腸は栄養を吸収する場所なので、そこに異常があると栄養が吸収されず体重が減っていきます。便の頻度は通常時と変わらないか軽度に増加し、しぶる症状は認められません。便の1回量は増え、お腹が鳴ったり、ガスが溜まって膨らんだりします。また、上部消化管(食道・胃・十二指腸)に出血があると、胃酸などによって色が変化するため、墨のような黒い便(タール便)が排泄されます。大腸炎と同様、嘔吐も見られます。

症状・所見 小腸性下痢 大腸性下痢
排便の様子 頻度 正常〜軽度増加 増加〜著明に増加
排便困難・しぶり なし 犬:多い、猫:まれ
便失禁 まれ ときにあり
便の性状 多くは増加 時に減少
粘液・鮮血 ほとんどない しばしば認める
脂肪便 消化・吸収不良で認める なし
メレナ ときにあり なし
随伴症状 体重減少 慢性化することあり まれ
嘔吐 あり得る あり得る
食欲 正常〜低下(ときに亢進) 多くは正常(重症で低下)
腹鳴・鼓腸 みられる なし

原因

小腸性下痢の主な原因・疾患
食事性
  • 食事の変更・無分別な食事・過食・食中毒
  • 不耐性・アレルギー
  • 異物
薬剤・毒物
小腸疾患
  • 感染性腸炎(ウィルス・細菌など)
  • 寄生虫
  • 炎症性腸疾患
  • 抗菌薬反応性腸症
  • リンパ管拡張症
  • 浸潤性腫瘍(リンパ腫・肥満細胞種など)
  • イレウス(重積・腫瘍・肉芽腫・狭窄・異物)
膵外分泌疾患 膵外分泌不全・膵炎・膵腫瘍
肝疾患
  • 肝不全
  • 門脈圧亢進症
  • 肝外胆道閉塞
消化器以外の疾患
  • 副腎皮質機能低下症(アジソン病)
  • 糖尿病
  • 腎疾患(ネフローゼ症候群・尿毒症)
  • 敗血症・子宮蓄膿症
  • 腹膜炎など
大腸性下痢の主な原因・疾患
食事性
  • 食事の変更・無分別な食事・過食・食中毒
  • 不耐性・アレルギー
  • 異物
大腸炎
  • 感染性腸炎(ウィルス・細菌など)
  • 寄生虫
  • 炎症性腸疾患
  • ミニチュア・ダックスフンドの炎症性ポリープ
  • 組織球性潰瘍性大腸炎
大腸腫瘍 リンパ腫・腺癌・腺腫・GISTなど
閉塞性大腸疾患
  • 巨大結腸・肉芽腫・狭窄・異物
  • 外部からの圧迫
虚血性大腸疾患
  • 重積・捻転
過敏性腸症候群
繊維反応性大腸性下痢
小腸性下痢の続発
  • 胆汁の吸収不良
肛門周囲疾患
  • 肛門嚢炎
  • 肛門周囲フィステル
  • 会陰ヘルニア
その他
  • 尿毒症
  • 敗血症など

食事

食事が合っていない場合や、食事内容の変更によって下痢を引き起こす事があります。食事を変更してから体調に変化があった場合は、まず食事を見直してみてください。       
   

ストレスなどの環境の変化

環境の変化によって下痢を引き起こす可能性があります。例えば、引っ越しや来客、トリミングに行った後などに便がゆるくなる事があります。1日、2日で良くなる場合は心配ありませんが、それをきっかけに腸内細菌叢が乱れてしまい慢性経過をとる可能性があります。悪化したり、治らない場合は動物病院で診てもらいましょう。

異物摂取

異物を誤食した場合も下痢を認めます。人工物や化学物質などワンちゃんにとって害となるものを誤食してしまった場合、重篤な疾患につながる可能性があり、注意が必要です。なるべく誤食しそうなものはワンちゃんに近付けないようにしてください。

感染症

感染症に罹患した場合、下痢を認める事があります。ワンちゃんがかかる感染症はさまざま存在し、細菌やウイルス、寄生虫などによって引き起こされます。中にはワクチンなどで予防できる場合がありますので、予防接種はしっかり行いましょう。

消化器疾患に罹患している場合

ほとんどの症例で下痢を症状として認めます。その場合は下痢以外にも嘔吐や発熱、食欲不振、体重減少などの症状が認められる事があります。

消化器疾患以外の病気

内分泌疾患の多くで、発現し得る症状の上位に下痢が含まれます。他の症状として活動性の低下や多飲多尿を認める事がありますが、なんとなく元気がないなど症状に気付きづらい場合もあります。

腫瘍

下痢ではなく、便に鮮血が付着する場合もあります。便が固まっているから問題ないと安易に判断しないでください。肛門周囲や大腸に疾患がある場合、赤い鮮血の付着を認めます。中にはポリープのような腫瘤性病変が存在する場合もあり、注意が必要です。また、血便は赤い血液の付着だけではなく、黒い鉄臭い便も出血を疑います。胃や小腸など上部消化管で出血が起こっている場合、血液が胃や腸で消化され、黒色便として排泄されます。便は形だけではなく、色や臭いにも注意してください。   

検査・診断方法

犬

まずは十分に問診を行い、以下の項目について最低限、飼い主様に確認します。

  1. 下痢は急性か? 慢性(3週間以上続く)か?
  2. 小腸性下痢か? 大腸性下痢か?
  3. 食事内容
  4. 食事の変更、盗食、異食、過食
  5. 異物、薬剤、毒物摂取の可能性
  6. 下痢以外の症状の有無(体重減少、食欲低下など)
  7. 寄生虫など感染の可能性
  8. 過去の治療歴

次に身体検査を行い、ワンちゃんの全身状態によって以下の検査項目を検討します。

  1. 糞便検査(必須)
  2. 血液検査
  3. X線検査
  4. 腹部超音波検査
  5. 内視鏡検査

治療法

🐕食事療法

「お腹のお薬を数日間飲んだら良化するが止めると再発する」、または「食欲、元気に問題はないが、日頃から良い便のときもあれば軟便・下痢することもあって安定しない」というケースがしばしば見受けられます。身体検査、糞便検査、血液検査、画像検査にて特に異常所見がなく、全身状態が良好で体重減少などがほとんどない場合は、食べ物へのアレルギー(食物反応性下痢)が考えられるので、一旦食事を変えてみるのが良いでしょう。他の一般食、療法食(小腸性下痢では低残渣・高消化性食、もしくは低アレルギー食など、大腸性下痢では高繊維食もしくは低アレルギー食など)、手作り食(栄養バランス要注意)などを2〜3週間試し、反応を見ます。

🐶輸液療法

ワンちゃんの全身状態によって、点滴をする事もあります。例えば、下痢だけでなく、嘔吐もあればお薬を飲ませても吐いてしまう可能性があります。また、お腹を休ませるために半日〜1日は絶食させるため、脱水を予防するために皮下点滴をします。全身状態が悪く、検査結果次第では入院下にて静脈点滴を実施します。                  

治療薬

消化管以外が原因で下痢を引き起こしている場合は、その原因を第一に治療します。消化管の治療として、一般的に以下の薬が使われます。

  • 駆虫薬:糞便検査で寄生虫が認められた場合、または疑いがある場合には試験的治療として使います。
  • 抗菌薬:細菌感染が疑われる時に使います。
  • 下痢止め・整腸剤:一般的に使います。整腸剤として、犬用の乳酸菌製剤以外に、人用のものであればビオフェルミンR(耐性乳酸菌整腸剤)であれば効果があります。
  • 抗炎症薬・免疫抑制剤:炎症性腸疾患、リンパ管拡張症、腫瘍などの慢性腸炎などに使う事があります。
  • 制吐剤:嘔吐を伴っている場合、または予防として使います。

注意点
❗️ワンちゃんが下痢しているからと、正露丸を飲ませる方がいますが、それは絶対にやめてください。正露丸の成分は「クレオソート」という強力な消毒剤で、腸内の細菌をやっつける働きがありますが、ワンちゃんには胃壁を荒らして、消化器に強いダメージを与えてしまいます。またワンちゃんは消毒剤(フェノール)をうまく代謝する事ができないため、必要以上に体の中で長く存在し、中毒状態になってしまいます。

対処法

成犬の場合は半日程度の絶食

まずは半日、絶食を行う事をおすすめします(ただし、成犬に限ってです)。お腹を休ませ、下痢などの症状を緩和する事で改善が見られるケースもあります。また、絶食後はいつもの食事をすぐに通常量与えるのではなく、一度量を少なくして、回数を増やし(少量頻回に)、固形状のものではなく、柔らかくしたり(またはふやかすか)、流動食にして与えた方がお腹への負担が軽減されるかと思われます。

水分を摂らせる

下痢によって多くの水分が失われてしまうため、脱水を起こさないように水分はしっかり摂取させましょう。水より、犬用のポカリスエットの方がベストと思われます。人間用のポカリスエットやOS-1などの経口補水液でも大丈夫ですが、与え過ぎには注意が必要です。

犬用のビオフェルミンを飲ませる

犬用の乳酸菌製剤(ビオフェルミン)を飲ませると良いでしょう。人間用のものであればビオフェルミンR(耐性乳酸菌整腸剤)を1日2回飲ませても良いでしょう。小型犬は1/4錠、中型犬は1/2錠、大型犬は1錠が目安です。

食事の変更

食事を変更したい場合は時間をかけて徐々に移行する必要があります。おやつも同様で、新しいおやつをあげた場合に下痢を引き起こす事があります。おやつなどその子に必須の食事でなければ、与えないようにしましょう。一般的にワンちゃんは人に比べて食事に変化が少ないため、下痢を認める事は少ないです。下痢を認めた場合、第一に動物病院を受診する事を検討してください。

ストレスの原因を可能な限り取り除く

何らかのストレス因子が存在するなど原因に心当たりがある場合、それらを取り除いてあげてください。そして、食事を抜くなどしてお腹を休ませてあげましょう(しかし、基本的には24時間以上の絶食は避けてください。むしろ腸を傷める可能性があります)。

複数犬がいる場合は、下痢の子を隔離

同居犬が下痢の症状を認める場合、感染の可能性があります。感染防除のため、糞便には近づけてはいけません。

異物を食べた場合は病院へ

異物摂取の可能性があるのであれば、病院へ行ってください。中毒性のものの場合、1時間以内であれば応急処置を行うことができますし、消化できないものや大きいものならば、外科的な処置が必要になるケースもあります。

下痢が長く続く場合は、便を持参して病院へ

軽度の急性下痢の場合、2〜3日程度で症状は良化します。それ以上軟便が続く場合は病気を疑います。内服・検査などが必要になりますので、動物病院に相談してください。その際、新鮮便を持参していただくと糞便検査を行う事ができ、感染症の診断に役立ちます。また、問診の際、現在食べているフードや環境の変化、排便回数や便の硬さなどのメモを持参していただくと病気の診断・治療に有用となります。

下痢に良い食べ物・サプリメント

乳製品にアレルギーがなければ、お腹の健康を考え、ワンちゃんにヨーグルトを与えている方が多いと思います。「人には人の乳酸菌」と言われているように、「犬にも犬の乳酸菌」が存在するので、人が食べるヨーグルトがワンちゃんにどの程度効いているのか何とも言えません。しかし、効果が出ている実感があれば、与えすぎに注意しながら与えても良いでしょう。サプリメントに関しては、犬用のサプリメントであれば、特に問題はないと思われます。

まとめ

白い犬

下痢は、気付きやすい症状なので、愛犬の様子を見ながらしっかり判断をして、適切な対処法を取りましょう。なかなか治らない時には、病院に連れて行くことをおすすめします。

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※引用文献

  1. 佐藤 貴紀:犬の急病対応マニュアル,鉄人社
  2. 中島 亘:CLINIC NOTE 2012年10月号(No.87 )pp.7-22,インターズー
  3. 長谷川篤彦,辻本元監訳:スモールアニマル・インターナルメディスン 第3版 上巻,インターズー
  4. SA Medicine 66号 特集 治療シリーズ③ 消化器疾患,インターズー
第2稿:2017年5月25日 公開
初稿:2016年2月17日 公開

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