【獣医師執筆】猫がお酒(アルコール)を飲むのはNG!舐めてしまったときの対処法を解説
猫にとってお酒(アルコール)はとても危険なものです。「少しだけなら」と与えたビールやワイン、日本酒などのアルコール類が愛猫の命を奪うこともあります。故意に与えなくても目を離した隙に舐めてしまう可能性もあります。お酒の何が猫の健康を害するのかしっかりと認識し、万が一飲んでしまったときの対処法なども確認しておきましょう。
目次
- 猫にお酒(アルコール)はNG
- 猫にアルコールを飲ませてはいけない理由
- 猫がお酒(アルコール)を飲んだ場合に考えられる症状
- 猫のお酒(アルコール)を飲んだ場合の致死量
- 猫がお酒(アルコール)を摂取した場合の対処法
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猫にアルコールを飲ませてはいけない理由
人間はビールやワインなど、アルコールを摂取すると胃や腸で吸収し、肝臓でアルコール脱水素酵素によって分解され、アセトアルデヒトに変化します。アセトアルデヒト脱水素酵素がさらに分解を進め、無害になっていきます。私たちもアセトアルデヒトが分解できないと、体内にまわり、二日酔いの原因になったり、アルコール中毒になってしまったりします。そして猫はアルコールを分解する酵素を保有しておらず、一度摂取したアルコールは無害化されることなく長い間体内を循環し悪影響を及ぼしてしまうのです。
猫がお酒(アルコール)を飲んだ場合に考えられる症状
猫は自分でアルコールによる有害なアセトアルデヒトを分解することができません。アルコールが分解されないと、脳幹の機能を抑制させ、心肺機能を制限させる恐れがあります。- 意識が朦朧(もうろう)としてしまう
- 昏睡状態に陥る
- 心肺機能が鈍くなる
- 嘔吐物が喉に詰まり窒息
アルコールが分解されず体内に残ることによって重度の中毒症状を引き起こす可能性もあり、意識を失って命を落とすことも珍しくありません。お酒などを飲ませ、「酔っ払った様子がかわいい」とのんきなことを言っている間に、いきなり息を引き取ってしまうケースもあります。意図的に飲ませることは絶対にせず、もし誤飲をしてしまった場合は元気な様子でも動物病院に相談しましょう。
猫のお酒(アルコール)を飲んだ場合の致死量
猫にとっての致死量は、人間が思うよりはるかに小さな値です。しかもあくまで致死量なので、それ以下だったら健康に影響がないというわけではありません。致死量は大体1kgあたり5.6mlと言われています。おちょこ一杯で多めに見積もって18mlくらいです。- アルコール度数5%のビールは110ml
- アルコール度数15%の日本酒は37ml
- アルコール度数40%の日本酒は14ml
そしてこの値はあくまで致死量です。人間がアルコールを摂取しても酔い方に個人差があるように、猫によっては致死量に満たなくても重篤な状態になる可能性は十分にあります。
またたび入りのお酒も猫にはダメ
「ネコにマタタビ」というように、またたびと聞くと猫を連想する方も多いと思います。そのためか人間用のマタタビ入りのお酒を猫に与える方もいるようですが、アルコールが入っているものは基本的に全て与えてはいけません。またたびは猫のイメージが強いですが、摂り方によっては人間にも疲労回復や神経痛に効くものとして商品化され親しまれているのです。そのためまたたびが入った商品でも、人間ように作られたものであれば猫に与えるのはやめましょう。
猫に甘酒をあげてもいいの?
甘酒は飲む点滴と呼ばれているほど栄養価の高いものです。甘酒にも種類があり、酒粕から作る甘酒はアルコールを含むため猫には与えてはいけません。猫に与えて良いのは、蒸し米にコウジカビを繁殖させて作った米麹からできた甘酒だけです。米麹甘酒は歯が弱くなった老猫にも柔らかいフードに混ぜて与えることができるので、少ない食事からでも健康をサポートしてくれます。
猫がお酒(アルコール)を摂取した場合の対処法
猫がお酒を舐めた・飲んでしまった場合、必ず動物病院に連絡をしましょう。ネット上に吐かせる方法などが載っている場合もありますが、専門的な知識のない人がやるのは非常に危険です。意図的にお酒を与えていなくても、目を離したすきに猫がテーブルの上にあるビールなどを飲んでしまう事故が絶対に起こらないとは言えません。もし猫がアルコール類を誤飲してしまったら、すぐに動物病院に連絡して指示を仰ぎ、病院で診察を受けるようにしてください。
猫は体内でアルコールを分解することができないため、飲んだ後元気にしていても大丈夫というわけではありません。24時間の体制の緊急病院などをしっかり把握しておくようにしましょう。病院に連絡をする際は、「いつ飲んだのか・お酒の種類・飲んだ量」を目安でもいいので伝えるようにしましょう。
猫にはビール酵母を与えても良い?
アルコールのビールは猫や犬に絶対に与えてはいけないものですが、ビール酵母は別です。ビール酵母とは、ビールを作る時に加えた酵母が沈み、その沈殿した酵母をろ過して乾燥させたもののことを指します。アルコールは抜いてあるため猫にも安心して与えることができます。最近ではドッグフードに含まれている場合もあります。
ビール酵母の成分と効果
ビール酵母の主成分はアミノ酸で、さまざまな健康上の効果があります。ノミやダニ対策にも有効だという話もありますが、実は1950年代頃からの最新情報がなく、またノミやダニに対しての忌避効果を感じるまでには数日かかるそうです。ノミやダニ対策は専用の製品などを使用することをお勧めします。被毛を強くする
アミノ酸が豊富なため、肌質や毛艶がよくなる効果があります。便秘の改善になる
豊富な食物繊維を含んでいるため腸内環境を整える働きをします。肝臓サポートになる
グルタチオンという抗酸化成分が肝機能をサポートしてくれます。犬のストレス軽減
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