【獣医師執筆】犬はぶどうを食べるのはNG!ダメな理由や中毒症状、応急処置を解説
ぶどうは犬にとって危険で、中毒症状により急性腎不全を引き起こすリスクが高い食べ物です。全ての犬に中毒症状が出るわけではないと言われていますが、急性腎不全を発症すると治療を試みても死に至る可能性が高くなります。レーズンや干しぶどうにも注意すべきなのか、万が一ぶどうを食べてしまったらどのように対処すべきなのか、獣医栄養学専門医のニック獣医師監修のもと解説します。
この記事を監修している専門家
ニック・ケイブ(Nick Cave)獣医師
ニュージーランド・マッセー大学獣医学部准教授、米国獣医栄養学専門医マッセー大学獣医学部小動物内科にて一般診療に従事した後、2000年に獣医学修士を取得(卒業論文は『食物アレルギーの犬と猫の栄養管理』)。2004年よりカリフォルニア大学デービス校で栄養学と免疫学の博士号を取得し、小動物学臨床栄養の研修を修了。同年、米国獣医師栄養学会より米国獣医栄養学専門医に認定。世界的な犬猫の栄養ガイドラインあるAAFCOを策定するWSAVAの設立メンバー。2005年より小動物医学および栄養学の准教授、獣医栄養学の専門医としてマッセー大学に戻る。家族、2匹の犬、猫、そしてヤモリと暮らしている。
犬にぶどうを与えるのがダメなのはなぜ?
犬がぶどうを食べると、中毒症状により急性腎不全を引き起こす可能性があります。実は、ぶどうのどの成分が中毒につながるのかは現在も研究が進められている途中で、詳しいことは分かっていません。現在分かっていることは、犬によっては重度の中毒になること、ぶどうの皮は果肉よりも中毒の原因になることです。
犬がぶどうを食べた場合の中毒症状
ぶどうの中毒症状は、食べてから2〜5時間の間に現れることが多いそうです。症状が出ていなくても、ぶどうを食べたことが発覚したら、可能な限り早く病院に連絡しましょう。獣医師の指示に従い、家で様子を見るか病院での受診が必要かを判断します。ぶどうによる中毒症状の例
中毒症状を引き起こす目安の量は?
犬がぶどうを食べて中毒症状を引き起こす摂取量の目安は、体重1kgに対し10〜32gと言われています。しかし、中毒の原因は詳しく解明されていないので、少量であっても食べさせるべきではありません。デマだとか、元気だった、無症状という方もいらっしゃいますが、あくまで過去症例があり、個体差もあるため、リスクがあるという点で食べさせる必要はありません。例えば、パピー(子犬)や病気、シニア犬(老犬)など免疫が落ちている場合は少量でも症状が出る可能性がありますし、小型犬だと大型犬と比べると一粒でも症状が出る可能性があります。ぶどうを舐めたくらいなら大丈夫でしょう。
日本獣医師会のぶどうによる中毒の症例レポートにも「発症は必ずしも摂取量だけに依存するわけではなく,発症例の摂取量を超えるブドウを食べても発症しない犬がいることも報告されている」と表記されています。
中毒症状は、ぶどうの種類や生産環境、犬自身の健康状態が影響するのではないかと考察されています。
Dr. Nick's Comment!
体重1kgあたり3gのフルーツを摂取して腎臓傷害が引き起こされることもあり、犬の許容量には大きなばらつきがあります。大量のぶどうを食べて何の問題もない犬もいますが、だからといって腎不全のリスクを負わせるべきではありません。もし愛犬が大量のフルーツを食べてしまったら、すぐ獣医師に診てもらう必要があります。
急性腎不全になった犬の症例
八仙会動物医療研究部などの研究チームが、ぶどうを摂取したことで急性腎不全を発症し、死亡した犬の事例を報告しています。その症例によると、やはりぶどうは犬の健康を害する果物であると認識できます。オスのマルチーズ(3歳)は、夜に種なしの小さなブドウを皮ごと70gほど食し、接種後5時間ほどたつと嘔吐を繰り返すようになったそうです。同時におしっこもしなくなり、ぶどうを食べた翌々日に病院で受診した頃にはほぼ虚脱状態(意識がぼんやりし呼吸が浅くなるなど、意識障害をきたしている状態)になり、急性腎不全が疑われました。
受診後は即入院をし排尿を促す治療が行われましたが、腎臓の機能は回復せず入院3日目には無尿(むにょう:1日の排尿が100ml以下になった状態)となり、死亡してしまったとのことです。
海外の症例を含めると、ぶどうを食べた後の中毒症状は共通する部分が多く、5時間前後で嘔吐が始まり急性腎不全を発症する犬が多いようです。
犬がマスカットを食べるのもNG
ぶどう同様、マスカットも犬に与えてはいけない食べ物です。ぶどうの一品種なので、成分はぶどうと同じです。犬に与えたり、誤飲したりしないように注意してください。
犬にレーズンやジュースなどの加工品もNG
レーズン(干しぶどう)やぶどうジュースなどの加工品も、犬には食べさせるべきではありません。特にレーズンは水分が抜けている分、摂取する量が多くなり危険です。実際、誤ってぶどうパンを食べさせてしまい亡くなったケースも報告されています。
食卓にぶどうジュースやレーズンなどが置いてあるときは、誤って犬が食べてしまわないようにしっかりと注意しましょう。
犬がぶどうやレーズンを食べてしまった時の応急処置
日本獣医師会の症例レポートによれば乏尿(ぼうにょう)や無尿まで症状が悪化した犬の場合の生存率は乏尿では24%、無尿の場合は12%とかなり低くなっています。現在では乏尿、無尿の症状があり急性腎不全が疑われる場合は積極的に透析(腎臓の機能を人工的に行うこと )などの治療が推奨されているようです。
犬がぶどうやレーズンなどを食べてしまったことが分かったら、すぐに動物病院に連絡をしましょう。摂取後1時間ほどはぶどうの毒性が吸収されていない場合があるので、嘔吐を促す治療で様子を見ることができるかもしれません。
しかし、決して個人の判断で様子を見たり、嘔吐を促す行為は悪化の可能性があるため、しないでください。必ず、獣医師の指示に従ってください。
まとめ
ぶどうは犬の急性腎不全を引き起こす可能性が高い
症状が出ていなくても、できるだけ早く病院に連絡を
マスカットや加工品もNG
参考文献
- 日本獣医師会雑誌「ブドウ摂取後に急性腎不全を発症して死亡した犬の1例」
- PETMD「Grapes and Raisins are Toxic to Dogs」
- Amarican Kennel Club「Can Dogs Eat Grapes?」
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