犬の脂漏症|考えられる原因や治療法を獣医師が解説

犬の脂漏症|考えられる原因や治療法を獣医師が解説

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犬の脂漏症は皮膚が乾燥したり脂っぽくなったりする状態を指します。ドッグフードなど食事アレルギーやホルモン異常などさまざまな原因が考えられ、特定して治療することが根本的な解決になります。痒みや二次感染を抑えるためのシャンプー療法など、脂漏症の対策について獣医師の佐藤が解説します。

犬の脂漏症とは

チワワ

犬の脂漏症は脂漏性皮膚炎とも呼ばれ、皮膚が乾燥したり脂っぽくなったりして激しいかゆみや皮膚の赤み、ベタつき、赤み、フケ、体臭、かさぶた、脱毛、発疹などが生じた状態のことです。主に背中や顔、脇、内股や皮膚が垂れて重なっている部分などで見られます。二次感染に真菌であるマラセチア性皮膚炎を併発することが少なくありません。

脂漏症と膿皮症の違い

膿皮症は細菌感染によって脱毛や湿疹が見られる病気です。脂漏症の犬で細菌感染が原因だとわかれば膿皮症の治療を行います。ただし、膿皮症の解決が脂漏症の解決とイコールになるとは限らず、細菌感染が改善しているのに脂漏症が改善しないこともあるのが難しいところです。


脂漏症の好発犬種

脂漏症は遺伝によって起こる「原発性」と別の病気に伴って二次的に起こる「続発性」(二次性)に分かれますが、脂漏症の多くはどの犬種でも起こる続発性です。

原発性ではダックスフンド、シーズー、レトリバー種、スパニエル種、ウエストハイランドホワイトテリア、ジャーマンシェパード、バセットハウンドでよく見られますが、どの犬種でも起こる可能性があります。発症時期は2歳までの幼齢期で、年を重ねるごとに悪化していきます。

犬の脂漏症の症状

チワワ

脂漏症は皮脂腺の多い背中でよく見られますが、顔や首、脇の下、お腹や内股、皮膚が垂れて重なっている部分などでも見られます。皮膚が乾燥する「乾性脂漏症」ではフケやかさぶた、毛艶の悪化が見られ、脂っぽくなる「油性脂漏症」では皮膚のベタつきや体臭、脱毛などが見られます。その他、脂漏症の犬で見られる変化は以下の通りです。

行動の変化 体を痒がる
皮膚を何度も手や足で掻く、舐める、噛む
家具や床などに体をこすりつける
皮膚の変化 痒み
赤み
臭い
脱毛
フケ、かさぶた
被毛の変化 脂っぽくベタベタする
毛艶が悪くなる

痒みから犬が自分で掻いたり舐めたりして皮膚が傷つくことで細菌感染を起こし、膿皮症を併発することも少なくありません。

犬の脂漏症の原因

フレブル

脂漏症は皮膚の「角化異常」によって起こります。皮膚は、「表皮の一番内側にある基底層で作られた角化細胞が外側に向かって成長し、最終的に剥がれ落ちる」という約21日のサイクル(ターンオーバー)で更新し続けることによって健全な状態を保っています。「角化」とは、このサイクルのうち角化細胞が皮膚の表面に達することを指します。

角化異常は皮膚や被毛の材料になる「ケラチン」というタンパク質が過剰産生もしくは減少することで起こります。原発性では過剰になり、続発性では過剰も減少も起こるため乾燥したり脂っぽくなったりします。原因を特定するのが難しい場合が多く、考えられる要因がすべて除外された場合は原発性と診断します(除外診断)。以下に主な要因をまとめました。

アレルギー 食物アレルギー
アトピー性皮膚炎(環境アレルギー)
ホルモン異常 甲状腺機能低下症
クッシング症
感染症 真菌感染(マラセチア、皮膚糸状菌症など)
細菌感染
寄生虫(ノミ・ダニ・シラミ)
自己免疫疾患 天疱瘡
毛皮脂腺炎
エリテマトーデス
栄養不足 ビタミンA反応性皮膚症
亜鉛反応性皮膚症


犬の脂漏症の治療法

ジャックラッセルテリア

犬の脂漏症はほとんどが続発性で、基礎疾患として多いのがアレルギーとホルモン異常です。若い年齢で発症する場合はアレルギーが多く、中高齢で発症する場合はホルモン異常が多くなります。痒みの有無は原因を特定する手がかりになり、痒みが強い場合はアレルギーやノミ、ダニなどの感染症が疑われます。

脂漏症の治療は角化異常を引き起こす根本的な原因を探すことから始めます。皮膚を削り取ったり(皮膚掻爬検査)、真菌や細菌を培養したり、血液や尿の検査をしたりして可能性を潰していきます。根本的な原因が見つからない場合は原発性脂漏症となりますが、その場合は有効な治療法がありません。

脂漏症になった犬の皮膚は真菌や細菌が感染しやすい状態であり、犬が自分で掻いたり舐めたりすることで余計に二次感染のリスクが高まります。抗生剤を使用したり、シャンプー療法を行ったりして皮膚を清潔に保ち、痒みを抑えて犬のストレスを軽減させます。

脂漏症のシャンプー療法

薬用シャンプーには脱脂作用や角質溶解作用、毛包洗浄作用があるものなどさまざまな種類がありますので、状態に応じて必要な薬剤を使用します。例えば皮脂の分泌が過剰になっている場合は洗い流すシャンプーが必要ですが、皮膚のバリア機能が低下しますのでその役割を補う薬剤も必要です。シャンプーの頻度は週1~2回が目安になります。

詳しくは以下の関連記事をご覧ください。


脂漏症の食事療法

アレルギーが原因になっている場合は食事を変えることで改善します。症状が軽ければ疑わしい食材が含まれないドッグフードに変えて様子を見てみるのもいいでしょう。タンパク質がアレルゲンになりますので、原因となるタンパク源をあげない方法や「加水分解」といってタンパク質の分子量を小さくしてアレルゲンにしない方法があります。

脂漏症はビタミンAの摂取で改善した事例が報告されており、亜鉛不足が原因になっている場合もあります。ビタミンAや亜鉛、抗炎症作用のあるオメガ3脂肪酸(EPA)のサプリメント使用が改善につながるかもしれません。かかりつけの獣医師と相談しながら試してみるといいでしょう。


まとめ

トイプードル
脂漏症では皮膚が乾燥したり脂っぽくなったりする
病気ではなく症状なので原因の特定が重要
アレルギーやホルモン異常の場合が多い
痒みや二次感染を抑えながら治療を行う
脂漏症は根本的な原因がわかれば予後良好ですが、可能性を一つずつ潰していく作業になりますので治療が長期にわたる場合が少なくありません。年を取るごとに症状が悪化する傾向もあり、犬のストレスを軽減して生活の質を高め、二次感染を防ぐためにも、獣医師と相談して治療計画を立てていくことが大切です。