【獣医師執筆】犬にはビタミンが必要!種類別の効果や必要量、ビタミン不足の症状を解説
ビタミンは犬にとっても欠かせない栄養ですが、不足だけでなく人間用のサプリメントを与えてしまうなど過剰摂取にも注意が必要です。各ビタミンの主な働きや過不足で起こる症状や副作用、多く含まれる食べ物について解説します。
犬に必要なビタミンって何?
ビタミンは必要不可欠なものを意味する「vital」と窒素を含む化合物の一種である「amine」という言葉の組み合わせから、「生命活動に必要不可欠な化学物質」という意味を持って命名されました。視覚や神経伝達、エネルギーを生み出し、骨や細胞を作る機能を正常に働かせるために欠かせない存在です。
ビタミンは犬にとっても欠かせないものですが、実は自然食材だけでAAFCO(米国飼料検査官協会)やFEDIAF(欧州ペットフード工業連合会)の栄養基準を満たすのは簡単ではありません。不足する栄養素を補うためにある食材を増やすと、今度は別の栄養素が過剰になってしまうことがあるからです。
そのため無添加の総合栄養食は存在せず、栄養素をバランス良く配合するためサプリメントとしてビタミンやミネラルが添加されています。そのため、手作りごはんだけで栄養バランスの取れた総合栄養食をつくることは難しいです。
犬に大切なビタミンの種類
ビタミンは大きく脂溶性と水溶性に分けられ、脂溶性ビタミンは4種(A、D、E、K)、水溶性ビタミンは9種(B1、B2、ナイアシン、パントテン酸、B6、ビオチン、葉酸、B12、C)あります。ビタミンではありませんが似た働きを持つ物質として、コリンもビタミンB群に含まれることがあります。
一般的に「脂溶性ビタミンは欠乏しにくく過剰になりやすい」「水溶性ビタミンは欠乏しやすく過剰になりにくい」特徴があります。糖尿病や腎疾患など多尿になりやすい病気では、水溶性ビタミンの欠乏に注意が必要です。
脂溶性ビタミン | ビタミンA | |
---|---|---|
ビタミンD | ||
ビタミンE | トコフェロール | |
ビタミンK | ||
水溶性ビタミン | ビタミンB1 | チアミン |
ビタミンB2 | リボフラビン | |
ビタミンB3 | ナイアシン | |
ビタミンB5 | パントテン酸 | |
ビタミンB6 | ||
ビタミンB7 | ビオチン | |
ビタミンB9 | 葉酸 | |
ビタミンB12 | コバラミン | |
ビタミンC |
ちなみにビタミンB4やB8、B10などは後の研究でビタミンの定義から外れることがわかったため、現在は欠番になっています。
犬に必要なビタミンの効果と必要量
脂溶性と水溶性を合わせて13個のビタミンにはそれぞれどのような働きがあるのでしょうか。犬の必要量とともに一覧で紹介します。なお、ビタミンB3、B5、B7、B9は一般的な別名を使用します。
ビタミンA | 心臓や肺、腎臓、皮膚の正常な形成や維持に関わり、視覚機能や免疫機能をサポート | 1650-82500μg |
ビタミンD | カルシウムとリンの吸収を促進。骨と歯をつくる | 12.5-75μg |
ビタミンE | 抗酸化作用、紫外線障害からの保護、細胞の老化予防 | 33.5mg以上 |
ビタミンK | 血液凝固、骨と歯の形成、糖尿病や認知症の予防 | |
ビタミンB1(チアミン) | 糖質からエネルギーを作り出す際の補酵素。神経の機能維持 | 2.25mg以上 |
ビタミンB2(リボフラビン) | 脂質の代謝。過酸化脂質の分解。皮膚、爪、被毛の健康な発育 | 5.2mg以上 |
ナイアシン | 皮膚を健康に保つ。糖質、脂質タンパク質の代謝 | 13.6mg以上 |
パントテン酸 | 糖質、脂質タンパク質の代謝。傷の治りを早くする | 12mg以上 |
ビタミンB6 | タンパク質の代謝、免疫、神経伝達の機能維持、皮膚を健康に保つ | 1.5mg以上 |
ビオチン | 疲労回復、糖尿病・肥満の予防、皮膚を健康に保つ | |
葉酸 | タンパク質をつくるのをサポート。正常な赤血球の生成 | 0.216mg以上 |
ビタミンB12 | 造血作用。神経の健康維持 | 0.028mg以上 |
ビタミンC | 抗酸化作用、エネルギー生成、鉄の吸収促進 |
※乾物1kg、代謝エネルギー4000kcal当たり、AAFCO栄養素基準(2016年版)の成犬維持期を参照、ビタミンA、D、Eは日本食品標準成分表の値に変換
※参照:「ビタミンEは皮膚を紫外線傷害から保護する」(日本ビタミン学会)、「ビタミンK による健康寿命の延伸」(日本ビタミン学会)、「ビオチンによる糖尿病・肥満症・高血圧症の予防」(日本ビタミン学会)、「イヌの維持期のAAFCO養分基準(2016)を満たす手作り食レシピの設計法」(ペット栄養学会誌)
ビタミンA
犬はβカロテン(プロビタミンA)をビタミンAに変換できます(猫はできません)。ビタミンAは正常な免疫機能に不可欠で、不足すると感染症にかかりやすくなると言われています。ビタミンD
ビタミンDは腸内でのカルシウム吸収を促進します。人は日光浴でビタミンDを合成することができますが、犬の体にはその仕組みがないため食事から摂取する必要があります。※参照:「ビタミンD」(厚生労働省)
ビタミンE
ビタミンEは抗酸化作用が特徴で、タバコの煙や大気汚染、紫外線によるダメージを抑制します。ドライフードでは油脂の酸化防止を目的として含まれます。科学的に証明されていませんが、がんや白内障の予防効果が期待されています。※参照:「ビタミンE」(厚生労働省)
ビタミンB1(チアミン)
ビタミンB1は熱や酸化で分解され、特にドライフードでは食材から摂取することができないため添加が必須です。カツオやイカなどの生魚やアサリなどの貝類にはチアミン分解酵素「チアミナーゼ」が含まれ、継続して摂取すると欠乏症になります。チアミナーゼは加熱調理により不活化します。ナイアシン
犬はトリプトファンからナイアシンを合成することができます。ビタミンC
ビタミンCは抗酸化作用があり、免疫力の向上も期待できます。植物に含まれる鉄分の吸収を高める効果もあります。犬はビタミンCを体内で合成できますが、肝臓の合成能力が低下している場合は欠乏に注意が必要です。人の場合、タバコの煙が体内のビタミンC濃度を減少させることがわかっています。研究段階ですが、高濃度ビタミンCの点滴投与は副作用の少ないがん治療として期待されています。
※参照:「ビタミンC」(厚生労働省)
犬のビタミン不足と過剰摂取
AAFCOは犬が摂るべき各ビタミンの最小値と最大値を設定していますが、リスクが低く設定されていないものもあります。特にビタミンB群、ビタミンCは水溶性で過剰分が尿から排出されるため、最大値は設定されていません。
ただし、サプリメントによる過剰摂取には注意が必要です。特に人間用のビタミン剤を与えてしまうと、犬とっては過剰摂取になる場合があり、以下のような症状が出る可能性があるため、必ず犬用のサプリか総合栄養食を与えるようにしましょう。
ビタミンA | 骨や歯の発育不全、免疫力低下、視覚障害(夜盲症、眼球乾燥症)、被毛の貧弱化 | まれに食欲不振、骨折、内出血 |
ビタミンD | 骨粗鬆症 | 高カルシウム血症、腎障害、腎結石 |
ビタミンE | 皮膚疾患、免疫力低下 | 特になし |
ビタミンK | 出血 | 貧血 |
ビタミンB1(チアミン) | 脚気、疲労、食欲不振、運動失調、麻痺、心臓病 | 血圧低下、不整脈 |
ビタミンB2(リボフラビン) | 運動失調、皮膚疾患、結膜炎 | 特になし |
ナイアシン | 疲労、食欲不振、下痢、舌の壊死 | 血便、痙攣 |
パントテン酸 | 脂肪肝、成長不良、昏睡 | 特になし |
ビタミンB6 | 食欲不振、体重減少、痙攣、シュウ酸カルシウム尿結石 | 食欲不振、運動失調 |
ビオチン | 食欲不振、皮膚炎、脱毛、出血性下痢 | 特になし |
葉酸 | 食欲不振、体重減少、貧血 | 特になし |
ビタミンB12 | 貧血 | |
ビタミンC | 筋萎縮 | 特になし |
※参照:「ビタミンC 不足は筋萎縮と身体能力の低下をもたらす」(日本ビタミン学会)
ビタミンD
過剰摂取では100μg(乾物1kg、代謝エネルギー4000kcal当たり)のビタミンDを含むフードを与えられたグレートデーンの子犬でカルシウム吸収率の低下と骨形成異常が見られたことから、最大値が2007年の125μgから75μgに下げられました。腎結石のリスクを高める可能性も報告されています。※参照:「ビタミンD」(厚生労働省)
ビタミンE
2007年まで670mg(乾物1kg、代謝エネルギー4000kcal当たり)の最大値が設定されていましたが、過剰摂取による中毒報告がないことから削除されました。ただし、過剰摂取によりビタミンA、D、Kの吸収率が下がる場合があります。ビオチン
犬は腸内細菌によって体内でビオチンを合成することができます。そのため抗生物質などを長期服用すると腸内細菌が減って欠乏しやすくなり、食事から摂取する量を増やさなければいけません。また、卵白に含まれるタンパク質「アビジン」はビオチンの吸収を阻害します。アビジンは加熱調理で不活化します。
ビタミンK
犬は腸内細菌によって体内でビタミンKを合成することができます。ビオチンと同様、抗生物質などを長期服用する場合は欠乏に注意が必要です。※参照:「AAFCO2016年版における犬猫の栄養素プロファイル概要」(ペット栄養学会誌)
犬に必要なビタミンを多く含む食べ物
ビタミンA
ビタミンAは豚や鶏のレバー、うなぎやマグロ、鶏卵に多く含まれます。βカロチンを多く含む食材はニンジンやほうれん草、大葉、パセリ、カボチャ、春菊、三つ葉などに多く含まれます。・レシピ |
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・レシピ |
・レシピ |
ビタミンD
ビタミンDを含む食品はあまり多くありません。サケやアジ、うなぎ、サンマなど脂肪の多い魚、舞茸やエリンギなどのきのこに多く含まれます。ビタミンE
ビタミンEはきな粉やオリーブオイル、鮎、かぼちゃ、モロヘイヤなどに多く含まれます。・レシピ |
ビタミンK
ビタミンKは納豆やパセリ、大葉、モロヘイヤ、ひじき、ほうれん草などに多く含まれます。ビタミンB1(チアミン)
ビタミンB1は豚肉やゴマ、舞茸、うなぎ、そば、大豆などに多く含まれます。ビタミンB2(リボフラビン)
ビタミンB2は豚や牛のレバー、アーモンド、納豆、うなぎ、モロヘイヤなどに多く含まれます。ナイアシン
ナイアシンはカツオやマグロ、サバ、アジなどの魚や鶏肉、豚肉などに多く含まれます。・レシピ |
パントテン酸
パントテン酸は豚や牛のレバー、鶏卵、納豆、鶏肉、モロヘイヤなどに多く含まれます。・レシピ |
ビタミンB6
ビタミンB6はマグロやカツオ、そば、豚肉、ブロッコリー、鶏肉などに多く含まれます。・レシピ |
ビオチン
ビオチンは豚や牛のレバー、鶏卵やアーモンド、そばや大豆などに多く含まれます。・レシピ |
葉酸
葉酸は海苔や、鶏や牛のレバー、大豆やブロッコリー、枝豆などに多く含まれます。ビタミンB12
ビタミンB12は海苔やしじみ、牛や鶏のレバー、サバやサンマに多く含まれます。ビタミンC
ビタミンCはピーマンやブロッコリー、キウイや柿、イチゴ、ほうれん草に多く含まれます。犬に必要なビタミンなどが含まれる総合栄養食のおすすめごはん
犬の食べ物は「エサ」と呼ばれていた時代から、家族の「ごはん」と呼ぶ時代へ変わりました。私たちと同じように、犬も栄養バランスの良いごはんを食べることで健康を維持することができます。ごはん選びをする際は、以下の2点を気を付けていただくといいでしょう。
1. 総合栄養食を適量与える
犬が必要とする栄養は人間と同じではありません。そこで生まれたのが「総合栄養食」と呼ばれるごはんです。おやつなど「一般食」や「副食」と呼ばれるごはんだけ食べていると体を壊してしまいますので、「総合栄養食」のごはんを選ぶようにしましょう。総合栄養食を食べていても与える量が少なければ痩せてしまいますし、多ければ太ってしまいます。パッケージに書かれた食事量は目安ですので、ボディ・コンディション・スコアで「3」の「理想体型」を維持できる量を与えるようにしてください。
2. 添加物の少ない新鮮なごはんを選ぶ
犬のごはんと聞いて「カリカリ」と呼ばれる茶色い豆粒を想像される方も多いと思いますが、正しくは「ドライフード」と呼ばれる加工食品です。保存しやすく食いつきも良いことから犬のごはんとして一般的になりましたが、高温加熱によって食材本来の栄養が失われ、添加物も多く含まれることから見直しが進んでいます。新鮮な野菜を犬や猫に与え続けることで、様々ながんに罹るリスクを軽減することが研究で判明していたり、市販のドライフードを製造する工程の1つである高温加熱処理が、タンパク質の品質劣化を招き、熱に弱いビタミンを破壊し、さらには発がん性物質を生成してしまうことが、研究により判明しています。そこで生まれたのが素材本来の旨味や香りが楽しめ、余計な添加物も入っていない「フレッシュフード」と呼ばれる新鮮なごはんです。ペトコトフーズもその一つで、子犬からシニア犬(老犬)まで毎日のごはんにすることができます。もちろん総合栄養食で、主食としても、トッピングとしてもご利用いただけます。
実際に従来のドライタイプのドッグフードよりも、水分がより多く含まれた手作り品質のごはんを食べている犬の方が寿命が3年も長くなることが研究により明らかになっています。新鮮で美味しく、健康なごはんを選ぶことが長生きできる秘訣です。
ペトコトフーズの公式HPを見る
まとめ
ビタミンは過不足のないように摂取する
脂溶性は過剰に、水溶性は不足に注意
総合栄養食ならバランス良く摂れる