犬の老衰・老化のサインや症状は? 対応や安楽死の考え方を獣医師が解説

犬と暮らしていると必ずやってくる老齢期。「いつまでも健康に過ごし、苦しまず寿命を全うしてほしい」と誰もが願うのではないでしょうか。しかし、実際には病魔や老化などを避けて通ることは簡単ではありません。いざという時のために、心の準備をし、必要な知識をつけておくことが大切です。今回は犬の老化・老衰について、ペットの往診・在宅ケア専門サービス「にくきゅう」代表で獣医師の立石が解説します。

犬の老化のチェックポイント

犬の老化のチェックポイント

食事量は減っているのに、太りやすくなった

老犬の体重増加の原因として、食事量と運動量のバランスがとれていないことと、身体の代謝が落ちているために痩せにくくなっていることが考えられます。


寝ている時間が長くなった

犬も人間同様、年を重ねると周りの刺激に対して新鮮さを感じなくなり、興味を示さなくなっていきます。また疲れやすくなり、関節の痛みや動くことで苦痛を感じるような身体の病気があると動くことを避けるようになるため、結果として寝てばかりになると考えられます。

「遊んで!」という仕草が減った

新しいものに対して興味が薄れると同時に、体力の低下や運動するのがつらいなどの症状があれば、遊ぶことに消極的になるのは当然です。

また、白内障や核硬化症など、眼が白く濁ったようになる病気は老化とともに多くなります。視力の低下よりも眼の輝きや表情の変化の方が、飼い主は気付きやすいかもしれません。

歩くペースが遅くなった

体力の低下から、動きが鈍くなっていると思われます。また、関節炎や靭帯の異常から、歩くことで痛みを感じている可能性もあります。

早い段階で発見できれば、サプリメントや体重管理などで状態の悪化を先延ばしできるかもしれません。


耳が遠くなった

犬の聴覚は人間の4倍以上といわれています。また、人間よりも多方向からの音を感知することができます。

年を取ると、この感覚は衰え、音に気が付かなくなっていきます。視力も同時期に衰えていくため、急に触られるとびっくりして、時には攻撃的になることもあるので注意が必要です。

触るときには必ず「声掛けをする」「視界に入るように近づく」などの配慮をしてあげましょう。

新しい物に対しての警戒心が強くなった

老化により興味を示さなくなることが増える一方、今までとは違う感覚に慣れることが困難になるため、知らないものに対して異常に警戒し、吠えたり怖がったりするようになることもあります。

性格によって真逆の反応になるので、元々の性格がどちらなのか、その変化に気付くことが大切です。

無関心であれば害はないのですが、恐怖心を抱いているようであれば、刺激を避け、穏やかに過ごせるよう気遣ってあげてください。

食べる総量が減った

何らかの体調不良で食欲がない時は、好きな物や匂いの強い物なら口にする傾向があります。

ただのワガママと見分けるのは難しいかもしれませんが、食べる量や仕草をよく観察していると、どちらなのかわかることもあります。

老犬の場合、消化管の衰えや活動量の低下から身体が要求する食事量は減っていくことが一般的です。急に食べなくなったときは病気を疑ったほうがいいと思いますが、年単位で少しずつ減っていくようなら、老化のサインかもしれません。


口臭がひどくなった

年とともに歯周病で口が痛くて食べられないことも増えていきます。

当然、口臭もきつくなりますし、痛みから口を触られるのを嫌がるようになります。歯磨きの習慣は若い頃からの積み重ねが大切です。

まして痛みが出てからでは、触ることすらできなくなる可能性が高いです。老齢になる前から歯石や歯垢の除去などのクリーニングを定期的に行うことが重要です。

犬の平均寿命

子犬

アニコム損害保険の調査によると、犬の平均寿命は14歳でした。

犬種によって差があり、一般的に、大型になるほど寿命が短いといわれています。これには所説あり、小型犬は室内犬が多いため、異常や病気のサインに気付きやすいということも理由の一つとして考えられます。

特に大型犬では、高齢になって寝たきりの状態になった際は、体重の負担から内臓の血流が悪くなりやすく、余命が短くなる傾向が強いです。床ずれなども体重が重いほうができやすく、痛みなどで食欲が落ちる場合は、体力の低下も早めてしまいます。


犬が老衰死する前の症状・対応

撫でられる老犬

老衰死前の症状

老衰死する間際の症状としては、病気にかかったような目立った症状は無く、以下のような状態が見られます。

  • 寝ている時間が長くなり、呼吸が弱くなる
  • 食が細くなり、それに伴って排泄量(尿、便)が少なくなる
  • 意識がもうろうとしている時間が頻繁に訪れる

飼い主であれば、この状況になるまでに、徐々に体重が減り、痩せて活動量も減っていく様子に気が付いていると思います。

その段階であれば、できるだけ食べやすい形状の食事を人肌程度に温めて口元に運んであげたり、排泄場所に連れて行ってあげたりするといった介護をすることで、愛犬のQOL(Quality of life)を向上させることができます。

老衰死間際にできること

老衰死する間際になると、以下のようにできることは限られます。

  • 床ずれがないように体勢をこまめに変える
  • 身体を起こした状態で、匂いが立つように温めた食事や水分をスポイトで口に少量入れてみる(ただし、意識が無い場合は窒息の恐れがあるため、避けた方が安全)
  • 身体をさする、話しかけるなど、意識が遠のくことを防ぐ

この場合は、限られた時間をどう過ごすのか、最期の時をどう迎えるのかを考えながら、できるだけそばにいてあげられるよう家族で話し合って協力することが大切です。


安楽死という選択

顔を合わせる人と犬

日本においては、老衰であれば安楽死という選択はされないのが一般的だと思います。前述した通り、老衰の場合は生命の機能が低下することで本人が苦しむ様子はあまり見られないからです。

海外では、安楽死は飼い主の責任として受け入れられている場合もあるようですが、日本では倫理的に受け入れられていません。

獣医師の間でも「安楽死は絶対にしない」と決めている獣医師もいて、希望があっても実施されないこともあります。

飼い主と獣医師の双方が納得し、以下の条件を満たしている場合に安楽死が実施される場合があります。

  • 動物が生きることに苦しみや激しい痛みを感じており、それを回避する方法が無いこと
  • 飼い主である家族全員の同意が得られていること

苦しんでいる我が子を前に、何もしてあげられないことほど、心苦しいことはありません。それが本当にそれがベストな選択だったかは、犬本人が語らない限り、誰にも決められないことです。

動物を愛しているからこそ今の仕事を選んだ獣医師にとっても、その手段はつらく、無力感に満ちた行為であるといえます。

まとめ

見上げる犬

老衰にはいくつかのサインがあります
犬の平均寿命は14歳です(犬種によるバラツキあり)
老衰死前にできることは限られています
家族で最期の迎え方を相談しておきましょう

命にはいずれ必ず終わりがやってきます。だからこそ、生きている1日1日を充実させることが一番です。正常な老化なのか、病気によるものなのか、早く気付けるように愛犬をよく観察してあげてください。

最善の選択ができるのは、飼い主だけです。どんな選択をしたとしても、共に過ごした時間を笑顔で思い出してあげられることが、愛犬にとって最大の喜びであることを忘れないでください。


更新日:2020年6月10日
公開日:2017年8月3日

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