繁殖引退犬を迎えるために。里親になる方法や注意点などを解説

繁殖引退犬を迎えるために。里親になる方法や注意点などを解説

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犬を家族に迎える選択肢のひとつに「繁殖引退犬」がいます。繁殖引退犬を迎えるにあたって「なつかない」「歯や体の状態」など、気になることも多いでしょう。今回は、ブリーダーの繁殖引退犬を迎える際の基礎知識から、相性のいい愛犬を見つけるためのポイントなどを解説します。

繁殖引退犬の基礎知識

犬の親子

ブリーダーの元で母犬として活躍するのは、多くの場合、大体2歳から5歳くらいまでです。

6歳を迎える頃には引退し、里親さんに迎えられることになります。

このような、母犬を引退して一般のご家庭(里親)に迎えられる犬を、繁殖引退犬といいます。

繁殖引退犬の年齢

小型犬の場合、2歳で人間の24歳程度となり、6歳では40歳程度に相当します。そのため小型犬は、2歳位〜6歳になるくらいまで繁殖犬として過ごします。

大型犬の場合、2歳半から満5歳までの、人間年齢に換算して20歳代前半から30歳代までが、出産適齢期になります。

繁殖引退犬は、出産適齢期を過ぎると、一般の家庭で第二の犬生を歩むことが多いです。

ブリーダーが里親を募集するのは、小型犬で6歳程度、大型犬で5歳程度の年齢が多いでしょう。

繁殖引退犬の健康状態

繁殖引退犬は、節度あるブリーディングをしている限り、健康不安もなく元気で病歴もないのが普通です。

虚弱体質や疾病がある犬は繁殖犬には向かないため、健康な個体である可能性が高いといえます。

一方、健康管理や家系の血統管理ができていないブリーダーや、乱繁殖させているような悪質なブリーダーの場合、母体が疲弊していたり、持病を持っていたりすることがあるため、注意が必要です。

一口に繁殖引退犬といっても、個々の生活環境によって健康状態やコンディションは大きく異なります。

繁殖引退犬の特徴

新しい環境には時間がかかる

子犬であれば、環境への順応が早いですが、生活習慣や個性が備わっている成犬の場合、それまでの生活習慣を踏襲することや、新しい環境に慣れさせることにも、ある程度時間をかける必要があります。

衛生管理上の理由から、あまり外へ行ったことがなく散歩に慣れていない子や、フードを変えると食欲が落ちる子もいます。

あるいは、就寝場所やトイレの場所に慣れるまで時間がかかることもあります。おとなしい性格の子の場合、小さな子供に慣れていないことから怖がってしまうこともあります。

多頭飼育でも問題は少ない

繁殖引退犬は、子犬のようにいたずらしたり危険なものに興味を持つことが少なく、落ち着きがあります。

ブリーダーのもとで多くの犬たちと生活していることから、他の犬に吠えるなど過剰な反応を示すことが少ないことも特徴です。

性格や体質が事前にわかる

ブリーダーの繁殖引退犬であれば、虐待経験や放置経験がないため、人に懐きやすいメリットもあります。

血統証明書もあり、生育記録や体質、性格もわかっています。

その子の個性により大幅に異なるので、十分なコミュニケーションをとり、相性がいい子を探す必要があるでしょう。

繁殖引退犬の迎え方

犬の親子

ファーストコンタクト

繁殖引退犬を迎える場合、インターネットの検索で「犬種名 里親」で検索すると多くの里親募集のページがヒットします。

その中から、ブリーダーの繁殖引退犬を探すのが一般的です。

気になった犬が掲載されていたら、ブリーダーへ連絡し、繁殖犬との相性を確かめましょう

犬の性格やそのブリーダーの環境によっては、男性を怖がることがあったり、元気過ぎたり臆病だったり、子犬以上に相性のマッチングが重要です。

\ATTENTION!/
ブリーダーの訪問の際に、はじめに確認することは「衛生的な環境であるか」ということです。

優良なブリーダーは、飼育環境や衛生管理を徹底しているため、臭いもなくきれいな状態を維持しています。

繁殖に対するブリーダーの考え方が、繁殖引退犬のコンディションを大きく左右するため、よくチェックすることが大切です。


犬との相性を確認

成犬となり、個性ができ上がっている繁殖引退犬は、それぞれに性格も異なります。

元気な子であれば、小さな子どもがいても仲良く遊べますが、大人しく臆病な子は、大人だけの穏やかな家庭環境でないとストレスの原因となることがあります。

見た目の好みだけで決めるのではなく、犬の性格と家庭環境のマッチングがとても重要です。

\ATTENTION!/
ブリーダーの方針によりますが、家庭環境を厳しくチェックする場合もあります。

家族構成や間取り、家族に反対している人がいないかなど、多くの質問をされることもあります。飼育環境についての約束事を記載した書面にサインを求められることもあります。

譲渡する側は、引退犬の生活が幸せな環境であるかを確認したいとの思いがあることを理解しておきましょう。

繁殖引退犬を迎える際の費用

通常、繁殖引退犬の譲渡にかかる費用は、3万円~15万円といったところでしょう。

内分けとしては、直近の「ワクチン代」や「健康診断の費用」「避妊手術」「歯石取り」などの実費となります。

無償譲渡するケースもありますが、過去に虐待目的で無償で譲り受けるような事件が多発したため、現在では、無償では譲渡しないことが一般的となりました。


迎える前のトライアル

トライアルとは、本格的に迎える前段階として、試しに一定期間犬と生活してみることをいいます。

保護犬を迎える場合に多いプロセスですが、ブリーダーによってトライアルを設ける場合と設けない場合があります。

トライアルの目的は、その家庭と迎えられる犬がうまくやっていけるかをテストすることです。

\ATTENTION!/
迎える家庭側は、犬が来ることで家庭環境が変わり「従来の生活に支障が出ないか」「困ることがないか」を確認したいところですが、譲渡する側は「その家庭で犬が幸せに生活していけるか」を確認する目的があります。

そのためトライアルの結果、犬の状態が好ましくない場合は譲渡を中止することがあります。

また、譲渡側は、トライアルを申し込んだ家庭は「十分考えた上で覚悟を持って申し込んでいる」と思っているため、家庭側の事情によるお断りは、極力ないようにしましょう。

トライアルは、あくまでもご家庭側が犬を迎えることについて決めた後、「犬が幸せに生活できるかを確認するプロセスである」ということを十分理解しておくことが大切です。

繁殖引退犬のお迎えの準備

基本的な、犬を迎える環境を整えておきましょう。

用具の準備

  • ケージ
  • トイレ
  • ベッド
  • 食器・水飲み
  • ブラシ
  • 歯磨きセット
  • シャンプー

危険なものを片付ける

電源コードの保護、毒性のある観葉植物、誤食する恐れのあるもの、その他危険なものも片づけましょう。


滑りやすい床(フローリング)の対策

滑り止めのコーティング、フロアマット、カーペットを敷くなどを行い、足に負担がかからないようにしましょう。

特にコーギーやダックスフンドといった短足犬種を迎える際は、フローリング対策が重要になります。

生活のシュミレーション

迎える前に事前に散歩ルートや時間帯、留守番対策、かかりつけの獣医師やトリミングサロンなどを考えておきましょう。

繁殖引退犬のしつけ

犬のしつけをする様子

しつけは、信頼している飼い主に褒めてもらえる嬉しさを教えることです。

繁殖引退犬を家族に迎え入れてから、3カ月程度は十分なコミュニケションを取り、信頼関係を築くことに時間をかけてください

信頼関係ができてから、しつけを始めることが望ましいでしょう。


トイレトレーニング

はじめからトイレができる子もいますが、環境が変わることで分からなくなる子もいます。

トイレトレーニングのプロセスは、初めは自由に動き回れるスペースを1部屋に決め、トイレで成功したらオーバーアクションで褒めることを繰り返します。

失敗したときは、決して叱らず、無反応ですぐに片付けます

失敗したときに声を出したり叱ったりすると、排せつするとかまってもらえると勘違いしたり、隠れて排せつするようになってしまいます。

トイレの場所を覚えたら、別の部屋にも自由に行けるようにします。他の部屋にいても、トイレの位置に戻って排せつすることができたら、家庭の許容範囲内を自由にさせてもいいでしょう。

\ATTENTION!/
自分の匂いが無い初めての環境では、自分のテリトリーと認識するまでの間、あちこちにマーキングすることがあります。

これは排せつとは異なり、テリトリーを作るプロセスです。最初のうちは、多少は許容しなければならないですが、信頼関係ができてからしつけていくといいでしょう。


吠え対策

初めての環境では、不安や警戒心が強くなり、呼び鈴や訪問者に吠えることがあります。

その場合、玄関先や廊下に出さないことで自分のテリトリーと認識させないようにすることや、家族が家に入る際に呼び鈴を鳴らして入ってくるなどの対策が有効です。

その他の状況で吠えることもありますが、犬が吠えるのには必ず理由があります

よく「無駄吠え」という言葉を耳にしますが、犬にとっては、警戒や要求などの自己主張であり、無駄に吠えているわけではありません。

吠える意味をよく観察し、対処することができなければ、吠えの対策は成功しません


しつけのポイント

成犬は子犬よりもしつけに時間がかかるため、焦らず犬のペースで一つ一つクリアしてゆく心のゆとりが最も大切です。

しつけても何もできない犬は存在しません。しつけても覚えないのは、しつけの仕方がその子に合っていないと考えるのが正しい解釈です。

人間同様に犬にも個性があり、理解の仕方や受け取り方はさまざまです。その子に合った成功体験を探してみるのも、犬との生活の醍醐味ではないでしょうか。

まとめ

お座りをする犬

出産適齢期を過ぎた母犬は、里親さんに迎えられる
繁殖引退犬は、新しい環境に慣れさせることに時間がかかる場合がある
しつけを行う際は、新しい家族や環境に十分に慣れてから始める

繁殖引退犬に限らず、犬を迎えるためには、その子の生涯に責任を持つ決意と覚悟が必要です。

愛犬がどのような状態になっても、生涯にわたり責任を持たなけれならないことを理解した上で、犬を迎えることを決めてください。