【獣医師執筆】犬はサバ(鯖)を食べても大丈夫!栄養素や与え方の注意点を解説
サバは健康に良い食材で、オメガ3脂肪酸やビタミンなど栄養豊富に含みます。犬はよく噛む習性がないため、サバの骨を抜かないと喉や消化器に刺さる恐れがあるなど、与える際には注意点がいくつかあります。今回はサバの栄養素や、サバを与える際の注意点などを紹介します。
この記事を監修している専門家
ニック・ケイブ(Nick Cave)獣医師
米国獣医栄養学専門医・ペトコトフーズ監修マッセー大学獣医学部小動物内科にて一般診療に従事した後、2000年に獣医学修士を取得(卒業論文は『食物アレルギーの犬と猫の栄養管理』)。2004年よりカリフォルニア大学デービス校で栄養学と免疫学の博士号を取得し、小動物学臨床栄養の研修を修了。同年、米国獣医師栄養学会より米国獣医栄養学専門医に認定。世界的な犬猫の栄養ガイドラインあるAAFCOを策定するWSAVAの設立メンバー。2005年より小動物医学および栄養学の准教授、獣医栄養学の専門医としてマッセー大学に戻る。家族、2匹の犬、猫、そしてヤモリと暮らしている。
犬が食べても大丈夫なサバの栄養素
サバはタンパク質やオメガ3脂肪酸であるEPA・DHA、ビタミンD、ビタミンB2・B12などを含み、犬が食べても大丈夫な魚です。EPAは血液をサラサラにする効果や抗炎症作用、抗がん作用も期待され(※)、DHAは脳の働きをサポートしてくれます。
ビタミンDは小腸や腎臓でカルシウムとリンの吸収を促進し、骨や歯を丈夫にするのを助けます。ビタミンB12は赤血球中のヘモグロビンの生成を助け、神経機能の正常化や睡眠リズムの正常化、そして鉄分と共に貧血を予防する働きがあります。
※「がんとEPA」(日本静脈経腸栄養学会)
犬へのサバの適切な与え方
鯖缶や鯖の塩焼きやサバの味噌煮は添加物が入っている可能性があるため使用しないようにしましょう。また生ではなく、加熱してから食べやすい大きさにカットしたものを与えましょう。与える際は、サバの小骨が愛犬の喉や食道を傷つけないようしっかりと取り除いてあげてください。
総合栄養食へのトッピングやおやつとして与える場合は、1日の最適カロリー量の10%以内にしてください。1日の最適カロリー量は「ペトコトフーズ」の「フード診断」(無料)で簡単に計算することができます。
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犬にサバを与える際の注意点
犬にサバを与える際の注意点01:アニサキス
アニサキスは寄生した魚介類の鮮度が落ちると内臓から筋肉に移動し、胃壁や腸壁に刺入して嘔吐や激しい痛みを伴う食中毒(アニサキス症)を引き起こす恐れがあります。アニサキスは熱に弱く、煮たり焼いたりすればほぼ死滅するといわれています。参照:都内流通サケ・マス類からのアニサキスⅠ型(Anisakis simplex)第3期幼虫の検出状況(東京都感染症情報センター)
犬にサバを与える際の注意点02:ヒスタミン食中毒
ヒスタミン食中毒は「ヒスタミン」という物質を含有している魚を摂取することによって発症する中毒です。魚がもともと持っている「ヒスチジン」という物質が、細菌の持つ脱炭酸酵素の働きよって魚肉内で「ヒスタミン」を生成します。
魚を常温で放置することによって細菌が増殖するので、必然的にヒスタミンの生成される量も多くなり中毒を起こす確率が高くなります。
ヒスタミンは熱にとても強いため一度ヒスタミンが生成されてしまうと熱処理によって分解することは困難です。
予防策として新鮮な魚を購入することを心掛け、常温の状態で放置しないようにしましょう。ヒスタミン食中毒になると摂取後2〜3時間で以下のような症状が出るといわれています。
- 下痢
- 嘔吐
- 舌や顔の腫れ
- 蕁麻疹
- めまい
犬にサバを与える際の注意点03:ビタミンB1欠乏症
生のサバは「チアミナーゼ」というビタミンB1を分解する酵素を含有しています。少量では問題ありませんが、日常的に大量の生の鮭(チアミナーゼ)を摂取してしまうとビタミンB1が不足し、「ビタミンB1欠乏症」になる可能性があります。
ビタミンB1欠乏症の初期では食欲低下やよだれが多くなる症状が見られ、その後けいれん発作や神経・運動機能障害につながります。
早く治療を行えば回復が見込めるようですが、重症な伸筋硬直や昏睡状態になっても治療が行われなかった場合48時間以内に死に至る可能性が高いとされています。
犬にサバを与える際の注意点04:アレルギー
食物アレルギーには、生まれつきの体質による先天性アレルギーと、長い期間同じ食材を食べることで発症する後天性アレルギーがあります。アレルギーの場合、以下の症状になる可能性が挙げられます。- 下痢
- 嘔吐
- 発熱
- 元気がない
- 皮膚のかゆみ
上記のような症状があれば、すぐにかかりつけの獣医師に相談しましょう。
犬にサバを与える際の注意点05:黄色脂肪症
黄色脂肪症とは、主に青魚(マグロ、カツオ、ぶり、サンマ等)に多く含まれている不飽和脂肪酸を過剰に摂取することで発症する病気です。不飽和脂肪は少量なら、コレステロールを下げて血液をさらさらにしますが、与えすぎると脂肪を酸化させ、以下の症状を発現させます。
- 毛のツヤがなくなる
- お腹の下の方に、脂肪の固いしこりができる
- 突っ立ったような、ぎこちない歩き方をする
- お腹を触られることを極度に嫌う
まとめ
加熱してから与えるのがオススメ
与える量は少量程度に
骨やアレルギーに注意
与え過ぎは黄色脂肪症の原因に
人間にとって美味しい食材でも、犬にとっては危険な食べ物もたくさんあります。注意点をきちんと理解した上で、楽しいペットとの食ライフを過ごしてください。
参考文献
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