犬のダイエットに効果的な食事を栄養管理士が解説
犬のダイエットは運動と食事の見直しが基本です。食べすぎ・与えすぎであることが多いのですが、ただ食事量を制限するのではなく、最適な量になるよう減らすことが重要です。お腹を空かしてしまう子には、量を変えずに食事回数を増やすといいでしょう。食事でダイエットを成功させる方法について、ペット栄養管理士が解説します。#犬の食育
犬のダイエットに効果的な食事
愛犬をダイエットさせる方法として、「食事制限」や「痩せる食材を食べせる」ことを思いつく飼い主さんは少なくないと思います。しかし、それらは一時的なダイエットにつながったとしても、愛犬の健康のためには十分とは言えません。なぜなら、根本的に「なぜ愛犬は太ったのか」を把握していなければ、すぐリバウンドしてしまうからです。
犬が太る理由
犬が太る理由は、病気が原因の「二次性肥満」(症候性肥満)とそれ以外が原因の「原発性肥満」(単純性肥満)の二つにわけることができます。原発性肥満は遺伝が原因の場合もありますが、多くは環境、つまり食べ過ぎが原因です。うちの子は違うと思いがちですが、年代や国を問わず「4匹に1匹は肥満」という調査結果もあるので注意が必要です(※)。
二次性肥満で考えられる病気は「クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)」と「甲状腺機能低下症」の二つが代表的です。詳しくは関連記事をご覧ください。
※参照:『伴侶動物の肥満とその弊害』(ペット栄養学会誌)
「単純性肥満」の原因
肥満とは「体脂肪が過剰に蓄積した状態」を指します。太りやすい犬種もいますが、犬の肥満りの多くは食べ過ぎが原因の「単純性肥満」で、その原因の多くは飼い主さんにあります。以下に思い当たることはありませんか?- ごはんは量をはからず目分量で与えている
- ドッグフードの選び方がよくわからない
- ごはんもおやつも欲しがるとつい与えてしまう
- 他の家族がおやつをどれだけ与えているかわからない
- 理由を付けて散歩をサボることがある
- 愛犬の理想体型がイメージできない
一つでも心当たりがある方は、まずは「自分が太らせてしまった」という自覚を持つことが大切です。
ダイエットの基本原則
犬のダイエットも私たちと変わらず、「消費カロリー>摂取カロリー」が基本です。まずは消費カロリーを増やすため、散歩の機会や時間を増やしましょう。もちろん無理な運動は足腰への負担が大きくなってしまいますし、特に大型犬は注意が必要です。- 飼い主さんの都合で散歩ができない場合は散歩代行を利用する
- 散歩に行きたがらない場合はドッグトレーナーに相談する
- 大型犬や老犬の場合はプールで足腰の負担を軽減する
飼い主さんが一人で頑張ろうとせず、散歩代行やドッグトレーナー、ケア施設などを利用するといいでしょう。消費カロリーも長期で適正にするという視点が重要です。
食事制限ではなく「適量を食べさせる」
摂取カロリーを減らす方法としてすぐ食事制限が思い浮かぶと思いますが、闇雲に減らすだけでは期待するだけの減量効果が得られなかったり、減らしすぎて病気になってしまうかもしれません。まずは現在どれだけ食べているのかを正確に把握することから始めましょう。
- 目分量でごはんを与えていませんか?
- おやつを欲しがるだけ与えていませんか?
私たちと犬では体のサイズが違いますので、同じ1gでも体に与える影響は犬のほうが大きくなります。誤差だと思っていた数gも毎日となれば肥満の原因となり、それを正しい量に直すだけでもダイエットにつながることがあります。
おやつのあげすぎも肥満の原因になりがちです。犬は総合栄養食を食べている限り、それ以上のカロリーや栄養は必要ありません。ただ、愛犬との絆を深めるためにもおやつをあげたいというのも飼い主心でしょう。あげるとしても、1日の摂取カロリーの10%以内になることを心掛けてください。
飼い主さんが「ドッグフードやおやつはパッケージに書かれた正しい量を与えている」と考えているのに痩せない場合、パッケージの正しい量が正しくない場合があります。パッケージに書かれている量はあくまで目安であり、その子にとっての正しい量とは限らないからです。
犬種や年齢、性別、不妊去勢手術の有無、普段の活動量など、同じ体重の犬でも正しい量は変わってきます。関連記事では犬のカロリー計算の方法も解説していますが、ペトコトフーズの「フード診断」(無料)でも1日の最適カロリー量を簡単に計算することができます。現状と大きな差がないか確認してみてください。
無料フード診断を受ける
おやつは誰かが勝手にあげている場合もありますので、家族全員でどれだけあげたかを把握しておく必要があります。おやつは管理していたのに、こっそり「人間用の食事を与える家族がいた」というケースでは膵炎など病気のリスクもありますので注意してください。
犬のダイエットでオススメの食事
愛犬の体重を減らすために「ダイエットフード」を検討される飼い主さんは多いと思います。一般的にダイエットフードは食物繊維を増やしてかさ増ししたような作りになっています。それでダイエットが成功すればいいのですが、変化が無かったり、元のフードに戻すと体重も戻ってしまったりすることが少なくありません。
なぜならダイエットフードも与え過ぎたり、おやつの量が多いままだったりすれば期待する効果は得られないからです。最初に「肥満の原因のほとんどは、飼い主さんにある」とお伝えした通り、フードを変えたところで飼い主さんが変わらなければ根本的な解決は難しいのです。
食べる量を減らすのは栄養不足の危険も
食べ過ぎて太ったなら食べる量を減らせばいいと考える方もいると思います。実際、獣医師の指示で80%程度の食事制限を行うことはありますが、飼い主さんの判断で行うことは以下の理由からオススメしません。- 栄養不足になる可能性
- ストレスになる可能性
総合栄養食は犬にとって必要なカロリーや栄養が計算されて作られています。つまり規定量より少なくしてしまえば、カロリーだけでなく必要な栄養まで少なくなってしまいます。いくら痩せても、不健康な痩せ方では本末転倒ですよね。
犬からするとなぜ食事が少なくなったのか理解できず、ただ空腹のストレスを感じることにもなりかねません。問題行動につながったり、飼い主さんとの関係性が悪くなったりするかもしれません。
ダイエット食材は使い方次第
ダイエット食材として「ささみ」「豆腐」「おから」などが知られています。それらを普段のドッグフードに足して満腹感を増して上げるのはダイエットに効果的です。ただし、豆腐は脂質が多く、おからは繊維質が多いため、食べ過ぎると消化不良につながるリスクもあります。与え過ぎには注意してください。また、「寒天」を使った手作りごはんも良いとされていますが、手作りごはんは栄養不足になる可能性があるためオススメしていません。人と犬の栄養は異なるため、手作りごはんをするには犬の栄養学を専門的に学ぶ必要があるからです。
美味しいごはんを食べて健康的に痩せる
愛犬のごはんにペトコトフーズを選んでいただいた飼い主さんから、「ペトコトフーズにしてから体重が減って適正体重になりました!」という声を頂くことがあります。ペトコトフーズはダイエットフードではないのですが、フード診断によって食事量が適正になった結果、自然と体重が減るようです。もちろんフード診断に従ったから必ず適正体重になるわけではありません。その場合はご相談いただくことで、獣医師やペット栄養管理士から、より適した食事量を個別にご提案させていただきます。人も犬も美味しいごはんを食べて健康になるのが一番です。ぜひペトコトフーズにご相談ください!
犬の肥満は寿命を縮める
犬は丸っとしているくらいがかわいいと言う方もいますが、肥満は寿命を短くしますので愛犬の体を想うならダイエットさせてあげましょう。犬は肥満になると気管虚脱や短頭種症候群、膵炎、膿皮症、マラセチア性外耳炎、シュウ酸カルシウム尿石症、椎間板ヘルニア、乳腺腫瘍といった病気を起こしやすくなります。
肥満自体は病気ではなく状態を指す言葉ですが、その状態は病気になりやすい危険な状態でもあるのです。
肥満の犬は寿命が短い
アメリカのネスレリサーチセンターが48匹のラブラドールレトリーバーを対象に行った研究によると、肥満の犬と正常な犬で寿命に2年近い差が出ました(※)。正常な犬は高齢になって見られる疾患の発症リスクが少なく、特に大型犬で多い変形性関節症の発症が遅い傾向が見られたそうです。研究リーダーのデニス・ローラー博士は、「犬の生涯を通して理想的な体型を保つような食事の与え方をするだけで犬の寿命を延ばすことができるだけでなく、加齢の兆しが現れるのを先送りすることができることを科学的に実証できた」とコメントしています。
※参照:「Diet restriction and ageing in the dog: major observations over two decades」(British Journal of Nutrition)
ダイエットの目的は「痩せること」ではない
私たちは健康診断や結婚式、写真撮影など何かイベントに合わせ、「短期的に痩せるダイエット」をすることがあります。一方、犬はイベント事で痩せることがほとんどありませんから、治療の一環でない限り短期的に痩せるダイエットは行われません。
つまり、犬にとってのダイエットとは単に体重を落とせばいいということではありません。健康的な体でいるために、適正体重を維持することが重要なのです。
飼い主さんの中には急に散歩を増やしたり、ドッグフードをダイエットフードや手作りごはんに変えたり、与える量を減らしたりといったことをする方もいると思います。しかし、急な変化は別の病気につながる可能性があります。
まずは「痩せるために何をすればいいか」と考えるのではなく、「適正体重を維持するために何をすればいいか」という視点でダイエットを考えるようにしましょう。
犬のダイエットでよくある質問(Q&A)
まだまだ犬のダイエットで疑問点がある方もいると思いますので、よくある質問にまとめてお答えします。
食事回数は多いほうがいい?
犬はもともと群れで狩りをする動物で、ごはんは食べられるときに食べる食性(間欠採食)を持っています。食事回数を増やすことで早食いの防止になったり、空腹のストレスを紛らわせたりすることはありますが、増やしたから痩せるということはありません。ドライとウェットどちらがいい?
ドライフードと比べてウェットフードのほうが水分量が多いため、満腹感はウェットのほうが得られやすいかもしれません。また、ドライフードは飼い主さんの利便性のために生まれたもの。ペトことでは加工による栄養の損失が少ない新鮮なウェットフードをオススメしています。太りやすい犬の特徴は?
年齢では5〜7歳以上、性別ではオスよりメスが肥満になりやすいとされています。太りやすい犬種として、ビーグルやコッカースパニエル、ラブラドールレトリーバーが挙げられます。小型犬も、以下の理由から大型犬より太りやすい傾向にあります。- 散歩の必要性が軽視されやすく、時間が短くなりがち。ましてや「室内犬だから散歩は必要ない」ということはありません。
- ごはんやおやつの「ちょっとだけ」「一口だけ」が体に与える影響は大型犬より大きくなるため、カロリーの過剰摂取が起こりがちです。
肥満かどうかの見分け方は?
愛犬の体型が適正か、痩せているか太っているかを知る方法として「ボディコンディションスコア(BCS)」という評価方法があります。特に脂肪の付き具合で5段階にわけ、3が理想的な体型です。チェック方法は以下の通りです。- 真横・真上から腰のくびれ具合を見る
- 肋骨部をなでて骨を確かめる
- 腰をなでて骨を確かめる
実際に愛犬を触って、どの体型か確認してみてください。
参照:『飼い主のためのペットフード・ガイドライン』(環境省)
体重の測り方やボディコンディションスコアの確認方法は、獣医師の佐藤先生にYouTubeで解説していただきました。ぜひ以下の動画を参考にしてください。
まとめ
肥満の原因は飼い主さんにあることがほとんど
肥満の犬と正常な犬で寿命に大きな差が出る
ただ痩せるのではなく適正体重を維持することが重要
フードを変える前に日々の食生活を見直してみる
犬は肥満か肥満でないかで寿命が大きく変わります。病気が原因でない限り、原因は飼い主さんにありますので、まずは「自分が太らせた」という自覚を持つことが大切です。余談になりますが、飼い主さんと犬の体型には相関性があるという研究データもあります。ダイエットというとドッグフードを何にするかの話になりがちですが、まずは日々の食生活を見直すことから始めましょう。適切な食事をして、適切な運動ができていれば、ダイエットをせずとも適正体重を維持できるようになります。
参考文献
- 『伴侶動物の肥満とその弊害』(ペット栄養学会誌)
【動画解説】犬のダイエット
YouTubeのPETOKOTOチャンネルでは、獣医師の佐藤先生が犬のダイエットについて解説した動画を公開しています。あわせてご覧ください。気になることがあれば専門家に聞いてみよう!
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