【獣医師執筆】犬に塩を与えるのはNG!理由や与えるリスクを解説
愛犬の食事を管理する上で「塩分」を気にしている方は多いと思いますが、犬が塩分を摂り過ぎてしまうと、腎臓や心臓などの内臓にダメージを与えてしまいます。しかし、実は塩分は足りなくても体には悪影響があります。犬はどうやって塩分を摂取すべきなのか、人間が使う調味料用の塩を舐めてしまっても大丈夫なのか、詳しく説明します。
この記事を監修している専門家
ニック・ケイブ(Nick Cave)獣医師
米国獣医栄養学専門医・ペトコトフーズ監修マッセー大学獣医学部小動物内科にて一般診療に従事した後、2000年に獣医学修士を取得(卒業論文は『食物アレルギーの犬と猫の栄養管理』)。2004年よりカリフォルニア大学デービス校で栄養学と免疫学の博士号を取得し、小動物学臨床栄養の研修を修了。同年、米国獣医師栄養学会より米国獣医栄養学専門医に認定。世界的な犬猫の栄養ガイドラインあるAAFCOを策定するWSAVAの設立メンバー。2005年より小動物医学および栄養学の准教授、獣医栄養学の専門医としてマッセー大学に戻る。家族、2匹の犬、猫、そしてヤモリと暮らしている。
犬に塩を与えてはいけない理由
塩分過多による心疾患のリスク
塩の主成分は塩化ナトリウムです。犬は人間のように汗はかかず、体温調節を役割とする汗腺が足裏にしかありません。そのため塩分は必要ないと誤解されがちですが、塩分は犬にとっても必要な成分なのです。ただし、必要量は人間よりもはるかに少なく、基本的に総合栄養食のドッグフードの場合はドッグフードに含まれているため、余分に与える必要はありません。
こぼしてしまった塩を舐めさせてしまったり、人間用に味付けされた料理を与えたりするのは塩分過多になってしまいますので注意してください。過剰摂取による血漿(けっしょう)高カリウム濃度が続くと犬の場合は心疾患、心不全につながる恐れがあり大変危険です。
食塩中毒とは?
食塩中毒は塩分を過剰に摂取することで引き起こされます。腎臓や心臓に負荷がかかり、犬の場合心不全を引き起こす可能性が高くなります。実際に、人間でも小さな子供の食塩中毒による死亡事故が起こっています。主な症状
- 下痢や嘔吐
- 食欲の低下
- 水を大量に飲む
- 発作
犬にとっての食塩中毒の致死量
一般的な犬の体重1kgあたり2〜3gで食塩中毒になる恐れがあり、4gで致死量になるといわれています。しかし、犬種や体重、個体の体質によるところも大きいので、「舐めてしまったけど2gくらいだから大丈夫だろう」と自己判断はせずに、すぐに動物病院へ相談してください。
一方で犬は塩分不足にも要注意
塩分過多よりも軽視されがちな塩分不足ですが、塩分は犬にとっても必要です。体内での必要量が不足した時は、腎臓の尿細菅での再吸収が増加し尿の排出量を低下させてしまいます。塩分不足は嘔吐やだるさ、食欲低下を引き起こします。ただし総合栄養食のドッグフードに必要な塩分は含まれていますので、ドッグフードを食べさせていれば心配ありません。
犬の誤飲時に塩を使って吐かせるのは危険
塩水を飲むと胃が強く刺激されるため嘔吐につながります。しかし吐かせようと思って飲ませた塩が原因で食塩中毒になり、命を落としてしまうケースもあるのです。
異物を飲み込んでしまったり、食べてはいけない食べ物を食べてしまったりした場合は、まず動物病院に連絡をして獣医師の指示を仰ぎましょう。
また、熱中症対策として人と同じように塩分を与えることも危険です。熱中症が疑われる場合は、体温を下げたり水分補給をしたりして病院に連れて行きましょう。
犬用の手作りごはんは塩分不足に注意
最近は愛犬に手作りご飯を与えている飼い主さんも多いと思います。その際に塩分過多に気を使っている方も多いと思いますが、手作りご飯だと逆に塩分不足になってしまうケースもあるようです。手作りのご飯は総合栄養食のドッグフードと一緒に与え、食のバランスを整えてあげるようにしましょう。
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まとめ
犬にとっての必要塩分は人よりはるかに少ない
与える量を間違えると食塩中毒になる可能性あり
誤飲の際に塩水で吐かせるのは危険
犬にとっての必要塩分はドッグフードで補える
なお、本稿は以下の情報を参照して執筆しています。
- 日本ペット栄養学会(2014)「ペット栄養管理学テキストブック」
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