
犬の手作りごはんのメリット・デメリット。注意すべき栄養・食材やオススメレシピまで紹介【獣医師監修】
愛犬のために手作りごはんを食べさせたいと思う飼い主さんは多いと思います。最近は初心者向けレシピも増えてきましたが、犬の手作りごはんにはメリットだけでなくデメリットもあります。今回は栄養の考え方から食材や味付け、量の注意点について、獣医師の佐藤先生監修のもと解説していきます。#犬の食育
犬の手作りごはんのメリット・デメリット
手作りごはんのメリット | 1. ごはんから水分摂取ができる |
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2. 新鮮・無添加のごはんを食べさせられる | |
3. 偏食対策(愛犬が好きな食材を使ってつくれる) | |
4. アレルギー対策(食材を選んで安全につくれる) | |
手作りごはんのデメリット | 1. 栄養の過不足による病気のリスクがある |
2. 犬の栄養学を勉強する必要がある | |
3. 犬用に食材購入・調理の必要がある | |
4. 保存が効かない |

手作りごはんは犬にとって理想的な食事です。実際、市販のドッグフードを食べていた犬より手作りごはんを食べていた犬のほうが3年近く長生きしたという調査結果もあります。
しかし、「手作りであれば何でもいい」というわけではなく、逆に手作りごはんが犬を不健康にしてしまうリスクもあります。そこで最初は、手作りごはんのメリット・デメリットについて解説します。
手作りごはんのメリット

飼い主さんが手作りごはんを考えるきっかけとして、アレルギーやダイエット、偏食などの問題が多いと思います。市販のいろいろなドッグフードを試したものの、良いものが見つからないため自分で作ることにしたという方が少なくないようです。
市販のフードと違って、体の状態や好き嫌いなどその子に最適なごはんがつくれるのは手作りごはんにする一番のメリットと言えます。市販品の材料や製造方法に不安がある飼い主さんも、手作りなら新鮮な食材が使えて余計な添加物を使わなくていいので安心ですね。
手作りごはんのメリット
- 愛犬の健康状態に合ったごはんがつくれる
- 愛犬が好きな食材を使ってつくれる
- 新鮮なごはんを食べさせられる
- 無添加のごはんを食べさせられる
- ごはんから水分摂取ができる
手作りごはんのデメリット

一方で、人と犬では体の作りが異なりますので、手作りごはんにするなら犬の栄養学をしっかり学ばなければいけません。愛犬が体調を崩したので病院に行ったところ、栄養バランスが崩れた手作りごはんが原因だったというケースもあります。
栄養面も考慮した手作りごはんを作ろうとすると、使う量が少ないのにたくさんの食材を買わなければいけませんし、料理も人とは別に行わなければいけません。始めてみたところ予想以上に手間とコストがかかることに気付いて断念する方は少くありません。
手作りごはんのデメリット
- 栄養バランスが崩れるリスクがある
- 犬の栄養学を勉強する必要がある
- 犬用に食材を買う必要がある
- 犬用に調理する必要がある
- 保存がきかない
- 災害時の非常食を別に用意する必要がある
手作りは良いの? 悪いの?

手作りごはんにはメリットもデメリットもあり、結局どうすればいいのかわからない方もいると思います。ペトことでは、そういった飼い主さんのために、オリジナルのドッグフード「PETOKOTO FOODS」を作りました。
PETOKOTO FOODSは、獣医栄養学専門医のニック獣医師が監修したレシピをもとに、新鮮な国産食材を使って手作りした人も食べられるごはんです。冷凍してお届けしますので、ビタミン・ミネラル以外の余計な添加物は使用していません。
もちろん栄養バランスが問題ないごはんを毎日手作りできるならそれが一番。ただ、簡単ではありません。毎日のごはんはPETOKOTO FOODSにして、たまに旬の食材をトッピングしたり、特別な日に手作りしたりすることをオススメしています。
でも、「やっぱりドライフードは便利……」と思う方もいると思います。そこで次は、ドライフードのメリット・デメリットについて解説します。
ドライフードのメリット・デメリット

現在、犬のごはんとして最も多いのが「カリカリ」と呼ばれるドライフードです。実は誕生は1950年代で、犬と人の歴史を考えれば歴史の浅いごはんです。しかし、多くのメリットがあったことから全世界で急速に普及しました。
ドライフードのメリット
ドライフードのメリットは何と言っても「簡単・便利・安い」の三拍子にあります。最近はコンビニでも手に入り、乾燥しているので量の割に持ち運びも簡単です。袋を開けてお皿に入れるだけでいいのも素晴らしいところですね。中身はどうかというと、総合栄養食であれば栄養バランスがしっかりしています。ドライフードの普及が、犬の寿命が延びた一因になっているのは間違いありません。保存性も高く、日常的にも、災害など緊急時も確保しやすいのも助かるところです。
ドライフードのデメリット

総合栄養食としてのドライフードは、数値上こそ栄養バランスを満たしているかもしれませんが、使われているものの質が良いか悪いかは見た目では判断できません。高温加熱して成形した結果、すべて茶色の粒になってしまうからです。
例えば購入している商品の材料が牛であれば、産地や使われている部位、加工のされ方などわかるでしょうか? もしかしたら「クズ肉」と呼ばれる家畜向けの材料が使われているかもしれません。それは、家族である愛犬に食べさせたいものでしょうか?
前述した手作りごはんを食べている犬のほうが長生きしたという調査ですが、その理由として質の悪さや高温加熱による栄養素の損失、添加物の影響があるのではないかと考察されています。飼い主さんにメリットが多くても、犬には違うかもしれないのです。
犬の手作りごはんで注意してほしいこと

難しくても「愛犬のためにごはんを手作りしてあげたい」という飼い主さんには、いくつか注意していただきたい点があります。
いろいろな食材を使う
手作りで最も気をつけたいのは、栄養バランスです。三大栄養素であるタンパク質や脂質、炭水化物だけでなく、五大栄養素に含まれるビタミン、ミネラルも重要です。どれかが不足したり、逆に過剰になると良くありません。ただ毎回、栄養素を計算して作るのは現実的ではないでしょう。私たちも自分の料理でそこまで考えていないはずです。「肉ばかり食べているから野菜を食べよう」「油物ばかり食べていたから胃腸に優しいものにしよう」くらいで調整していますよね。
つまり、1食ではバランスが良くなくても、いろいろな食材を使って長い目で見てバランスの良い食事になっていればいいのです。特に旬の食材は、見た目や味だけでなくその時期に栄養が豊富な食材でもありますので意識して使うといいでしょう。
犬が食べていい食材か調べる

人が食べて大丈夫でも、犬には危険な食材がたくさんあります。意外なものがダメだったということもあると思いますので、必ず食べて大丈夫か、大丈夫でも食べ方に注意点はないかなど調べるようにしてください。
食べてはいけない食材の例
チョコレート、ぶどう、ネギ類(タマネギ、ニンニクなど)、マカダミアナッツ、アボカド、乳製品、カフェイン飲料、キシリトールなど。食べ方に注意が必要な食材の例
生の大豆、生のイカ・アサリ、生のほうれん草、生魚、生肉など。詳しくは関連記事をご覧ください。犬には犬の味付けで

犬は甘みを好む傾向がありますので、食いつきを良くするために加熱したサツマイモやカボチャを入れることはオススメです。おやつにハチミツを使うのもいいでしょう。ただし、人と同じように砂糖を使えば肥満につながってしまいます。
塩分については、総合栄養食の基準値を公開しているAAFCOで成犬の最小量がドッグフード(乾物)の0.08%とされ、最大量は定めていません。犬は人のように塩分過多で高血圧になることはありませんが、摂りすぎれば負担になってしまいます(※)。
基本的に味付けは食材そのものの味を生かし、調味料を添加することはやめましょう。特に人向けの味付けがされた食べ物を犬に与えるのはNGです。
ごはんの最適量は犬ごとに違う
適切な栄養バランスで作られたごはんでも、与える量が多ければ肥満につながりますし、少なければ栄養不足になってしまいます。1日の最適カロリー量はペトことオリジナルのドッグフード「PETOKOTO FOODS」の「フード診断」(無料)で簡単に計算することができます。
無料フード診断を受ける

初心者向け犬の手作りごはんレシピ

毎日のごはんを手作りにするのは栄養面に心配があるためオススメできませんが、特別な日のごはんやおやつ、トッピングなら大丈夫。専門家監修レシピを紹介します。
特別な日のごはんに「今月の一皿」

連載「今月の一皿」では、ペット食育上級指導士の関口先生が考案したレシピを紹介していますので、ぜひ挑戦してみてください。
レシピ一覧を見る
いつものごはんにちょい足しトッピング

手作りに不安がある方は、いつものごはんにちょい足しするところから始めてはいかがでしょうか。季節の野菜や果物を少し乗せてあげるだけでも立派な手作りごはんになりますよ。
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旬の食材を使ったおやつ作り

ごはんだけでなく簡単にできるおやつのレシピも公開しています。ぜひぜひ「#PETOKOTOおやつ部」で愛犬と楽しむ様子を見せてくださいね♪
レシピ一覧を見る
犬の手作りごはんでよくある質問

最後に、愛犬の手作りごはんを考えている飼い主さんからよく頂く質問にまとめてお答えします。
犬は肉だけ食べていればいい?
犬の祖先であるオオカミが肉食であることから、犬も肉食のほうがいいと考える人がいるようです。犬は人との暮らしの中で進化し、その食性を肉食寄りの雑食に変化させました。そのほうが栄養を摂るのに有利だと気付いたからです。犬はタンパク質だけでなく炭水化物を利用することで、肝臓や腎臓、膵臓の負担を減らすことに成功したのです。オオカミと犬は違う動物です。犬は栄養をバランス良く摂ることで健康な体を維持することができます。
グレインフリーにしたほうがいい?

最近、グレインフリーのドッグフードが良いものとして多数販売されています。小麦やとうもろこしなどの穀物を含まないということですが、グレインフリーのほうが犬に良いという科学的な根拠はありません。
むしろ心臓病のリスクを高めているという調査結果もあり、穀物を避ける明確な理由(獣医師の指示)がない限り、グレインフリーのドッグフードを選択する意味はありません。
手作りごはんにしたら下痢になった?
今までドライフードを食べていた犬が手作りごはんを食べて急にお腹を壊したら、飼い主さんはびっくりしてしまいますね。それは、よくあることです。毎日いろいろなものを食べている私たちと違って、ほとんどの犬は決まったものを食べています。消化機能もその決まったものに適応していますので、急に食べ物が変わると体が対応できずに下痢になることがあるのです。
ごはんを変えるときは一気に変えず、少しずつ変えるようにしてください。下痢の症状が続く場合は別の原因も考えられますので、獣医師に相談するようにしてください。
◯◯病に効く食材はある?
PETOKOTO FOODSではInstagramアカウント「@petokotofoods」で定期的に犬の栄養に関するライブ配信を行っています。そこで、よく「◯◯病に効く食材はありますか?」という質問を頂きます。その答えは、残念ながら「ありません」です。良い食事は病気を予防するという考えから「医食同源」という言葉がありますが、それは健康になることで免疫力を高めましょうという話です。
例え病気に効く成分が食材に含まれていたとしても、その成分が効果を出すまで食べようとすれば、何千個という数になってしまうでしょう。治療は獣医師の指示に従って、飼い主さんは「栄養がしっかり摂れる食事」を心がけるようにしてください。
まとめ

犬のごはんは手作りが理想でも、デメリットもある
ドライフードは犬のための食事とは言えない
手作りするなら特別な日やトッピング、おやつで
正しい知識で愛犬の食事を考えてあげる
すべてを手作りにするのではなく、特別な日のごはんにしたり、総合栄養食をベースにトッピングに手作りしたりするのも良いでしょう。最近は栄養バランスが計算された市販の手作りフードも増えてきましたので、犬にも人にも合った選択をするようにしてください。
気になることがあれば専門家に聞いてみよう!

InstagramのPETOKOTO FOODSアカウント(@petokotofoods)では、獣医師やペット栄養管理士が出演する「食のお悩み相談会」を定期開催しています。愛犬のごはんについて気になることがある方は、ぜひご参加ください。
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この記事を監修している専門家
佐藤貴紀獣医師
目黒アニマルメディカルセンター/MAMeC顧問獣医師。獣医循環器学会認定医
麻布大学獣医学部卒業後、2007年dogdays東京ミッドタウンクリニック副院長に就任。2008年FORPETS 代表取締役 兼 白金高輪動物病院院長に就任。2010年獣医循環器学会認定医取得。2011年中央アニマルクリニックを附属病院として設立し、総院長に就任(現在は顧問獣医師)。2017年JVCCに参画し、取締役に就任。子会社JVCC動物病院グループ株式会社代表取締役を兼任。2019年WOLVES Hand 取締役 兼 目黒アニマルメディカルセンター/MAMeCの顧問獣医師に就任。「一生のかかりつけの医師」を推奨するとともに、専門分野治療、予防医療に力をいれている。