【歯科担当獣医師解説】犬の歯石取り|無麻酔のリスク・自宅での歯磨きの方法
3歳以上の犬の8割が歯に関わるトラブルを抱えているといわれています。愛犬の口臭が気になった場合、歯石が付着し、歯周病になっている可能性があります。一度付着した歯石を除去することは簡単なことではありません。今回は、動物病院での歯石取りの方法や、自宅でのケア方法などをバンブーペットクリニック院長の藤間が説明します。
犬の歯石取りの歯石とは?
よく「歯垢」と「歯石」が混同されがちですが、「歯垢」とは食べかすなどに細菌が繁殖して出来たネバネバしたものをいいます。別名「プラーク」とも呼ばれます。
これに唾液に含まれるミネラルが沈着して固まったものを「歯石」といいます。
人では「歯垢」に含まれる細菌が引き起こす虫歯の方が問題となる場合が多いですが、犬では虫歯はほとんど起こらず、歯石の沈着を防ぐことが重要です。
付着した歯石を簡単に落とすことはできないので、日頃の自宅での歯磨きで、歯石が付かないようにすることが大事です。
犬の歯石取りが付く前に歯磨きが大切
犬によっては簡単に歯磨きをさせてくれる子もいますが、最初から無抵抗というのはまれでしょう。以下の手順を参考に、焦らずにゆっくり慣らすようにしてください。Step1. 歯ブラシを見せる
最初は歯ブラシを見せるだけです。歯ブラシを見てもおとなしくしていたら、褒めておやつをあげましょう。2〜4週間くらい続けて、歯ブラシを見せたら喜んで寄ってくるくらいになると良いです。
Step2. 歯ブラシで体をタッチ
歯ブラシでマズルや頭を優しく撫でましょう。おとなしくしていたら、褒めておやつをあげましょう。これも2〜4週間くらい繰り返し、歯ブラシで触られても気にしないようにしましょう。
Step3. 歯ブラシで歯をタッチ
歯ブラシで犬歯の先端や歯茎をチョンチョンとタッチしてみましょう。おとなしくしていたら、褒めておやつをあげましょう。
これも2〜4週間くらい繰り返し、歯ブラシで口の中を触られても気にしないようにしましょう。大丈夫そうなら奥歯など場所を変えて、ゆっくりゆっくり慣れさせていきます。
「歯ブラシ=楽しいもの」だと思って、歯ブラシを見たら寄ってくるようになれば、歯ブラシに慣れたといえるでしょう。
【動画解説】犬の歯磨きのやり方
YouTubeのPETOKOTOチャンネルでは、獣医師の佐藤先生が犬の歯磨きのやり方について解説した動画を公開しています。あわせてご覧ください。PETOKOTOチャンネルを見る
犬の歯石取りの方法
動物病院で歯石を除去してもらいましょう。
スケーラー(※)やペンチなどを使って、飼い主自身で除去することはおすすめできません。
歯茎を傷つけて出血させたり、口の中を触られることが嫌いになり、歯磨きをさせてくれなくなったりする恐れがあります。
※歯石を除去するために用いられる歯科用器具のこと
動物病院での犬の歯石取り
麻酔下での犬の歯石取り
当院では小動物歯科研究会の教えに則って、麻酔下での歯石取りを推奨しています。麻酔下での歯科処置は麻酔により動物が眠った状態にありますので、動物の性格に左右されず、歯周ポケットから歯の裏側までストレスなく隅々まで処置することができ、グラグラの歯や、抜歯が必要と判断される場合にも対処することができます。
歯石を取り終わったら、ポリッシングという作業を行います。歯の表面にできた肉眼では確認できない傷や凹凸をフッ素の入った研磨剤で磨いて平らにし、歯石の再付着を防ぎます。
無麻酔での犬の歯石取り
安全に隅々まで処置できることから、麻酔下での歯石取りを推奨していますが、なかには老犬だったり、麻酔アレルギーを持っていたりして、麻酔にリスクが伴う場合があります。その場合、無麻酔での歯石取りが行われる場合があります。肉眼的には綺麗になり、口臭も軽減することができますが、歯周病を起こしていた場合は根本的な治療にはなりません。
犬が動かないように保定し、ハンドスケーラーや鉗子を使ってガリガリと歯石を削るため、危険を伴います。
犬の歯石取りの前にまず歯磨きケアを!
歯石付着予防には日頃からの歯磨きが重要
歯磨きをする前に歯ブラシに慣れさせましょう
自宅での歯石取りはおすすめできません
動物病院では麻酔リスクが低い場合、麻酔下での歯石取りが一般的です
無麻酔での歯石取りには危険が伴います
飼い主の皆さんにお願いしたいことは、口の中を触らせてくれるようスキンシップをとってもらうこと、その流れから歯磨きを行えるようになっていただけたら幸いです。