ペットツーリズム出発進行! JR東日本とPETOKOTOが目指す「ペットを家族として愛せる世界」とは

ペットツーリズム出発進行! JR東日本とPETOKOTOが目指す「ペットを家族として愛せる世界」とは

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日本初となる「ペット専用新幹線」を2022年5月にJR東日本と協働で走らせることに成功したPETOKOTO。鉄道を軸にどのようなペットフレンドリーを実現していくのか、JR東日本スタートアップの古川さんとPETOKOTOの大久保、吉野が今後の展望を語りました。

左から古川さん、吉野、大久保と愛犬コルク

  • 古川 詩乃(JR東日本スタートアップ アソシエイト)
  • 大久保 泰介(PETOKOTO 代表取締役社長)
  • 大久保 コルク(PETOKOTO 社員犬)
  • 吉野 真紀夫(PETOKOTO 執行役員ブランドコミュニケーション本部長)


世界が注目したペット専用新幹線



古川︰現在ペットは手荷物(手回り品)という扱いで、ケージの大きさや重さに厳密なルールがあります。でも、我々としては「飼い主さんもワンちゃんもストレスなくご移動していただきたい」という想いが強くあって、PETOKOTOさんと一緒にペット専用新幹線を走らせる企画が実現できたことは本当に嬉しく思っています。

大久保︰僕たちもそうです。ホームの電光掲示板(発車案内板)に「ペット専用新幹線」の文字が流れた時は、企画責任者の井島(執行役員 COO)と泣きました



古川︰移動中にお客さまが喜ばれている様子を見るのも嬉しかったですが、車掌が車内アナウンスでペットのことを「小さなお客さま」と呼んでくれたのも嬉しくて。会社全体でウェルカムな姿勢を見せられたのがすごく良かったと思います。

吉野︰僕は入社前で参加できなかったんですが、テレビで放映されたり、海外でもニュースになったりして反響がすごかったみたいですね。



人も犬も楽しめる旅を提案したい



大久保︰今回は新幹線で軽井沢に行くツアーでしたが、車で行こうとすると数時間かかってしまうんですよね。コルクと車で行ったことがありますが、休憩を取りながらとは言ってもしんどいと思います。

新幹線なら1時間ちょっと。それなら日帰りで気軽に行けますし、着いてからレンタカーを使えば行動範囲も広がる。アウトレットでショッピングだけでなく、山登りや川遊びといった新たな体験を提案できるんじゃないかと思います。

古川︰JR東日本は「駅から始まる小さな旅」という取り組みをしているんですが、私はぜひ「駅から始まるペットフレンドリーの旅」のような形でPETOKOTOさんともやりたいなと思っています。山道を一緒に歩いたり、ワンちゃんの本能を刺激するような体験が提案できれば、今までにない旅の楽しみになると思います。

大久保︰吉野さんの前職、スノーピークさんのローカルツーリズムは非常に参考になります。スノーピークのテントに泊まるところまで、素晴らしい​体験だと思います。



吉野︰その土地の魅力って表面に見えているものだけじゃなくて、裏にある人情的な部分とか、カルチャーとか。食べ物もグルメ本に出てこないような美味しいものって、実はたくさんあるんですね。そういったものを全国の自治体さんと一緒に掘り起こすんです。

キャンプの場合はテントで寝食を共にすることで生まれる一体感も魅力の一つですが、僕は犬も同じくらい重要な役割を持つと思っています。散歩をしていると普段なら素通りする他人であっても、犬がいることで挨拶をして会話が生まれますよね。犬も人も楽しめて、非日常の部分に触れることで一層記憶に残るような、そういった体験を提案したいですね。


犬好きだけが喜ぶ取り組みにはしない



大久保︰JR東日本さんとして、「ペット専用新幹線」を実際にやってみてわかった課題はどんなものがありましたか?

古川︰今回は実証実験として実現しましたが、今後も事業として継続していくために課題だと思ったのは「清掃面」と「収益性」の部分です。この2つは離れてるようで実は密接に関わっています。

今回の​​ペット専用新幹線でお客さまを乗せたのは12両のうち1車両だけです。当然それでは事業として成り立ちませんので、例えば1〜2号車はペット専用車で3号車以降は前方でペット車両の実施をご理解いただけているお客さまが乗るという状態が理想です。そのご理解を頂くためにも、特別清掃の徹底と衛生試験の整理を引き続き進めていきたいです。

大久保︰ペット専用車だけでもビニールシートを貼って空気清浄機を何台も置いて、使用後に清掃もしていただいてという状態でしたから、それが車両は違うと言っても一緒の新幹線となるとハードルはかなり高そうですね。

古川︰そうなんです。実証実験の際は社内の企画段階で「次に利用されるお客さまからアレルギーが出たらどうするんだ」といった心配の声が出ていましたので、清掃面は特に気を付けました。それから安全面もそうです。「ワンちゃんがどこかに飛び出したらどうするんだ」「線路に行ったらどうするんだ」といった懸念は当然出ました。お客さまの安全確保が鉄道事業者の最重要課題ですから、そこを脅かすことがないよう検討を重ねました。

ジアイーノを設置して空気質の変化を調査

大久保︰ありがとうございます。そこをクリアにするのはめちゃくちゃ大変だったと思います。PETOKOTOには「輪の外も想像しよう」という行動指針があるんですが、新幹線の車内ではドッグトレーナーさんに「ワンちゃんを落ち着かせる方法」をレクチャーしていただきました。犬好きだけが喜べばいいというのではなく、動物が苦手な方も安心できるような取り組みでなければいけないと考えています。

古川︰そうですね。そこを一緒に課題解決していけると嬉しいです。


駅とペットを起点にした街づくり



吉野︰今回、JR東日本スタートアップさんと資本業務提携させていただいて「ペットツーリズム推進室」を新設することになりましたが、かなり積極的に協働していただけるということで驚きました。

古川︰恵比寿駅でPETOKOTO FOODSのポップアップを出展していただいたのが大きかったと思います。それまで「駅」と「ペット」に接点は無かったんですが、ポップアップでそこにあった境界線みたいなものが良い意味でぼけてきたなと思ったんです。駅とペットを起点にした街づくりにつながるんじゃないかと思っています。


ポップアップ@恵比寿の様子

吉野︰僕は遊休地の活用が良いと思っていて、アウトドア用の椅子とかテーブルを使ったグランピング施設を土合駅DOAI VILLAGEでやってますよね。谷川岳を登るところの拠点になる駅で、あそこはいいですね。



古川︰もともと「日本一のモグラ駅」として知る人ぞ知る駅だったんですが、そこの魅力をVILLAGE INC.さんの場所づくりのノウハウで今まで以上に楽しめる場所にしていただいて、すごく面白い取り組みができているんじゃないかと思います。

大久保︰遊休地を活用したドッグランとかできそうですね。

古川︰すごく面白いと思います。ワンちゃんは移動のストレスもあると思いますので、着いてすぐに遊べるのはいいなと思います。ただ、駅そのものだと調整に時間がかかってしまうので、高架下の活用も考えていけると良いかもしれません。

吉野︰いいですね。音の問題があるかもしれませんが「OMUSUBI」(お結び)と連携して保護犬・保護猫の譲渡会なんてできたら、駅前で今まではなかったようなコミュニティ作りができるかもしれませんね。

古川︰ペットツーリズムは、毎月の実施というより四半期に1回くらいのペースでの企画検討が現実的です。それ以外ではPETOKOTO FOODSを駅という身近な場でたくさんの方に知ってほしいなという思いもありまして、駅員さんと販売を一緒にやれたらいいなと思っています。

大久保︰それは素晴らしいですね。

ポップアップには駅長さんも来ていただきました

古川︰ 恵比寿の時も「食のお悩み相談」も含めてお客さまに喜ばれていたと思うので、栄養学の専門家がいらっしゃるPETOKOTOさんと一緒にできるのはいいなと思っています。

吉野︰社内獣医師の佐藤やペット栄養管理士たちがお手伝いできると思います。それで駅員さんたちが地域の飼い主さんたちと栄養の話をするなんて面白いと思いますね。

大久保︰ どんどん面白いことを考えていきましょう。

古川︰ ぜひよろしくお願いします。