【獣医師執筆】猫の総合栄養食って何?基準や一般食との違い、正しい選び方を解説
子猫からシニア猫まで毎日の主食にできる「総合栄養食」は、猫に必要な栄養素が基準に沿ってバランス良く配合されたごはんです。ドライやウェット、缶詰、パウチなどさまざまなタイプがあり、手作りと変わらないフレッシュタイプも出てきました。今回はおすすめの総合栄養食について解説します。
猫の総合栄養食とは
総合栄養食とは、猫に必要な栄養素がバランス良く配合されたごはんのことで、ペットフード協会では「毎日の主要な食事として給与することを目的とし、当該ペットフードと水だけで指定された成長段階における健康を維持できるような栄養素的にバランスのとれた製品」と定義されています(※)。
年齢や妊娠・授乳期などライフステージに合わせた総合栄養食もありますが、オールステージで与えても大丈夫な総合栄養食もあります。
フードの種類として、「総合栄養食」の他にジャーキーなどのおやつやスナック、トリーツをまとめた「間食」や「療法食」「一般食」があります。一般食は嗜好性を高めることを目的としたもので、「おかずタイプ」や「副食」「ふりかけ」と表記されたり、「総合栄養食と一緒に与えてください」と書かれていたりします。
獣医師の指示で与える「療法食」は栄養バランスが計算されていますが、「間食」や「一般食」は栄養バランスを重視していません。そのため主食にすると体を壊してしまう可能性があり、特に「一般食」は名称から主食にできると誤解されやすいので注意が必要です。
※参照:「ペットフードの種類」(ペットフード協会)
猫の総合栄養食の基準
総合栄養食に法律的な基準はありませんが、一般的に「AAFCO」(アアフコ・米国飼料検査官協会)や「FEDIAF」(フェディアフ・欧州ペットフード工業会連合)などが策定している栄養ガイドラインが基準にされています。日本では任意団体「ペットフード公正取引協議会」がAAFCOの栄養ガイドラインを採用しており、加盟するドッグフードメーカーは、「この商品は、ペットフード公正取引協議会の定める分析試験の結果、総合栄養食の基準を満たすことが証明されています」といった表記をしています。
ペトコトフーズはペットフード公正取引協議会の定める分析試験を行うサナテックで実施しています。一方で総合栄養食と謳っていても、実際は「AAFCOの基準を満たした」と表記されている場合もありますので、注意してラベルやサイトを見るようにしましょう。
猫の総合栄養食の種類
総合栄養食は水分量や形状の違いでも分けられます。一般的にはペットフード協会の区分をもとに「ドライ」「ソフトドライ」「セミモイスト」「ウェット缶詰」「ウェットその他」に分けられ、ウェットその他には「フレッシュ」タイプや、「パウチ」タイプが含まれます。ドライ | ドライ | 水分10%程度以下。加熱発泡処理された固形状のもの。 |
ソフトドライ | ソフトドライ | 水分25~35%程度。加熱発泡処理。 |
セミモイスト | セミモイスト | 水分25~35%。発泡していないもの。 |
ウェット | ウェット缶詰 | 水分75%程度。缶詰に充填。 |
ウェットその他 | 水分75%程度。アルミトレーやレトルトパウチに充填。 |
※参照:「ペットフードの種類」(ペットフード協会)
猫の総合栄養食は手作りできる?
手作りのほうが長生きするなら愛猫のために総合栄養食を手作りしてあげたいと考える飼い主さんもいると思います。しかし、PETOKOTOでは手作りを毎日のごはんにすることは推奨していませんし、総合栄養食を手作りすることは現実的に難しいでしょう。
なぜなら、人が摂るべき栄養と猫が摂るべき栄養は異なるため、愛猫のごはんをつくるためには猫の栄養学をしっかり学ばないといけないからです。知識を得たとしても、人とは別に毎日いろいろな食材を買って、栄養を考えたレシピを作って、調理をして……というのは愛猫のためとは言っても大変な手間と時間とお金がかかります。
もちろんできる飼い主さんはぜひそうしてあげてください。それが理想であることは間違いありません。簡単でありませんので、手作りが難しい日はフレッシュフードに頼るという方も少なくありません。愛猫の健康と飼い主さんの負担を考えて、ベストは難しくてもベターな選択をしていただければと思います。
猫の総合栄養食を選ぶ際の注意点
総合栄養食はたくさんの種類が販売されていますので、何を基準に選べばいいのか迷ってしまうこともあると思います。ごはんはその子に合ったものを選ぶのが一番ですが、選び方のポイントを紹介します。
1. 年齢や猫種ごとの違いで選ぶ
AAFCOは成長期の子猫と成猫で必要な栄養基準を分けていますが、両方の基準を満たすことでオールステージ対応の総合栄養食になっているものもあります。ペトコトフーズは全年齢対応の総合栄養食です。細かく年齢ごとに分けたり、シニア猫(老猫)用としているもの、猫種ごとに分けたりしているものもありますが、大切なのは愛猫に合ったごはんを選ぶこと。例えば水を飲むのが苦手な子にはウェットタイプで食事から水分摂取ができるようにするなど、選択肢の多さをうまく活用しましょう。
判断に迷うときは、ぜひ獣医師やペット栄養管理士など専門家に相談してください。
2. 飼い主さんのライフスタイルで選ぶ
ドライフードは買う手間や保管する手間、与える手間が楽なごはんですから、飼い主さんのライフスタイルや経済面から選んだり、非常食として備蓄したりするのは良いと思います。ただ、ドライフードは高温加熱して粒状に成型された非常食の乾パンのようなもの。家族の一員である愛猫には新鮮なごはんを選んでいただきたいです。猫も新鮮なごはんを食べることで健康を維持することができます。もちろん手作りごはんは栄養バランスが難しく飼い主さんの負担も少なくありません。そんなときはフレッシュタイプのごはんを手作りと併用したり、ドライフードに混ぜたりして活用するといいでしょう。
3. 食材や成分で選ぶ
どのタイプのごはんであれ、「食材にどんなものを使っているか」「添加物にどんなものを使っているか」がごはん選びの大切な基準になります。パッケージやメーカーのサイトなどに「食材の産地」「使われている肉の部位」「誰が生産しているか」「どこで加工されているか」などの情報がしっかり書かれているものを選びましょう。添加物は悪いものと思われがちですが、無添加で腐ったものを食べれば体に悪いわけですから、大事なのは何を目的として添加されているかです。例えばビタミンやミネラルは食材からすべてを摂ることは難しいため、ほとんどの総合栄養食に添加されています。
一方で着色料や香料は本来必要のないものですし、嗜好性を高めるために動物性油脂を使えばその分だけ酸化防止剤が必要になります。そのため最近は「余計な添加物は不使用」としているフードが増えています。
4. 作り手の想いで選ぶ
PETOKOTOがおすすめする総合栄養食は、「猫のことを考えてつくられたごはん」です。当たり前のようですが、残念ながら猫ではなく飼い主さん、つまり買う人のことしが考えていないものも少なくありません。例えば可愛い形に成型されていたり、緑やピンクに着色されたりしているフードが売られていますよね。そういった加工は猫に全く必要ないものです。しかし売れるからそうしています(残念です)。少し前に流行った「グレインフリー」も同様です。穀物にアレルギーのある猫には必要なものですが、ほとんどの猫には必要のないものです。グレインフリーだから体に良いという科学的な根拠はありません。グレインフリーと書くだけで売れるからそうしているのです(本当に残念です)。
猫の総合栄養食についてよくある質問
総合栄養食について、よく頂く質問とその回答を紹介します。
Q1. 食べない場合はどうすればいいの?
猫にとってごはんは私たち以上に楽しみな時間のはずです。それなのに食べてくれないとしたら、何か理由があると考えたほうがいいでしょう。急に食べなくなった場合は、病気を疑う必要がありますので獣医師の執筆記事を参考にしてください。その他の理由として、「ドライフードの油(動物性油脂)が口や体に合わない」「高齢で顎が弱っていたり口内に問題があったりしてカリカリが食べにくい」といったことも考えられます。無添加で水分量も多く食べやすいフレッシュタイプのフードに変えてみると良いかもしれません。
他にも「食べなければもっと美味しいごはんが出てくることを覚えてしまった」ことが原因かもしれません。フード選びに迷ってコロコロ変えたり、これなら食べてくれるからとおやつに頼ったりする飼い主さんに多いケースです。心当たりがある場合、状況に合ったアドバイスをしてもらうためにも獣医師やペット栄養管理士に相談することをおすすめします。
愛猫のためのキャットフードの選び方は?
猫の食べ物は「エサ」と呼ばれていた時代から、家族の「ごはん」と呼ぶ時代へ変わりました。私たちと同じように、猫も栄養バランスの良いごはんを食べることで健康を維持することができます。ごはん選びをする際は、以下を気を付けていただくといいでしょう。
1. 総合栄養食を適量与える
猫が必要とする栄養は人間と同じではありません。そこで生まれたのが「総合栄養食」と呼ばれるごはんです。おやつなど「一般食」や「副食」と呼ばれるごはんだけ食べていると体を壊してしまいますので、「総合栄養食」のごはんを選ぶようにしましょう。
総合栄養食を食べていても与える量が少なければ痩せてしまいますし、多ければ太ってしまいます。パッケージに書かれた食事量は目安ですので、ボディ・コンディション・スコアで「3」の「理想体型」を維持できる量を与えるようにしてください。
※参照:「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」(環境省)
2. 添加物の少ない新鮮なごはんを選ぶ
猫のごはんと聞いて「カリカリ」と呼ばれる茶色い豆粒を想像される方も多いと思いますが、正しくは「ドライフード」と呼ばれる加工食品です。保存しやすく食いつきも良いことから猫のごはんとして一般的になりましたが、高温加熱によって食材本来の栄養が失われ、添加物も多く含まれることから見直しが進んでいます。
実際に、市販のドライフードを製造する工程の1つである高温加熱処理が、タンパク質の品質劣化を招き、熱に弱いビタミンを破壊し、さらには発がん性物質を生成してしまうことが、研究により判明しています。
そこで生まれたのが素材本来の旨味や香りが楽しめ、余計な添加物も入っていない「フレッシュフード」と呼ばれる新鮮なごはんです。
なお、フレッシュフードは水分量も多いので、尿の活性化で腎臓病予防としても機能します。実際に従来のドライタイプのキャットフードよりも、水分がより多く含まれたフレッシュフード等を食べている猫の方が尿路結石になるリスクが約50%下がることが研究により明らかになっています。新鮮で美味しく、健康なごはんを選ぶことが長生きできる秘訣です。
まとめ
毎日の食事は総合栄養食を与える
猫のためにつくられたものを選ぶ
手作りは難しくフレッシュタイプがおすすめ
獣医師相談のインスタライブ開催中!
ペトコトフーズのInstagramアカウント(@petokotofoods)では、獣医師やペット栄養管理士が出演する「食のお悩み相談会」を定期開催しています。愛猫のごはんについて気になることがある方は、ぜひご参加ください。
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