グレインフリーのフードが犬の心臓病を引き起こす!? 海外論文から解説

グレインフリーのフードが犬の心臓病を引き起こす!? 海外論文から解説

ペットは人のように自分でご飯を選ぶことがありません。飼い主さんが毎日与えるものだけに、愛犬が長く健康に過ごせるような良いフードを与えたいですよね。現在は「グレインフリー」などさまざまな謳い文句で多種多様なドックフードが店頭やネットショップで売られています。でも、それは本当に「良いフード」なのでしょうか? 今回はアメリカ・カリフォルニア大学デービス校(UC Davis)より報告された「グレインフリーフードを与えられていたゴールデンレトリーバーにおいて、タウリンの欠乏と拡張型心筋症との間に関係性が見られた」という論文を獣医師の福地がご紹介します。

タウリン不足のグレインフリーフードが拡張型心筋症を起こす?

最近まで穀物不使用の総合栄養食、いわゆる「グレインフリーフード」が人気でした。「犬はもともと肉食だったから穀物を食べる必要はない」という考えがあるようですが、今までグレインフリーフードが健康にどのような影響をもたらすかという正確な科学的知見は得られていませんでした。

UC Davisの研究チームはゴールデンレトリーバーを対象に、血中タウリン濃度が低く、拡張型心筋症と診断された犬のフードを調べたところ、そのほとんどのドッグフードがグレインフリーのものだったのです。論文の内容を詳しく見ていきましょう。

ゴールデンレトリーバーはタウリン欠乏になりやすい

数ある犬種の中でもゴールデンレトリーバーはタウリン欠乏に陥りやすい犬種として知られています。タウリンの欠乏による体への影響がわかりやすいということで今回の研究対象に選ばれました。

研究チームは心臓超音波検査で拡張型心筋症と診断されたゴールデンレトリーバー24匹と健康に問題のないゴールデンレトリバー52匹の血液を採取し、タウリン濃度を比較しました。その結果、健康な犬のタウリン濃度が平均279.1nmol/mlだったのに対し、拡張型心筋症を持つ犬は平均142.7nmol/mlと半分程度でした。

拡張型心筋症と診断された低タウリン値の24匹の犬にはタウリンのサプリメントを1日2000mgから4500mg与え、そのうち13匹の犬にはLカルニチンを500〜6000mg与え、13日後に血液検査でタウリン濃度を測定し、前後で比較しました。その結果、投与後は血中タウリン値が413.6nmol/mlまで改善し、サプリメントの投与で補うことができることがわかりました。


タウリンの働き

タウリンはアミノ酸の1種類ですが、心筋の収縮性、カルシウムの調節、心筋細胞の安定化に働いており、従来より拡張型心筋症との関連が指摘されています。心臓の他にもタウリンは網膜、繁殖機能、中枢神経機能などさまざまな器官に悪影響をもたらします。

タウリンは犬においては必須アミノ酸ではなく、タウリンの添加や食事試験については現在のところペットフード製造業者に義務化されていません。タウリンは特定の調理方法によって減損することが知られていますが、今回はこうした製造過程までは評価できませんでした。

マメ科植物にはタウリンを含む含硫アミノ酸が少なく、またウサギやラム肉などの特定の動物の肉にはタウリンや含硫アミノ酸が少ないことが知られています。

うっ血性心不全はタウリン投与で改善される?

拡張型心筋症で低タウリン値だった24匹の犬のうち、薬物投与が必要とされた11匹はうっ血性心不全の状態と判断され、利尿薬が処方されました。この11匹にタウリンやLカルニチン投与後に再度超音波検査を行ったところ、9匹はうっ血が解消ししました。そのうち5匹は利尿剤の中止をすることができ、残りの4匹は利尿剤の使用量を半分ほどに減量することができました。

L-カルニチンとタウリンの両方の補給が、犬の拡張型心筋症の改善に有効であったという過去の報告をもとに今回の研究でも半分の群ではL-カルニチンが同時に投与されたものの、タウリンのみ補給の犬でも改善がみられたため今回はL-カルニチンの効果は十分に検討できませんでした。

タウリン欠乏はグレインフリーフードで多い?

血中タウリン濃度が低く、拡張型心筋症と診断されたゴールデンレトリーバー24匹のフードを確認したところ、9ブランド・13種のうち12種のドッグフードがグレインフリーでした。また、10種類のグレインフリーフードにはマメ類が多く含まれていました(主要原材料の5番目までに表記)。

健康な犬のうち、4匹では平均よりも低いタウリン値(200nmol/ml以下)であり、この犬たちが与えられていたフードはグレインフリーもしくはマメ類が豊富なフードでした。統計的な解析ですべてのグレインフリーフードがタウリン欠乏と関連があるとは言えませんでしたが、24匹のうち16匹に与えられていたある1種類のグレインフリーフードにおいて、低タウリン濃度と関係があることは判明しました。

それらのフードは米国飼料検査官協会(AAFCO)の定める栄養基準を満たしていましたが、世界小動物獣医師会(WSAVA)の定める栄養委員会の推奨する栄養基準を満たしたフードはゼロでした。実際に犬にフードを与えて影響を評価する給与実験も行われておらず、栄養成分がAAFCO基準に適合するかどうかだけに着目してフードが設計されたことが明らかになりました。


愛犬に与えるご飯だから「なんとなく良さそう」はNG

現在のドッグフードは「米国飼料検査官協会(AAFCO)」の定める栄養基準に適合するように設計されているものが多くあります。しかし、今回はこのAAFCO基準を満たしたグレインフードでも統計的に意味を持って低タウリン濃度との関係があることがわかりました。この栄養基準は今後さらなるアップデートが必要かもしれません。「なんとなく体に良さそう」という印象に惑わされず、きちんと犬に健康問題がないかを調べているペットフードメーカーを選択することをお勧めします。

調査概要


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