【獣医師監修・完全ガイド】犬に飛行機は乗れる?飛行機に乗るリスクや注意点を解説
「犬を飛行機に乗せるのはかわいそう」と思う飼い主さんも多いのではないでしょうか。犬を飛行機に乗せる場合、客室にペットと同乗できるプランがある航空会社もありますが、犬は荷物扱いとなり、そのほかの通常のプランでは、客室ではなく貨物室で輸送されます。さらに、緊急時には人命優先となり、荷物扱いのペットは救出ができないことも。そして、犬にとって飛行機での移動は、私たち以上にストレスを感じることもあり、過去には飛行機の搭乗による体調不良が原因で死亡したり、緊急時に救出できず死亡する事故もありました。今回は、犬を飛行機に乗せる場合の注意点や、ストレス軽減方法などを解説します。
犬は飛行機に乗ることはできる
条件を満たしていれば、受け入れている航空会社もありますが、会社によってそれぞれ規定が異なります。
特に夏は熱中症、冬は凍傷や低体温症の恐れがあることから、犬の受け入れを行っていない航空会社もあります。
また、犬を飛行機に乗せる前に、次のようなリスクがあることを知っておきましょう。
飛行機に搭乗する犬の扱い
一部の例外を除き、犬は「受託荷物」として扱われ、基本的には客室の座席ではなく貨物室にて運送されます。離陸後の貨物室は温度管理をしているものの、完全に無人の状態になるため、外気温の影響により、客室とは異なる環境になることも予想され、気温変化に伴う体調不良の危険性もあります。
やむを得ず貨物室に預ける際は、夏場や冬場は暑さ対策・寒さ対策をしっかりしましょう。
また、たとえペットと客室に同伴できるプランであっても、緊急時にはペットを含む貨物は持ち出しをすることができません。
もしものことを考えて、愛犬を飛行機に乗せないことも一つの方法です。フェリーで移動することもできますう。
犬と飛行機に座席で乗れる飛行機がある
スターフライヤー
スターフライヤーは、2024年1月15日(月)より国内線全路線・全便でペットをケージに入れた状態で飛行機に同乗できるサービスへと拡大しました。指定のサイズのケージ(50㎝x40㎝x40㎝程度)に入る小型の犬及び猫が対象です。
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犬が飛行機に搭乗できる年齢制限はある?
各航空会社によって規定は異なります。生後4カ月に満たない子犬、7歳以上のシニア犬にはより大きな負担がかかるため、例え元気であっても飛行機に乗せるのは避けましょう。
犬が飛行機に乗る際のリスクや注意点
気温の変化
貨物室に乗せる場合、空調がまったく効いていないわけではありませんが、調節する人もいないため、人間の客室と比べると適切な温度を保つことは難しい環境です。夏は熱中症、冬は凍傷や低体温症になり、最悪の場合死亡するケースも少なくありません。怪我の恐れ
ケージの扉が開いてしまう可能性はゼロとは言い切れません。飛行機では予測不可能な揺れも多いです。過去にケージが開いてしまい、流血するほどの怪我をした事例もあります。
精神的ストレス
犬によっては、暗く大きな騒音が鳴り続ける貨物室で、1人ケージに入れられることに大きなストレスを感じてしまう恐れがあります。過去には死亡事故も
実際に、飛行機に乗せたことが原因で死に至った事故が複数報告されています。犬にとって飛行機は快適な乗り物ではなく、季節やその子に合った対策が必要であることを十分に理解しておきましょう。
また、緊急時には人命が最優先。貨物扱いとなるペットは、どんな状況であれ機内に置いていく必要があります。実際に、人は脱出できても、機内に取り残されたペットが死亡した事例もあります。
有事の際にもペットの命を守れる移動手段を選ぶことも大切です。
飛行機に搭乗できない・オススメしない犬
子犬・シニア犬
前述の通り、生後4カ月に満たない子犬、7歳以上のシニア犬にはより大きな負担がかかることが懸念されます。成犬に比べ、体温調節が難しい年齢のため、飛行機の乗せることは避けたほうが無難です。
短頭種
短頭種とは「ブルドッグ」「フレンチブルドッグ」「ボストンテリア」「ブルテリア」「チャウチャウ」「パグ」「シーズー」「狆」「ペキニーズ」「ボクサー」「キャバリアキングチャールズスパニエル」「チベタンスパニエル」「ブリュッセルグリフォン」といった犬種や、これらの犬種の血を引く雑種犬を指します。短頭種は飛行機に搭乗することで、熱中症や呼吸器官へ悪影響を及ぼす可能性が高いため、飛行機に乗せることはできません。
病気を患っている犬
飛行機の貨物室は客室と異なり、気圧や気温の変化が著しく、 特に夏場は高温になることも考えられます。このような状況下では持病が悪化したり、普段は発症しないような疾患を発症しやすくなったりする恐れがあります。
分離不安・閉所恐怖症
飼い主と離れると鳴く犬や、暗くて狭い場所が嫌いな犬にとって、貨物室でのフライトは精神的に大きなストレス負担がかかります。ストレスから自傷行為をする可能性もありますので、何かあったときに駆けつけられない飛行機での移動は危険といえるでしょう。
犬と飛行機を利用する際の流れ
国際線と国内線で違いがあります。国際線の方が複雑なので、時間に余裕を持って手続きをするようにしましょう。
国内線の場合
1. 同意書にサイン
「フライト中に犬が怪我・死亡しても航空会社は責任を負わない」という旨の同意書にサインします。2. 犬を預ける
航空会社の規定に沿ったケージに入れ、ケージごと預けます。ケージの中に普段使っている毛布やおもちゃを入れることはできます。3. 犬を受け取る
国内線の場合は、多くは到着ロビーにある荷物受け取りエリアでの受け取りになります。国際線の場合
1. 入国条件を確認する
犬が入国する際には、マイクロチップの装着や狂犬病の予防接種などの証明、入国許可証が必要になります。入国条件や各証明書の言語、入国許可証のフォーマットは国により異なるため、各国の在日本大使館などで事前に確認しましょう。
2. 検疫を受けさせる
日本を出国する際は動物検疫所で検疫を受け、輸出検疫証明書を発行してもらう必要があります。出国の7日前までが目安となっていますが、入国する国によって申請時期が異なる場合もあります。
3. 同意書にサイン
「フライト中に犬が怪我・死亡しても航空会社は責任を負わない」という旨の同意書にサインします。4. 犬を預ける
航空会社の規定に沿ったケージに入れ、ケージごと預けます。ケージの中に普段使っている毛布やおもちゃを入れることはできます。5. 検疫を受ける
目的の国に到着した際に受ける検疫です。日本出国前は飼い主が動物検疫所検疫に犬を直接連れて行きますが、別の国に入国する場合には、多くの国で強制的に検疫を受けることになっています。国によっては何日・何週間もの時間を要する場合がありますので、おおよその所要日数を事前に確認しましょう。
6. 犬を受け取る
国際線の場合は、着陸後に送られた検疫所にて受け取ります。犬の飛行機に乗せる場合の大手航空会社の規格
航空会社によっても、国際線か国内線かによっても規定が異なりますが、いずれにしてもケージやクレートに入れた状態での輸送になり、場所の確保のため事前連絡が必要となります。
時期によって変更となる可能性があるため、利用する際は必ず各航空会社のホームページ等をご確認ください。
ANA(国内線)
ケージ | ・個人で用意したペットケージか、貸し出し用ペットケージを利用 ・個人で用意した場合は、IATA(国際航空運送協会)の規定に適合したプラスチックや金属製のケージであること ・サイズはペットがケージの中で「立つ」「座る」「寝そべる」「回転できる」など、十分に動けるスペースがあるもの |
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料金 | ペットケージ1つにつき、1区間あたり6,500円(一部路線は4,500円) |
特筆事項 | 5月1日〜10月31日の期間は、ペットケージに保冷剤、給水器を取り付けるサービスを申込可能 |
ANA(国際線)
ケージ | 飛行機1機につき3檻まで ・コンテナ(檻)の3辺(縦・横・高さ)の和が292cm(115インチ)、もしくはペットとコンテナの総重量が45kg(99ポンド)を超える場合は搭乗不可 ・硬い材質を使った、丈夫かつ底面から水漏れしない構造、ドア以外の3面に通気口が設けてある、安全ロック付き、ドアの内側に適切なごはん入れの箱または皿や、給水器が付いているケージであること |
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料金 | ペットケージ1個につき1区間あたり2万5000〜4万円が目安 |
特筆事項 | 犬または猫を日本に連れてくる場合は、日本到着の40日前までに、動物検疫所への事前通知が必要 |
JAL(国内線)
クレート | ・個人で用意したクレートか、貸し出し用クレートを利用 ・個人で用意したクレートがペットの安全な輸送に適当でないと判断された場合や、貸し出し用クレートの用意ができなかった場合は、搭乗便を変更される可能性あり ・ペットと他の受託手荷物を含め、合計100kgまで ・ペットとクレートの合計重量は32kgまで |
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料金 | ペットクレート1個1区間あたり4,400円~6,600円 |
特筆事項 | 乗り継ぎがあり、乗り継ぎ時間が長い場合は、ペットにごはんや水を与えることができます。出発空港で預ける際に申請が必要です。 |
JAL(国際線)
クレート | 以下の条件を満たすクレートを個人で用意する必要あり ・ペットが立ち上がったり横になったり、動き回ったりすることが可能な大きさのもの ・硬質プラスティク製かグラスファイバー、木製などの強い素材であり、水漏れしないもの ・換気が十分にできるもの ・底面以外が金網状または格子状となっている鳥かごタイプのクレートは不可 ・ペットが外に出られないように施錠できるもの |
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料金 | チェックイン時にサイズなどを図ってからの提示 |
特筆事項 | 飛行機の種類によって搭載できるクレートの数に制限があるため、問い合わせ必須 |
スターフライヤー(国内線/客室同伴)
ケージ | ・個人で用意したペットケージか、貸し出し用ペットケージを利用 ・高さ 40cm、横幅 40cm、長さ 50cm以内であること ※ペットが無理なく立ち上がる、横たわる等の動きができるよう十分な余裕が確保できるもの ・シートベルトで座席に固定する為の取手がついていること ・シールロックを装着することができること ・窓・入口部分がメッシュ素材であること(窓・入口部分が格子状のケージは不可) |
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料金 | 50,000円/匹(機内ペット同伴サービス) |
特筆事項 | ・機内へのペット同伴可 ・ケージを設置する座席には、シートカバーをかけ、クッションを敷いた上にケージを置く ・ケージはシートベルトで固定をし、フライト中のペットの出し入れは不可 ・貸し出しケージは毛の飛散を抑えるものを使用 ・搭乗前のブラッシング、搭乗時にはマナーウエア(おむつ)の着用必須 ・降機後のシートは重点的に清掃を実施 |
スターフライヤー(国内線/貨物室)
ケージ | ・個人で用意したペットケージか、貸し出し用ペットケージを利用 ・原則動物1匹の収容可能(鳥は2羽まで) ・頑丈な屋根がついているもの ・丈夫なケージである(硬質プラスチック、金属製、木製など) ・換気用の窓が備わっているなど通気性がある ・外側に機能的な取手がついている ・逃亡や接触を防ぐために鍵がついている ・車輪は取り外しが可能、または固定が可能 ・ペットが立つ、座る、寝る、回転できる大きさである ・吸水剤の下敷きなどがあって、液体や汚物などが外に漏れないよう耐水装置がある ・保冷マット、飲み水やごはん用の適当な容器(こぼれることのない形状)や皿が、ペットの状態や輸送時間に応じて準備されている(乗継地での給餌は不可) |
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料金 | 1区間1ケージあたり6,500円 |
特筆事項 | 5月1日~10月31日の期間は、通気性が悪くなり危険なため、ペットケージを二重にすることや、ペットケージにカバーを取り付けた状態での搭乗は不可 |
参照:貨物室へのお預け
犬を飛行機に乗せる際の対策
季節に合わせた対策を
貨物室は空調の調節がされないため、犬自身で体温調節ができるような環境をつくりましょう。暑い季節は「給水器をケージにつける」「タオルに巻いた保冷剤を置く」「無駄なアンダーコートをブラッシングで処理しておく」といった暑さ対策、寒い季節は「愛犬の匂いのついた毛布をケージに入れる」といった寒さ対策を行うことをオススメします。
犬が吠える場合の対策・トレーニング
吠え癖のある犬が飛行機に乗る場合には、しつけをする必要があります。吠える理由も複数あるので、自分の愛犬がなぜ吠えるのか考えてみましょう。飼い主さん自身でのしつけが難しい場合はトレーナーに相談しましょう。
クレートやゲージに慣れさせる
愛犬を飛行機に乗せる際に必要なクレートやゲージに慣れさせておく必要があります。自宅での留守番時や車での移動時に慣れさせてあげることで、クレートやゲージの時間が嫌な時間ではないと思わせるようにしましょう。
トイレを済ませておく
愛犬を飛行機に乗せる前に、トイレを済ませておきましょう。飛行機で移動している間、我慢させると膀胱炎の原因になり得るため、できるだけ搭乗前にトイレをさせられることが理想です。
ごはんは早めに与える
慣れない揺れ方をする飛行機によって車酔いをすることで、嘔吐する恐れがあります。乗車する数時間前にはごはんを済ませるか、少なめに与えるようにしましょう。
睡眠薬を用意する
外出時に大人しくしていることが難しい犬の場合は、動物病院で獣医師さんに事情を話し、睡眠薬を処方してもらうことができます。犬の体に悪い影響はないといわれていますが、体調や体質を獣医さんに診てもらってから服用するようにしましょう。
まとめ
犬を飛行機に乗せる場合は、事前に各航空会社の規定を確認しましょう
飛行機は犬にとって大きな負担になる可能性のある移動手段です
移動期間中のストレスを軽減するための工夫や準備をしましょう
犬を飛行機に乗せることは、特別な事情を抱えた犬だけでなく、元気な犬にとっても負担となる可能性のある移動手段です。
ペットホテルに預けるほうが犬にかかるストレスは少なく済むこともありますし、フェリーなどの移動手段もあります。愛犬の年齢や体調に合わせた選択をしましょう。
ペットはモノではなく家族です。しかし、犬が苦手な方、アレルギーの方にも配慮された空間設計が必要です。輪の外を想像して、愛犬との暮らしを豊かにしていきましょう。