
「犬を飛行機に乗せるのはかわいそう」と思う飼い主さんも多いのではないでしょうか。犬を飛行機に乗せる場合、客室にペットと同乗できるプランがある航空会社もありますが、犬は荷物扱いとなり、そのほかの通常のプランでは、客室ではなく貨物室で輸送されます。さらに、緊急時には人命優先となり、荷物扱いのペットは救出ができないことも。そして、犬にとって飛行機での移動は、私たち以上にストレスを感じることもあり、過去には飛行機の搭乗による体調不良が原因で死亡したり、緊急時に救出できず死亡する事故もありました。今回は、犬を飛行機に乗せる場合の注意点や、ストレス軽減方法などを解説します。
この記事のまとめ
- ANA・JALの国内線では、犬は客室に持ち込めず、貨物室に預ける「受託手荷物」になる
- 夏季(5月1日〜10月31日)は、ANAとスターフライヤーで短頭犬種を預けられない
- 国際線は渡航先の入国条件を確認し、動物検疫所への輸出検査の申請を輸出日の14日前までに済ませる
- 貨物室は暑さ・寒さや騒音の負担が大きいため、クレートに慣らすなどの対策をし、飛行機以外の手段も検討する
犬は飛行機に乗ることができる?
条件を満たしていれば、犬を飛行機に乗せることはできます。ただし、乗せ方や料金、条件は航空会社によって異なります。
特に夏は熱中症、冬は低体温症などのおそれがあり、夏季は短頭犬種の預かりを中止している航空会社もあります。犬を飛行機に乗せる前に、どのような扱いになるのかを知っておきましょう。
ANA・JALでは貨物室に預ける
ANAやJALの国内線では、犬は客室に持ち込めず、受託手荷物として貨物室に預けます。
貨物室は空調で管理されていますが、積み込みや取り降ろしは屋外で行われるため、季節によっては気温や湿度が大きく変わります。飛行中は照明が消えて暗くなり、エンジン音や風切り音も聞こえる環境です。夏場や冬場は、暑さ対策・寒さ対策をしっかりしましょう。
スターフライヤーなら客室に同乗できる
スターフライヤーでは、機内ペット同伴サービス「FLY WITH PET!」を利用すれば、国内線の全便で犬と一緒に客室に乗れます。
機内では原則として最後列の窓側の席にケージを固定し、飼い主さんは隣の席に座ります。飛行中もすぐそばで様子を確認できるので安心です。なお、機内でケージから出すことはできません。
| 対象 | 指定サイズのケージ(高さ75×横幅43×長さ55cm以内)に入る小型の犬・猫 |
|---|---|
| 対象便 | スターフライヤー国内線全便 |
| 料金 | 1匹50,000円(飼い主さんの運賃は別) |
| 予約 | 公式サイトから搭乗日2日前まで(支払いはクレジットカードのみ) |
| 主な条件 | 混合ワクチン(3種以上)と狂犬病予防ワクチンの接種証明、ペット用マナーウエア(おむつ)の着用、出発1時間30分前までのカウンター手続きなど |
犬が飛行機に乗る際のリスク
犬にとって飛行機は快適な乗り物ではありません。乗せる前に、次のようなリスクがあることを知っておきましょう。
気温の変化
貨物室は空調で管理されていますが、客室とは環境が異なり、夏場は気温や反射熱の影響で高温になることもあります。体温調節が苦手な犬にとっては、熱中症などの危険がある環境です。
気圧や騒音
飛行中の気圧は0.8気圧程度(標高2,000mの山頂と同じくらい)になり、上昇中や下降中の気圧の変化で耳などに影響が出るおそれがあります。また、離着陸時や飛行中は大きな音が続きます。
精神的ストレス
犬によっては、暗く大きな騒音が鳴り続ける貨物室で、1匹でケージに入れられることに大きなストレスを感じてしまうおそれがあります。
緊急時はペットを連れて脱出できない
緊急時は人命が最優先で、貨物室に預けたペットは機内に残されることになります。2024年1月の羽田空港の航空機事故では、乗客・乗員は全員脱出しましたが、貨物室に預けられていたペット2匹は助かりませんでした。
航空会社の同意書に「輸送中の死傷について、原因によっては責任を負わない」という内容があることも含め、リスクを十分に理解したうえで利用を判断しましょう。
飛行機に乗せないほうがよい犬
航空会社の規定で預けられない犬や、預けられても負担が大きい犬もいます。
短頭犬種
ブルドッグやフレンチ・ブルドッグ、パグ、シー・ズーなどの鼻が短い短頭犬種は、暑さに弱く、熱中症や呼吸困難を起こしやすい犬種です。
ANAとスターフライヤーでは、毎年5月1日〜10月31日の夏季は短頭犬種の預かりを中止しています。JALでは、ブルドッグとフレンチ・ブルドッグは時期を問わず預けられません。
| 対象犬種 | ブルドッグ、フレンチ・ブルドッグ、ボクサー、シー・ズー、ボストン・テリア、ブル・テリア、キング・チャールズ・スパニエル、チベタン・スパニエル、ブリュッセル・グリフォン、チャウ・チャウ、パグ、狆(チン)、ペキニーズ |
|---|
子犬・シニア犬
ANAとスターフライヤーでは生後4カ月未満、JALでは生後8週未満の子犬は預けられません。
また、体温調節が苦手で体力が落ちているシニア犬も、フライトで受けるダメージが大きくなります。元気に見えても、慎重に判断しましょう。
病気がある犬
貨物室は気圧や気温の変化が大きく、持病が悪化したり、普段は発症しない病気を発症しやすくなったりするおそれがあります。ANAとスターフライヤーでは、心臓疾患や呼吸器疾患がある犬は預けられません。
分離不安・狭い場所が苦手な犬
飼い主さんと離れると鳴き続ける犬や、暗くて狭い場所が苦手な犬にとって、貨物室でのフライトは精神的に大きな負担になります。何かあってもすぐに駆けつけられないので、飛行機での移動は避けたほうが安心です。
犬と飛行機を利用する際の流れ(国内線)
ANA・JALなどの国内線で犬を預ける場合の、おおまかな流れを紹介します。
1. ペットの事前予約をする
航空券を予約したら、ペットの事前予約をしておきましょう。ANAは公式サイトや電話で、搭乗日前日まで予約できます。ケージの大きさや、犬とケージを合わせた重さを事前に確認しておくとスムーズです。
2. 同意書にサインして犬を預ける
当日はカウンターで同意書にサインし、ケージごと犬を預けます。JALは出発時刻の40分前、スターフライヤーは30分前までを目安に預けるよう案内しています。
ケージには、普段使っている毛布やおもちゃを入れられます。預ける前に散歩をしてトイレを済ませておきましょう。
3. 犬を受け取る
到着後は、到着ロビーの手荷物受け取りエリアなどで犬を受け取ります。受け取ったら、すぐに様子を確認してあげましょう。
犬と飛行機を利用する際の流れ(国際線)
国際線で犬を連れて行く場合は、航空会社の手続きに加えて、出入国の検疫手続きが必要です。国内線より準備に時間がかかるので、余裕を持って進めましょう。
1. 渡航先の入国条件を確認する
犬が入国する際には、マイクロチップの装着や狂犬病の予防接種、血清検査などが求められることがあります。条件は国によって異なるので、渡航先の動物検疫機関や在日大使館に確認しましょう。
2. 動物検疫所に輸出検査を申請する
日本を出国する際は、動物検疫所で輸出検査を受け、証明書を発行してもらう必要があります。輸出検査の申請は、輸出日の14日前までです。オーストラリアやニュージーランドなど、さらに早い準備が必要な国もあります。
3. 航空会社に予約し、犬を預ける
航空機に搭載できるケージの数には限りがあるため、国際線でも事前予約が必要です。当日は同意書にサインし、ケージごと犬を預けます。
4. 渡航先で検疫を受ける
到着した国で輸入検疫を受けます。国によっては何日・何週間もかかる場合があるので、おおよその所要日数を確認しておきましょう。
5. 日本に戻る場合は事前届出を
犬を連れて日本に帰国する場合は、日本到着の40日前までに、到着する空港の動物検疫所へ届出が必要です。出国前から帰国時の条件も確認しておきましょう。
犬を飛行機に乗せる場合の大手航空会社の規定
航空会社によっても、国内線か国際線かによっても規定は異なります。いずれもケージやクレートに入れた状態での輸送になり、スペース確保のため事前予約が必要です。規定は変更されることがあるので、利用する際は必ず各航空会社の公式サイトで確認してください。
ANA(国内線)
| 料金 | ケージ1個1路線あたり6,600円(一部路線は4,400円) |
|---|---|
| 預けられない場合 | 生後4カ月未満、妊娠中、心臓疾患・呼吸器疾患がある、鎮静剤を使用しているなど。夏季(5月1日〜10月31日)は短頭犬種も不可 |
| ケージ | IATA規定に適合した硬質プラスチック製・金属製などの丈夫なケージ(貸し出しあり)。原則1ケージに1匹 |
| 予約 | ANA公式サイト・ANAあんしんご予約デスクで搭乗日前日まで |
| 夏季の対応 | 5月1日〜10月31日はケージに保冷剤・給水器を取り付けるサービスあり |
JAL(国内線)
| 料金 | ペットクレート1個1区間あたり5,500円〜7,700円(路線・搭乗日により異なる) |
|---|---|
| 預けられる条件 | 生後8週間以上、妊娠中ではない、狂犬病ワクチンを接種している(犬のみ)など。ブルドッグ・フレンチ・ブルドッグは不可 |
| クレート | 自分で用意したクレートか、貸し出し用クレートを利用。原則1クレートに1匹 |
| 重量 | ペットとクレートの合計が32kg以上の場合は貨物扱い |
| 注意点 | 給水器は自分で設置する。預けたあとは係員による食事や水やりはない |
スターフライヤー(国内線・貨物室)
| 料金 | 1区間1ケージあたり6,600円 |
|---|---|
| 預けられない場合 | 生後4カ月未満、妊娠中、心臓疾患・呼吸器疾患があるなど。夏季(5月1日〜10月31日)は短頭犬種も不可 |
| ケージ | 頑丈な屋根があり、通気性があり、鍵がついているなどの条件を満たすケージ(貸し出しあり)。原則1ケージに1匹 |
| 預け | 出発時刻の30分前までに手荷物カウンターへ |
ANA・JAL(国際線)
国際線も、受託手荷物として貨物室に預けるのが基本です。料金は路線やケージの大きさによって異なり、機材によって搭載できるケージの数やサイズにも制限があります。必ず事前に各社へ問い合わせて予約しましょう。
犬を飛行機に乗せる際の対策
愛犬の負担を少しでも減らすために、次のような対策をしておきましょう。
季節に合わせた対策を
暑い季節は「給水器をケージにつける」「タオルに巻いた保冷剤を置く」「抜け毛をブラッシングで取り除いておく」、寒い季節は「愛犬の匂いのついた毛布をケージに入れる」といった対策をしてあげましょう。
クレートに慣れさせる
飛行機に乗せる前に、クレートで落ち着いて過ごせるように慣らしておきましょう。自宅での留守番時や車での移動時に使って、クレートの中は安心できる場所と思えるようにしてあげることが大切です。
吠える場合はトレーニングを
吠え癖のある犬は、飛行機に乗る前にしつけをしておきましょう。吠える理由はさまざまなので、愛犬がなぜ吠えるのかを考えてみることが大切です。飼い主さん自身でのしつけが難しい場合は、トレーナーに相談しましょう。
トイレを済ませておく
飛行機に乗せる前に、散歩などでトイレを済ませておきましょう。長時間我慢させると膀胱炎の原因になることもあるので、預ける直前にトイレをさせられるのが理想です。
ごはんは早めに与える
慣れない揺れで乗り物酔いをして、吐いてしまうことがあります。搭乗の数時間前にはごはんを済ませるか、少なめに与えるようにしましょう。
鎮静剤・睡眠薬は使わない
ANAでは、鎮静剤を使用している犬は預かりの対象外です。落ち着かせようと自己判断で薬を飲ませるのはやめましょう。不安が強い犬の場合は、飛行機に乗せてよいかどうかも含めて、事前にかかりつけの獣医師に相談してください。
犬と飛行機で移動する場合におすすめのグッズ
犬を飛行機に乗せるときに用意しておきたいグッズを紹介します。
航空輸送に対応したクレート
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航空輸送用のクレートとして定番のバリケンネル。IATA(国際航空運送協会)の基準をクリアした丈夫なハードタイプです。
サイズ展開が豊富で、MLサイズは柴犬やコーギーなどの中型犬向け。愛犬が中で立つ・座る・回転できる大きさを選びましょう。
| ブランド | ペットメイト(Petmate) |
|---|---|
| 外寸 | W57×D81×H63cm |
| 内寸 | W50×D67×H61cm |
| 重量 | 約7kg |
| 対応体重 | 13.5〜22.7kg |
給水器
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預けたあとは、航空会社の係員が水を与えることはありません。JALでは給水器を自分で設置するよう案内しているので、クレートに取り付けられる給水ボトルを用意しておきましょう。
ペットボトルに取り付けて使うタイプで、クレートやケージの扉に固定できます。
| ブランド | アイリスオーヤマ |
|---|---|
| サイズ | 約W11×D16×H6cm |
| 重量 | 約110g |
| 素材 | [ノズル・ホルダー・ストッパー]ABS樹脂[吸口]真鍮(メッキ加工) |
トイレシート
クレートの中に、最低1枚はトイレシートを敷いておきましょう。
お気に入りのアイテム
お気に入りのおもちゃやぬいぐるみ、匂いのついたタオルなどがあれば、一緒にクレートの中に入れてあげましょう。慣れない環境での安心材料になります。
さいごに
犬を飛行機に乗せることは、特別な事情を抱えた犬だけでなく、元気な犬にとっても負担になる可能性があります。
ペットホテルやペットシッターに預けるほうがストレスが少なく済むこともありますし、車やフェリーなどの移動手段もあります。愛犬の年齢や体調に合わせた選択をしましょう。