猫の肥満|太る原因やダイエット方法、病気のリスクを獣医師が解説

猫の肥満|太る原因やダイエット方法、病気のリスクを獣医師が解説

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猫が肥満になる原因として「管理不足」「病気」「体調の変化」が考えられます。肥満は病気のリスクを高め、寿命を縮める原因になるため早めのダイエットをオススメします。肥満の見分け方からフードの与え方、子猫期やシニア猫(老猫)期の考え方まで、獣医師の佐藤が解説します。#猫の食育

猫の肥満は病気のリスクを高める

猫

肥満は見た目の問題だと楽観的に考える飼い主さんが少なくありませんが、見た目以上に体に悪影響を与えます。肥満は免疫力を下げ、沈着した脂肪によって臓器が弱り、増えた体重が関節に負担をかけるなど、体中で悪影響を及ぼします。

実際、適正体重の猫と肥満の猫を調べた研究では、肥満の猫のほうが糖尿病を発症する確率が3.9倍、非アレルギー性の皮膚疾患を発症する確率が2.3倍も高かったそうです(※)。他にも膵炎や心臓病、変形性関節症などのリスクを高めます。

愛猫が太っているかな?と思ったら、早めに動物病院へ行って太る原因を突き止めましょう。猫も適正体重を維持することで、健康に長生きすることができるようになります。

※参照:『Associations between body condition and disease in cats』(Journal of the American Veterinary Medical Association)

猫が肥満になる原因

猫とドライフード

猫が肥満になる原因として、大きく以下の3つに分けることができます。それぞれ詳しく解説します。

  1. 管理不足が原因
  2. 病気が原因
  3. 体調の変化が原因

1. 管理不足が原因の肥満

愛猫の健康管理が十分でないことが肥満の原因になっている場合があります。

1-1. ごはんの量が多い

いつもごはんの量を正確に量っていますか? 知らず知らずのうちに、量が増えている場合があります。私たちからすればちょっとした誤差でも、体が小さい猫には大きな誤差になっているかもしれません。つい選んでいるキャットフードが良くないのではないかと思いがちですが、まず気を付けたいのは与える量です。

ごはんは適切な量を与えていても、おやつを与え過ぎているケースもよくあります。中にはご家族の中にこっそりあげている人がいたというケースもありますので、家族全員がしっかり肥満のリスクを理解することが大切です。

1-2. 運動量が少ない

散歩をする犬と違って猫の運動量は飼い主さんがコントロールしにくいかもしれません。ただ、キャットタワーを使って猫が好む縦方向の動線を作ってあげたり、猫が一人遊びできるおもちゃを買ってあげたり、飼い主さんができる工夫もあります。YouTubeのPETOKOTOチャンネルで公開されている猫用動画を活用するのもいいでしょう。




2. 病気が原因の肥満

猫にとってまれな病気ではありますが、「甲状腺機能低下症」と「副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)」という2つのホルモンの病気(内分泌疾患)は猫が太る原因になります。

甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症になった場合、基礎代謝エネルギーが低下することで体重が増加していきます。これといった気付きやすい症状はありません。「なんとなく元気が無い」「なんとなく顔に覇気が無い」などがサインとなります。

副腎皮質機能亢進症

クッシング症候群とも呼ばれる副腎皮質機能亢進症は、腎臓の近くにある副腎と呼ばれる内分泌腺が過剰に働いている状態です。食事量が増えることで体重が増加したり、飲水量や尿量が増加したり、腹筋の筋肉が薄くなることで落ちてお腹がぽっこり出てきたりします。

他にもお腹に水が溜まってしまう病気で太って見えることがありますし、肝臓が腫大(膨張)することで太ったように見えることもあります。ただし、猫はルーズスキンと言って「たるんだ皮膚」によって太って見えるだけの場合もあります。詳しくは関連記事をご覧ください。


3. 体調の変化が原因の肥満

運動量の低下は、病気によって体が痛くて動けないことが原因の可能性もあります。日頃から体を触るようにすることで、ちょっとした異変や痛みのある場所に気づきやすくなります。

去勢・不妊手術

去勢や不妊手術を行うと基礎代謝エネルギーが低下するため、術後は食事量を30%減にすべきだといわれています。ただ、個体差によって太ってしまうケースもありますので、獣医師に相談しながらコントロールしてあげてください。

猫の肥満の見分け方

猫

猫が「太っている」「ちょうど良い」「痩せている」かどうかは体重ではなく体型で確認します。この体型をスコア化して評価できるようにしたものをBCS(ボディコンディションスコア)といいます。

5段階評価の3が理想の体型で、飼い主さん自身で確認することができますので、ぜひ愛猫の体型をチェックしてみてください。

ボディコンディションスコア(BCS)

BCS1 痩せ 助骨、腰椎、骨盤が外から容易に見える。首が細く、上から見て腰が深くくびれている。横から見て腹部の吊り上がりが顕著。脇腹のひだには脂肪がないか、ひだ自体がない。
BCS2 やや痩せ 背骨と助骨が容易に触れる。上から見て腰のくびれは最小。横から見て腹部の吊り上がりはわずか。
BCS3 理想体型 肋骨は触れるが、見ることはできない。上から見て肋骨の後ろに腰のくびれがわずかに見られる。横から見て腹部の釣り上がり、脇腹にひだがある。
BCS4 やや肥満 肋骨の上に脂肪がわずかに沈着するが、肋骨は容易に触れる。横から見て腹部の吊り上がりはやや丸くなり、脇腹は窪んでいる。脇腹のひだは適量の脂肪で垂れ下がり、歩くと揺れるのに気づく。
BCS5 肥満 助骨や背骨は厚い脂肪におおわれて容易に触れない。横から見て腹部の吊り上がりは丸く、上から見て腰のくびれはほとんど見られない。脇腹のひだが目立ち、歩くと盛んに揺れる。

年齢別の見分け方

ボディコンディションスコアは成猫を基準にしていますので、年齢によって少し見方を変える必要があります。

子猫の場合

子猫は成長期ですから、栄養をたくさん摂る必要があります。しかし、肥満よりも栄養不足で痩せている子を見ることが少なくありません。その原因の一つとして、ペットショップなどで最初に教えてもらった量や与え方を変えずに続けていることが挙げられます。

与えるごはんの量は、その子の成長に合わせて変えていかなければいけません。子猫の頃は体重もどんどん変わります。1週間に1回はBCSの確認と体重測定をして、その時その時で適切な量のごはんを食べさせるようにしましょう。

シニア猫(老猫)の場合

シニア猫(老猫)は加齢によって正常な変化として体重が減少します。BCS3が理想であることに変わりはありませんが、少し痩せ気味だとしても許容範囲と考えて問題ないでしょう。

ただし、急激に体重が増えたり減ったりする場合は病気の可能性がありますので、様子見をせずに病院に行くようにしてください。

肥満猫のダイエット方法

PETOKOTO FOODS for CATS

病気や手術以外の理由で猫が肥満になる場合、原因は飼い主さんにあることが少なくありません。逆に言えば、飼い主さんが管理できれば猫は適正体重を維持できます。適切な体重管理のためにやっていただきたいことを、順番に説明します。

1. 体重を量る

体重の増減を判断するためにも、まずはご自宅で体重測定をしましょう。見た目で太ったと感じても、実際は体重に変化が無い場合もあります。先ほど紹介したBCSも参考にしてください。

2. 食事量を量る

だいたいで「器にこのぐらい」といった量り方はやめましょう。何グラムかキッチンスケールなどを使って量り、適正量を食べさせるようにしてください。おやつは1日の最適カロリー量の10%以下にしましょう。

3. 運動量を増やす

前述の通り、おもちゃで遊んであげたり、縦移動がしやすいキャットタワーを設置したり、一人遊びができるおもちゃやYouTube動画などを活用するといいでしょう。同居動物を迎えるのも良いのですが、必ず相性を確かめてからにしましょう。


4. 食事量を減らす

すでに太っている場合、その体重を基準にして食事量を決めてしまうと痩せるのが難しくなります。どれくらいまで減らしたいのか理想体重を想定して、通常の80%くらいの食事量で経過を見るようにしてください。

空腹を訴えてくる場合は、トータルの食事量は変えずに食事回数を増やすことで満足感が得られる場合もあります。

以上を行なっても体重に変動がない場合は、病気の可能性があります。また、妊娠している場合は乳腺が張ってきたり、食欲が増減したりといった体調の変化も見られますので、獣医師に相談してください。

まとめ

PETOKOTO FOODS for CATS
肥満は確実に寿命を縮める
原因が病気か飼い方かを確かめる
ダイエットの基本は、適切な食事と運動
皆さんは「メタボリックドミノ」という言葉を聞いたことはありますでしょうか? メタボリックシンドロームが進行してドミノ倒しのように高血圧や脂肪肝、糖尿病などが起こり、最終的に脳卒中や心不全につながるという考え方です。

私たち人間の話ではありますが、猫も同様です。肥満は、恐ろしい病気へと続く最初のドミノと言えます。「ふっくらして可愛い」と油断するのではなく、愛猫の将来を考えて飼い主さんがしっかり対処してあげてください。


気になることがあれば専門家に聞いてみよう!

食のお悩み相談会

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