猫のルーズスキンとは?お腹のたるみの理由や肥満・病気の見分け方などを解説【獣医師監修】
お腹の皮が余っている・たるんでいるように見える猫を見て「肥満かな」と思う方もいるかもしれませんが、実は「ルーズスキン」と呼ばれる猫特有の体の特徴かもしれません。今回はルーズスキンとはどんなものなのか、ルーズスキンと脂肪や病気の見分け方や特徴などを解説します。なお、ルーズスキンと脂肪・病気の見分け方については、獣医師の佐藤貴紀先生に解説していただきました。
猫のルーズスキンとは?
猫のお腹がたるんでタプタプしている様子を見かけることがありますよね。お腹から後ろ足の付け根にかけての部分が伸びたようになっていて、歩くと左右に揺れるほどたるんでいる猫ちゃんもいると思います。触ると気持ちいいので、ルーズスキンが好きな飼い主さんも多いのではないでしょうか。
この猫のお腹のたるんだ部分は、「ルーズスキン」(Loose Skin)と呼びます。
ルーズスキンは野生の猫種にも見られる
ルーズスキンの「ルーズ」(loose)とは、「しまりがない様」や「ゆとりのある様」を表す言葉なので、「たるんでいる皮膚」という意味でルーズスキンと呼ばれていると思われます。しかしこれは日本での表現の仕方であり、英語では「primordial pouch」(プライモディアル・ポーチ)と呼びます。primordialとは原始的なという意味であり、pouchは袋です。このルーズスキンはトラやライオン等の野生の猫種にも見られ、野生に近い猫の方がよく見られるとされています。
猫のルーズスキンと脂肪・病気の見分け方【獣医師監修】
特に大柄の猫がルーズスキンを揺らしている様子を見ると太っているように見えますが、ルーズスキンは脂肪とは異なるものです。ルーズスキンと脂肪や病気の見分け方について、目黒アニマルメディカルセンター/MAMeC院長の佐藤貴紀先生に解説していただきました。
ルーズスキンはその名が示す通り、皮が余っている皮膚を指します。通常は触った時に皮膚の皮以外は触知できません。もし、脂肪が触れた場合は肥満の可能性があります。他に何か触知できる場合には病気の可能性もあります。その他、見た目では腹部膨満といってお腹にお水が溜まってしまう腹水、しこりからくるガンなどの病気も存在します。少しでも気になった際は動物病院を受診しましょう。
見分けるのが難しい場合はオンライン相談サービスを利用する手も
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猫のルーズスキンの役割
猫のルーズスキンは見た目がかわいいと思う人や、さわると気持ちいいと思う人もいると思いますが、猫のルーズスキンにはしっかりと役割もあります。
1. 腹部を守るため
猫は眠るときにお腹を下にしたり、お腹を中心に丸まって寝たりしますよね。これは腹部には心臓や内臓など生命を維持するための大切な器官が詰まっているためで、弱点でもあるためです。ルーズスキンでお腹がたるんでいるのは、大切な腹部を他の動物などからの攻撃から守るためとされています。確かにたるんだ皮膚の部分があれば、すぐに牙や爪が内臓に届くことを防ぐことができますね。
2. 足を動かしやすくするため
猫は高い所へジャンプするのが得意で、体が柔らかいためアクロバティックな動きが可能です。大きくジャンプしたり、体をひねったりする動作には、関節を大きく動かす必要があり、そのためには皮膚にも余裕が必要です。特に、後ろ足はジャンプやキックなどの動きで可動域が広いため、足を動かしやすくするためにルーズスキンが発達したと考えられています。
3. たくさん食べるため
現在はペットとして飼われている猫たちですが、祖先は現在でも中東からエジプトにかけての砂漠地帯に生息しているリビアヤマネコという野生種の猫であることが分かっています。リビアヤマネコの外見や大きさはキジトラ猫にそっくりですが、小型の鳥や動物、虫などを狩って暮らしています。つまり狩りが成功しないとその日の食料が手に入らないのです。そのため、手に入れることができた獲物をたくさん食べるために、お腹の皮膚に余裕ができたという説があります。
普段の猫の様子を見ていると少しずつ、ゆっくり食べることが多いので、この食いだめをするためにルーズスキンがあるという説は違和感を覚える人もいるかもしれません。
しかし、筆者は猫が食いだめをする様子を何度も見たことがあるため、ルーズスキンにはそのような役割もあるかもしれないなと納得できます。
猫のルーズスキンのよくある疑問
ルーズスキンはオスもメスもある?
ルーズスキンはオス猫でもメス猫でもあります。オス猫の方が目立つことが多いようですが、それはオス猫の体が大きいために、たるんだ皮膚の部分も大きく目立ちやすいからだと考えられます。メス猫でもかなりルーズスキンが目立つ子もいます。ルーズスキンの大きさは?
ルーズスキンの大きさは猫によっていろいろです。ひと目見て、ルーズスキンと分かるほどたるんでいる子や歩くと揺れてしまうほど大きなルーズを持つ子もいますが、触ってみて「皮膚に余裕がある部分があるな」という程度の小さなルーズスキンの子もいます。ルーズスキンは肥満?
猫に詳しい人でも、ルーズスキンが肥満になりやすい体質や肥満の兆候だと勘違いしていることがありますが、それは全くの誤解です。ルーズスキンは太っているとか痩せているとか、体型に関係なく猫が持っているものであり、太りやすい子がルーズスキンができやすいというわけではありません。
ルーズスキンはいつからできる?
筆者は保護活動をしており、毎年たくさんの子猫を保護していますが、子猫のうちはルーズスキンが目立つことはありません。体が成長してくると、徐々に目立つようになる場合が多いです。筆者の観察によると、1歳以上になり、体が大人になった猫でルーズスキンがはっきりと分かるようになることが多いようです。
ルーズスキンができやすい猫の特徴
ルーズスキンの英語名はprimordial pouchで、「原始的な袋」という意味でしたね。英語でこのように呼ばれるのは、ルーズスキンは猫が野生であったときに、厳しい環境を生き延びるために発達したと考えられているからです。
そのためルーズスキンは野生に近い猫種の方が発達しているとされています。
猫種の中にはルーズスキンがあることが標準であると考えられている猫がいます。キャットショーの世界では、ベンガル、ピクシーボブ、エジプシャンマウはルーズスキンの大きさが評価の基準に入ることもあるようです。
もちろん、ルーズスキンが特徴とされていない猫種でも、ルーズスキンはよく見られます。
雑種の猫はにもルーズスキンはある
ルーズスキンはどんな猫にでもできる可能性があり、それは雑種の猫でも同じです。筆者は保護活動でたくさんの雑種の猫の面倒を見ていますが、明らかにルーズスキンがある子と、ほとんどルーズスキンが認められない子がいます。ルーズスキンが目立たない場合も
子猫のときはお腹の余分な皮の部分がほとんどなく、パンパンのお腹の子が多いですが、大人になるとお腹の部分は柔らかく、触るとフニャフニャして気持ちがいいです。はっきりとルーズスキンと分かるほどでなくてもどの猫も、猫はお腹の皮の部分にはある程度の余裕があります。ルーズスキンの部分が大きいか、ほとんどないかは猫の個体差によるところが大きいようです。
肥満とルーズスキンを勘違いされやすい猫種もいる
マンチカンやスコティッシュフォールドは、特にルーズスキンが大きくなりやすい猫というわけではありませんが、肥満とルーズスキンを勘違いされやすい猫種です。
マンチカンやスコティッシュフォールドはその体型や骨格により、運動が不得意な場合も多く、肥満になりやすい傾向があります。そのため、太ってお腹が大きく見えるのがルーズスキンと勘違いされることが多いのでしょう。
ルーズスキンは猫が当たり前に持っているものであり、健康に何ら問題があるわけではありません。しかし脂肪の付き過ぎでお腹がたるんでいる場合は猫の健康には良くありませんので、適正な体重を維持してあげるようにしなければなりませんね。
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ルーズスキンは猫にとっては大事なもの
ルーズスキンを触ると飼い主さん的には気持ちがいいと感じますが、実は大切な役割があることが分かりましたね。ルーズスキンは肥満とは全く異なるものですが、太りすぎによってお腹が垂れている猫ちゃんもいます。
ルーズスキンは猫に必要なものですが、脂肪が多すぎることは猫ちゃんの健康には良くありませんから、ルーズスキンなのかそうでないのかを確かめて気をつけてあげたいですね。