猫の血液検査|検査概要や見方などを獣医師が解説

猫の血液検査|検査概要や見方などを獣医師が解説

動物病院に行くと、「猫ちゃんの血液検査をしましょう!」と言われることがあると思います。「血液検査」は私たち獣医師にたくさんの情報を教えてくれます。人間同様、血液検査をすることで、体の状態を知ることができ、もし病気が潜んでいた場合、その早期診断・早期治療が可能になります。具合が悪くなったら血液検査をするのはもちろんですが、健康時から定期的に検査をしていくことが、その子の体質を知るのにとても助かることがあります。具体的に「血液検査」で何がわかるのか、簡単に獣医師の大塚が説明したいと思います。

猫の血液検査概要

検査される猫

健康診断に含まれるような一般的な猫の血液検査には大きく分けて、以下の2種類の検査が含まれます。

  • 血球計算
  • 血液生化学検査

血球計算では血液(赤血球・白血球・血小板など)の「数」「大きさ」「形状」を見ていきます。これによって「貧血の有無」「血液系疾患の有無」「寄生虫の感染」などがわかります。

生化学検査では内臓が正常に機能しているかを見ることができます。これらの検査で追加検査が必要と判断された場合には、さらに「ホルモン検査」「ウィルス検査」なども受けることができます。

血液検査にかかる所要時間

院内で検査できる項目であれば、採血後10〜20分で結果がわかります。疑われる疾患によっては、特別な追加項目の検査が必要になることもあり、測定に特別な装置が必要で、外注検査となる場合には2〜7日要します。

費用

動物病院により検査費用は異なりますが、健康診断として院内で行われる一般的な項目のみであれば、だいたい6000~8000円程度です。ただし、先述した通り、追加検査が必要な場合は別途費用がかかります。

腎臓病など特定の病気にかかっていて、こまめなチェックが必要な場合は、その臓器に関連した項目のみ単独で調べることになるので、1回2000~4000円程度かと思います。


タイミング

初めて血液検査を受けるタイミングですが、成猫になって家に迎えた場合はいつでも検査可能です。子猫の場合は、おそらく生後3〜6カ月で避妊去勢手術を受けるときに、初めて検査を受けることになると思います。

ただし1歳までの成長期には検査項目で高数値が出るものもあります。その場合はその後1年に1回のペースで検査を受けましょう。

ウィルス検査に関しては、生後すぐでは体内にまだ母親の血液が残っているため、確実な検査ができません。何度か検査を繰り返すか、少し大きくなってから調べましょう。

また、野良猫を保護して、すぐにウイルス検査をしたいという方もいるかもしれません。ウイルスの中には陰転(陽性だった結果が陰性に変わること)するものもあるので、何回か検査を繰り返すことが必要です。


頻度

特定の病気がなく健康な場合は、8歳くらいまでは年に1回、それ以降は半年に1回程度の検査をお勧めします。猫ちゃんは1歳で大人になり、その後は1年で人間の4歳分くらい年をとります。

つまり年に1回検査を受けたとしても、私たち人間が4年に1回しか受けていないのと同じになるのです。

経過観察が必要な病気の猫ちゃんは、こまめに検査を受ける必要があります。中でも、年を取ると腎臓の病気になってしまう猫ちゃんが多くいます。その場合は1カ月に1回の検査が望まれます。

猫の血液検査の注意事項

椅子にもたれる猫

猫ちゃんの血液検査を行う際の注意事項としては以下の2点です。

  1. 血液検査のリスク
  2. 前日・当日の準備

1.血液検査のリスク

採血のみで簡単に検査できるので、大きなリスクはありませんが、やはり、猫ちゃんには病院嫌いな子が多いです。病院に来るだけでも、かなりのストレスになります。

そのうえ、人間と違って、じっと腕を差し出してはくれないので、看護士1人が体を保定し、獣医師が採血する形になります。

押さえつけられるのはもちろん、触られることさえ嫌で、中には暴れだしてしまう子もいます。もちろん私たち獣医師もトラウマにならないように細心の注意を払います。

しかし、やはり病院嫌いを助長してしまうこともあります。過度のストレスがかかってしまうと、検査結果に誤差が出て正確な診断ができないため、検査を後日に延期することもあります。

2.前日・当日の準備

健康時の血液検査では食事制限を指定する動物病院が多いと思います。人間同様、食事をすることで、血糖値や中性脂肪の値が上がってしまうためです。

検査前8時間は絶食してください。水はいつも通り飲んでもらって構いません。

特定の病気の経過観察で、食事がその項目に影響を与えない場合は、特に絶食の必要はありません。獣医師の指示に従ってください。また、常用している内服薬があれば獣医師に伝えるようにしましょう。

血液検査結果の見方・考えられる病気

血液検査

血球計算

項目 何を指すのか 正常値 正常値より高い 正常値より低い
RBC 赤血球の数 600~1020(104/uL) 脱水 貧血、出血
WBC 白血球の数 5000~15000 炎症・感染、ストレス ウイルス感染
HGB ヘモグロビン濃度(赤血球内の血色素量) 8~15.1 脱水、ストレス 貧血
PCV(Ht) 赤血球容積比(血液全体に占める赤血球容積の割合) 30~45 脱水、ストレス 貧血
PLT 血小板の数 20~60 急性出血 貧血、腫瘍、免疫疾患

血液生化学検査

項目 何を指すのか 正常値 正常値より高い 正常値より低い
TP 総蛋白 5.5~7.9 下痢・嘔吐、脱水、感染症 腎疾患・肝疾患、蛋白漏出性腸疾患、吸収不良・飢餓 出血
ALB アルブミン 2.1~3.4 脱水 飢餓、消化・吸収不良、蛋白漏出性腸疾患、慢性肝疾患、腎疾患
GOT (AST) アスパラギンサントランスフェラーゼ <80 肝疾患 -
GPT (ALT) アラニンアミノトランスフェラーゼ <80 肝疾患 -
ALP アルカリフォスファターゼ <200 胆汁うっ滞性肝障害、ステロイド性肝障害、骨の成長(正常) -
GGT グルタミルトランスフェラーゼ <10 胆管道系疾患 -
TBil 総ビリルビン <0.2 赤血球の破壊、肝・胆道疾患 -
BUN 血中尿素窒素 10~30 腎機能低下、脱水、消化管出血 栄養不足、肝疾患
CRE クレアチニン 0.8~2.0 腎機能低下 -
GLU グルコース 75~160 糖尿病、食後・ストレス、ホルモン疾患 膵臓疾患、栄養不足・低血糖、ホルモン疾患
TCho 総コレステロール 90~300 糖尿病、肝・胆道疾患、ホルモン疾患、脂質代謝異常、腎機能障害 肝疾患、栄養不足、ホルモン疾患
Na ナトリウム 146~155 脱水 下痢・嘔吐、腎疾患、ホルモン疾患
K カリウム 3.7~4.6 腎不全、尿道閉塞、脱水、ホルモン疾患、アシドーシス 下痢・嘔吐、アルカローシス
CI クロール 117~123 脱水、アシドーシス 下痢・嘔吐、ホルモン疾患
P リン 2~6.5、1歳以下は6~9 腎不全、ホルモン疾患 ホルモン疾患、高Ca血症
※検査項目は病院によって異なります

定期的な検査をおすすめします

猫

以上のデータはあくまで統計上のデータになりますので、個体によって健康時の値は異なります。データから少し外れたといって、「大きな病気が隠れているかも?」と心配になる必要はありません。

必要なのは、定期的に検査を行い、その子自身の健康時のデータと比較することです。過去のデータはしっかり保管しておきましょう。

血液検査を行い、結果の説明を受けても、専門用語が並ぶと「???」と理解できないまま、動物病院を後にする飼い主さんもいるかもしれません。

でも、大切な愛猫を守れるのは飼い主さんだけです。しっかり納得がいくまで、獣医師と話し合い、わからないところを解決するようにしましょう。


Spcial Thanks:獣医師として、女性として、 両立を頑張っているあなたと【女性獣医師ネットワーク
女性獣医師ネットワーク
女性獣医師は、獣医師全体の約半数を占めます。しかし、勤務の過酷さから家庭との両立は難しく、家庭のために臨床から離れた方、逆に仕事のために家庭を持つことをためらう方、さらに、そうした先輩の姿に将来の不安を感じる若い方も少なくありません。そこで、女性獣医師の活躍・活動の場を求め、セミナーや求人の情報などを共有するネットワーク作りを考えています。

Share!