猫も健康診断は必要? 費用・検査項目などについて猫専門獣医師が解説

猫も健康診断は必要? 費用・検査項目などについて猫専門獣医師が解説

人の寿命が長くなっているのと同様、猫の寿命もとても長くなっているように思います。最近では20歳近く(人でいうと100歳近く)の猫も珍しくはありません。しかし中高齢をすぎた猫には重大な病気が隠れていることもしばしばあります。できる限り、愛猫とは健康でそして長く一緒に暮らしたいですよね。今回は、病気の早期発見と治療につながるために必要な『健康診断』について、その必要性や費用、健康診断における猫のストレス軽減のアドバイスも交えて、猫の専門病院「Tokyo Cat Specialists」の獣医師有田が解説します。

健康診断の必要性

猫の横顔

愛猫の体調が悪そうと感じたら動物病院に行かれると思いますが、明らかに猫が「体調が悪そう」な場合、重大な病気にかかっている場合もあります。人間のように「体調が悪い」と声に出せない猫の早期発見・早期治療のためにも定期的な健康診断をおすすめします。

しかし、猫にとって外出は非常にストレスになるかもしれません。また多くの飼い主さんにとっても大変不安なことと思いますが、少しの工夫でストレスを軽減させることはできます。愛猫との外出が不安な場合は、以下のことを参考にしてみてください。

  • キャリーの中に自宅で使用しているお気に入りの布を入れる
  • 怖がりの猫にはキャリーの上にタオルなどをかけて外が見えないようにする
  • キャリーは病院で出し入れしやすいタイプにする(上扉と横扉の両方があくタイプ)
  • 待合室では犬など、他の動物の側には猫を置かない

それでも動物病院にはあまり連れて行きたくないと思われる場合は、まずは自宅での猫の様子をしっかりみてみましょう。食事の量や、便・尿の回数や量などはとても大事なバロメーターです。また、以前は上がっていた場所に最近は上がっていないなども、足腰が弱くなっているサインかもしれません。そうした情報を元に、獣医師との相談で健康診断をすすめていくことはとても大事なことと思います。

健康診断の頻度

猫

健康診断を受ける頻度は年齢によって変えていくことが望ましいです。6歳までの子は年に1回ほど、7歳以降の中高齢期の子はその子の健康状態によって異なりますが、半年〜1年に1回ほどを目安に健康診断をご検討ください。あくまで目安なので、健康診断の頻度はかかりつけの獣医師との相談して決めることをおすすめします。

年齢ごとの健康診断の項目について

診察を受ける猫

健康診断にもさまざまな項目があり、視診・触診・聴診などの簡易的なものから半日お預かりが必要な検査まで多々あります。検査の項目は猫の年齢や体調、または品種や性格によって判断する必要があります。以下に、AAFP(American Association of Feline Practitioners:全米猫獣医師協会)のライフステージによる疾患を参考にし、健康診断の例をあげます。

血液検査 尿検査 便検査 血圧検査 甲状腺ホルモン検査 レトロウイルス検査
0〜2歳 ± ±
3〜6歳 ± ± ± ± ±
7〜10歳 ± ± ±
11歳以上 ±
※+:推奨項目 −:非推奨項目 ±:獣医師と相談

上記の表は、AAFPでの年齢別に推奨されている健康診断の項目になります。また、超音波やレントゲン検査の項目が含まれていないためご注意ください。

生後半年までの猫

ペットショップ・ブリーダー、または保護猫など出生はさまざまですが、生まれつき何か病気を持っていないかを視診・触診・聴診によって調べます。また、食事量・排泄のトラブル(便・尿)・問題行動なども獣医師に相談してみましょう。

初年度の予防接種が済んでいない場合は、その接種やノミなどの寄生虫の駆除が必要な場合もあります。また生後4カ月から去勢手術や避妊手術を実施できるため(体格によってはできないこともあります)、今後の手術プランを立てることも可能です。

半年〜2歳までの猫

まだまだ遊び盛りで元気いっぱいな時期ですが、初年度の予防接種から1年後の追加接種のために受診が必要になるでしょう。その際、体調で何か気になることがあれば調べてもらうと良いでしょう。特に、去勢や避妊手術を受けた猫は肥満になる傾向があるため、体重測定をし肥満傾向でないかをチェックしてもらいましょう。

3歳〜6歳までの猫

猫によっては数々のトラブルが生じてくることがあります。病気には肥満・歯肉炎・膀胱炎・胃腸炎・心臓病などが挙げられますが、各疾患によって検査方法はさまざまです。一見、健康そうに見える猫でも血液検査や便・尿検査などの簡易な検査を受けておくと良いでしょう。

またレントゲン検査・超音波検査など、それぞれの猫の症状によって組み合わせて検査します。外に出てしまう猫であれば、外の猫から寄生虫やウイルスをもらうこともあります。ワクチン接種やノミやその他寄生虫の駆虫剤の投与をしてもらいましょう。予防接種は1〜3年間隔で実施する病院が多いため、かかりつけの動物病院で相談してください。


7歳〜10歳までの猫

中高齢にさしかかった猫には、糖尿病腎臓病、高血圧、甲状腺機能亢進症、癌などの「老猫」の問題が出てくるようになります。日常的に猫の様子を観察することで、嘔吐下痢・便秘などの消化器症状、食欲低下による体重減少、多飲多尿、視力や歩行の異常などを早期に見つけてあげる必要があります。

また、肥満は6〜8歳の猫でピークに達するので過食にも注意が必要です。これらの症状を参考に、各種検査を実施しますが、猫の性格によっては困難な検査もあります。特に、猫の血圧測定は動物病院では通常より数値が高く出てしまうため、なるべくリラックスさせた状態での測定が必要です。


11歳〜14歳の猫

多くの猫にとって「老化」を感じるようになる年代です。中高齢の猫と同様、甲状腺機能亢進症、高血圧、腎臓病、糖尿病、癌などの問題が発生する可能性が高くなります。また、その他のトラブルとして歯肉炎や関節炎などの疾患をより多く見かけるようになります。さらに猫の「認知障害」もみられるようになります。認知障害はその他の病気と混同してしまうことがあるため、適切な判断をしなければいけません。

15歳以上の猫

種々の病気はもちろんですが、超高齢であるために視力・聴力・味覚にも変化が生じてきます。そのため動作が鈍くなったり夜鳴きをしたり、また食の嗜好性にも変化をもたらします。快適に眠れる場所や段差の少ないトイレの設置、消化が良く嗜好性の高い食事など、日常的なケアが必要になることもしばしばあります。

また、腎臓病による慢性的な脱水症状や四肢の関節炎、それによって生じる便秘は非常に多く見かけます。これらは病気としての治療も必要ですが、飼い主による日常的なケアが大切な場合が多いように思います。



健康診断の費用

寝返る猫

検査項目や各動物病院によって費用が異なりますので、かかりつけの動物病院に問い合わせましょう。身体検査・尿検査のみであれば数千円ほどが目安になると思いますが、そこに血液検査・レントゲン検査などの項目を追加すると金額は変わってきます。

精密な健康診断となると気軽に受けれるような金額でないかもしれませんが、何かあったときの猫の身体的負担と治療費を考えると、定期的な健康診断による早期発見・早期治療は大事なことと思います。

健康診断の受け方の流れ

病院

まずはかかりつけの動物病院に検診についての詳細をお問い合わせください。その際、猫の年齢や現在心配なことがあればお伝えください。検査の項目や費用に関しても相談していただいて大丈夫です。また、猫の性格によっては検査が安全にできない場合もあります。

まずは飼い主さんや猫にとって無理のないことが大切だと思います。不安な場合はその旨も獣医師に伝えてみましょう。また、病院によっては検診に予約が必要なこともあるためご注意ください。

健康診断前日・当日のご飯について

検査項目や各動物病院の方針によって異なりますが、獣医師から絶食時間の指示がある場合もあります。問い合わせした際、食事について何も言われなかった場合は念のため確認しましょう。

新しく猫をお家に迎え入れたときの検診について

横たわっている猫

どこから猫を迎え入れたかによって健康診断のタイミングが異なります。

ペットショップから子猫を迎え入れたとき

基本的な検診はペットショップにいた時に受けているため、まずは自宅での様子をしっかり見てあげましょう。環境が変わることによって体調不良を引き起こすことは度々あり、特に、下痢やくしゃみなどの症状で来院される猫は多いです。

子猫は人が思ってる以上に体力がありません。少しでもおかしいと思うことがあれば早めに動物病院に行くことをおすすめします。その際、下痢をしている場合には便を持参しましょう。また、里親から子猫を譲り受けたときにも同様のことが言えます。

外にいた猫を保護したとき

外にいた猫を保護したときは、なるべく早く動物病院に連れて行きましょう。外にいた猫はノミなどの寄生虫がいる場合があるため、駆虫薬を塗布したり飲ましたりする必要があります。また、痩せていたり食欲がない場合には血液検査なども必要になってきます。

さらに自宅に同居している猫がいる場合には、ウイルス検査(FIV・FeLV検査)をしたほうがいいでしょう。基本的には最初の1カ月は隔離か接触しないようにしましょう。猫の性格によっては病院に連れていけない場合もあるでしょう。そのときは動物病院に相談して、ノミなどの薬を処方してもらいましょう。

定期的な健康診断を

遊ぶ猫

猫は犬と違って、基本的に家の中にずっといます。また、予防に関してもワクチン接種があるぐらいなため、動物病院に連れて行く機会はめったにありません。そのため、健康診断に行くことが猫にとってストレスになる可能性はあります。しかし上述したとおり、少しの工夫でストレスを軽減することができます。

愛猫との外出が難しい場合は往診という選択肢もありますが、病院での検査と違って限りがあります(レントゲン撮影はできません)。いずれにせよ少しでも長く、そして健康に人とともに猫が暮らしていくためにも、ぜひ、健康診断を活用していただければと思います。

参考文献

  • AAFP(American Association of Feline Practitioners):journal of Feline Medicine and Surgery(2010) 12,43-54 doi:10.1016/j.jfms.2009.12.006

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